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Guy R Williams著「模型機関車/この魅力の世界」(実業之日本社)
日本版の初版は1970年ですから相当な年代物です。
装丁もなかなかずっしりとした物です。
「外箱の付いた鉄道模型の本」というのはこの当時相当に珍しかったと思いますが、それらもひっくるめるとある意味「書斎のステイタスにはもってこい」といった重厚感があります。
本書は当時の価格で4000円だそうなので今の感覚では間違いなく1万円超えの一冊にはなるでしょう(尤も古本なので3分の1位の値段で買えましたが)
写真集ならいざ知らず、鉄道模型の総論を書いた本でこれほど重厚な一冊にはこれまでお目に掛かった事がありません。
内容は1970年までの鉄道模型の歴史、各スケールの変遷、機関車、客車など車両ジャンルごとの模型の概観、更にはレイアウトにもかなりのボリュームを割いて俯瞰しています。
まず印象的だったのは写真の豊富さ。
車両ひとつとっても歴史的なヴィンテージモデルや当時の最新モデル、更には日本のEF58の16番モデルまで掲載されている充実度。
それと同じ密度でレイアウトやストラクチャーの項まで設けられていますからすごい。
ただ、発行時期から言ってNゲージはまだ発展期だったので記述はやや薄いですし、Zゲージは影も形もありません。一方でOゲージやラージモデルにも結構ボリュームを割いて書いたあったりするので当時の鉄道模型界を俯瞰するには十分と言えます。
JOHN ALLENのGD LINEひとつとっても本書で初めてまみえる写真が数枚掲載されていますからこれだけでも貴重ですし、それらの写真が結構大きなサイズで掲載されているのでそれらを眺めているだけで十二分に酔っぱらえます。
更に本書で特徴的なのは「各ジャンルごとの鉄道模型マニアの生態(と拘り)」を生き生きと描いている点で、ここまで描いたのは他の模型本でも滅多に見られない特徴です。
本書の作者は鉄道模型のマニアではなく交通関連全般を守備範囲とするライターだったそうなので、それらのマニアの嗜好や生態についての描写は他のライターに比べて一歩引いた視点から(つまり一般寄り)の視点で書かれているのが本書のもう一つの特徴と言えます。
そんな事もあったので著者についてもっとよく知りたいと思いネットで検索してみたのですがヒットした著書を見ると帆船模型や飛行機模型の本なんかも出てきたりします(笑)
読みようによってはややシニカルに見えるところもありますが、読んでいて頷けるところも多いので少しは共感を持って読めます。
そんな訳でかなりのボリュームだったにもかかわらず一気に読破できました。
但し、本書の中で特に鉄道模型の歴史に関する記述には誤りも結構多いそうです。
その点は当時のTMSのミキストでも触れられていましたし、英国の専門誌では「写真の豊富さに比べ記述が不適切」とまで書かれていたそうです。
なのでその点は割り引いて考える必要はありますが、それでもここまで読みやすいジャンルとしての鉄道模型の俯瞰本は後にも先にも殆ど無かったと思います。
(カラーブックスの「鉄道模型」が質的に肉薄する程度)
そういう意味では今読んでも楽しめる一冊だったのは間違いありません。
本書の記述には色々と触発される所もあったのでこれから何回か取り上げる事もあろうかと思いますがそれについては次の機会に。