「出目トク」のご祝儀

2019年06月22日 16時06分25秒 | 未来予測研究会の掲示板

輪子は、後にも先にも人から1万円をいただいことは初めてだった。
「世の中には、非凡な人がいるものなのね!」と驚くばかり。
皆から、「出目トク」と呼ばれた輪子の亡くなった父親の取手二高校の後輩の徳山さん。
函館競輪の開設記念GⅢ五稜郭杯争奪戦の3レース。
出目トクさんは8-1-2の配当の14万7470円を何と1000円もゲット!
147万4700円を払い戻していたので、トクさんの競輪仲間が周囲に7人も集まってきていた。
人の良いトクさんは「ほれ!ご祝儀の当たり金!」と気分を高揚させて、1万円札を配布する。
離れた場所で、その様子を見ていた輪子とトクさんが視線を合わせた。
トクさんは手招きをする。
でも、輪子は自分の席に座っていた。
「輪子、やったぜ!ご祝儀出すぞ」席に寄って来たトクさんの足どりは軽くなっていた。
「トクさん、なぜ、あんな大穴とれたの?」輪子は聞いてみた。
「出目だな。1レースが7-1-5だった。2レースが1-9-2。そこで3レースは1絡みの車券になると予想したな。7-1の上がり目は8-1だ。また、2レース1-9の下がり目は1-8だよ。よこで1-8と8-1を軸にした3連単勝負を思いついた。結果はバッチリ!」と満面の笑み。
「そうなの。驚いたわ。1万円もいただいて、ホントにいいいの?」
「ああ、遠慮するな。輪子の親父さんには、さんざお世話になったからな」
トクさんは、すこぶる上機嫌だった。

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障害者の性暴力被害 国は実態把握し対策

2019年06月22日 09時41分07秒 | 社会・文化・政治・経済

記者の目
=上東麻子さん(くらし医療部)

毎日新聞2019年6月21日 
知的、発達障害がある女性たちへの性暴力について5月5、6日付の「狙われる弱さ」で連載した。取材を通じて感じたのは、多くの障害者や障害の傾向があるが診断には至らない人たちが、生きづらさや障害特性ゆえに風俗産業に取り込まれたり、性暴力の対象になったりする構図だ。被害を訴えることが困難なため事件化されるのはごく一部。多くが闇に埋もれている。国は早急に実態調査を行い、手立てを講じるべきだ。

 まず彼女たちが風俗で働くきっかけに注目したい。

ある発達障害の女性は学校でいじめられた経験などから生きづらさの解消を求めて自己啓発セミナーを渡り歩き、アダルトチャットに行き着いた。
「かわいいね」という男性客の言葉に自己肯定感を得た。
軽度の知的障害のある女性は、養育力のない親元せず、住む場所を求めていた時に風俗スカウトが現れ、寮があるデリバリーヘルスで働いた。
経済的に困り、社会的に孤立すれれば人はどうなるかわからない。
障害のあるなしにかかわらず、人は容易に「何か」に取り込まれてしまう。
「風俗の人たちは優しかったけど仕事は嫌だった。住む場所がほしかった」と話す軽度の知的障害がある女性。以前働いていた弁当店ではパート仲間になじめなかったという=神奈川県で3月。

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障害者の性被害 守りきれない「法の傘」

2019年06月22日 09時14分51秒 | 社会・文化・政治・経済

毎日新聞2019年5月5日
軽度の知的障害がある吉田えみさん(23)=仮名・神奈川県在住=は、特別支援学校高等部に通っていた時、男性教諭(当時20代)から性的な被害に遭った。

 男性教諭は「背が高くてかっこいい先生」。バレンタインデーにチョコを贈ったの
を機に手紙のやりとりが始まった。部活の帰りに男性教諭に「送っていくよ」と言われ車に乗せられた。「家に来ない?」。誘われるままについて行くと関係を持たされた。関係は数カ月間続いたが、ある時男性教諭のアパートに2人で入るところを知人に見られ、発覚した。

えみさんは誘われると断るのが苦手だ。「私のことを好きでいてくれると思っていたのに……。

男性教諭から関係を持たされた女性は「私は先生の特別な存在」と信じていたが、教諭の懲戒免職後、友人も被害に遭ったたと知りショックを受けた。
障害に付け込んだ行為なら卑劣としかいいようがない。
ただ、「加害者が恋愛と思わせる場合、発覚は遅れる。本人の言うことだけ聞いていたら必ずしも本人のためにならない」とこの時関わった福祉関係者は知的障害者の支援の難しさを吐露する。

 

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泣き寝入りも…障害者への性暴力の実態 

2019年06月22日 09時10分15秒 | 社会・文化・政治・経済

 「人間として扱われていない」 30歳未満の被害の半数超
2019/5/21 西日本新聞

障害者の性暴力被害は、抵抗したり、被害を訴えたりすることが難しいため、表に出にくく、支援につながりにくい。海外では、障害者への性犯罪に対する処罰規定を持つ国もあるが、日本では法整備がされていない。性暴力の根絶を目指すNPO法人「しあわせなみだ」(東京)は、障害者への性暴力の実態を知り、必要な法制度を考えてもらおうと、6月8日に福岡市でシンポジウムを開催。 
 内閣府が2017-18年に全国の相談・支援団体を対象に行った調査では、障害の有無について回答があった30歳未満の性被害事例127件のうち、障害があるとみられる事例は70件あり、55%を占めた。その内訳は、発達障害16件▽精神障害19件▽軽度知的障害9件‐など。しあわせなみだ理事長の中野宏美さん(42)は「海外の調査で、障害のある人はない人の約3倍、性暴力を経験しているというデータもある」と説明する。

しあわせなみだは18年、大人の発達障害者が集うカフェ「Necco」(東京)の協力のもと、性暴力の調査を実施。32人中23人が「望まない人に性的な部分を触られる」など何らかの性暴力を経験していた。
 聞き取り調査に応じた30代の女性は、小学生の頃に見知らぬ男から下着の中に手を入れられ、中学では複数の同級生から胸を触られるなどの被害に遭った。女性は「人間として扱われていない感じがしてひどく傷ついた」「ノーって言えない。言える立場じゃないっていうのが潜在意識にある」と話したという。
 Neccoを運営する金子磨矢子さん(65)は「発達障害のある人たちは、『何もしないから』といった言葉を額面通りに受け取る人が多く、だまされやすい。自己肯定感が低く、嫌でも断れなかったり、被害に遭っても『自分が悪かった』と泣き寝入りしてしまったりする人も少なくない」と説明する。
◇    ◇ 
 障害者の性被害に詳しい杉浦ひとみ弁護士(東京)は「証言がうまくできないために、検察が起訴できなかったり、加害者が裁判で無罪になったりしている」と指摘する。被害を訴えることができないだろうと、弱みにつけ込んで医療、福祉の関係者が性暴力に及ぶケースもあるという。
 杉浦さんは4月の国会議員向け勉強会で、06年に福祉施設で起きた、18歳の少女が就寝中に職員から乱暴された事件について説明した。少女は帰宅後に母親に被害を訴え、陰部をしきりに洗うなどしていたが、重い知的障害のため具体的な説明ができなかった。検察は、証拠が不十分であること、法廷での証言が難しいことなどを理由に起訴を見送ったという。
 杉浦さんは「被害者が障害者の場合は立証のハードルを下げる、あるいは罪を重くする必要があるのではないか。ただ証拠が不十分なのに容疑者になるのは問題だし、恋愛など障害者の性的自由が制限されてしまう可能性もあり、難しい問題だ」と話す。
   ◇    ◇ 
海外では、刑法に「性犯罪被害者としての障害者」の概念を盛り込んでいる国も少なくない。韓国や米国では、障害があると知りうる立場にある人(施設の職員など)からの性犯罪は、罪が重くなる。英国では、「精神障害が理由で拒絶できない者と性的活動を行う罪」があり、被害者に障害があった場合は罪に問うためのハードルが下がる。
 刑法は17年の改正で性犯罪が厳罰化され、3年後の見直しが付則に盛り込まれた。しあわせなみだは、見直しに向け、相手が障害者であることに乗じた性犯罪に対する処罰規定の創設を求め、昨年12月からネット署名を開始。今年5月からは全国10カ所でシンポジウムを開催中だ。中野さんは「まずは障害者が性暴力に遭っている現実を知り、被害も加害も生まない社会づくりについて考えてもらえたら」と話している。
     ◆
 シンポジウムは、福岡市南区の市男女共同参画推進センター・アミカス4階ホールで。
性暴力被害など障害者を取り巻く社会の問題を描いた映画「くちづけ」(堤幸彦監督)を上映。その後のトークセッションでは、児童発達支援センターこだまの緒方よしみ園長、性暴力被害者支援センターふくおかの浦尚子センター長が登壇する。

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川崎事件から見えるもの 加害者は攻撃的な妄想を抱き

2019年06月22日 08時43分05秒 | 社会・文化・政治・経済

妄想肥大化の裏に「無知」

論点
毎日新聞2019年6月21日

5月末、川崎市多摩区で登校途中の児童らが刃物で襲われ、20人が死傷した。容疑者の自殺で直接的な動機は分からなくなったが、秋葉原無差別殺傷事件や大阪教育大付属池田小事件など平成以降の大事件を連想した人も多い。こうした事件の時代背景と、誰もが被害を受けうる社会の被害者支援のあり方を考える。

 吉岡忍・ノンフィクション作家
 川崎殺傷事件の動機はわからない。だが、加害者の殺意がたまたまその場にいた無関係な人たちに向かって牙をむく、という構図はもはや珍しいものではない。

 平成に入る前後から、この種の大量殺傷事件が繰り返されてきた。
私が調べたかぎりでは、これらの事件の加害者の多くは攻撃的な妄想を抱き、その高ぶりのまま犯行に及んでいる。
もちろん人は誰でも妄想を抱くことがある。
けれど、大抵は家族や友人知人の様子を見てその突拍子のなさに気付く。
あるいは戦争や過酷な歴史のなかで人間がいかに残酷になるか、またそこで散らされた命がどれほど無念だったかに思い至って我に返ることもある。
ところが、そのブレーキとなるべき歴史的教養が、彼らには驚くほど少なかった。
「歴史の蒸発」が大規模に起きたのは、1980年代から90年代のバブル経済期だった。
歴史は人間の偉大さもけなげさも残酷さも教えてくれる。
また、ともにその歴史を背負って生きているという自覚が人と人を結びつける。
こうした歴史の意義が欠落すると好き嫌や気に入る、気に入らないだけの「いま」しか見えない人間になってしまう。
孤立したままの妄想が肥大化し、暴走するのはここからである。
元農水事務次官が息子の家庭内暴力が外に向かうのではないかと恐れ、殺害した容疑で逮捕された事件は、いかに個々の家庭が孤立しているかを教えている。
それにしても近所の児相建設に「不動産価値が下がる」と反対し、学校でさえ「迷惑施設」とされかねない不寛容な世相である。
歴史を知らず、社会に無関心、当座の好き嫌いだけで妄想を育てていく環境で私たちは生きている。
こうした環境の裏側には「無知」がある。
教育や教養が役に立っていないということである。
遠回りでも、ここから立て直していかなければならない。

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子どもの安全どう守る? 専門家が現場を検証

2019年06月22日 07時59分00秒 | 社会・文化・政治・経済

2019年5月28日(火)NHKクローズアップ現代
諸澤英道さん (常磐大学前理事長)
宮田美恵子さん (日本こどもの安全教育総合研究所理事長)
NHK記者
武田真一 (キャスター)
栗原望 (アナウンサー)
合原明子 (アナウンサー)

どうすれば子どもたちの安全を守ることができるのか。地域や学校における子どもの安全について研究を続ける、宮田美恵子さんです。先ほど、事件現場の周辺を歩いて、検証を行いました。宮田さんが指摘したのは、朝の登校時に潜む意外な危険性でした。

日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「普段から平日は決まった場所に、決まった時間に、子どもが十何人くる。子どもを狙おうとすれば、朝のほうが狙いやすい。」


今回、被害に遭った子どもたちの多くは、駅からバス停まで決まったルートを歩いて通っていました。

栗原
「事件が発生した通りから1本、線路側の道に来たのですが、子どもたちの朝の動きは、いつもどのようなものなのでしょうか?」

不動産会社 男性
「低学年の1・2年生とみられるお子さんが、10人から15人のグループでここを歩いています。」

栗原
「こちらが駅ですよね。駅のほう(手前)から、あちら(奥)の方に子どもたちが歩いていく。」


取材をもとにした子どもたちの通学ルートです。登戸駅に数十人が集合。車の少ない線路沿いの道を進み、バス停へ向かっていました。


バスを待つ間は、いつも行列ができていたといいます。そして、子どもの人数が最も多くなる時間帯も毎朝、決まっていました。

栗原
「いつもバスは何時に停まるんですか?」

住民
「私がゴミを出す7時半頃には並んでいますよ。ずっと並んで待ってるんですよ。30人か40人が乗ってね、乗れない子は次のバスを待っている。」

規則正しい登校であればあるほど、子どもの行動が予測しやすく、下校時よりも危険性が高いというのです。

日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「下校時は、一般の小学校はバラバラと学年ごとに下校になりますから、まとまっているかと言うとバラバラ帰るけれども、朝は決まった時間帯に、決まった道を通って子どもたちが移動しますから。」


実は、過去にも似た事件がありました。平成22年、茨城県で、学校に向かうバスで起きた事件。車内に男が乗り込み、刃物を振り回し、中学生や高校生ら14人がけがを負いました。この時も、時間は7時40分。場所も通学用のバス停と、今回と似通った条件で子どもたちが狙われました。


見守りを強化していたのに… 安全をどう守る?

登下校時の子どもたちの見守りは、どのように行われていたのか。事件が起きた川崎市では、いち早く防犯アプリを導入するなど、対策に力を入れていました。警察に届いた不審者情報などを保護者や学校関係者などに配信する仕組みです。ただ、今回は突然の事件を察知することはできず、危険を知らせる情報は配信されませんでした。


宮田さんは、ITツールの有効性は認めつつも、事前の予測には限界があると指摘します。

日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「事後のニュースになるので、これを見て保護者が駆けつけても、それが残念ながら事後になっている。」

前触れもなく起きる事件に対し、全国では人の目による直接の見守りも重視されてきました。
去年5月、新潟市の小学生が下校途中に殺害された事件。これを機に、国の指導の下、各地で通学路の安全点検を強化する動きが広がりました。


川崎市でも、警察のOBなどを中心としたボランティア、スクールガードリーダーを配置していました。事件が起きた地区でスクールガードリーダーを務める、秋田谷隆二さんです。

スクールガードリーダー 秋田谷隆二さん
「今回の事件もそうだし、車が突っ込んだり、小さい子を巻き添えにしすぎ。気持ちのもって行き場がない。」


スクールガードリーダーは、学校の防犯態勢を指導するほか、登下校中の見守りも行うボランティアです。国の方針では、小学校5校に1人の割合で配置することが目標とされています。ところが秋田谷さんは、1人で7校を担当。手帳にはぎっしりと巡回エリアが書き込まれていました。
秋田谷さんが担当するのは、川崎市内の7つの公立学校。事件が起きたバス停も、巡回エリアの1つでした。しかし、今月中旬、担当している別の場所で不審者情報があり、秋田谷さんは、そこを重点的に巡回していました。


スクールガードリーダー 秋田谷隆二さん
「全域をパトロールすれば一番いいのだが、そういう時間的な制限もあるし、事案の発生の多いところを選んでというか、そういう場所になる、どうしても。」

栗原
「こういう事件が起きたことについては?」

秋田谷隆二さん
「残念だ、すごく悲しい。力不足を感じる。」

日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「一般の方々には、もうこれ以上頼んでも、もう限界、無理です。いろんなことを頼み過ぎています、現在でも。ですから、ここからは防犯という専門性を持った、例えば警察官という制服を着た方が具体的に姿を見せてくれるだけでも、抑止力になりますね。これをやったら特効薬ということはありませんけれども、犯罪を起こさせないという観点で、できることはいくつかあると思うんですね。」

事件を受け、小学校は会見で今後の対策を強化すると語りました。

カリタス小学校 内藤貞子校長
「今後、登下校の教員による見守り態勢を強化いたします。また警備員も増員して強化をしていきます。」

対策を重ねても起きてしまう事件。どう子どもを守っていけばいいのか。

日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「今すぐできることがあります。」

その方法とは?スタジオで詳しく解説します。

子どもの安全をどう守る?いま何をすべき

ゲスト宮田美恵子さん(NPO日本こどもの安全教育総合研究所 理事長)
武田:現場で、本当にこういった事件に対処することの難しさもお感じになったということですけれども、まだできることがあると?

宮田さん:本当に今回の事件は、対策には難しさがあるというふうに思います。しかし、その中でできることを少しずつやはり進めていくということが必要ですね。

武田:そのポイントがこちらです。まず「朝も巡回を」。夕方だけではなくという意味ですね?


宮田さん:これまでやはり子どもたちが外で被害に遭うというと、下校時、例えば広島、奈良、栃木など、またこの前の新潟の事件もそうですが、下校時に多く起こっていましたので、やはり下校時間帯を中心に、パトロール活動などを地域で行ってきました。ですけれども、やはり朝の時間というのは、時間帯も経路も一緒なので、狙いやすさというのがあります。ですから、やはり朝にも、今あるパトロールを少しシフトしていくようなことができればいいなというふうに思います。

武田:そして「“見せる防犯”へ」というのはどういうことでしょうか?

宮田さん:それは今、地域の方々、一般市民の方々が本当に子どもに寄り添って見守りということをしてくださっています。これからはそれにプラスする形で、防犯の専門性を持っている警察官などが制服姿でもっと防犯ということを見せていくということができると、もっといいなというふうに思います。

武田:そして「抑止力のある時間・場所で子どもたちを行動させる」ということですが?

宮田さん:これは、朝の時間帯には見守り活動ですとか、パトロールなどの大人の対策が今あります。そこに子どもたちが、その時間に行くということで、安全が担保されますから、例えば寝坊して遅れてしまうと、そこに乗り遅れてしまいますので、家庭でもその時間にちゃんと登校できるように支援してほしい、そういうことです。

武田:子どもたちにしっかりと、自分の身を守れる時間帯や場所を教えるということですね。諸澤さんは、今回のような事件、どういうふうに防げばいいというふうにお考えですか?

諸澤さん:今、宮田さんがおっしゃったように、90何%のほとんどの事件では、大人たちの目が行き届いていれば、犯人がそれを避けて、別な場所へ移動してしまうということがある。そういう意味では、非常に防犯効果があるんですけれども、今回の事件は実はそうではなくて、もう堂々と白昼、多くの人の目の前で行っている。こういう一握りの犯罪者に対してどう対処するかというのは、これはちょっと目だけではなくて、もっと組織的に動かなければいけないし、万一、危険な状態になったら、体を張ってそれを守るような、そういう例えばセキュリティー関係の会社もいろいろありますけれども、そういう人たちを雇って、しっかり守ってもらうというようなこともやらなければいけないと思うんですね。

武田:宮田さん、今回はその地域の人たちが見守ってはいた、しかしその実力を行使できるような立場ではなかったということですよね。

宮田さん:やはり地域の方々は、本当に一般市民として子どもに寄り添ってくれるということが1つの大きな役割ですので、そういう中で子どもの安全というと「地域ぐるみ」という言葉で、ある意味まとめてきました。しかし、地域ぐるみという言葉は非常にあいまいなんです。ですので、もっと多くの人たちが、見守りしている人たちだけではなくて、当事者意識を持って、もっとみんなができることを、もっとやっていくということが大事です。
それから今回は、地域ぐるみというと、公立の子どもたちを見守るという視点になっていますけれども、今回は私立でもあったということで、地域の中で見守り方が縦割りになっている気がします。やはりそういう意味でも、地域ぐるみという言葉をむしろそっちに使って、この地域にある子どもたちをみんなで守る、そういう意味で使っていきたいと思います。

武田:今回も現場には、保護者の方がいらっしゃいました。

諸澤さん:そういう態勢は取られたけれども、事件は起きてしまう。

武田:保護者としてはどうしたらいいのかと思いますよね。

諸澤さん:これは国の問題であり、社会の問題であると思うんですね。この種の事件に対する対策というのは、個人レベルで対応はとてもできるわけじゃなくて、国はもっと真剣に議論していかなければいけないし、システムを作っていく、非常に安全性の高い社会を作っていくということをもっと真剣に考え、議論していかなければいけないなと思っています。

武田:先ほど宮田さんが、地域ぐるみという言葉では済まされないとおっしゃいましたが、より具体的に、こういった事件を、不測の事態を防ぐための仕組みを議論するということですね。
本当に保護者としては、子どもの命を守れないということに関してはつらいことだと思います。しっかり考えていかなければならないと思います。

カリタス小学校 倭文覚教頭
「私は子どもたちの先頭におりまして、そこから6人ほどの児童をバスに乗せたとき、列の後方で子どもたちの叫び声が聞こえてきた。そのとき私の目の前に、犯人が両手に長い包丁らしき物を持って、無言で児童に刃物を振りながらバスの乗り場の方に走って行く姿を確認し、彼(容疑者)は何を話すでもなく叫び声をあげるでもなく、どなり散らしもせず、無言でした。だから子どもたちも気がつかない。大声をあげてやってきたら子どもたちも逃げることができたが、走りながら切りつけてくるやり方が、大勢の子どもたちを巻き添えにした。」

警察庁によると、通学路などで13歳未満の子どもが事件に巻き込まれたケースは、去年(2018年)、全国で573件に上っています。
平成13年に大阪教育大学附属池田小学校で、8人の児童が殺害された事件。これをきっかけに、学校の安全対策が進められてきました。その一方で、登下校中の安全をいかに守るかという課題が浮き彫りになってきているのです。

日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「決まった場所に、決まった時間に、子どもたちが十何人くる。狙う人にとっては狙いやすい。」

今回の事件は、なぜ起きたのか。そして、子どもたちの命を守るために私たちは何ができるのか。専門家とともに緊急検証していきます。
小学生や大人を次々と… 専門家が現場で注目したのは

事件を起こしたのは、川崎市に住む岩﨑隆一容疑者、51歳。この事件を検証するため、犯罪心理学が専門の桐生正幸さんが現場に向かいました。桐生さんが注目したのは、事件が起きた場所の特徴です。

合原
「人通りも多いですよね。そういう中で、こうした犯行が行われたというのは?」

東洋大学 教授 桐生正幸さん
「何気ない風景で車が通っていて、子どもたちがそこにいて、もう何か大きなことが起こるまでは、なかなか人はそれに気づかない。むしろそれが当たり前になってしまっている。ですから、日常生活の中で、このエリアというのは、ある意味、リスクの非常に高いエリアだったというふうに考えられるかもしれません。
実は人間の心理としまして、例えば人が多ければ多いほど、責任の分散というのが起きます。人が多ければ多いほど、無関心な状況を作ってしまうという心理的な状況があるんですね。」
現場は川崎市の住宅街の一角。駅からも近く、朝の時間帯は、通勤や通学で特に人通りの多い場所でした。さらに、近くには防犯カメラも設置されていました。
東洋大学 教授 桐生正幸さん
「通常、犯罪者というのは、リスク、つまり危険性と利益をてんびんにかけて犯行を行うわけですが、犯人は自分の姿が見られてもいいと。むしろ自分の犯行を達成するほうが、非常に自分にとっては有益だというふうに考えて、その時間帯を選んだというふうに考えていいんじゃないでしょうか。」

なぜ、人に見られてもいいと思ったのか。この点こそ事件の動機を読み解く鍵だと、桐生さんは指摘します。

近年起きた大量殺傷事件として桐生さんが挙げたのは、平成20年、秋葉原で起きた通り魔事件や、平成28年、相模原の障害者殺傷事件。いずれもあえて人目につく所で犯行に及ぶことで、社会に自分の主張を訴えるという意図があったといいます。
一方で、今回の事件は、犯行後、男はすぐに自分の首を刺して死亡。メッセージも見つかっていません。なぜ事件は起きたのか。現場を検証した桐生さんに、さらに聞きます。

小学生や大人を次々襲い… 専門家が読み解く事件

栗原
「現場には、犯罪心理学がご専門の桐生正幸さんにお越しいただいています。
まず私たちが立っているこの場所に、バス停があります。まさにここが現場なんですが、地元の方々に話を聞きますと、毎朝、子どもたちはこちらにきちんと列を成して並んでいたと。低学年の子どもたちが利用していたので、小さな子どもたちが並んでいる姿が目撃されていました。今回、保護者、そして子どもたちが犠牲になったわけですが、今回の犯行のねらいというのは、どんなものだったと見ていらっしゃいますか?」
東洋大学 教授 桐生正幸さん
「なんらかの動機を持って、この時間、この場所をまず選定して、ここに容疑者が入ってきた。たまたま居合わせた人が犠牲に遭ってしまったというふうな状況が考えられると思います。」

栗原
「そして子どもがいるスクールバスのバス停が狙われた、これはどういうことなんでしょうか?」
桐生正幸さん
「これは、いわゆる大量殺人の場合、できるかぎり短時間に多くの人を傷つけるという、『スプリー型』の犯行というのがあるんです。まさにそれを表すかのような状況ではないかと思っております。」

栗原
「この場所を狙っていたと?」

桐生正幸さん
「この場所を、まさに選択していたというふうに考えられると思います。」
栗原
「改めて、今回、この事件の特徴をどのように見てらっしゃいますか?」

桐生正幸さん
「実はこれまで大量殺人事件は、なんらかの自己アピール、社会に対するアピールといったものがあってそのような犯行があったんですが、どうも今回の事件は、そういったものがあまり見えてこない、なぜそのような犯行を行ったのかといったことが、やや分かりにくいという側面を持っている犯行ではないかと思います。そういった意味では、これまでになかったようなタイプの犯行が、また出てきてしまったのかという、ちょっと懸念を抱いております。」
専門家が読み解く事件 いったいなぜ?

ゲスト諸澤英道さん(常磐大学 元学長)
武田:スタジオでも議論を深めていきたいと思います。まずは犯罪学がご専門の諸澤英道さん。亡くなった方、そしてけがをした皆さんのことを思うと、胸が潰れるような思いがしますけれども、それだけではなくて、突然、事件に巻き込まれた子どもたちや居合わせた人たち、または家族の皆さんにとっても、今夜は本当に大きなショックの中で過ごすことになると思うんですね。皆さんのこと、どういうふうに思っていらっしゃいますか?
諸澤さん:私も犯罪に遭った被害者がどういうふうになっていくかということを30年、40年研究してきましたけれども、この事件を見て、今、この時間、夜の10時に、その現場にいたお子さんはもちろんだけれども、そのご家族の方や近くにいた通りかかった人も含めて、そういう方々が心の傷を負って、今どういう状態かということが、ものすごく気になります。
阪神・淡路大震災のとき、24年前に日本でもようやくPTSD(=心的外傷後ストレス障害)ということについての認識が広まってきて、見えている傷、血が出ていたり傷を負っていると誰にでも分かると。でも心の傷というのは、周りからは分からないんだというレベルから始まったと思うんですけれども。大事なのは、その事件直後、あるいはそれからしばらく、1か月、2か月ぐらいは続くわけですけれども、その状態の被害者、特に今回は子どもが多いわけですね。そういう人たちが、体が震えてしまってもう止まらない、それからものを飲めない、のどが渇いている、そしてこういう時間ですから、眠ることができないなどなど、夜中に失禁をする子どももいるでしょうし。そういう状態が今、多くの現場にいた人たち(の中)で起こっていると、そういうことについて思いを致さなければいけないし、そういう人たちがこれから1か月、2か月、3か月、場合によっては1年、2年、3年、どういうふうにしてそこから元の生活に戻っていくかということを、関係者がみんなで真剣に考えなければならない、そういう事件を私たちは今、突きつけられたような気がしますね。
武田:そしてスタジオ、社会部事件担当の渡邊デスクにも聞きます。ここまでの最新情報を聞きたいと思うんですけれども、まず亡くなったお2人について。

渡邊和明デスク(社会部):栗林華子さんは、カリタス小学校の6年生でした。先ほど、学校側が記者会見をしたんですけれども、その中で栗林さんの話を紹介され、その1つが先週、編入を希望している子どもを案内していた際、栗林さんが子どもの父親と母親に対して、外国語がたくさんできて、宿泊もたくさんできますと、この学校について笑顔で紹介していた、語っていたそうなんです。またこの件については、何もお願いはしていなかったんですけれども、たまたま休み時間に来て、来ている家族を見て、学校のいいところをいっぱい話してくれたそうです。
また小山智史さんですけども、子どもをカリタス学園に通わせていた保護者でした。今日(28日)は子どもを見送りに来ていて、事件に巻き込まれたと見ています。外務省の職員で、外務省に10人ほどいる、ミャンマー語の専門家の1人でした。平成25年には、ノーベル平和賞を受賞したアウン・サン・スー・チーさんが来日した際に、担当官として京都に同行していたこともある方です。
武田:そして、子どもたちを刺した男についてですが。

渡邊デスク:この男についても、先ほど警察が、岩﨑容疑者と確認されたと発表しています。小学生と中学生のときの同級生の話によりますと、岩﨑容疑者は、子どものころから怒りやすい性格だった、学校でトラブルを起こすこともあったということなんです。同級生は、その男が中学校卒業したあとの進学とか、生活の状況は知らなかったとしていますけれども、今回、事件に関わったと聞いても、特に驚くことはなかったと話していました。

武田:なぜ男がこんな事件を起こしたのか、諸澤さんはどうお考えですか?

諸澤さん:今回の事件は、めったにない事件なんですけれども、多くの通り魔事件や無差別殺傷事件というのは、先ほどもちょっと解説がありましたけども、なんらかのメッセージがあるんですね。

何かをアピールしたいために目立つようなことをやるというケースが多いんですけれども、今回の事件は実はそうではなくて、本人が自殺しているので分かるように、死ぬ気でやっているんですね。これは結局、自分の人生をここで終止符を打ちたいと。

その時に多くの人を道連れにしていきたいという思いでやっていると思います。(大阪教育大学附属)池田小学校の宅間守も若干それに近いんですけれども、そういう事件と、そうではなくて生き残ってアピールするという事件をしっかり分けて考えなければいけないし、この種の事件に対する対策というのは、実は今はこの予備軍がたくさんいるんじゃないかと考えられています。

現にこの報道の在り方によっては、なんらかの悪い刺激を与えることもある。特に、この種の事件というのは、3、4、5、6月にかなり集中しております。世の中が春になって、浮き足立ってきた時期に、実は世の中をはかなんでということですね。自分の人生に絶望感を持って、そして最後にこういう派手なことをやって、命を絶っていくという、そういう一握りの人たちがいる。それに対する対策というのは真剣に考えないといけないと思いますね。

 武田:学校の外で子どもたちの安全をどう守っていけばいいのか。現場での専門家との検証から見えてきたものは?

子どもの安全どう守る? 専門家が現場を検証

どうすれば子どもたちの安全を守ることができるのか。地域や学校における子どもの安全について研究を続ける、宮田美恵子さんです。先ほど、事件現場の周辺を歩いて、検証を行いました。宮田さんが指摘したのは、朝の登校時に潜む意外な危険性でした。

日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「普段から平日は決まった場所に、決まった時間に、子どもが十何人くる。子どもを狙おうとすれば、朝のほうが狙いやすい。」
今回、被害に遭った子どもたちの多くは、駅からバス停まで決まったルートを歩いて通っていました。

栗原
「事件が発生した通りから1本、線路側の道に来たのですが、子どもたちの朝の動きは、いつもどのようなものなのでしょうか?」

不動産会社 男性
「低学年の1・2年生とみられるお子さんが、10人から15人のグループでここを歩いています。」

栗原
「こちらが駅ですよね。駅のほう(手前)から、あちら(奥)の方に子どもたちが歩いていく。」
取材をもとにした子どもたちの通学ルートです。登戸駅に数十人が集合。車の少ない線路沿いの道を進み、バス停へ向かっていました。
バスを待つ間は、いつも行列ができていたといいます。そして、子どもの人数が最も多くなる時間帯も毎朝、決まっていました。

栗原
「いつもバスは何時に停まるんですか?」

住民
「私がゴミを出す7時半頃には並んでいますよ。ずっと並んで待ってるんですよ。30人か40人が乗ってね、乗れない子は次のバスを待っている。」

規則正しい登校であればあるほど、子どもの行動が予測しやすく、下校時よりも危険性が高いというのです。
日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「下校時は、一般の小学校はバラバラと学年ごとに下校になりますから、まとまっているかと言うとバラバラ帰るけれども、朝は決まった時間帯に、決まった道を通って子どもたちが移動しますから。」
実は、過去にも似た事件がありました。平成22年、茨城県で、学校に向かうバスで起きた事件。車内に男が乗り込み、刃物を振り回し、中学生や高校生ら14人がけがを負いました。この時も、時間は7時40分。場所も通学用のバス停と、今回と似通った条件で子どもたちが狙われました。
見守りを強化していたのに… 安全をどう守る?

登下校時の子どもたちの見守りは、どのように行われていたのか。事件が起きた川崎市では、いち早く防犯アプリを導入するなど、対策に力を入れていました。警察に届いた不審者情報などを保護者や学校関係者などに配信する仕組みです。ただ、今回は突然の事件を察知することはできず、危険を知らせる情報は配信されませんでした。
宮田さんは、ITツールの有効性は認めつつも、事前の予測には限界があると指摘します。

日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「事後のニュースになるので、これを見て保護者が駆けつけても、それが残念ながら事後になっている。」

前触れもなく起きる事件に対し、全国では人の目による直接の見守りも重視されてきました。
去年5月、新潟市の小学生が下校途中に殺害された事件。これを機に、国の指導の下、各地で通学路の安全点検を強化する動きが広がりました。
川崎市でも、警察のOBなどを中心としたボランティア、スクールガードリーダーを配置していました。事件が起きた地区でスクールガードリーダーを務める、秋田谷隆二さんです。

スクールガードリーダー 秋田谷隆二さん
「今回の事件もそうだし、車が突っ込んだり、小さい子を巻き添えにしすぎ。気持ちのもって行き場がない。」
スクールガードリーダーは、学校の防犯態勢を指導するほか、登下校中の見守りも行うボランティアです。国の方針では、小学校5校に1人の割合で配置することが目標とされています。ところが秋田谷さんは、1人で7校を担当。手帳にはぎっしりと巡回エリアが書き込まれていました。
秋田谷さんが担当するのは、川崎市内の7つの公立学校。事件が起きたバス停も、巡回エリアの1つでした。しかし、今月中旬、担当している別の場所で不審者情報があり、秋田谷さんは、そこを重点的に巡回していました。
スクールガードリーダー 秋田谷隆二さん
「全域をパトロールすれば一番いいのだが、そういう時間的な制限もあるし、事案の発生の多いところを選んでというか、そういう場所になる、どうしても。」

栗原
「こういう事件が起きたことについては?」
秋田谷隆二さん
「残念だ、すごく悲しい。力不足を感じる。」

日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「一般の方々には、もうこれ以上頼んでも、もう限界、無理です。いろんなことを頼み過ぎています、現在でも。ですから、ここからは防犯という専門性を持った、例えば警察官という制服を着た方が具体的に姿を見せてくれるだけでも、抑止力になりますね。これをやったら特効薬ということはありませんけれども、犯罪を起こさせないという観点で、できることはいくつかあると思うんですね。」
事件を受け、小学校は会見で今後の対策を強化すると語りました。

カリタス小学校 内藤貞子校長
「今後、登下校の教員による見守り態勢を強化いたします。また警備員も増員して強化をしていきます。」

対策を重ねても起きてしまう事件。どう子どもを守っていけばいいのか。

日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「今すぐできることがあります。」
その方法とは?スタジオで詳しく解説します。

子どもの安全をどう守る?いま何をすべき

ゲスト宮田美恵子さん(NPO日本こどもの安全教育総合研究所 理事長)
武田:現場で、本当にこういった事件に対処することの難しさもお感じになったということですけれども、まだできることがあると?

宮田さん:本当に今回の事件は、対策には難しさがあるというふうに思います。しかし、その中でできることを少しずつやはり進めていくということが必要ですね。

武田:そのポイントがこちらです。まず「朝も巡回を」。夕方だけではなくという意味ですね?
宮田さん:これまでやはり子どもたちが外で被害に遭うというと、下校時、例えば広島、奈良、栃木など、またこの前の新潟の事件もそうですが、下校時に多く起こっていましたので、やはり下校時間帯を中心に、パトロール活動などを地域で行ってきました。ですけれども、やはり朝の時間というのは、時間帯も経路も一緒なので、狙いやすさというのがあります。ですから、やはり朝にも、今あるパトロールを少しシフトしていくようなことができればいいなというふうに思います。
武田:そして「“見せる防犯”へ」というのはどういうことでしょうか?

宮田さん:それは今、地域の方々、一般市民の方々が本当に子どもに寄り添って見守りということをしてくださっています。これからはそれにプラスする形で、防犯の専門性を持っている警察官などが制服姿でもっと防犯ということを見せていくということができると、もっといいなというふうに思います。
武田:そして「抑止力のある時間・場所で子どもたちを行動させる」ということですが?

宮田さん:これは、朝の時間帯には見守り活動ですとか、パトロールなどの大人の対策が今あります。そこに子どもたちが、その時間に行くということで、安全が担保されますから、例えば寝坊して遅れてしまうと、そこに乗り遅れてしまいますので、家庭でもその時間にちゃんと登校できるように支援してほしい、そういうことです。
武田:子どもたちにしっかりと、自分の身を守れる時間帯や場所を教えるということですね。諸澤さんは、今回のような事件、どういうふうに防げばいいというふうにお考えですか?

諸澤さん:今、宮田さんがおっしゃったように、90何%のほとんどの事件では、大人たちの目が行き届いていれば、犯人がそれを避けて、別な場所へ移動してしまうということがある。そういう意味では、非常に防犯効果があるんですけれども、今回の事件は実はそうではなくて、もう堂々と白昼、多くの人の目の前で行っている。こういう一握りの犯罪者に対してどう対処するかというのは、これはちょっと目だけではなくて、もっと組織的に動かなければいけないし、万一、危険な状態になったら、体を張ってそれを守るような、そういう例えばセキュリティー関係の会社もいろいろありますけれども、そういう人たちを雇って、しっかり守ってもらうというようなこともやらなければいけないと思うんですね。

武田:宮田さん、今回はその地域の人たちが見守ってはいた、しかしその実力を行使できるような立場ではなかったということですよね。
宮田さん:やはり地域の方々は、本当に一般市民として子どもに寄り添ってくれるということが1つの大きな役割ですので、そういう中で子どもの安全というと「地域ぐるみ」という言葉で、ある意味まとめてきました。しかし、地域ぐるみという言葉は非常にあいまいなんです。ですので、もっと多くの人たちが、見守りしている人たちだけではなくて、当事者意識を持って、もっとみんなができることを、もっとやっていくということが大事です。
それから今回は、地域ぐるみというと、公立の子どもたちを見守るという視点になっていますけれども、今回は私立でもあったということで、地域の中で見守り方が縦割りになっている気がします。やはりそういう意味でも、地域ぐるみという言葉をむしろそっちに使って、この地域にある子どもたちをみんなで守る、そういう意味で使っていきたいと思います。

武田:今回も現場には、保護者の方がいらっしゃいました。

諸澤さん:そういう態勢は取られたけれども、事件は起きてしまう。

武田:保護者としてはどうしたらいいのかと思いますよね。

諸澤さん:これは国の問題であり、社会の問題であると思うんですね。この種の事件に対する対策というのは、個人レベルで対応はとてもできるわけじゃなくて、国はもっと真剣に議論していかなければいけないし、システムを作っていく、非常に安全性の高い社会を作っていくということをもっと真剣に考え、議論していかなければいけないなと思っています。

武田:先ほど宮田さんが、地域ぐるみという言葉では済まされないとおっしゃいましたが、より具体的に、こういった事件を、不測の事態を防ぐための仕組みを議論するということですね。
本当に保護者としては、子どもの命を守れないということに関してはつらいことだと思います。しっかり考えていかなければならないと思います。

 

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川崎殺傷事件の衝撃 ~子どもの安全を守るために~

2019年06月22日 07時44分04秒 | 社会・文化・政治・経済

2019年5月28日(火)NHKクローズアップ現代

川崎市の路上で、スクールバスを待っていた小学生や大人が男に次々と包丁で刺された事件。男は両手に包丁を持って近づき、次々と襲う様子が目撃されている。登下校中の子どもが犠牲になる事件は過去にも相次いでいる。警察庁によると、13歳未満の子どもが通学路などで事件に巻き込まれたケースは去年全国で573件にのぼり、5月には新潟市で小学2年生の女の子が下校途中に殺害される事件も起きた。

事件はどのようにしておきたのか、子どもの安全をどう守っていくか、最新情報を交え、専門家の知見を聞きながら深めていく。
諸澤英道さん (常磐大学前理事長)
宮田美恵子さん (日本こどもの安全教育総合研究所理事長)
NHK記者
武田真一 (キャスター)
栗原望 (アナウンサー)
合原明子 (アナウンサー)

スクールバスを待つ小学生や大人に次々と…

カリタス学園 齋藤哲郎理事長
「本当に、このなんともいえない蛮行によって、落ち度のない子どもたちと、愛情深く子どもを育んできた保護者がこうした被害にあったことを、怒りのやり場もないぐらいの気持ちであり、痛恨の極みです。」
カリタス小学校 内藤貞子校長
「私は毎朝、学校の前で立っていますが、『おはよう』と声をかけたとき、(亡くなった)彼女は本当に笑顔いっぱいで『おはようございます』と返してくれるお子さんでした。本当に信じられません。今日も元気のいい挨拶が聞けるかなと思っていました。」
校内の防犯対策に万全を期してきたというこの学校。警備員による見回りや、保護者に対する名札携帯の徹底などを行ってきました。しかし、今回の事件は通学途中で起きました。事件当時、現場にいた教頭は、無言で襲いかかってきた容疑者になすすべもなかったといいます。
カリタス小学校 倭文覚教頭
「私は子どもたちの先頭におりまして、そこから6人ほどの児童をバスに乗せたとき、列の後方で子どもたちの叫び声が聞こえてきた。そのとき私の目の前に、犯人が両手に長い包丁らしき物を持って、無言で児童に刃物を振りながらバスの乗り場の方に走って行く姿を確認し、彼(容疑者)は何を話すでもなく叫び声をあげるでもなく、どなり散らしもせず、無言でした。だから子どもたちも気がつかない。大声をあげてやってきたら子どもたちも逃げることができたが、走りながら切りつけてくるやり方が、大勢の子どもたちを巻き添えにした。」

警察庁によると、通学路などで13歳未満の子どもが事件に巻き込まれたケースは、去年(2018年)、全国で573件に上っています。


平成13年に大阪教育大学附属池田小学校で、8人の児童が殺害された事件。これをきっかけに、学校の安全対策が進められてきました。その一方で、登下校中の安全をいかに守るかという課題が浮き彫りになってきているのです。

日本こどもの安全教育総合研究所 理事長 宮田美恵子さん
「決まった場所に、決まった時間に、子どもたちが十何人くる。狙う人にとっては狙いやすい。」

今回の事件は、なぜ起きたのか。そして、子どもたちの命を守るために私たちは何ができるのか。専門家とともに緊急検証していきます。

小学生や大人を次々と… 専門家が現場で注目したのは

事件を起こしたのは、川崎市に住む岩﨑隆一容疑者、51歳。この事件を検証するため、犯罪心理学が専門の桐生正幸さんが現場に向かいました。桐生さんが注目したのは、事件が起きた場所の特徴です。

合原
「人通りも多いですよね。そういう中で、こうした犯行が行われたというのは?」

東洋大学 教授 桐生正幸さん
「何気ない風景で車が通っていて、子どもたちがそこにいて、もう何か大きなことが起こるまでは、なかなか人はそれに気づかない。むしろそれが当たり前になってしまっている。ですから、日常生活の中で、このエリアというのは、ある意味、リスクの非常に高いエリアだったというふうに考えられるかもしれません。
実は人間の心理としまして、例えば人が多ければ多いほど、責任の分散というのが起きます。人が多ければ多いほど、無関心な状況を作ってしまうという心理的な状況があるんですね。」


現場は川崎市の住宅街の一角。駅からも近く、朝の時間帯は、通勤や通学で特に人通りの多い場所でした。さらに、近くには防犯カメラも設置されていました。


東洋大学 教授 桐生正幸さん
「通常、犯罪者というのは、リスク、つまり危険性と利益をてんびんにかけて犯行を行うわけですが、犯人は自分の姿が見られてもいいと。むしろ自分の犯行を達成するほうが、非常に自分にとっては有益だというふうに考えて、その時間帯を選んだというふうに考えていいんじゃないでしょうか。」

なぜ、人に見られてもいいと思ったのか。この点こそ事件の動機を読み解く鍵だと、桐生さんは指摘します。

近年起きた大量殺傷事件として桐生さんが挙げたのは、平成20年、秋葉原で起きた通り魔事件や、平成28年、相模原の障害者殺傷事件。いずれもあえて人目につく所で犯行に及ぶことで、社会に自分の主張を訴えるという意図があったといいます。


一方で、今回の事件は、犯行後、男はすぐに自分の首を刺して死亡。メッセージも見つかっていません。なぜ事件は起きたのか。現場を検証した桐生さんに、さらに聞きます。

小学生や大人を次々襲い… 専門家が読み解く事件

栗原
「現場には、犯罪心理学がご専門の桐生正幸さんにお越しいただいています。
まず私たちが立っているこの場所に、バス停があります。まさにここが現場なんですが、地元の方々に話を聞きますと、毎朝、子どもたちはこちらにきちんと列を成して並んでいたと。低学年の子どもたちが利用していたので、小さな子どもたちが並んでいる姿が目撃されていました。今回、保護者、そして子どもたちが犠牲になったわけですが、今回の犯行のねらいというのは、どんなものだったと見ていらっしゃいますか?」


東洋大学 教授 桐生正幸さん
「なんらかの動機を持って、この時間、この場所をまず選定して、ここに容疑者が入ってきた。たまたま居合わせた人が犠牲に遭ってしまったというふうな状況が考えられると思います。」

栗原
「そして子どもがいるスクールバスのバス停が狙われた、これはどういうことなんでしょうか?」

桐生正幸さん
「これは、いわゆる大量殺人の場合、できるかぎり短時間に多くの人を傷つけるという、『スプリー型』の犯行というのがあるんです。まさにそれを表すかのような状況ではないかと思っております。」

 

 

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