旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

友を見舞う

2011-01-15 18:35:45 | 時局雑感

 

 癌との闘病生活を続ける友を見舞った。病院で長い投薬治療を続けていたが、しばらく投薬を免れ退院したので、ようやく見舞う機会を得たのだ。もちろん病院に出向いても良かったのだが、治療の時間などが一定しないため相手も気乗せず、なかなか日程調整が出来なかったのだ。

 久しぶりに会った友は以外に元気であった。近くの行きつけの寿司屋に案内され、見舞いに行ったのに美味しいお寿司をご馳走になって、「これではさかさまだなあ」と大笑いしたものだ。
 寿司屋で1時間、自宅で1時間、合計2時間お互いに喋り捲った。積もり積もった言いたいことを相次いで話しまくった。この調子では元気一杯の感じで、奥様も以前より元気になったみたいで、とてもお見舞いの席のようではなかったが、一月もすれば再び病院に帰らなければならないことを思うと心は重い。
 ただ彼は、うれしい話をしてくれた。年末から新年3日まで一時帰宅し、正月は家族で祝ったという。しして2日には鎌倉八幡宮に家族で初詣に出向いた。さすがに自信がなかったので車椅子を用意していったが、車椅子で上る道が無い上に適当な置き場所が無く、あの60段強の階段を、持ち上げなければならないことになった。
 その様子を、彼はうれしそうに語ってくれた。
 「私は何とか歩いて昇った。最後に少し酸素ボンベを吸ったが。そして車椅子は2人の息子が60数段の階段を持ち上げ、また降ろしてくれた・・・」

 長男は大学受験の最中。既に上智大学など有数な私立の合格を果たしているが、現在最後の国立大学に挑戦中、次男は学校の英会話クラブのリーダーで活躍中。その活躍もさることながら、「2人で私の車椅子を持ち運んでくれた」と話す彼は、本当に嬉しそうだった。
 私はその話を聞いただけで心温まり、闘病生活の先に光明を見出して立ち去ったのであった。


投票ボタン

blogram投票ボタン