旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

歌いつがれた日本の心・美しい言葉① … 『早春賦』

2011-01-26 14:38:03 | 文化(音楽、絵画、映画)

 
 テレビのBS日テレが、毎週月曜日の夜10時から『日本・こころの歌』という番組を放映している。文字どおり、日本人が歌い継いだ「こころの歌」を綺麗なコーラスで紹介する番組だ。フォレスタという男女数人ずつのコーラスグループが、正確に、清純に歌い綴るいい番組だ。
 今週月曜日(1月24日)は、日本歌曲や小学唱歌などの名曲を、春夏秋冬に分けて歌った。その春の部で歌われた中に大好きな『早春賦』があった。それを聞きながら、曲の美しさ(作曲中田章)もさることながら、綴られた言葉の素晴らしさに改めて感じ入った。
 『早春賦』の作詞者は吉丸一昌である。吉丸は私のふるさと大分県臼杵市の生んだ偉大な国文学者、偉大な先輩である。吉丸は明治中期に、文部省尋常小学校唱歌編集委員会の作詞委員会の委員長として活躍、また1912年には『新作唱歌』全10集を出版、その中にこの『早春賦』や『故郷を離るる歌』などを収録した。

 それにしても『早春賦』の言葉は美しい。もうすぐ立春を迎えるが、そのとき必ず実感することは「春は名のみの風の寒さや」という思いである。春を待ちわびた鶯の思いを「谷のうぐいす歌はおもえど」と表現し、あまりの寒さに「時にあらずと声もたてず」と描写する。「歌はおもえど」などの表現は、今や言葉としてもなくなってしまったのではないか。
 言葉としてなくなったのは、2番の歌詞に出てくる「葦は角(つの)ぐむ」とか「思うあやにく」などであろう。いかにも古いと言ってしまえばおしまいであるが、その柔らかな響きが何ともいえない。そして3番で、春と聞いて「聞けばせかるる胸の思いを」抑えることもできず、「いかにせよとのこの頃か」と歌い上げる構想は素晴らしい。改めて全曲を書き記しておこう。

    
    春は名のみの風の寒さや
    谷の鶯(うぐいす)歌はおもえど
    時にあらずと声もたてず 時にあらずと声もたてず

         氷と
けさり葦は角(つの)ぐむ
    さては時ぞと思うあやにく
    今日もきのうも雪の空 今日もきのうも雪の空

        
春と聞かねば知らでありしを
   
 聞けば急(せ)かるる胸の思いを
    いかにせよとのこの頃か いかにせよとのこの頃か

            
             羽根木公園の梅

 
 わが家のハナミズキの餌かご(ミカン)に来ためじろ

 


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