政府の働き方改革の同一労働同一賃金、生産性向上から、ジョブ型雇用にスポットが当てられています。
人に仕事をつけるという日本型人事制度・・・新卒一括採用、年功序列、終身雇用・・・組織、チームで仕事をしていくため従業員のチームワークを機能させるための建てつけになっています。
メンバーシップ雇用・・・社員みんな仲良くチカラを合わせて頑張ろう!というのが日本の会社。
これに対して、仕事に人を付けるという仕事基準の人事がジョブ型雇用。
欧米では当たり前の雇用制度です。
メンバーシップ型雇用は、ほとんど日本独自の制度、ガラパゴスであり、シーラカンスです。
日本におけるジョブ型雇用は、病院。
医師や看護師、医療技術者など別々に賃金が設定されています。
人事異動はありませんし、ドクターの賃金が別格に高くても誰も異議を唱えません。
これが日本の普通の会社で導入できるかというと、???です。
メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への転換は、かなりの難問です。
1300社が導入した日本型ジョブディスクリプション
この人事制度が日本企業を強くする
松本順市著 日経BP社 1600円+税
著者は、64歳のコンサルタント。
魚屋さん「魚力」のアルバイトから始まり、社長の参謀役として現場発の人事制度を築き上げます。
小難しい話を飛ばして、現場で本当に活用できるジョブ型人事制度を提唱、1300社への指導をされているとのことです。
目次
第1章 ジョブ型雇用の限界
第2章 日本型雇用の問題の本質
第3章 日本型ジョブディスクリプションのすすめ
第4章 既存の人事制度をパワーアップする
第5章 不毛な人事制度論争との決別
同書で語られるジョブ型人事制度のキーワードは、社員の「成長」、そして「褒める人事」。
マグレガーのY理論に立脚した性善説、従業員を信じた制度です。
著者の提唱する「日本型ジョブディスクリプション」は、いたってシンプルな職務記述書。
多大な工数を要する職務分析もありません。
現場視点で、経営者の想いを活かした「日本型ジョブディスクリプション・成長シート」にまとめ上げていきます。
社員は、みんな「優秀になりたい」「スキルをあげたい」と思っているという前提で、従業員の努力、頑張りが報われる仕組み。
通常、ジョブ型では、自分のスキル、雇用を守るために、人に教えたり、人材育成することはありません。
また、ジョブローテーションもありえません。
仕事に賃金が紐づいているので、人事異動はゼロ、シロウトからのスタートになるからです。
著者の提唱いる人事制度は、ポイント制が入っていますが、査定のためというよりは、本人の「成長」を見える化するための工夫です。
去年より1ポイント上がっただけで、自分の成長、効力感を感じさせることが出来るというものです。
各評価項目とも「他の社員に教えている」が最高評価になっています。
なるほど。
著者は言います。
絶対正しい人事制度があるわけでなく、会社ごとに違って当然。
経営者の考え、想いを人事制度に込めろ。
現場視点で進めろ。
ジョブ型雇用といえば、精緻な職務分析が必要で面倒だという先入観があります。
同書は、それを乗り越えるための一冊ということが出来ます。
CHRO、人事労務担当者必読の一冊です。