昨年末12月31日付赤旗新聞一面最下段の「潮流」で、ミクロネシア連邦憲法前文を初めて知って気になっていたのであるが、ようやく原文(英語)を手にして、改めてその広大な理想に感動している。
ミクロネシア連邦は太平洋のミクロネシア地域に位置し、マリアナ諸島、パラオ、マーシャル諸島、パプア・ニューギニアなどに囲まれる連邦国家。広大な海に点在する島々から構成され、その島の数は600島を超えるという。その憲法前文は、自らの起源を次のように書いている。
「ミクロネシアの歴史は、人が筏やカヌーに乗って海に乗り出したときに始まった。・・・そしてミクロネシア民族は、わが世界が一つの島になったときに誕生した」
点在する島の人々が筏やカヌーで交流し、やがて一つに結び合う。その舞台であった海は、島々を分かつものではなく一つに結び合わせてくれるものであり、そこに民族と国家誕生の原点を見据えているのだ。
もちろん、その歴史は平穏ではなかった。民族同士の争いもあっただろうし、何よりも太平洋は、大航海時代以降列強の支配が繰り返されたところだ。それらを数え切れないほど経験してきたこの民族は、同じくこの憲法前文で次のように宣言している。
「多くの島々で一つの民族をつくるため、各文化の多様性を尊重する。
お互いの違いこそが、われわれを豊かにしてくれるからだ。
・・・・・
戦争を知っているがゆえに、われわれは平和を願う。
分割されたがゆえに統一を望む。
支配されていたがゆえに自由を求める。・・・」
「われわれの祖先はここに住んできたが誰かを追い出すようなことはしなかった。それを受け継ぐわれわれは、この地以外に住もうとは思わない」
私は、日本国憲法はその第九条を始めとして世界に冠たる理想主義に彩られた憲法と思っていた。ところが、このミクロネシア連邦憲法はそれをはるかに越えている。 海は世界を分かつものではなく、むしろ一つにつなぐもの・・・、つまり「世界は一つの島なのだ」という精神は、「世界は一つ」という絶対的平和主義の礎をなし、武器を持つかどうかを規定するはるか以前の立場にある。因みにミクロネシア連邦は軍隊を持たない国と聞いている(詳しくは調べてないが)。