若いころ、ビートルズの「When I`m 64」を聴いて、おじいちゃんになったら、楽しい日々が舞っているんだろうなあと考えたことがありました。
そのころの英国は年金支給年齢が多分64歳だったのでしょう。
今では68歳くらいになっていると思いますが・・・。
有り余る時間、おカネもあれば、自由もある・・・楽しい老後。
でも、多くの人が不安を持って日々の生活を送っています。
定年後の作法
林望著 ちくま新書 840円+税
著者の林さんは、1949年のお生まれ・・・71歳です。
ケンブリッジ大学客員教授や東京芸大助教授として国文学を研究されたリベラルアーツの大家。
しかも教員を50歳で早期退職され、作家として独立されます。
その林先生が書かれた定年本・・・期待できます。
目次
第1章 孤立を恐れないと覚悟を決める
第2章 自分の役割を捨てる
第3章 古きものにいまを見つける
第4章 体と心のペースをつかむ
第5章 残すものと捨てるもの
終章 人生の「店じまい」に向けて
定年後は「コ」を恐れないと著者は述べます。
「コ」は、個人の「個」と孤独・孤立の「孤」。
会社の価値観ではなく自分らしさの追求、自立・自律することの大切さ・・・。
誰にも遠慮することなく、「非会社的時空」に専念して、一人で立っていけることを喜ばしく思い、肯定的にとらえよ!と喝破します。
なるほど。
同書では、著者からの直球がドンドン飛んできます。
・自省心と自制心の両方が大事
・「程のよさ」を知る
・夫婦はそもそも別の人間
・街を捨てよ、旅に出よう
・思い立ったら日帰りの旅
・ぼんやりぐらいがちょうどいい
・10,000時間、練習すれば、ものになる
・「あなたは、高校生のころ、何になりたかったのですか?」
・忙しい時でも、いろいろなことを掛け持ちする
・旅に必要なのはカメラとメモ、そして自由
・体の健康には食事と散歩 1日二食が原則
・小腹がすいたらキュウリ
・一万歩の強歩行
・徐々に貧しくなっていくことを受けいれる
・文化的な財産は次の世代に渡す
・今日を無駄なく過ごす
著者は、音楽や声楽、俳句、地図、料理など多彩な趣味を持ち、日々を充実させていく努力をされています。
そして、自分らしく生きる、人に迷惑をかけないための準備をしっかり行っていく。
有り余る時間、自由・・・だからこそ、定年後の「作法」は確かに必要だと思った次第です。
好かれる爺さんにはなれないけれど、嫌われない爺さんには覚悟と努力でなれるかもしれない・・・。
50歳代、60歳代のシルバー層に読んでいただきたい一冊です。