前回第二弾の初春大歌舞伎を観て、新橋演舞場から改築中の歌舞伎座の前に出て、「新装歌舞伎座で、弁慶が大見得を切るシーンを見たいものだなあ」なんて話し合いながら帰ったが、その「荒事」の大御所、「にらみ」の市川団十郎が亡くなった。昨年末の中村勘三郎に続き、歌舞伎界はまた若き象徴を失った。
もちろん、まだあとに人間国宝役者からそれに続く役者を多く抱える歌舞伎界が、これで終わるわけではないが、「貴重な芸」はあらゆる機会を逃さずに見ておかねば…、とつくづく思った。もう、あの十二代目団十郎の弁慶を見ることはできないのだ。
シリーズ第三弾は、「てなわけで冬の噺“桂扇生独演会”」なる落語。2月2日、娘と二人で内幸町ホールに出かけた。実は扇生師匠とはある酒の会で一緒になり、席が隣り合わせになって大いに親しくなり、名刺を交換したことがきっかけで毎月出し物の案内をいただいていたのだ。
私はその酒の会まで扇生師匠を存じ上げていなかったが、隣の席で何とも賑やか、「よくしゃべるおっさんだなあ」なんて思っていたら、それもそのはず、おしゃべり専門の落語家であったのだ。
これも何かのご縁、と噺を聞く機会を狙っていたのだが、今回、「二番煎じ」と「厄払い」というタイミングのいい演目に接して、娘を誘い出かけたわけ。
「厄払い」は節分、豆まきの噺であるので、節分の前日とは何ともタイミングがいい。翌日の節分では、わが家はとうとう豆まきもしなかったが、前日聞いた扇生師匠の噺で十分に代行してもらったと思っている。もっとも、「厄払い」の主人公の豆まきは実に心もとない豆まきであったが。
「二番煎じ」は、「試し酒」、「夢の酒」と並んで私の好きな“お酒三大噺”の一つ。期待にたがわず、約一時間たっぷりと語ってくれた。テレビなどで聞く落語は15分ものなどが多く実に味気ないが、独演会となればじっくりと演じてくれるので聴きごたえがある。
次は末広亭にしよう、と早くも娘からおあとの注文が出ている。
桂扇生師匠と(ある酒の会で)