tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

ブログエアコン(19)

2011-08-16 22:40:09 | 日記

 

「マネキン人形の空しい不動の上を、
そのまなざしの偽りの明るさの上を、
ぼくはスリップした。
今ぼくは炎の上を滑っている。
火傷することなしにぼくは炎を横切る。」
・・・ベルナール・フォコンの文章だ。

何も語っていない表情のマネキンは、亡霊のような存在に見えて恐い。その大きめの眼は、何ものにも焦点の合っていない。金髪で身長170cmの立居の全裸マネキンが、至近距離でこちらを見続けている。・・・というのは、ただでさえ女に慣れていないぼくらを、一層、居心地悪くした。

友人はマネキンが全裸であることが、その居心地の悪さの原因と考えたようだ。そして、何とか若い女性の服を手に入れようと・・・。不幸は、服を譲ってくれそうな異性の友だちが周りにいなかったことだ。実家に妹や姉がいる友人たちに、頼みまくった。だが、「何を考えているんだ」と諭されて終わり。姉妹からその衣服を入手するというのは、彼女を作ってその彼女の着ていた服をもらうという以上に困難を伴う道のりらしい。彼は友人からの入手を諦めて、通販で”匂いつき”なる下着を購入した。ブルセラショップなどまだなかった時代の話だ。・・・芸術を志すと、なにぶん苦労が絶えない。

その後、彼の部屋に遊びに行って、「美子」の胸におさわりでもしたならひどく怒られた。そう、彼はマネキンに「美子」と名付けていた。あの宮崎美子のブルーのジーンズとグレーのサマーニットを着せて・・・。

が、彼と「美子」の蜜月にも終わりが訪れる。彼に本物の女友達ができた。
その女友だちと付き合いだして、マネキンの「美子」は、また全裸でゴミ捨て場に捨てられたのだった。

***そして、半年が経ったある夜のことだった。
やつれた表情で、友人がぼくの部屋を訪ねて来た。
部屋に上がるや、彼は
「彼女にフラれた」
そう言って、肩を落とした。
なんでも、彼が写す彼女をモデルとした写真には、ジーンズとサマーニット姿の女らしき人影がたびたび写ってたらしい。
そして決定的なのは、いろんな光の中で撮った”美子”のネガを、彼女に見られてしまったこと。
・・・芸術は、理解されないものなのだ。

ひと時の情愛をかけると、モノにも魂がこもるんだろうか・・・。
そして、縁をとりもどそうと、「美子」は健気にも思ったのだろうか。
2度もゴミ捨て場に捨てられた「美子」がかわいそうでならなかった。。


ご訪問&最後まで読んでくださりありがとうございます。
お帰りの際、ひとつクリックお願いします。
お手数かけてすいません。
↓↓↓↓↓↓
にほんブログ村 写真ブログ スナップ写真へ
にほんブログ村


ブログエアコン(18)

2011-08-15 22:33:41 | 日記

 

先日、新橋の駅前で古本市が開かれてた。古書のなかで見つけたベルナール・フォコンの写真集『飛ぶ紙』。
ベルナール・フォコンは1970年代中頃から80年頃の間、マネキン人形を使い独特の写真世界を構築した写真家だ。少年のマネキンたちが夢幻を誘う。そんな写真集。『飛ぶ紙』は、バブル経済の華やかなりし頃の1986年PARCO出版による出版だ。前から欲しいと思っていた写真集だが、今度も高価すぎて手がでなかった。

マネキンの写真と言えば、学生時代の頃を思い出す。
キヤノンが「AE-1」を発売。それまで非常に高価な代物であった一眼レフカメラが、学生にも手の届くものになった。それまで一部の学校にしかなかった写真部が、多くの学校で開設された時代。
ばくは、ニコンの「FM」を、そして、友人は宮崎美子がCMに出演していたミノルタ「X-7」を手に入れていた。

大学の写真同好会の友人が、閉店したブティックの前のゴミ捨て場に捨てられていたマネキンを拾ってきて、ポートレイト写真のライティングの練習を始めたのは宮崎美子の笑顔に憧れてだった。
ゴミ捨て場に捨てられていたマネキンの回収。人の目もあるし、当然のことながら、深夜に。街灯に浮かび上がるバラバラになったマネキンのパーツ。なんだか動き出しそうでめちゃくちゃ恐い。それでも勇気をだして、捨てられていた3体の内、選んだマネキンは、金髪の白人女性。身長は170cmあろうか。ツルツルの下半身と上半身を組立て、それぞれを乗ってきた原チャリで運ぶことに。

必然的に、HONDAモンキーの友人は上半身を。バイト先のお姉さんに真っ赤なパッソルを借りたぼくは下半身を。
下半身はあれだ。パッソルのステップに立たせ、膝で挟み込めばなんとか運べる。問題は、上半身。
あれやこれやの試行錯誤の末、結局、友人は紐で背中にくくりつけ、マネキンの上半身をおんぶしてた。

バイク2台で深夜の世田谷通りを、マネキンの上下それぞれを抱えて走ってたときだった。
パトカー「はーい、そこのバイク左によせてー」
・・・最悪だ。。
こんな時、警察に対して少しでもキョドったら追いかけられる。っつうか、もう捕まっている。
そもそも、こんな真夜中にマネキンのパーツを抱えて走るべきではない。
2つに切断された体を運んでいるということで職質。マネキンの上半身をおんぶしてモンキーにまたがっていた友人は、当然、2ケツ(にけつ)で罰金っつうことになるだろうと思った。マネキンはノーヘルだったし。
しかし、幽霊よりも怖いと思っていたポリ公だが、マネキンの顔をチラ見するなりギョッとした顔をして。その後、マネキンの胸を凝視。友人の顔(チラ)マネキンの胸(ガン見)とおまわりの視線は忙しく行ったり来たり。最後には明らかにおぞましいものに会ったと言わんばかりに、「早く帰れ」と追い払らわれた。
・・・あのおまわりは、いったい何を見てあんなにおびえたんだろう。続きはあした。


ご訪問&最後まで読んでくださりありがとうございます。
お帰りの際、ひとつクリックお願いします。
お手数かけてすいません。
↓↓↓↓↓↓
にほんブログ村 写真ブログ スナップ写真へ
にほんブログ村


ブログエアコン(17)

2011-08-14 22:47:45 | 日記

 

「なあ、俺もうレースから卒業しようかと思って」
「どうした?さすがに年齢を感じてきたか?」
「いや、そうじゃないけど・・・何だか急に自信が無くなってきたんだ」
「?」
「昨日の最後、チャンピオン・コースを滑っただろう?あのとき、俺の脇を追い越していったヤツがいたんだ」
「へーえ」
「んで、俺も熱くなってさ。コブに上をかっとんで追いかけたわけ。もうほとんどチョッカりでさ」
「で?」
「そいつ、メチャハヤなんだ。アイスバーンとかも、エッジを利かすことなくほとんどフラット。しかも、上体が全然揺れてないんだ」
「んで、追いつけたのか?」
「いや、追っかけている途中で奴さ・・・俺の方を、真後ろを見ながら滑ってんだ。しかも、メットの下でニヤニヤ笑いながら・・・。あんなすげえヤツ初めて見た。もう、自信失くした・・・」

「真後ろって・・・。。そいつ、スキーがうまいとか、そういう次元の問題じゃないんじゃね?」


ご訪問&最後まで読んでくださりありがとうございます。
お帰りの際、ひとつクリックお願いします。
お手数かけてすいません。
↓↓↓↓↓↓
にほんブログ村 写真ブログ スナップ写真へ
にほんブログ村


ブログエアコン(16)

2011-08-12 23:11:08 | 日記

 

正しい「百物語」の作法というのがある。
ウィキペディアによれば、伝統的な方法は以下のようである。
新月(月の暗い)の夜。無燈の部屋、そして、別室には、青い紙を貼った行燈。行燈には百本の灯心(灯油に浸して火を灯す糸状の用具)に火を灯しておく。また、その部屋の小机の上には、立てかけられた鏡。

参会者は青い衣をまとい円座に着席し、交替で怪談を一話語るごとに別室に行って、行燈の灯心を一本吹き消す。そして、鏡を覗き込み、戻ってくる。これを九十九回、もしくは百回、繰りかえすのだ。

百本目の灯心が消えて、会場が真の闇に覆われると、必ずや本物の怪異が起きると言い伝えられている。そのため、九十九話で打ち止めとする慣例があったようだ。
ちなみに、江戸時代の灯油はエゴマなどの植物精油。これを、現代のケロシン(灯油)でやると、非常に危険だ。

・・・おそらく、昭和の時代に学生生活を送った人ならば、だれでも、夏の暑い夜には、扇風機もない友達の部屋に集まって「百物語」をしたことがあるに違いない。
これは、ぼくが先輩の部屋で聞いた話だ。

ぼくが学生時代に住んでいた下宿は、小田急の駅からかなり離れたところにあって、しかも、駅の改札は、線路の反対側にあった。毎朝、大学へ通うには、駅のそばの開かずの踏切を渡るか、少し離れたガードをくぐるしかない。

急ぐときは、少し遠回りだがカードをくぐって線路渡った方が、開かずの踏切を待っているよりは時間的にはやかったりする。このガードをくぐった所に地蔵があって、当時、このガード下に霊が出るという噂があった。

さて、先輩から聞いた話。

「ガード下に幽霊が出るって知っているだろう?」

「・・・なんでも、昔、近所の大学の女子大生が、踏切で飛び込み自殺をしたらしい」

「電車に長く引きずられて衣服はちぎれ、遺体はバラバラ、原形を留めていなかったそうだ」

「その後、いつの頃からか、その女子大生らしい幽霊が下宿の前のガード下にひっそりと立つようになった。幽霊を目撃した人の話では、幽霊は全身黒い服装で、遠目に青白い顔が目立っているとのこと」

「近くによるとその幽霊は、なぜか服を脱ぎ出すらしいのだが、服を脱ぐ度に、その下に現れる肌は次第に崩れていくのだそうだ」

「すいません。その幽霊は、なんのために服を脱ぐんですかね?露出狂ってやつっすか?」

「いい、質問だ。・・・電車に長く引きずられて、バラバラになった遺体を集めても、胸の部分に相当するのがどうしても見つからなかったらしい。おそらく、彼女は、そのパーツを探してほしいとアッピールしてるんじゃまいか」
「欠損部分を見せられてもね・・・」

「いやあ、その幽霊の出方は、たくみな演出をしてると言えるんだ。まず、第一に、ターゲットの設定が”男子学生”であること。すけべな男どもの興味をどれだけ惹くかわかるだろう。
そして、ターゲットが明確なので、非常にシンプルで強い印象をあたえることができるんだ」

「・・・」
「ちょうど、『宣伝戦略』をテーマに修論をまとめようとしてるんだが・・・。このように、オトコのスケベ心を突いた戦略があるけれども、それを求める潜在的なニーズがあってこそ・・・・・・・(以下略)」

「先輩、眠いっす。おさき失礼しま~す」

こうして、「百物語」をしていた先輩の部屋からはだれもいなくなり、その夜も1話でおしまいになりますた。


ご訪問&最後まで読んでくださりありがとうございます。
お帰りの際、ひとつクリックお願いします。
お手数かけてすいません。
↓↓↓↓↓↓
にほんブログ村 写真ブログ スナップ写真へ
にほんブログ村
 


ブログエアコン(15)

2011-08-11 23:08:42 | 日記

 

ここ数日、大気の状態が不安定だ。日本全体を覆っている夏の太平洋高気圧の勢力が弱くて、上空に寒気が入り込むせいで、積乱雲が発達しやすくなっている。このため、各地では、ゲリラ雨にも似た集中豪雨に見舞われている。

・・・あの年の夏もゲリラ雨が多発していた。

伊豆で潜った帰り、高速料金が1000円ぽっきりということもあって、厚木から乗った東名は車の量がかなり多かった。
そのうえ、日本の南側に居座った太平洋高気圧の影響で、関東はヒートアイランド現象に伴う猛暑。南からの暖かく湿った空気は未曽有の巨大な積乱雲に発達し、1時間に100ミリを超すの猛烈な雨が降り始めていた。

・・・ゲリラ雨。渋滞した高速では先行する車のテールランプあてにして運転するから、雨なのに車間が迫ってしまう。その玉突き事故は起こるべくして起きたのだろう。

豪雨の中、厚木で東名に乗ってすぐに道路わきの電光掲示板に、「この先事故 走行注意」の情報が出た。

「やれやれ」ぼくらは頭を振って、電光掲示板に目をやった。この先、長い渋滞に巻き込まれるに違いない。・・・いつものように海老名サービスエリアによる。ここの駐車場は、週末はいつも満車だ。

ぼくらはトイレ休憩を済まして建物を出ようとすると、自動ドアの前に途方に暮れて立ち尽くしている9歳ぐらいの少女が目に留まった。少女は、開かないドアを恨めしそうに見上げていた。
自動ドアは、いくら少女がガラスに向かって足を踏み入れても、一向に反応する気配を見せない。
故障しているのかな?ぼくらがドアに近づいたとき、少女は遠く離れた場所から名前を呼ばれて、その声の方へすっ飛んで行った。恐らく彼女の母親にでも呼ばれたのだろう。

ぼくらが自動ドアの前に立つと、ドアはすんなり開いた。こうしたドアの赤外線センサーは、セラミックの焦電効果(誘電体セラミック表面に赤外線が当たると表面電荷が変化する)を利用したものだ。床面と人の温度差を検知して作動する。また、マイクロウェーブを使って、人の動きによって生ずる周波数変化を検知するものもある。

その時は、その自動ドアの動作不良について深く考えもしなかった。「しなかった」と過去形で書いたのは、少女が自動ドアから出ようとしていたことを後になって思い出したからだ。
翌日のyahooニュースで、「渋滞で停車中の軽乗用車にも追突するなど計9台が絡む事故」の記事があった。この事故で軽乗用車を運転していた無職の女性が出血性ショックで死亡。助手席に乗っていた小学4年の少女(9)も頭を打って死亡。別の車の計6人が軽傷。

事故で命を失った少女の名前が、あの自動ドアのところにいた少女を呼ぶ名前と一致していたかどうか・・・思い出せない。


ご訪問&最後まで読んでくださりありがとうございます。
お帰りの際、ひとつクリックお願いします。
お手数かけてすいません。
↓↓↓↓↓↓
にほんブログ村 写真ブログ スナップ写真へ
にほんブログ村