浅川芳裕著『日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率』によれば、日本の農家は1960年の1200万戸から2005年には200万戸に減ったが、その200万戸が1960年の生産量4700万トンより多い5000万トンを生産しており、日本の農業はそれほど強くなったのだと言う。
しかもその200万戸の内訳を見ると、以下のように書かれてある。
・売上高1000万円以上はわずか7%の14万戸で、全農業生産額8兆円の6割を産出。
・ 売上3000万円以上は1.5%の3万戸だが国内生産額の30%を占める。
・残る180万戸強のうち、売上100万円以下が120万戸で国内生産のわずか5%しか貢献していない。彼らは他の仕事で稼いだお金を農業に使っている大規模家庭菜園層。いわば、趣味的農家や兼業農家。
・農業従事者の60%と言われる65歳以上の高齢者の内訳は、①農家出身のサラリーマンや公務員が70%、②農家出身のサラリーマンや公務員で定年退職後に趣味の農業を始めた人10%、③農業主業者は20%、と大半は他に収入を持つ人。
これが事実なら、日本農業はわずか20万戸弱の強力な専業農家に支えられており、それらの農家は高い生産性を誇り、世界と十分戦い得る力を持っているようだ。その他の農家は、農家とは言え他に収入源を持ち、従たる仕事として農業を営んでいるように見える。
もちろん、それらの人々を「趣味的農業家」と片付けていいのかどうか私には分からない。それぞれには様々な理由や背景があるだろうから、十把一からげにはいえないかもしれない。しかし従たる仕事となっておれば、生産規模も生産性も当然低いだろうし、貢献度も劣って当然だろうから、どれだけ国が保護すればいいのかは難しいところとなろう。
私は大分県の片田舎に育ち、母の実家は農家であったから、子どものころから農家の凄まじい働き振りを見てきた。今も秋田などに関係してきたことから農家の悲痛な叫びをいくつ か聞いて、農業には理解をもっている人間と自負している。
しかし、その中味を現時点で正確に捉え、何を守り何を育てるのが国を守ることになるのかを考える時が来たようだ。