「大停滞」
タイラー・コーエン著 NTT出版 1680円
リーマンショック以降、ギリシャやイタリアの信用不安問題、3.11など経済的には「大」停滞に陥っています。
ケインズ的な大きな政府による財政出動もハイエク的な市場主義も、もはや機能しない状況になっています。
こうした中、コーエン博士の指摘する「容易に収穫できる果実は食べつくされた」「政府は経済成長を実現させることはできない」という主張は、まさにそのとおりだと思います。
米国ですら、すでにフロンティアは存在せず、日米を問わず政府は行き詰まり、出口さえも見えない状態。
バラ色の未来は霞み始めています。
先日、京都の友人と話をしていた時、彼曰く「衰退の美学を楽しむことも一つの趣味」。
京都らしいです・・・笑。
1868年、約150年前に首都機能が江戸・東京に移り、過去の街になりつつある京都。
派手な経済活動から取り残され古都として生きていかなければならなかった京都。
京都を愛する彼は、じわりじわりと落ちぶれていく「粋」をカッコ良くとらえていたのでした。
今週号の日経ビジネスでは、VIPを特集。
VIPとは、ベトナム、インドネシア、フィリピンのアジア新興国。
BRICSに次ぐ急成長中の国々です。
そこに住む人たちの瞳の輝き、勢い、若さは、すでに日本や米国には存在しないように思います。
TPPやFTAでそのパワーを取り込めるかというと、これも疑問です。
とすれば、大停滞を受け入れ、その中で余裕を持って楽しむ・・・その美学があってもいいように思う昨今です。
かってのギリシャ、ローマの貴族たちのように・・・。