「秋田“文化の旅”」という副題を付けた西馬音内盆踊りの旅もようやく終わった。文化の旅と大上段に振りかぶっただけの内容はあったのか?
先ず第一は何と言っても「伝統の盆踊り」を自ら踊り、本場の味を十分に味わったということだろう。いかなる能書きを聞こうとも、美しい写真や映画を見ようとも、現場に赴き、自ら参加することに勝るものはない。これこそ文化に触れる本髄といえるからだ。私は踊りこそしなかったが、衣裳を整え練習を重ね本場に出向いて踊った5人に心から敬意をささげた。
それほどの事をするのだからその前後に、相応の“その地の文化”に触れたいというのがみんなの声であった。「文化に触れる」とはどういうことか? 結局は「その道のプロの技に触れること」だろう。それで、かなりの準備とお願いを重ねて計画を練った。
すでに書いた第三日の、「酒造りの森谷杜氏」と「蕎麦作りの『彦三』猪岡店主」もそれである。
それだけではない。二日目もすべて「プロの話」を追った。
たざわ湖芸術村では、世界一となったビールを飲んだだけでなく、それを作る工場長の話を聞いた。地元のホップや麦芽、ドイツから取り寄せた酵母を地元で育て上げた苦労話を聞いた。ちょうどそこに『わらび座』の花形女優丸山有子さんが現れ、交流を深め写真も撮った。
前列中央ポーズをとる丸山有子さん
田沢湖では、湖畔の名店『たつこ茶屋』に立ち寄り名物の「やまめの塩焼き」と「味噌たんぽ」を食べたが、この店はクニマス探しに生涯をささげたクニマス漁師・三浦久兵衛さんの店。久兵衛さんは2006年84歳で亡くなったが、今はその孫娘さんがやっている。
娘さんはヤマメを焼き、味噌たんぽを焼いてくれながら、「さかなくんが西湖でクニマスを見つけてくれた。祖父が生きていたらどんなに喜んだかわからない」としみじみ語った。そこには「あと4年生きていれば…」という無念さがみじみ、プロの血を引く人の風情が漂っていた。
やまめの塩焼き
中央が、三浦久兵衛さんの孫娘さん
正味二泊二日の旅で、これだけそれぞれの道のプロに話を聞くというのは、そう簡単にできることではない、と自負している。