18日は24節気の雨水。つまり、立春を過ぎて徐々に陽気が高まり、雪は解けて雨となる季節である。ところが明けて19日(昨日)は一日中雪がちらついた。もちろん積もるような雪ではないから、雨水の時節を表しているとも言えるのかもしれないが、とにかく寒かった。暦通りにはいかないものだ。
その18日の夜、風呂から出て歯を磨いていたら、上の歯がポロリと抜け落ちた。わずか2本しか残ってない上歯の一本が抜けたのだ。しかも何の痛みもなく出血することもなく、落ち葉が散り落ちるごとく抜け落ちたのである。
もちろん、既にぐらぐらするようになってかなりの期間が経つ。時間の問題とは思っていたが、何の抵抗もなく抜け落ちるなど、こんな淋しいことはないと思った。少しは痛みを伴うとか、血の一滴でも流れるとすれば「生きている証(あかし)」を感じるが、自分の肉体の一部が枯葉が散り落ちるごとく抜け落ちるのはさびしいものだ。まさに老いの一現象であろう。
早速かかりつけの歯医者に残骸を持って行くと、「歯が抜けていては格好悪いから、とりあえず応急手当てをしておいて、抜けた跡が固まったら本格的に作り直しましょう」と言いながら、抜け落ちた歯を入歯にくっつけて恰好だけは整えてくれた。これもまた何とも味気なさを感じた。
雨水を迎え水は温み、やがて春が訪れ万物が花咲くが、抜け落ちた歯がよみがえることはない。人工的な歯で、かなり不自由なく食生活を送ることはできるが……。