【ツービート~美瑛にて/2014.05.11 撮影】
2014年度作品集その3
ぶっちゃけ、ビートは成長してしまったら緑の葉の色が濃いだけの作物で、いい被写体にはなりにくい。
しかし植えつけられたばかりの苗は、丘の起伏に沿って独特の模様を描き、とても艶かしく「萌える」。
こんな乾ききった大地でポット植えされたあとに水も与えられない苗は、これがまあ驚くほど丈夫で、
しっかり根付くのだから頭が下がる。
秋まき小麦との淡い緑のコラボも美しく、早春の美瑛の丘の景色をつくりだす。
下の写真も、うねるビートのメリハリがあってこその風景だと思う。
テン場に戻ったら、私のテントのすぐ隣に新しくテントが設営されていた。主の女性(千葉出身、ニセコ在住の
看護士さん)が開口一番、「風速 15メートルってどんな風ですか?」。
彼女のスマホのアプリ「山の気象情報?」によると、白雲岳で風速15メートルの風が吹くとの予報が
出ているという。風速15メートルがどの程度の風なのか正確には私にはわからないが、本当にその予報通りなら、
テントはやばいだろうとは思った。この時点で12:00頃。迷いながらも、テントで連泊することに気持ちが
固まりかけていた私の決心は大きく揺らいだ。しかし、寝不足と歩き疲れてくたびれていた私の頭では
考えがまとまらず、昼食後、ひとまず昼寝した。
しばらくして、小屋の管理人さんに相談に行くと、風速はともかく、やはり天気は下り坂で、明日は朝から
雨が降る可能性が高いという。この時点で14:00頃。今ならギリギリこの日のうちに下山もできるが、
思案の末、テントを撤収、小屋に避難してもう一泊することに決めた。
白雲避難小屋に宿泊するのは久しぶり。たぶん熊騒動で、テン場が使えなかった時以来だ。
快適に過ごせるこの小屋は、登山客に人気が高く、混雑さえしなければすこぶる居心地がいい。
この日は、最終的に10名程度の宿泊で余裕があった。
小屋の石垣をすみかにしているエゾシマリス。 速い! 君はシマリス界の赤い彗星か?
マリのように弾みながら、数匹が小屋の周りを走り回っていた。
夕方、急に雲が薄くなって、再びトムラウシなど周囲の山々が姿を見せた。
あわよくばまた夕景が拝めそうなところまで天気が持ち直したが、さすがにそれは甘かったようだ。
それまで穏やかだったのに、日没直後急に風が強まった。どんな根拠で風速15メートルを予想
していたのかはわからないが、予報が当たったので驚いた。ひとりテントで粘っていた彼女に
管理人さんが最終通告、念のためテントを撤収して、小屋に避難させた。
6月30日(火) 曇り時々雨
夜の間ずっと風がゴウゴウ唸っていた。結果的にはテントが飛ばされるほどひどくなかったかもしれないが、
あれでは眠れなかったであろう。3:00 行動を開始してトイレに立った際には、トムラウシを始め周囲の山々は
見えていて、「もしかしたら朝焼けが期待できるかも…」と思わせるくらい天気も悪くなかったが、
それはつかの間、すぐに西から真っ黒い雲の軍団が押し寄せた。
準備ができて、さあ出発と靴を履きかけたら、ニセコの看護士さんが駆け込んできて、「雨が降り始めました!」。
外を見たら霧が立ち込め、視界が効かなくなっていた。あきらめがついて、雨具を着用、滅多に使わない
スパッツを装着した。途中で雨具を着用するのはけっこう大変なので、不幸中の幸いと自分に言い聞かせた。
4:35 出発。雨はぱらつく程度だが、強い風と共に吹き付けてくるので始末が悪い。おまけに霧で
視界が効かない。緑岳の稜線に出たらいっそう風が強くなった。吹き飛ばされるほどではなかったが、
風に煽られ、時々よろめきそうになる。
雨は強弱を繰り返しながら、幸いそれほどひどくならなかった。ほとんど休憩なしに歩き続け、ガレ場を下り、
風をよけられるハイマツ帯でザックを下ろして、ようやく小休止、一息入れた。第二花畑~第一花畑に
差し掛かったとき一番雨が強まった。ただ、ガス帯からは抜け出て視界が効いたので、道に迷う心配は
なくなっていた。
樹林帯に入ると雨は小降りになった。7:30 下山。
車にたどり着いて、山支度を解く頃には雨は上がっていた。ところが車内で濡れた服を着替え始めたら、
強い雨が降り始めた。その後、車で層雲峡を通過時に土砂降りの雨が降っていた時間帯もあったので、
早い時間に下山できてよかったとしておきたい。連泊をあきらめ、下山すると決めた看護士さんはどうなったか?
トムラウシへ向かうと言ったパーティは、予定通り行動したのだろうか? この時点では、明日以降の
予報も良くなかったので、計画を変更する勇気も必要な状況であったと思う。
6月29日(月) 晴れのち曇り
2:40頃、隣のテントの三人組が活動を開始した。板垣新道を緑岳方面に向かう彼らを見送って、
私は再び高根ヶ原を目指した。その時、東の空に少し雲が多めにあったが、高根ヶ原にガスはかかっていなかった。
しばらくすると、緑岳越しに空が赤く染まり始めたが、撮影場所をより先に欲張った私は間にあわず、一番いい状態を
撮影することができなかった。しかも高根ヶ原にガスが流れ始めて飲み込まれ、一面真っ白、あわや撃沈寸前。
しかし幸いにも、しばらくするとガスは消えて事無きを得た。そんな危なっかしい状況を三度ほど繰り返した。
この日は大雪ダム上にいい感じで雲海が発生し、しかもうっすら赤く染まっていたようなので、
素直にガスのかからなかった緑岳に行っていたほうが正解だったのかもしれない。
しかし、この朝私のメインの撮影目的は、「ウルップソウとトムラウシ」であったので、どうしても
高根ヶ原を優先する必要があった。なのに、撮影場所に到着直前、トムラウシがいったん雲に
隠れてしまった際には茫然自失した。幸い、しばらく待っている間にその雲は消えてなくなり、
再びトムラウシが姿を現したが、ハラハラドキドキ、綱渡り状態の撮影セッションであった。
イワウメとエゾオヤマノエンドウのコラボ。
水場付近のコバイケイソウ群落。
テントに戻り朝食。すでにほかのテントはすべて撤収されていた。
休憩後、小泉岳~白雲岳分岐方面を散策。この頃天気が安定し、青空が大きく広がったが、
のち、徐々に雲が多くなっていった。
キバナシャクナゲ群落と白雲岳。
小泉岳から白雲岳(左)と旭岳(中央奥)。
小泉岳稜線の花々も、雪解けが早かった割にはやや遅れ気味のようだ。
白雲岳分岐から避難小屋方面に少し下がった地点で撮影。緑岳(右)とトムラウシ(中央奥)。
板垣新道。途中、真ん中の島は出ているが、それ以外はすべてまだ雪渓。ガイドロープがあるので、
道に迷う危険は少ない。
10:15 白雲岳キャンプ指定地着。テント設営。まだ誰もいない。
水場の様子。現在まったく問題なく水が確保できるが、雪の残量が少ないと秋が心配。
休憩後、高根ヶ原散策。
ショウジョウバカマ。
??
6月の寒の戻りがたたったのか、稜線の花は全般やや遅れ気味のようだ。ここには割りと群生していて、
特にエゾオヤマノエンドウの紫が目立った。
エゾコザクラの大きな株(数株固まっているのか?)。
三笠新道分岐付近。ウルップソウが咲き始めていた。いつもピークを過ぎたトウモロコシの食べかすのような
残骸を見ることが多いので、これはこれで新鮮。数日後が見頃か。
三笠新道を少し下ったところで撮影。管理人さんがハイマツの枝払いをしてくれたので、ずいぶん歩きやすく
なっていた。
同じ場所から白雲岳(左)と緑岳。
イワウメ。まだつぼみが多く、見頃は少し先か?
キバナシャクナゲ。ところどころ、それなりに大きな群落あり。
テン場を撮影。まだ一部にぬかるみが残るがほぼ乾いていて、幕営に問題はない。この後数張り増えて、
この日は7,8張りだった。
午後遅くなって、ようやく雲間から日差しがあった。テン場前のキバナシャクナゲを撮影。でもこのあとすぐ曇る。
夕方、すごくきれいなガスが高根ヶ原を流れていたがまったく日差しがなく、あきらめて夕食、ちょっぴりお酒も飲んだ。
ところが日没直前、突然雲が切れて夕映えとなり、あわてて小屋前で夕景を撮影した。思わぬ
撮影機会が訪れたが、その頃にはすっかりきれいなガスがなくなっていたのが残念であった。
夜中1時前頃だったか、目覚めたら再びガスが高根ヶ原を流れていたので、月明かりで撮影を試みた。
満月に近い月齢にもかかわらず、白雲岳上空には星もたくさん出ていた。大きな流れ星が頭上を
横切った。
とても寒くて、秋のような冷え込みだった。インナーのシュラフを使っていたのに足が冷えて、その後
なかなか寝付けなかった。
6月28日(日) 曇り
天気が良くなっていくという予報を信じ、二泊分の食料を用意して、この旅初めて泊まり装備で山に入った。
ただし、この時点で30日は天気が崩れるという予報であった。
早朝、大雪高原山荘駐車場で準備をしている段階ではまだ極弱い雨が残っていて、計画続行を少し躊躇した。
だが、出発時には雨は上がり、その後は降らなかった。(6:20出発)
緑岳・第一花畑。木道はすべて出ていて、7月中旬並みの雪解けか。
エゾコザクラとチングルマの群落があったが、まったく日差しがなく、撮影できなかった。
第二花畑。この先、しばらく雪渓歩きとなる。
雪渓には足跡以外目印はないので、濃霧時など悪天時には道迷い注意。
エイコの沢手前の足場の悪いガレ場直前には、雪渓にステップ(階段)があり、あまり怖い思いをせず助かった。
紅葉でおなじみの構図。緑岳中腹のガレ場から高根ヶ原越しにトムラウシを望む。
緑岳山頂到着 9:20 。 日差しはないが高曇り、微風で、ほぼすべての周囲の山々が見渡せた。
気温は低く、風除けを羽織った。
旭岳(左奥)と白雲岳。
小泉岳方面。タラチネの嫌な雰囲気の低い雲が気になったが、天気の崩れはなかった。
石狩連峰など東大雪の山々もすべて見えた。この日ニペソツ山(右端)に北海洋さんが登っていた。
視界が効いて、遠く阿寒の山々から斜里岳、知床連山まで見渡せた。
27日、帯広方面は朝から低い雲が垂れ込めてどんより曇り空、気温も10℃前後までしか上がらず、
冬のような寒さでどうしようもない。
上士幌町の図書館は、町の大きさの割にはそこそこの規模で、現在活躍中の売れっ子作家たちの
小説(単行本)が充実していて、本選びには事欠かない。また、全国紙では唯一朝日新聞だけを
扱っていて、これも私には好ましいことである。
さらに雑誌では「アサヒカメラ」「山と渓谷」などが置いてあり、これにも目を通す。アサヒカメラはまた
ヌード写真特集だ。別に選んで読んでいるわけではない、私が読むときに限っての正真正銘「たまたま」だ。
たまといえば、和歌山電鉄の「たま駅長」が大往生をとげたとニュースで知った。近くなのに、一度も
お目にかからず仕舞いだった。インパクトの少ない和歌山市の観光業界において、孤軍奮闘し、日本国内だけに
とどまらず、世界各国から観光客を呼び込んだ功績を称え、ご冥福を祈りたい。
奥田實さんの写真集「大雪山」があったので拝見した。私の手元にあるのとは別の本で、私のが
花の写真がメインなのに対して、これは主に、いわゆる山岳写真が中心である。
湊かなえさんの小説を一度読んでみたいと思っていた。10冊程度の蔵書の中から「告白」を選んだ。
なるほど、かなりエグイ、キワドイ内容の話を、さらっとした質感の文章で軽やかに書き綴られている印象で、
ぐいぐい引き込まれ、二日で読みきった。面白く、広く支持されているのがよくわかった。
買出しで久々に帯広に出た。「豚丼・いっぴん」はまだ開店前だったこともあり、これまた久々に
「インディアンカレー」で食事する。『カツカレー』が 658円。ちょっと値上げしたようだ。
柳月スイートピアガーデンにも立ち寄ったが何も買わず、無料のコーヒーだけいただいて
引き上げた。セコイ? 違う、只今ダイエット中なのである。万年金欠病なもの間違いないが。
二年ぶりかな? 上士幌のすし店「みどり鮨」を訪れた。17:00 開店と同時に飛び込んだので、
客は私一人であったが、すぐに電話で予約が入り、三人分の席が用意された。
前回は開店と同時に客が立て続けに入りとても忙しなさそうだったが、この日は少しご主人と
お話しすることもでき、天気が悪く山に入れないことをボヤいた。
店では「上にぎり」 1200円を食した。前は特上(1700円)を頼んだが、500円ケチったことを後悔した。
かなり内容に差があるので、せっかくなら特上を食されることをアドバイスしておく。「海老のあら汁」が
付いた。
しかし、予算が限られているのはつらい。節約する姿勢を常に念頭に置きつつも、ここぞというときには
少し贅沢も楽しみたい。
お土産(車内食用)に 「上ちらし」 1200円を頼んだ。同じ値段で済ますなら、にぎりよりもちらしのほうが
お得感があり、こちらをお勧めしたい。写真ではわからないが具が二段になっていて、タコやイカなどが
下に敷き詰められており、見た目以上にボリュームがあるのだ。店内で付くあら汁がない分、容器代を
上乗せされない。
お刺身をたくさんおつまみにできる感覚で、日本酒が進むこと間違いなし。
層雲峡側に比べ、三国峠を越えるとそこそこいいお天気だったので、駒止湖へナキウサギを写しに行った。
途中の林道にゴゼンタチバナが咲き誇っていた。
この日もそれなりに写真が撮れたのはラッキーだった。そういう生態があることは聞いていたが、
自分の糞を食べているのを初めて間近で確認した。
また、未確認だが今年然別湖畔の山田温泉はやっていないようだ。前を通りかかったら、なにやら張り紙がしてあって、
日帰り入浴の料金表も隠されていた。あの泉質を考えるともったいないな、今年は入れないのか。
昼は金亀亭の日替わり定食・500円で節約した。お値段の割りには野菜がたくさん使われていて、
バランスのいい食事ができた。
「かみしほろ旅図鑑」の今年度版が発行されていて、さっそくゲットした。
ようやく体調も元に戻り、生ものを食べる気になった。今日は「時しらず」でなく、
普通の「サーモンのあら汁」であったが、汁物にしてしまったら、違いはわからないよ。
(ちなみに、料金は同じ180円(税別)である)
予算とお腹具合を考慮して、腹八分目で切り上げた。いつもこの清さを忘れずにいたい。
モンベルの東川店に行ったら、奥田實さんの写真展「大雪山、天上のお花畑」が開催されていた。
以前も述べたが、私が唯一手元に持っているのが奥田さんの写真集で、そこから受けた影響は
計り知れないものがある。このごろ、ようやく師の背中が見え始めたようだ… と、日記には書いておこう。
迷い始めたらきりがない私。思い切ってモンベルの長靴を購入した。海外製なのがちょっと心配だが、
一応天然ゴムということで、山歩きのような激しい動きにも長期にわたり耐えてくれることを切に願う。
永く愛用した古い長靴は、お店が引き取ってくださった。車に余裕を持って荷物を積み込んでいるわけではないから、
これは助かった。私の性格では、たとえ破れたものであっても、愛着のあるモノはなかなかすぐに捨てられない
のだから、有無を言わさず、間髪いれず、迷う間もなく、未練を断ち切って新型に買い換えられたわけだ。