竹中均『自閉症の時代』(講談社現代新書)。この新書は面白かった。イギリスのところ、スウィフトやニュートンなど、アメリのところなども。
とはいえ、学べたのは、第9章のPrimaryとPrimitiveのところ。フロイトの精神分析を論じて、PrimaryとPrimitiveを同一視すべきでないことを説く。Primaryは第一義は「最も重要な」といういいであり、一次的(一次過程)をいい、secondaryが二次的ということである。Primitiveは原始的・原初的なということであり意味は異なるという。その意味からすれば、初等教育はprimaryで最も重要な教育ということになる。これは、自然科学教育を説いた科学者ハックスレイの言にもある。初等教育を甘く見てはならないのだ。ちょっと、教育に脱線したが、このことだけは記しておきたい。
プロローグの「野生児」の「自閉症児」説はもともと「冷蔵庫マザー」の言説を強化した情緒説のブルーノ・ベッテルハイムがいっていたことだと記憶しているが・・・。いま、日本のアニメ界でも、「もののけ姫」から「おおかみこどもの雨と雪」、今年は「ポケットモンスターココ」もまた「ザルード」に育てられた「ココ」は狼に育てられた子どものアナロジーのようだ。いま「野生」が復活しているのも、このプライマリへの回帰ということかもしれない。
構成は次の通り。
プロローグ
第一章 自閉文化とは何か
伊藤若冲の反復/自閉文化という視点/空間と時間/反復/高精細/物との関係/ゲームとパラドクス
第二章 空間
ヘッドフォンと被影響性/キャロルとホームズ/ルドルフ二世の部屋/涼宮ハルヒの部屋/新海誠のセカイ/『コンビニ人間』の同居/時間の空間化
第三章 反復
常同行動/完璧な反復とデジタル/ウォーホルの缶詰/繰り返すサティの音楽/同じものを食べる/職人とリナックス
第四章 機械
機械と「弱い求心性統合」/機械とモノトラック/チューリングと機械/『コンビニ人間』と「世界の部品」 第五章 高精細・パラドクス・ゲーム 高精細/パラドクス/ゲームとパズル
第六章 奇人たちの英国
スウィフトの国々/キャベンディッシュの実験室/ニュートンの争い/W・B・イェイツと妖精/ラスヌジャンと証明/ウィトゲンシュタインの「奇抜な設定」/ヒュームの懐疑/大西洋を越えて
第七章 自閉症のアメリカ
ジェファーソンの二面性/メルビィルと表面/エジソンの失敗/ミニマルミュージックの静寂/ファンタジーとテクノロジーの出会い/村上春樹のゲームと「マシーン」/GAFAの実験
第八章 自閉症と近代
ルーティンと近代/言わんとバーとルビー/受動性と職人/物から人へ/建築と物語
第九章 PrimaryとPrimitive
PrimaryとPrimitiveのあいだ/「直接体験の原則」を生きる人々/一次性としての縄文/暴力性はどこで生じるか/二つの「モード」
エピローグ
「野生児」の野生/「おおかみこども」の二つの道
あとがき
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