旅にしあれば

人生の長い旅、お気に入りの歌でも口ずさみながら、
気ままに歩くとしましょうか…

仮面舞踏会

2021-10-11 18:55:15 | 図書館はどこですか



横溝正史さんが書いた膨大な推理小説のうち、探偵・金田一耕助が活躍するいわゆる
「金田一もの」を、当てずっぽうながら、たぶん七割程度は読んでいる私です。
横溝ブームの頃、私が買い漁って読んだ角川文庫版は、一部を除き、ほぼすべて
金田一耕助が登場するものを選んだからですね。

最近になって、図書館で借りるなどし続けざま読んだ「横溝正史ミステリ短編コレクション」と
「由利・三津木探偵小説集成」のおかげで、これまで未読だった、金田一が登場しないそれら
推理小説群も、その多くを読むことができたのは、すでにこの欄でご紹介したとおりです。


金田一もので読めていない小説がいくつかあることがわかっていて、そのうち気になっていた
作品のひとつが、この「仮面舞踏会」でした。今回図書館でお借りたのは、横溝正史自選集・
第7巻として発売されたものです。未完のまま捨て置かれた仮面~は長い中断を経て、
横溝ブームの頃、奇跡的(と言っていいでしょうかね、氏は長い間絶筆状態だったようなので)
に執筆活動を再開させた横溝さんの手によって完成にこぎ着けました。なので、舞台設定は
昭和35年頃としながら、再び執筆を開始し完結したのは昭和50年頃とのことで、金田一耕助が
活躍する作品では、最も新しいもののひとつです。

舞台が軽井沢とされていることもあり、横溝作品で特徴的な怪奇色やおどろおどろしい雰囲気は
ほぼ影を潜めるとともに、作品全般がそうであるように、金田一や等々力警部ら登場人物の描写も、
これまでのシリーズと比べると、いくぶん違った印象を受けました。スマートで、アーバンな
イメージがより強調されているといいますかね。時代は遡って設定されたものの、中断されて
いた間にも、確実に社会及び横溝さんの周囲では月日は流れていたわけで、その諸々の事情が
加味された結果だと見ていいでしょう。作風が微妙に変化したと言えるかもしれません。

全体的な完成度としては、脂の乗り切っていた全盛期に発表された氏の様々な傑作作品群と
比べることは少々酷な気はしますが、未読のまま残していたこのような本格長編推理小説を
今回読む機会を得たことには、大満足、大いに堪能させていただきました。

コメント
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