条文を覚えなければ、とはいっても、丸暗記しても、どのような趣旨が
あってそのような文言になっているのかを知らなければ、学びの意義を
見出せませんし、アッサリと忘れてしまうでしょう。
改正後それほど経ていない今のうちに、理解が済んでいない条文につい
ては優先して、なんのため新しい条文が必要になったのか背景を少しで
も知り、わずかでも〔こういうことのためにあつらえられた条文なのか〕
と意識できるまで向き合うことが、いかにも重要難解条文と付き合うた
めの決め手になる、と思われます。
さて
本日の マンション関連国家試験オリジナル問題です
民法の、以下の条文の空欄〈 〉を充たす文言を、下記群から選び、埋めてください。
(不動産〈 1 〉の対抗力)
第六百五条
不動産の〈 1 〉は、これを登記したときは、その不動産について〈 2 〉を取得した者その他
の第三者に対抗することができる。
(不動産の〈 3 〉の移転)
第六百五条の二
前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸
借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の〈 3 〉
は、その譲受人に移転する。
2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、〈 3 〉を譲渡人に〈 4 〉する旨
及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の〈 5 〉をしたときは、〈 3 〉は、譲受人に移
転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲
渡人に〈 4 〉されていた〈 3 〉は、譲受人又はその承継人に移転する。
3 第一項又は前項後段の規定による〈 3 〉の移転は、賃貸物である不動産について所有権
の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
4 第一項又は第二項後段の規定により〈 3 〉が譲受人又はその承継人に移転したときは、
第六百八条の規定による費用の償還に係る債務及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規
定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。
(〈 5 〉による不動産の〈 3 〉の移転)
第六百五条の三
不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その〈 3 〉は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人
と譲受人との〈 5 〉により、譲受人に移転させることができる。この場合においては、前条第三
項及び第四項の規定を準用する。
(賃借権の譲渡及び〈 6 〉の制限)
第六百十二条
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を〈 6 〉することが
できない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の
解除をすることができる。
7
(〈 6 〉の効果)
第六百十三条
賃借人が〈 7 〉に賃借物を〈 6 〉したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基
づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を〈 8 〉履行する義務
を負う。この場合においては、賃料の〈 9 〉をもって賃貸人に対抗することができない。
2 前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
3 賃借人が〈 7 〉に賃借物を〈 6 〉した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を〈 5 〉
により解除したことをもって〈 10 〉に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が
賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
第四款 敷金
第六百二十二条の二
賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の
賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。
以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その
受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務
の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の〈 11 〉を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷
金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその
債務の弁済に充てることを請求することが〈 12 〉。
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記
・ 適 法 ・ 返 還 ・ 転 貸 ・ 直 接
・ 転借人 ・ 前 払 ・ 賃貸人たる地位 ・ 合 意
・ 留 保 ・ 賃貸借 ・ できる ・ できない ・物 権
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1 賃貸借
2 物権
3 賃貸人たる地位
4 留保
5 合意
6 転貸
7 適法
8 直接
9 前払
10 転借人
11 返還
12 できない
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メ モ
605条の2 が新設された趣旨は、
〔賃貸物件を不動産小口化商品〕として販売するなど不動産の共同投資事業の実務事例
に対処するためです。
例えば、Aが、所有する賃貸ビルであるX建物をBに貸し出す。
その後、Aは、数人の投資家にX建物を売却する(実務でみられる例です)。
この数人の投資家が、新貸主になりBからの賃料を共有割合に応じて受け取る(つまり、
賃借人に対して修繕義務を負ったり敷金返還義務を負ったりしなければならないことな
ので商品化はなかなかタイヘン)。
そこで、Aの賃貸人の地位を留保〔実際の賃貸事務はAが継続してすることとする〕す
る、数人の投資家はAに賃貸する、との合意をし、当事者〔A・投資家・B〕間に一種
の転貸借の関係が成立するようにしたりする。
この場合、仮に投資家らがAの債務不履行を理由としてAと投資家らとの賃貸借を解除
するとAB間の賃貸借(転貸借)も終了してしまいBは地位を不安定に変更されること
になってしまう。
そこで、Aと投資家との間の賃貸借が終了した場合は、賃貸人の地位は当然に投資家に
移転するという制度にし、賃借人の地位の不安定化を避ける等の方策のための条文とな
っているのです。
条文の文言だけでは、ナカナカ覚えられないのでは?と考えられます(実務を感じられ
ないと、すぐには解釈できないと思われますが・・・)
とにもかくにも、出題は、どんなレベルのものがいつ登場するか ??
605条の2 などは強敵ですが・・・
まったくのゼロ知識状態は避けるべきであること、当然のことです が・・・