ふり返れば酒について随分長いこと書いてない。カテゴリーは三つで、酒、旅、時局雑感となっているが、旅が断然多く、年末年始にかけて時節柄か時局雑感が続いた。
2月を迎えて、寒造りの酒を思い出す。昔、広島時代に『広島歳時記』を書いたが「2月・・・酒」であった。酒どころ広島に住んでいて、2月といえば迷わず「酒」としたことを思い出す。しかし、今やそのような季節性はなくなったのかもしれない。当時「2月・・・酒」としたのは、多くの酒蔵が2月に大吟醸を造るからであった。寒造りといわれる酒の、一番いい酒を酒造りに最も適した時節に造るのである。
しかし今や大吟醸などいつでも飲めるし、もっと言えば大吟醸が一番いい酒かどうかもわからなくなった。香りが一番重視され、冷たく冷やして飲むものと決められた大吟醸は、寒い冬にはあまり適さない。むしろ夏に飲む酒かもしれない。
冬は、純米酒の燗酒、もっと言えば山廃純米の燗酒のほうが、冷たい大吟醸よりはるかに美味しいと思う。様々な鍋料理にもこの方が合う。季節性がなくなったのではなくて、本当の「酒の季節性」が問われ始めたのかもしれない。
今、歳時記を書くとすれば、酒は何月とするのであろうか?