銀行時代の仲間の会はいくつかあるが、その中で、20年近くにわたり年2回の会合を律儀に続けてきた会がある。私の最後の職場となった検査部で、融資業務を検査する部会に属していた者で、気心の合った十人ぐらいがそのメンバーだ。
会の名は、検査部融資部会から単純に「検融会」と名付けた。常任幹事役のYさんが実にこまめな人で、夏と冬に必ず会場を準備して「開催のお知らせ」をくれる。会長とか役員を置くわけではなし、もちろん規約などの決め事もない。名前の通り単純で、Yさんの地道な努力が支えてくれる会、といえよう。
会長など役員はいないが、会の中心には何となく親分的な人が座るものだ。メンバーの一番年長で、これまた人の面倒見の良さでは人後に落ちないS氏がその役を務めてきた。そしてその人柄の良さが、この会を20年近くも続かせた理由の一つでもある。
そのS氏が亡くなった。昨年2月、定期検診で肺にがんが見つかり、5月に手術、その後回復するかに見えたが11月に転移が見つかり、治療の副作用に耐えながら頑張ってきたが、2月6日ついに逝った。享年79歳、あと1か月で満80歳を迎えるところであった。
検融会では3人目の逝去で、うち二人は私より年上であったので、だんだん上がいなくなった。未だ年上は二人いるが、S氏を失ったのは屋台骨を失くした感がありさびしい。
前述したように、S氏の誕生日は3月9日であと1か月で80歳を迎える。実は同じ誕生日のお孫さんがいるようで、毎年合同誕生会をやってきたが、今年は「おじいちゃんの傘寿の祝いを兼ねて、家族全員で温泉旅行に行こう」と決めていたという。S氏もそれを楽しみに療養に励んできたらしいが、思いを果たせずに逝ってしまった。
昨日の告別式に参列したが、出棺の時に声をあげて泣いていたお孫さんの声が耳に残っている。