昨年は『24節気の酒』を書きつづけた。月に2回訪れる各節気ごとに、その前後に飲んだ酒や、それぞれの節気が与える印象から引き出された酒を書いた。自分が一年を通じて飲む酒を24選べといわれると、それなりに緊張する。全国に在る1000を上回る蔵の中から24選ぶとなると簡単なことではないからだ。
しかし、そんなに堅くなっていてはおいしい酒もまずくなるので、前述どおり前後に飲んだ印象的な酒を書き並べたに過ぎない。だからビールも焼酎も出てきたし、「秋分」に至っては偶々トルコにいたのでトルコワインやトルコビールなどが登場した。
さて今年はどうなるか?
そんなまとまったものを書くつもりはなく、これまで書きなぐったものをまとめる年にしようか、などと思っていたら、暮れから年初にかけて大変な企画が舞い込んできた。
実は当社は、昨年秋からブライダル事業の充実を図るべく3人の新人を採用した。彼らの新入社員研修を行う傍ら、私の「酒の遍歴」を語っていたところ、これが意外な反響を生んで、その3人から「酒の話を映像化したい」という提案が出されてきたのだ。「これだけの酒の知識と実際に飲み歩いた経験を持ちながら、何故それを映像にしなかったのか?」と言うのだ。
「本物の酒としての純米酒を追求する姿勢」といい、あちこちのみ歩いた「酒との出会い」といい、そこにはドラマがあるという。「話を聞いているといくらでも映像が浮かんでくる」とまで持ち上げる。私はほとんど真に受けてはいないが、時々頼まれる「酒の話」の際に、以外に一般人が酒について知らないこと、当然のことと思われる酒にかかわる話が驚きを持って受け取られることに、こちらが驚かされることが多かった。
そんな話をしていると彼らは、「極めて新鮮な話が多い。もっとみんなに真実を知らせる必要が在る。映像を作れば必ず需要がある」とエスカレートしていき、『酒のエデュテイメント』なる方針が打ち出されてきた。エデュテイメントとは、エデュケイションとエンターテイメントを併せたものらしく、教育と言えば堅苦しくなるので、それにエンターテイメントを加味して「酒の話をドラマ化していこう」というのだ。
だんだん引っ込みがつかなくなくなってきて、やることになりそうだ。どうせ新入社員として映像の勉強をしなければならないのだし、すぐ事業に結びつくかどうかは別にして「勉強のつもりでやるか」と思い始めている。
どこから何の話が出てくるか分からない時代である。