自強號車票
自強號は快調に走り、最初の停車駅の台南に停車。駅本屋と改札口に接した月台である。日本の命名法なら1番線である。乗降客も多い。西洋人も1人乗ってくる。台湾においては自分も外国人であるが、西洋人を見るとやはり外国人と思ってしまう。11時28分発。昨日は通路側の席から縦貫線の東側の車窓を苦労して眺めていたが、田畑があっても建物ばかりが多い印象だった。今日、縦貫線の西側の車窓を窓側の席から眺めれば、田畑ばかりの長閑な風景である。筑後平野でも走っている気がするが、椰子の木が台湾であることを主張する。高鐡の高架線が見える。そこには試運転をする700T系がいるではないか。E4系のように先頭車両同士が連結しているようにも見える。走っているのか止まっているのか、よく判らないが、初めて車両を目にすることが出来た。
女性の客室乗務員、服務小姐というべきだろうが、ワゴンに便當の入った段ボールを載せて販売している。昼飯を食い損ねても難儀である。直ちに購入と思うが、言葉が出てこない。とりあえず、Excuse me! と声を掛ける。隣の席の腕にTattoのにいちゃんが、ビクッとして驚く。隣の席に座って外の景色ばかり眺めているのが(私)、外国人だとは思っていなかっただろう。ただ、この外国人、英語が不得意である。80 dollars というのを聞き取るのがやっとである。やはりビールは売っていないようだ。ホテルでもらった水があるので、飲み物は買わなかった。
宮脇俊三先生の『台湾鉄路千公里』によると、服務小姐はオシボリを配ったり、薬缶を提げてきて、お茶のサービスをしていたとの記述があるが、25年後の今はそのサービスは無いらしい。お茶のガラスコップが備えてあった箇所には、私が高雄で買ってきた珈琲が納まっている。飲み物はそれで良いが、便當を置くべきテーブルがない。右手に箸、左手に便當箱。食べ始めたら食べ終えるまで手が離せない。水を飲むには箸をご飯の上に置いて、空いた右手だけでペットボトルを取り、蓋を開け、飲んだら閉めて元に戻し、箸を持って食べつづけなければならない。何故、席にテーブルが無いのだろう。便當は高雄で調整したもので、排骨が鶏で煮玉子がついている他は昨日の便當と同様だが、排骨は昨日の牛の方が旨かった。煮卵は良かったが、これ1個で20元も高いのだろうか。次の停車駅新營を11時52分に発車。食べ終わった頃に嘉義に到着した。先ほどの西洋人も後で服務小姐から何やらお求めのようだったが、便當を買ったのか、飲み物を買ったのか。車内で出た屑物を集めるもの服務小姐。弁当殻、珈琲の紙カップを「謝謝」と言って渡し、スッキリとした。腕にTattoのにいちゃんも車内では何も買っていないが、「謝謝」と言ってゴミを出す。日本でこういう時に「すみません」とか言ってゴミを渡しているが、「ありがとう(ございます)」と言うべきだろう。無言でゴミを渡すなぞ、もってのほかである。
阿里山線の発車時刻は13時30分。結局、阿里山線の車両は見られないまま嘉義を12時10分発。斗六12時30分発。集集線の二水は通過。員林12時53分発。そして彰化に到着する。この先、竹南までの区間は海線、山線の2つの経路に分かれる。昨日は海線の列車に乗ったが、今日の自強號は山線経由である。13時06分、彰化を発車。しばらく海線と平走し、大肚渓の橋梁を渡り、線路は左右に別れる。山線は右を行く。別れた左のほうから単線が近づいてきて山線に合流する。。海線の追分と山線の成功を結ぶ短絡線で、竹南から海線を走り、追分からこの短絡線を経由して台中へ行く電車など運転されている。
高鐡の高架線が見えてきて、その交差部分に高鐡(新幹線)、台鐡(在来線)ともに新駅が建設中である。工事の進捗具合は今年の秋に開業するようには見えない。新しい台中のターミナルをすぎ、台中へ到着した。台中は台北、高雄につぐ、台湾第3の都市で、台湾中部で最大の都市である。そう思って車窓を見ていたのだが、駅前の大きなビルが火事で焼けている。帰国後に調べてみると今年2月に「金沙大樓18層發生火災」との新聞記事がある。被害は甚大だったようだ。ご冥福をお祈りする。焼けたビルに驚かされたが、車窓から見る台中の街は大変活気があるように思える。他の台湾の都市もそうだが。台中13時23分発。次の豊原を13時35分に発車。豊原というと樺太を思い出す。こちらは Fongyuan だが。
車窓も山間部の雰囲気となってきた。しかし新線を建設したようで線形はよい。これまで記憶に無かったトンネルも走る。高原のようなところもあり、南国の台湾とは思えない。街が現れれば街並みはやはり台湾である。苗栗14時04分発。山間部より下ってきて、中港溪を渡ると海線と合流して竹南を通過し、新竹に到着。西洋人も降りる。新竹は台湾のシリコンバレーといわれるので、その関連の人かとも思うが、イメージだけで何ら根拠は無い。新竹14時30分発。
海線でなくても車窓に台湾海峡の青い海が見える。もちろん大陸までは見えない。強い日が射すようになり、寝ている腕にTattoのにいちゃんにはいい迷惑だろうが、こちらは車窓を見るためだけに自強號に乗っているのである。カーテンは全開で頑張る。平走する道路。あちらを車で走ってみたいが、台湾では国際運転免許証は使えない。台湾に住んで台湾の免許を取るしかないのか。ちなみに台湾の国道標識にもおむすびがみられた。中壢(中レキ、土編に歴)15時00分発。桃園で隣のにいちゃんは降りた。直ちに「自願無座」に客が座ってくる。台北近郊となり、混み合ってきた。 (つづく)