司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

親子関係不存在確認の利益の有無

2022-06-17 12:47:32 | 民法改正
 令和4年6月24日,最高裁第2小法廷において,親子関係不存在確認請求事件について判決言渡しがされるようである。

 令和4年5月30日に弁論が開かれているが,さて。

【事案の概要】
 本件は、上告人(第1審原告)が、検察官(第1審被告)に対し、亡A及び亡Bと亡Cとの間の各親子関係(本件各親子関係)の不存在の確認を求める事案である。
 亡D(被相続人)の相続において、その戸籍上の法定相続人は、亡Eの子である上告人外1名及び亡Cの子ら3名であるところ、上告人は、本件各親子関係が不存在であるとすれば、亡Cの子らは法定相続人とならず、上告人の法定相続分が増加することになるので、上告人は本件各親子関係の不存在の確認を求めるにつき法律上の利益を有すると主張している。

cf. 最高裁判所開廷期日情報
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2022/jiangaiyou_03_1463.pdf
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払込みが設立に際して出資されたものと認められるか否か

2022-06-17 11:51:34 | 会社法(改正商法等)
 今般の規制緩和によれば,定款で会社法第32条第1項各号の定めがされている場合に,

(1)払込みがされた日・・・令和4年5月31日
(2)定款の作成日・・・令和4年6月17日

というケースの払込みが概ね有効なものとして取り扱われることになる。

cf. 令和4年6月14日付け「株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の払込みの時期について(通知)」

 しかし,定款の作成が払込みより遅れた場合であっても,払込みの時点(5月31日)で,会社法第32条第1項各号に関する発起人全員の同意が成立していたはずである(単に書面が作成されていなかっただけである。)。

 したがって,当該同意を証する書面(例えば,5月31日付け)を作成して,設立登記の申請書の添付書面に加えるのが理に適っている。

 仮に,払込みの時点(5月31日)で,会社法第32条第1項各号に関する発起人全員の同意が成立しておらず,誰が何株を引き受けるのかが未確定の状態で,定款の作成日において初めて全員の同意が成立したものであったとすれば,当該払込みをもって,設立に際して出資されたものと認めることは困難である。

 このような場合には,払込みのやり直しをするのが理に適っている。

 今般の規制緩和は,本人申請の場合のあくまで救済措置として考えるべきである。司法書士としては,会社法の規律に沿って,設立の手続が履行されるように,留意すべきである。


会社法
 (設立時発行株式に関する事項の決定)
第三十二条 発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除く。)を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。
 一 発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数
 二 前号の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額
 三 成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項
2 【略】

 (出資の履行)
第三十四条 発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることを妨げない。
2 前項の規定による払込みは、発起人が定めた銀行等(銀行(銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行をいう。第七百三条第一号において同じ。)、信託会社(信託業法(平成十六年法律第百五十四号)第二条第二項に規定する信託会社をいう。以下同じ。)その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の払込みの取扱いの場所においてしなければならない。
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年金担保貸付制度の終了

2022-06-17 09:07:44 | いろいろ
年金担保貸付制度終了のご案内
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08142.html

「年金担保貸付制度は、年金受給者の一時的な資金需要に対して、年金受給権を担保として小口の資金の貸付を行う制度として利用されてきましたが、生活費に充てられるべき年金が返済に充てられ利用者の困窮化を招くこと等の指摘を踏まえ、平成22年12月の閣議決定により廃止することとされました。
 閣議決定後は、2度の貸付条件の変更を行うなど段階的に事業規模の縮減を図ってきましたが、令和2年の年金制度改正において、新規の申込受付を終了することが決定し、令和4年3月末をもって、申込受付を終了しました。」

 恩給担保貸付制度も原則廃止に。

cf. 「ファイナンス」2022年5月号
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202205/index.html
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選択的夫婦別姓の扉,開けるか

2022-06-16 15:22:50 | 民法改正
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD01CGV0R00C22A6000000/

「東京地裁は2021年4月の判決で、国際間の法的紛争の準拠法を定めた「法の適用に関する通則法」に照らし、海外で現地法に基づいて結婚した場合は国内でも婚姻関係が認められると指摘」(上掲記事)

 しかし,戸籍の現場では受理されないことから,東京家裁に不服申立てをするそうである。
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阪急阪神ホールディングスの株主総会における株主からの質問

2022-06-15 17:41:25 | 会社法(改正商法等)
日刊スポーツ
https://www.nikkansports.com/baseball/news/202206150000417.html

「甲子園球場でたこ焼き、焼きそばは販売されていますがイカ焼きは販売されていません。なぜか?」(上掲記事)

 ん~。

 珍質問とはいえ,これに対する答弁も切れがないですね。生協の〇〇さんのような,名回答を期待したいものです。
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国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の概要について

2022-06-15 15:34:58 | 家事事件(成年後見等)
国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の概要について by 法務省
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00148.html

 更新されている(どこが変わった?)。
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「株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の払込みの時期について(通知)」

2022-06-14 21:06:12 | 会社法(改正商法等)
「株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の払込みの時期について(通知)」(令和4年6月13日付け法務省民商第286号法務省民事局商事課長通知)が発出されている。

「預金通帳の写し又は取引明細表その他払込取扱機関が作成した書面に記載された払込みの時期については、設立時発行株式に関する事項が定められている定款(商業登記法第47条第2項第1号)の作成日又は発起人全員の同意があったことを証する書面(同条第3項)に記載されているその同意があった日後に払込みがあった場合はもとより、その前に払込みがあった場合であっても、 発起人又は設立時取締役(発起人からの受領権限の委任がある場合に限る(平成29年3月17日付け法務省民商第41号民事局長通達参照)。)の 口座に払い込まれているなど当該設立に際して出資されたものと認められるものであれば、差し支えない。」


 ん~。早速柔軟化がされてしまった。

「株式会社発起設立時の出資に係る払込みの時期について、設立時発行株式に関する事項が定められている定款の作成日又は発起人全員の同意があったことを証する書面の同意があった日前に払込みがあったものであっても、発起人又は設立時取締役(発起人からの受領権限の委任がある場合に限る。)の口座に払い込まれているなど当該設立に際して出資されたものと認められるものについては、設立登記申請の4週間前など近接した時期のものであれば、出資に係る払込みがあったものと認めることとする。」(後掲記事)

cf. 令和4年5月27日付け「スタートアップに関する規制・制度見直し(法人設立手続の迅速化・負担軽減)」

 基本的な考え方として,発起人が引き受けるべき株式数について合意がされた後,払込みがされることによって,その議決権の数が確定し,設立時取締役等の選任が可能となる(会社法第40条第2項本文)。口座への入金によって出資の払込みがされたというためには,その時点において,発起人間で各々が引き受ける株式数に関する合意が成立していることが不可欠であり,また合意が成立していたはずである。

 したがって,上記商事課長通知のような規制緩和(?)をしなくても,発起人全員の同意があったことを証する書面を追完させるか,当該同意があった日について補正させれば足りるのである。司法書士としては,申請前に,事情の聴取りをして,そのような補充書面の準備をすべきである。

 このような過度な規制緩和が進めば,商業登記制度は,単なる「登録」制度(添付書面は不要)に堕することになりそうで,危機感を覚えざるを得ない。
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会計監査限定の登記の抹消失念に関する異聞

2022-06-14 19:42:30 | 会社法(改正商法等)
 監査役設置会社の定めを廃止する登記を申請するときは,会計監査限定の登記についても,同時に廃止の登記の申請をする必要がある。

 これをうっかりした場合に,補正になるのではなく,登記官がこれをスルーして,「監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めがある旨の登記」だけが残ってしまう事件が少なくないらしい。

 びっくり仰天話としては,他管轄への本店移転の登記の際に,旧本店所在地において監査役設置会社の定めを廃止する登記を申請し,会計監査限定の登記について同時に廃止の登記の申請をすべきをうっかりしたところ,新本店所在地の登記に,「監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めがある旨の登記」が燦然と輝いてしまった事件もあったらしい。

 あきさみよ~。

 例えば,設立の登記を申請する際に,「監査役設置会社の定めの登記」をうっかりし,「監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めがある旨の登記」のみを申請すれば,間違いなく補正になるであろう。

 もとより,責められるべきは,うっかりした申請人サイドであるが,登記所においても,きちんと補正にかけて,然るべき登記が適時にされるようにお願いしたいものである。

cf. 平成29年4月14日付け「会計監査限定の登記の抹消」

(再掲はじめ)
 監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めがある旨の登記がされている場合に,監査役設置会社の定めを廃止する登記を申請するときは,会計監査限定の登記についても,同時に抹消の登記の申請をする必要がある。

 あくまで申請する必要があるのであって,職権抹消にはならない。

 うっかり忘れて,あるいは不要だと思って,申請しなかったら,どうなるのか?

 通常は,補正でしょうね。

 ところが,会計監査限定の登記はそのままに,監査役設置会社の定めを廃止する登記が完了してしまった事例があるらしい。

 ん~(^^)。

 会社法施行時には,機関設計に関する登記で,相互に関連するものは,同時に抹消又は変更の登記を申請するのでなければ却下,という議論があった。例えば,解散の登記を申請する際に,株式譲渡制限に関する規定の「取締役会」を変更する必要がある等である(松井信憲「商業登記ハンドブック(第3版)」(商事法務)374頁以下)。

 今回の事件は,正にそのレベルのものであるが。

 登記官にもうっかりがあるということであろうが,とまれ,申請する必要があるので,気を付けましょうね,というお話。
(再掲おわり)
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10社超の株主総会が「継続会」を予定

2022-06-12 18:05:28 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC07CEY0X00C22A6000000/

「不適切会計の発覚や中国のロックダウン(都市封鎖)の影響で決算の監査が間に合わないため」(上掲記事)

 本来,当初から「予定」して開くものであろうか。

cf. 「継続会」に関する関連記事
https://blog.goo.ne.jp/tks-naito/s/%E7%B6%99%E7%B6%9A%E4%BC%9A
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株主総会の議案の名称が210文字超

2022-06-10 15:20:31 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61595850Z00C22A6DTA000/

 東洋建設株式会社の定時株主総会における第5号議案の名称は,

「Vpgらによる当社株式についての大規模買付行為等が行われる具体的かつ切迫した懸念があることに基づく当社株式の大規模買付行為等への対応方針(Vpgらによる当社株式の公開買付け申込みに関する協議を強圧性のない状況下で真摯に行うための環境確保のための方策)の承認、及び、当該対応方針の有効期間中に大規模買付者を含む特定株主グループが大規模買付ルールに重大な違反をして大規模買付行為等を行った場合に当該対応方針に基づき対抗措置を講じることの承認の件」

 長過ぎて,誰も覚えることはできなさそうである。

 買収提案を巡るバトル。会社もHPに特設サイトを設けている。

cf. 東洋建設株式会社HP
https://www.toyo-const.co.jp/topics/shareholdersnews
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AIで契約書チェックに「違法の可能性」

2022-06-10 15:05:53 | いろいろ
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH083S80Y2A600C2000000/

「同サービスについては以前から弁護士法への抵触を指摘する声があった。今回の照会・回答で既存サービスの提供が止まる可能性は低いとみられる」(上掲記事)

 下部の投稿欄の「AIによる評価のバイアス問題」の指摘は,なるほどである。

 投稿者の河合氏は,大学時代の同級生・・・華麗な経歴である。
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「債権管理に必要な取引先登記の読み方のコツと最新トレンド」

2022-06-09 23:33:12 | 会社法(改正商法等)
【有料WEBセミナー】債権管理に必要な取引先登記の読み方のコツと最新トレンド ~会社登記、不動産登記、動産・債権譲渡登記の最新動向を踏まえて~
https://www.shojihomu.co.jp/seminar?seminarId=18311322&s=09

 2年ぶりに,公益社団法人商事法務研究会主催のビジネス・ロー・スクールでお話することになりました(今回は,「債権管理実務研究会」の月例会を兼ねています。)。有料のセミナーですが,御関心のおありの向きは,是非御視聴ください。
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キラキラネームの発想の源流は万葉仮名?

2022-06-09 16:49:59 | いろいろ
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD025C60S2A600C2000000/

「最近のキラキラネームをめぐっては、「親の身勝手」「言葉の乱れ」という批判も根強い。でも、その発想の源流は漢字の音・訓読みを自在に駆使した万葉仮名にあるのかもしれない。」(上掲記事)

 ん~,そうでしょうか。

「1993年、東京都昭島市役所に子の名を「悪魔」とした出生届が提出された。役所はいったん受理した後、父親に再考を促した。父親はこれを不服として家庭裁判所に審判を申し立てた。家裁は「悪魔」の名は「命名権の乱用に当たる」と判示した。」(上掲記事)

 こんな事件もありましたね。

 「戸籍法等の改正に関する中間試案」に関する意見募集は,令和4年6月27日(月)まで。

cf. 「戸籍法等の改正に関する中間試案」(令和4年5月17日)の取りまとめ
https://www.moj.go.jp/shingi1/koseki20220517_00002.html
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法務省,「共有私道ガイドライン(改訂版)」を公表

2022-06-08 23:46:38 | 空き家問題&所有者不明土地問題
法務大臣閣議後記者会見の概要(令和4年6月7日(火))
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00311.html

「2件目は、「共有私道ガイドライン」の改訂についてです。
 本日、所有者不明土地対策の一環として、「共有私道ガイドライン」改訂版を法務省ホームページで公表します。
 この改訂版は、昨年、所有者不明土地対策等のための民法改正法が成立し、共有制度等に関する改正部分が来年(令和5年)4月に施行されることを受け、平成30年に策定したガイドラインを改訂するものです。
 改訂ガイドラインでは、ケーススタディを通じて改正民法の内容をわかりやすく示すとともに、関連する政府の取組等についても幅広く紹介しており、共有私道の利用・管理の円滑化のために非常に有用なツールとなっていると考えています。
 法務省としては、来年4月の改正民法の施行に向けて、関係省庁・関係団体とも連携して、幅広く周知・広報に努めてまいります。」

cf. 共有私道の保存・管理等に関する事例研究会(第2期)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00280.html
※ 「ガイドライン(第2版)」が掲載されている。

NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220607/k10013661161000.html
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農協職員が顧客の住宅ローンに関する抵当権を勝手に解除

2022-06-08 12:54:22 | 不動産登記法その他
河北新報記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/625071a80436001a6ee75cc9e65200a06b563b10

「農協によれば、元職員と男性とは顧客以上の関係はなく、金品授受や脅しなどもなかった。動機について元職員は「男性が県外に転居しなければならなくなった事情に同情した」と話しているという。」(上掲記事)

 動機がよくわからない。

 要は,住宅ローンの債務者が,借入れから2年後に不動産を売却することになったが,ローンの全額を完済することができない事情に同情し,1円の返済も受けずに抹消書類を交付してしまった,ということか。
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