旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

キリンの首位奪回は意味があるか?

2010-01-20 17:17:48 | 

 

 2009年のビール系飲料の出荷量で、キリンが9年ぶりにアサヒを抜いて首位に立ったと各紙が報じている。ところが中身を見ると、本来のビールでは未だアサヒが首位で、特に「第三のビール」のトップ商品を持つキリンが、この分野で不況下の安物指向消費者を囲い込んで首位に立ったようである。

 日本のビール系飲料は、「本来のビール」と「発泡酒」と「第三のビール」に分けられる。ビールは麦芽とホップを原材料とした醸造酒で、ビールの本場ドイツでは「麦芽、ホップ以外のものが入っているものはビールと認めない」という『ビール純粋令』が500年の歴史を経て守られている。日本では、それに「法令で認められたもの」を麦芽の量の50%以内で添加することが認められており(麦芽比率3分の2以上)、前述の「本来のビール」といっても日本のビールの大半はこれら混ぜ物ビールで、ドイツなどから見れば本来のビールではない。ドイツ的本来のビールは、モルツ100%の『エビス』や『サントリーモルツ』など少量で、大半は米やスターチやコーンなどが入った混ぜものビールだ。
 ところがその上、「麦芽比率を規定以下に引き下げたもの」でビール的に造ったものを「発泡酒」と呼ぶことにして、税率を低くしたので低価格となり売れ行きが伸びた。麦芽比率が50%以下や25%以下などでは、最早ビールと呼べないのではないかと思うが、味やコクが劣っても低価格には勝てずローモルトビールとして売れている。
 かてて加えて「第三のビール」なるものが現れた。これはそもそも麦芽さえ含んでないのだ。えんどう豆や大豆のたんぱくなどを原料にして、とにかくビール風に作った「ビール風アルコール飲料」だ。これがまた一層税率が低いことから低価格となったので、この不況下、とにかく「これでビールを飲んだことにしよう」というのが実情だろう。

 国民が何を飲もうが各メーカーが何を作ろうがまったく自由で、なにも文句を申し上げるつもりは無いが、問題はこうして、日本国民の食生活の質が下がって行くのではないかということが心配だ。私は自分が自ら買うときはエビスかサントリーモルツしか買わないが、エビスビールなど本当に美味しいと思う。
 第三のビールでシェアーを伸ばして業界トップになったといって、それはそんなにお目出度いことなのだろうか?
                    


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