司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

上場企業における売買単位の集約

2011-04-19 00:40:07 | 会社法(改正商法等)
売買単位の集約 by 東証
http://www.tse.or.jp/rules/seibi/unit.html

 全国の証券取引所では,上場する内国会社の普通株式の売買単位を100株へ統一することを最終的な目標としており,その移行期間として,2012年3月末までに,100株と1000株の2種類に集約することを当面の目標としている。

 そこで,例えば,現在売買単位が1株で,単元株制度の適用がない上場企業においては,
①株式の分割を行い,かつ,②単元株式数の設定を行う必要がある。

 ②については,定款の変更が必要であるが,①②を同時に行うときは,取締役会の決議で行うことができる(会社法第183条第2項,第191条)。

 その後,株主総会の決議によって,③単元未満株式についての権利の制限等(会社法第189条第2項),及び④単元未満株主の売渡請求(会社法第194条),について定款で定めることになる。

 したがって,売買単位の集約に伴うコーポレートアクションを実施しなければならない上場企業にあっては,今年の定時株主総会において③④の定款変更を行うか否かを検討することになろう。

 なお,東日本大震災の影響で,上記期限(2012年3月末)は,「当面延期」された模様である。

cf. 東日本大震災による被災企業及び被災地域の復興支援に向けた東証の対応方針
http://www.tse.or.jp/news/09/110415_a.html
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株式の死因贈与

2011-04-18 23:34:30 | 会社法(改正商法等)
 株式の死因贈与契約を締結する場合において,当該株式が譲渡制限株式(会社法第2条第17号)であり,かつ,当該株式の発行会社が「株券発行会社」(会社法第117条第6項)であるときは,若干注意が必要である。すなわち,贈与者が死亡したとしても,一筋縄では行かないからである。

① 「株券発行会社」の株式の「譲渡」は,当該株式に係る株券を交付しなければ,その効力を生じない(会社法第128条第1項本文)。死因贈与は,「相続その他の一般承継」ではなく,意思表示に基づく「譲渡」(会社法第127条)であるので,株券の交付がない限り,その効力は,生じないのである。よって,贈与者の相続人の協力が得られなければ,当該相続人に対して,株券引渡請求訴訟を提起せざるを得ないことになる。このような事態を回避するためには,予め執行者を指定し,当該執行者に株券の保管を委ねておくか,あるいは株券を発行する旨の定款の定めを廃止しておくことになろうか。
 株券の不所持の申出がされていた場合も,株式会社から株券の発行を受けて,交付の作業をすることが必要となるが,執行者の指定をしていたとしても,当該執行者が株式会社に対して株券の発行を請求することができるのか(常識的には可能であると思うが,株式会社が対応しない場合に,法的な請求が可能であるかは疑問の余地がある。)という問題もある。

② 死因贈与は,「相続その他の一般承継」ではなく,意思表示に基づく「譲渡」(会社法第127条)であるので,株式譲渡制限規定に基づく譲渡承認の対象となる。受贈者は,贈与者の死亡により死因贈与の効力が生じた場合であっても,株式会社に対し,当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求しなければならず(会社法第137条第1項),当該株式会社の承認が得られなければ,当該株式会社又は指定買取人によって買取りをされることになる(会社法第140条第1項,同条第4項)。


 「公開会社でない株式会社」にあっては,②はやむを得ないとしても,①の事態は,事前の準備(執行者の指定又は「株券廃止会社」への移行)によって容易に回避することができると思われる。怠りなくである。
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「東日本大震災に伴う不動産登記及び商業・法人登記における不正登記防止申出の取扱いについて(通達)」

2011-04-18 18:46:56 | 東日本大震災関係
 「東日本大震災に伴う不動産登記及び商業・法人登記における不正登記防止申出の取扱いについて(通達)」〔平成23年4月14日付法務省民二・民商第962号〕が発出されている。

 不正登記防止申出制度(不動産登記事務取扱手続準則第35条,商業登記等事務取扱手続準則第49条)の取扱いについて,東日本大震災の被災の状況を考慮し,次のとおりとされた。

【骨子】
・ 避難した場所の最寄りの登記所に登記名義人等及び会社の代表者等が出頭してすることができる。
・ 「3月以内」とあるのは,「6月以内」と読み替えるものとする。
・ 申出書の押印(実印)又は印鑑証明書の添付を省略することができる措置を講ずる。
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ライツ・イシューに関する規制緩和

2011-04-18 11:06:13 | 会社法(改正商法等)
 新株予約権の無償割当ての方法による増資をやりやすくするために,金融商品取引法等の一部改正が行われる。

資本市場及び金融業の基盤強化のための金融商品取引法等の一部を改正する法律案
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g17705044.htm

cf. ライツ・イシューに関する規制緩和 by 法と経済のジャーナル
http://astand.asahi.com/magazine/judiciary/outlook/2011013000002.html

平成21年12月28日付「株主割当増資(新株予約権の無償割当ての方法による増資)」
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「企業財務会計士」制度は創設されない方向

2011-04-17 09:15:29 | 会社法(改正商法等)
讀賣新聞記事
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110416-OYT1T00231.htm

 公認会計士試験に合格しながら,監査法人に就職できずに,「公認会計士」となれないケースを救済しようとして,創設が検討されていた「企業財務会計士」制度について,自民党等の反対により,どうやら創設されないことになりそうである。
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労組法上の労働者性判断に関する最高裁判決についての談話

2011-04-15 17:57:21 | 会社法(改正商法等)
労組法上の労働者性判断に関する最高裁判決についての談話
http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/danwa/2011/20110412_1302608852.html

 日本労働組合総連合会が最高裁判決についての談話を公表している。

cf. 平成23年4月13日付「業務委託契約を結ぶ個人事業主も「労働組合法上の労働者」に該当(最高裁判決)」

平成23年4月12日付『合唱団員も「労働組合法上の労働者」』
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全株懇株式実務総覧の整備に伴う定款モデル等の改正

2011-04-15 17:44:37 | 会社法(改正商法等)
全株懇株式実務総覧の整備に伴う定款モデル等の改正について
http://www.kabukon.net/pic/30_1.pdf

 「平成23年4月8日開催の全株懇理事会において全株懇株式実務総覧の整備に伴う定款モデル等の改正についてが添付ファイルのとおり決定されました」

 定款モデルの改正は,不要となった附則の定めを削除するものである。単元株式に関する「200分の1」の点は,新訂3版では,解説が遺漏しているようだ。
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社会福祉法人の再編

2011-04-15 17:21:48 | 法人制度
日経記事
http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819490E3E6E2E6828DE3E7E2E6E0E2E3E39C9CE2E2E2E2

 東京都は,経営基盤の弱い社会福祉法人について,合併や事業譲渡により再編を進める方針であるそうだ。

cf. 東京都社会福祉法人経営適正化検討会報告書
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2011/04/40l4f200.htm

 ちょうど3年前に,厚生労働省がそのような方針を表明していたが,東京都の動きが全国初であるようだ。

cf. 平成20年5月27日付「社会福祉法人の集約化」
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簡易合併の可否

2011-04-15 16:13:53 | 会社法(改正商法等)
 完全親会社が吸収合併存続会社であり,完全子会社が吸収合併消滅会社となる吸収合併において,単純に簡易合併の要件を満たすものではないことは,再々取り上げたとおりであるが,上場企業のプレスリリースをみると,「特別損失(抱合せ株式消滅差損)の計上のお知らせ」が散見され,誤解があるように思われるので,再度取り上げる。

cf. 平成20年1月3日付「簡易組織再編」

 完全子会社がいかに簿価資産超過であったとしても,抱合せ株式の帳簿価額がこれを上回る場合には,常に「差損が生ずる場合」に該当し,簡易合併によることはできない。

 すなわち,簡易合併によることができるのは,

「完全親会社における完全子会社株式の帳簿価額 ≦ 完全子会社の純資産額」

である場合であって,

「完全親会社における完全子会社株式の帳簿価額 > 完全子会社の純資産額」

には,不可なのである。

 前者の場合は,吸収合併によって,抱合せ株式消滅差益が生じ,後者の場合は,逆に,抱合せ株式消滅差損が生ずるのであるから,後者は,簡易合併によることができない「差損が生ずる場合」に該当するのである。

 それでは,後者に該当しそうな場合に,これをクリアする策は,ないのか。

 この点について,回避策としては,「決算期末に完全親会社が有する完全子会社株式について,会計上,減損処理が行われ,完全子会社株式の帳簿価額が切り下げられた後に合併が行われた場合」であると解されており(後掲・小松ほか251頁),そのような対応をとるべきである。

 ただし,「子会社株式の評価損を計上するのは決算時なので,原則として合併直前に評価損を計上する機会はない・・・(また)吸収合併を予定していなくても子会社株式の評価損を計上することが合理的といえるか等を慎重に検討しなければならない」(後掲・中村47頁)という点は,留意する必要がある。

 上場企業のプレスリリースでは,四半期会計期間の初日を吸収合併の効力発生日として,当該効力発生日を含む四半期会計期間に特別損失(抱合せ株式消滅差損)を計上している例が比較的多く見受けられるが,これが真は合併前の減損処理であると善解するとしても,期中の処理である点は,やはり問題があると思われる。

 簡易合併の要件は,吸収合併の効力発生日の直前の時点において満たしている必要があり,かつ,それで足りる(吸収合併契約の締結時点では満たしていなくてもよい。)が,結局のところ,差損が生じるか否かが確定するのは,吸収合併の効力発生日時点であるから,判断が微妙なケースでは,簡易合併によるのではなく,通常の合併手続を選択しておくのが無難である。


cf. 小松岳志=和久友子著「ガイドブック 会社の計算【M&A編】」(商事法務)2011年2月刊
http://www.shojihomu.co.jp/newbooks/1844.html

森・濱田松本法律事務所編「新・会社法実務問題シリーズ/9 組織再編」(中央経済社)2010年5月刊 ※247頁以下
http://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-99370-1

中村慎二「簡易組織再編における『差損』の判定」旬刊商事法務2010年3月25日号

相澤哲編著「Q&A会社法の実務論点20講」(金融財政事情研究会)2009年12月刊 ※170頁以下
http://store.kinzai.jp/book/11545.html
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定時株主総会の開催遅延に関する経済産業省の提言

2011-04-15 14:16:20 | 会社法(改正商法等)
日経記事

 奈須野太経済産業省産業組織課長の談。

「法務省は先日、今回の震災によって定款で定めた開催日より後に株主総会を開催することになっても、定款違反とはならない見解を示した。ただ、実際に株主が総会決議の取り消し訴訟を提起した場合、法務省の見解が通用するとは断言できない・・・訴訟リスクを恐れて、当初予定通りの時期に総会を開催するために無理して決算をまとめ、瑕疵(かし)が生じる危険も排除するようにしたい」

 常日頃,柔軟(ユーザー・フレンドリー)路線にある経済産業省が堅実な見解。

cf. 平成23年4月5日付「東日本大震災復旧・復興対策基本法など特別法16法案」
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「中小企業向け支援策ガイドブック」

2011-04-14 17:47:34 | 東日本大震災関係
「中小企業向け支援策ガイドブック」by 中小企業庁
http://www.chusho.meti.go.jp/earthquake2011/download/Financing-v02.pdf

 中小企業庁が,被災した中小企業者向けの「中小企業向け支援策ガイドブック ver.02」をとりまとめている。
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被災墓地からの遺骨の持ち去り

2011-04-14 15:08:41 | 東日本大震災関係
朝日新聞記事
http://www.asahi.com/national/update/0413/TKY201104130198.html

 被災した墓地から,遺族が遺骨を持ち去るケースが増えているという。「改葬」に該当するので,市区町村長の許可が必要だが,緊急非難として,やむを得ない(?)。


墓地埋葬法
第5条 埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。
2 【略】

第21条 左の各号の一に該当する者は、これを千円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
 一 第三条、第四条、第五条第一項又は第十二条から第十七条までの規定に違反した者
 二 【略】
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賃貸借契約の中途解約,礼金の一部返還(大阪簡裁)

2011-04-14 07:52:07 | 消費者問題
産経新聞記事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110414-00000511-san-soci

 大阪簡裁が,賃貸借契約の中途解約時の礼金の一部返還を認める判決をしている。画期的。

 賃貸人側も,旧態依然とした契約内容を改め,賃貸借契約の在り方を再考すべきであろう。
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ゼロハリに「登記簿を入れておきたい」

2011-04-13 23:36:00 | 不動産登記法その他
日経記事

 ゼロハリに「登記簿を入れておきたい」。おしゃれですね~,否々,犯罪です。
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会社法の改正

2011-04-13 20:05:56 | 会社法(改正商法等)
非訟事件手続法及び家事事件手続法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00085.html

 上記整備法(※121)により,会社法も,「第7編雑則 第3章非訟」が大幅に改正される他,第233条及び第291条が改正される。

 通常の会社法実務には,影響なしである。
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