おてんとうさんのつぶやき & 月の光の思案 + 入道雲の笑み

〔特定〕行政書士/知的財産管理技能士/国家試験塾講師等が生業の巷の一介の素浪人の日常

相続させる ということを考えると

2018-04-20 | 行政書士 〔相 続 : 遺言〕

 

 

 

本日も 硬い話です

例の「相続させる」という遺言の 意味について です

 

例の なんて言われても おおよそ ナンノコッチャ という方がホトンドだとは思いますが 

いわゆる法律系の資格業の世界では なかなか悩ましい 手強い理解どころではあります

(すくなくとも 私にとっては おおいなる疑問を持ちつづける学習範囲)

 

話を 少しでも理解しやすいように ここに 対象物を

Y という土地

とします

相続関係人として 被相続人(なくなった方)を 

            法定相続人を  と C とします

A の遺言がなければ B と C との遺産分割協議での あるいは法定相続分の割合での

持分で遺産たるYを所有するのが原則

遺言があって ここに 「 を C 相続させる」という文言があったとしますと 今の実務では 

C が単独で手続をして 自己が Y の所有者であることを  の行動だけで登記し公示し 

対抗要件を取得できる

とされています

 

このようにできるのは A の遺言があればこそ

仮に B 以外に 同様の立場の相続人が 7人いてそれらと共同の作業を要するとなる場合を

想定してみてください 一人でも異論者・非協力者がいると  の Y 取得が たいへんな難行

となるであろうことが 理解できると思います

 

そもそも このような遺言は可能なのでしょうか

遺言というのは ナンデモカンデモ 可能の手法ではありません

法律で できること(遺言事項)が限定されています

相続させる」という表現(以下 この表現 とも記します)は それらの条文そのものには

登場しません

 

そこで まず 問題になったのは

この表現の意図するところは どういう法的性格のものか ということ

遺贈(遺言による贈与) と捉えるのが妥当 という考えが登場

だとすると B を遺贈義務者として登場させ C と共同での所有権移転登記申請が

必要となる

相続 と 捉えるなら この遺言書も添付して一人だけでBが知らないうちにも

登記申請ができる(不動産関係では この 登記済み という状態に辿り着いて 

初めて自分のもの という感覚を得ることができる と 言えます) という

重大な違いが生じます

Y が10億円の土地だと 想定してみてください

遺贈 なのか 相続なのか

この違いの差を 上の説明だけからでも 諸々の角度から 思ってみてください

 

繰り返しますが 遺言でできることは限定されていて(解釈による 少数の 

例外もありますが) この表現 は結局どの条項で許されることなのだ ということが

問題になります

 

最高裁(H3・4・19)は 次のように 述べました

<① 遺贈と解すべき特段の事情がない限り 特定の相続人に特定の財産を

    取得させることを指示する 遺産分割方法 を定めたもの

 

 ② もし その特定の財産が特定の相続人の法定相続分を超えるときは 

   相続分の指定 を伴う遺産分割方法を定めたものと解する

       【参考: 相続分の指定とは 法定相続分を遺言で修正できる ということ】

 

 ③ 特段の事情がない限り 被相続人死亡時に 直ちに その遺産は 相続により

   承継される>

    

       参考条文は 相続分の指定 : 民 902

               遺産分割の指定 :民 908

 

 

ここで 今日 このブログを記した理由は 次のような疑問が

わいたからでした

“ 先日 これからの相続 と題して ブログを載せたばかりだけれど・・・

 そうすると ・・・あのあたりのことは? ”

 

“ ・・・[相続させる] ということが論点となって 学者さんの間でもさかんに議論が

  いまだにあるようだが この理は 不動産関係に特有なことではないはず

   預金債権などにも この理は 使われるはず というか

   銀行窓口にて 「○○預金を Cに相続させる」旨の遺言を

   添付しての預金の単独手続取得というケースもあるだろうか?

   

   不動産と預金債権との 相続処理における扱いの差異は?

   性質上可分とはいえない不動産でさえ 相続させる遺言で 

   アッサリ? 一人で コッソリ 登記済み というようなことが

   実務で行われ得るのだから 

   善人なおもって往生を遂ぐ いわんや悪人をや 

   ではないけれど 性質上本来可分と捉えられるであろう

   預金債権においてはをや・・・”

   と

 

直近の扱いは いかがか?

おおよその銀行などでの扱いは 私の実務経験では 判例では可分なものは

即 法定相続人に帰属だから などとの説得を試みても 

厳重な銀行内で

熟成された慣例にも従い 

つまるところは 相続関係人全員を登場させての 全員合意内容あるもの 

代表者を示す者等を要求され 

一点たりとも争いに巻き込まれるような手続処理の無きよう 

訴訟提起などされないよう にと 

さすが日本の金融機関の雄 という感じの処理を採るところが多く・・

 

 

不動産登記関係では ≪相続させる≫遺言の圧倒的簡便さと強力さが

継続しているが

先日のブログでの 可分預金も遺産分割の対象 という

ショッキングな最高裁の判断が出ていることもあって

預金債権の分野では 実際 直近は どうなのだろう 

 

もっとも 銀行窓口で争っても依頼者さんに申し訳ないので 

ホドホドに主張はしてみることの限度で・・と なるだろうが・・・

 

 

それにしても 片や 相続させる が 幅を利かせる世界の 

法務局での不動産登記関連での ほぼ固まった流れの 

受益相続人へのアドバイスの場面

各々の銀行などの対応では 遺産たる預金処理の流れの予見ができるようで 

それを断言できないことが多いという場面での預金債権受益者からの受任者との

立場の違い は どういうことか を考える時

一方は 全国統一扱いを迫られる登記制度・国家機関たる法務局 

それと 公証役場(相続させる という仕組みを主導的に行ったのは

公証人の世界 ともいわれています)の立場も大いに係わる場面も多く 

その実務上の諸々の事情とやらが絡み合うところ

と 

全国統一の扱いというのは 個々の実務処理については法律的にはない

と思われる各金融機関の思惑の微妙な違い?との差かな・・・とか 

   

国の係わる登記での世界では 意外とアッサリ 相続させるの威力が発揮できるが 

民間での 預金債権扱いの世界では そう アッサリとはいっていない? かなー・・・”

 

 

例のごとく ボヤーンと 確認すべきことは いろいろと待ち構えている事務所内で 

気になると そこへ 勝手に思いが駆け出して行ってしまう コマッタチャン の 

週末の事務所でのブログでした

 

 

当然のこと ですが? ブログ内容は あくまで一介の素浪人の

一種の私論・試論も雑じっています ご容赦をお願いいたします

参考になるか ならないか 勝手ですが 自己判断で ネ

                                    

                                                        はたけやまとくお事 務 所