●財務省が墓穴!為替介入による借金増加バレバレ~
zakzak 2011.11.07
週末の新聞には興味深い記事が出る。事件が少ない時の穴埋め記事だが、役所からの情報リークによる観測の場合が多い。
10月29日の読売新聞の「国の借金、3月末に過去最大の1024兆円に」はその可能性なきにしもあらずだ。そこでは、「財務省は28日、2011年度末の国債や借入金などを合計した「国の借金」が、前年同期に比べ1年間で99兆7451億円増え、過去最大の1024兆1047億円に達するとの見通しを明らかにした」と書かれている。
2011年度末とは来年3月末のことだ。一般論として今の時点でその実績見通しを予測するのは難しい。
ただし、債務残高については、実際にどうなるかということではなく、最大限度どうなるかはわかりやすい。というのは、国の借金は野放図にするとまずいので予算によって統制されており、今年度末の最大枠は、既に決まった今年度予算(と補正予算)に書かれているからだ。
ということから見ると、新聞報道の「財務省は28日…明らかにした」というのはおかしい。実績見込みなら、億円単位で今の時点で見通すのは難しいし、事実上の最大限度なら1カ月も前にわかっていることだ。
数字を見ると、どうも最大限度のようだ。記事中の「国の借金」とは、「国債及び借り入れ残高」の数字だ。
財務省が使う「借金」という用語は注意したほうがいい。「国の公債残高」「国と地方の長期債務残高」「国債及び借入金残高」の3つの違う概念があり、それぞれは2010年度末で600兆円台、800兆円台、900兆円台になっている。
「国と地方の長期債務残高」は、「国の国債残高」に地方債などを加えたものだし、「国債及び借入金残高」は地方分を入れないかわりに短期証券等を加えている。いずれも財務省はうまく使い分けるので、数字に弱いマスコミは簡単に騙されてしまう。
今回の新聞報道では、「国債及び借入金残高」について、昨年度末と今年度末を比較して100兆円増えているというが、比較する対象を間違っている。昨年度の数字は実績であるのに対して、今年度末は予算上の最大限度になっているからだ。
今回の報道の背後には、できるだけ「国の借金」を大きく見せ増税ムードを煽りたい財務省の意図がある。しかし、一時的な効果しかない為替介入のために借金が多くなっていることがばれてしまった。
しかも、金融緩和がなかったり米国が金融緩和すると円高に戻る。となると介入で取得した外貨債が目減りして国民負担が増える。今回の新聞報道で財務省は墓穴を掘った。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一) |