4大新聞の地方版をネットで読むことが多い。ただ、むやみやたらではなく、全英連大会や仕事で出かけた場所の地方版だけだけど。
22日読売新聞の福井県版を見たら、経営が危なくなっている福武線経営再建問題を取り上げていた。この鉄道会社のことを以前(2006.02.06、「福井新」)ブログでも書いたことがあった。記事によれば、福武線を存続するために、施設設備を地元自治体が購入し、運営を福井鉄道が行う形になったようだ。記事ではこれを「上下分離」と書いていた。
福井県・福井市・鯖江市・越前市で作っている、福井鉄道福武線協議会が鉄道用地を買い上げ、福井鉄道が鉄道事業を継続する。地元負担額は10年間で45億円だ。
用地購入(鉄道だから、線路の敷設してある土地だ)、施設設備への投資、維持営繕費用は全額地元負担。このうち、福武線の役21.4kmが走る用地おおよそ20万㎡を福井県が8億円、3市で4億円支出し福井鉄道から買い上げる。所有は3市になる。
…8億円支出して、県は所有しないのか。
ずいぶん前になるが全英連参加者は福井県に行ったことがある。その時、宿泊したホテルから、2駅だけだけどこの鉄道に乗った。確か福井市内(市街地)はちょうど江ノ電のように、一般道路に鉄道の線路が敷設され、そこを走る形だった。あの線路が敷設された土地は、市有地・県有地(公道だから、公有地?)じゃなくて、私有地(鉄道会社の社有地)だったことになるのかな。
…高いのか安いのかわからない。
ちょっと計算をしてみた。
全部ではないが、鉄道用地は地図上で細長いものである。福井電鉄は複線なので、大体幅10mの帯状の土地と考えてみる。21.4km×10mで20万㎡に近くなる。公有地(公道)の上を走っている部分もあるから、こんな感じではないだろうか。21.4kmの路線を12億円で買い取る。1kmで5600万円。絶対こんな金額では新規にレールは敷設できない。新規だと、LRTでも1Kmで20億円から30億円だろう。僕は出せないけど、安いと思う。メンテナンスは大変だけど。
レールの交換や車両更新などの設備投資、線路や電気関係施設の維持修繕にかかる費用のことも書いてあった。
従来は、国の補助金を得ながら福鉄と自治体で分担。新体制移行後は県、3市で負担する。県側の試算では、10年間で県が負担する設備投資費は21億円、3市が負担する維持修繕費は12億円になる。
…ランニングコストは10年で33億円。1年で3億円ちょっと。
「上下分離方式」だと、平成20年度から導入される、地方鉄道の活性化支援補助金制度が適用され、設備投資費の3分の1を国に負担してもらえる。
…ということは、施設投資費は21億円の3分の2になるのかな。
この会社は名古屋鉄道(名古屋市)が最大株主。同社は福井鉄道から経営の手を引くために、10億円の増資を申し出ていた。このお金で最後で。。。という感じである。このお金と、県と3市から得る用地売却益12億円を、28億円に上る借入金の返済にあてる。
…まだ6億円借入金が残る。
地元新聞である福井新聞も読んでみた。
ランニングコストのことがもう少し詳細に書かれていた。それによれば、10年間のランニングコスト以下のようなものだった。
橋りょう補修
新駅設置(4駅)
車両更新等
設備投資を約31億円と想定。このうち約10億円は国庫補助が見込める。
21億円は補助金をもらったのが前提だった。でも、新駅を造ることや、橋りょう補修、車両更新には大きなお金がかかるものの、それが毎年続くわけではない。実際のランニングコストはもっと安いことになる。高齢化する日本。徐々に中心地に人口が集まっていく。そんなときに交通弱者である高齢者が定時性の高い交通機関である鉄道が利用できるのは重要なことだ。残すべき鉄道なのだろう。
そんなことを考えた。
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以前出かけた岐阜駅前もそうだったけど、レールは一度はがしてしまうと、再度敷設し直すことが非常に難しくなる。埼玉県には今から70年ほど前まで、武州鉄道という鉄道があった。もちろん僕は乗ったこともみたこともない。様々な資料でその存在を知っているだけだ。それらによれば、同鉄道の路線は、現在のJR宇都宮線蓮田駅から、さいたま市の美園(ワールドカップのスタジアム、埼玉スタジアム2002の近所、当時は武州大門)~川口市神根までを結ぶものだった。昭和10年代に廃線になっている。70年後の現在、この路線をなぞるように、現在埼玉高速鉄道という3セク鉄道が存在する。
武州鉄道は蓮田から川口まで、埼玉高速鉄道は都営地下鉄南北線に北区で接続し、浦和の大門まで伸びている。起点と終点が双方で異なるのだが、重なる部分も多い。もしもこの鉄道が廃線にならず、せめて荒川を超えたところまで延伸していたら、現在のよう地下鉄は無理としても、ちょうど広島市内と郊外を結んでいるような路面電車+高速LRTのような形で残っていたかもしれない。沿線の様子も違っただろうし、おそらく後の岩槻市(さいたま市岩槻区)の様子も全く違っていただろう。
鉄道ファンとしてではなく、歴史のもしもを考えるのが好きな僕としては、福井鉄道になんとかがんばってほしいものだ。