ちゃ~すが・タマ(冷や汗日記)

冷や汗かきかきの挨拶などを順次掲載

小林由美『超・格差社会アメリカの真実』(日経BP、2006年)

2008年02月11日 23時24分15秒 | 
3連休とはいえ、3日間、大学に行った。
1日目、大学院入試と修論の口頭試問
2日目、特別専攻科入試と修論の口頭試問
そして、今日は、全障研奈良支部の学習交流会(午前中講演、午後分科会)

この間、電車の中で読んでいたものが、『超・各社社会アメリカの真実』である。アメリカ在留の経済(というか、経営だが)アナリストが書いた本。富の6割が、全人口の5%の金持ち層に集中しており、国民の3割が貧困家庭というアメリカの社会がどのように形成され、どのような実態となっているのかを示したもの。
はじめに、「(日本で)語られているアメリカ像は一面的であることが多い」「無意識のうちに、日本社会でのルールや常識、日本人のメンタリティを重ね合わせてしまうことが多い。しかし日本とアメリカとでは、日常生活での無意識な考え方や前提条件がかなり違う。メンタリティも違うし、共有している基礎知識やルール、価値観にもかなりの違いがある」ということで、我々のアメリカ観(特に、アメリカの障害児教育論やプログラム、例えば、行動療法などの前提としているもの、その受け止めるメンタリティの違いなどの前提の吟味なしに、プログラムの導入があったり、逆にその批判がある)を再度考え直すことが求められている。ただ、経営学の基礎知識がなかったので、なかなか読みづらいものがあった。
構成は次の通り。

第1章 超・階層社会アメリカの現実
第2章 アメリカの富の偏在はなぜ起きたのか?
第3章 レーガン、クリントン、ブッシュ・ジュニア政権下の富の移動
第4章 アメリカン・ドリームと金権体質の歴史
第5章 アメリカの教育が抱える問題
第6章 アメリカの政策目標作成のメカニズムとグローバリゼーションの関係
第7章 それでもなぜアメリカ社会は「心地よい」のか?
第8章 アメリカ社会の本質とその行方

「自由・平等・民主主義を標榜し、自由競争で活発な市場経済を誇る国アメリカ。でもそこにあるのは封建国家まがいの超・格差社会。それでも人々は明るく元気で、科学やビジネス、技術、スポーツ、芸術など、様々な分野でクリエイティビティが発揮され、そこで生まれたアメリカン・ライフスタイルは依然として世界中に波及し、多くの国でさまざまなアメリカナイズ現象が続いている」
こうした矛盾した二つの側面をどう理解したらよいかを、歴史、富の集中化の社会、政治と金、教育などなどで示してきた。所々に出てくる、アメリカ人のメンタリティの特徴づけがあったところが面白かった。しかし、下層社会アメリカの現実を示すものではないので、アメリカ社会の批判的分析ということではない印象がある。
ついでに、障害者問題との関係で言うと、ADA(障害をもつアメリカ人法)は、飢える自由も含めて強烈な自由を保障するというアメリカ社会において、障害のある人の自由のために必然的に生まれたと同時に、その自由な社会基盤の故に、障害のある人の権利を保障する法的な枠組み・実効性を絶えず掘り崩されているといえるかもしれない。