菅首相の閣僚人事、 「幅の狭さ」「お友達起用」に垣間見える限界

2020年09月17日 12時35分06秒 | 社会・文化・政治・経済


9/17(木) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

安倍政権が終わり、菅政権がスタート 

 長きにわたる安倍政権が終わり、菅政権が発足した。しかし、今回の総裁選にはあからさまな「石破つぶし」があった上に、閣僚人事にも安倍政権の影響が色濃く影響している。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

● 最後まで姑息だった安倍政権

 菅義偉氏が第99代内閣総理大臣として、新内閣を発足させた。しかし、安倍晋三前首相の辞任から総裁選までの流れは姑息といえる。

 安倍前首相とその周囲は、最後まで安倍首相が嫌う石破氏を不利な状況に追い込むために、両院議員総会で決める「緊急のやり方」を採用したのだ。

これまでも安倍政権は、何度も都合よくルールをねじ曲げて、自らを守ってきた。いわゆる「モリカケ」問題、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の「日報隠し」、「桜を見る会」の問題、そして検察庁法改正案問題と、疑惑や不祥事が多数あった。

 だが、その都度、官僚の忖度による隠蔽や公文書偽造、資料破棄、首相に都合のいい法律の解釈などが次々に起こった。国会では、閣僚や官僚の答弁が支離滅裂となり、二転三転した。首相やその周辺を守るために、官僚は平気で使い捨てられてきた(本連載第233回)。

 そして、最後の後継者選びまで、首相の「石破嫌い」に忖度して、周囲が一斉に「石破つぶし」に動いてしまった。残念なことだが、いかにも安倍政権らしい、正々堂々としない、姑息な終わり方だった。

● 2位の岸田氏に次のチャンスはない。一方石破氏は政策次第

 総裁選では、菅氏の勝利はほぼ確実という情勢下で、気が早い話だが、「ポスト菅」の総理総裁候補として生き残りを懸ける「2位争い」に焦点が当てられた。結果、2位となった岸田氏が生き残ったようにいわれるが、筆者は逆だと思っている。

 岸田氏は、18年の総裁選に出馬せず、安倍首相からの将来の「首相禅譲」に望みを託した。筆者は「首相禅譲はない」として、その判断の甘さを批判していた(上久保誠人『名門派閥に泥塗った岸田氏「首相禅譲」の望みは不出馬で断たれた』iRONNA )。結局、私の予想通りになってしまったといえるだろう。

 岸田氏は、地方票がわずか10票にとどまった。国会議員票で石破氏を大きく上回ったが、それは岸田氏をなんとか2位にするために菅陣営が岸田氏に票を回したからだという話が出るありさまで、実力のなさを改めてさらけだしてしまった。次の総裁選、岸田氏は出馬しようとするだろう。だが、そのときは次世代の候補者、河野太郎氏、茂木敏充氏らが台頭し、岸田氏にチャンスはないのではないか。

 一方、3位に沈んだ石破氏に対しては、「これで終わった」という声が出ているが、筆者はそうは思わない。なぜ3位では終わりだと単純にいえるのだろう。総裁選3位から復活し、首相になった小泉純一郎元首相のような事例が過去にはある。

 98年、橋本龍太郎首相(当時)退陣による自民党総裁選で、小泉氏は小渕恵三氏、梶山静六氏に敗れ、3位となった。「郵政民営化」を持論とする小泉氏は、「郵政利権」を掌握していた野中広務幹事長(当時)らの橋本派に徹底的に切り崩されたのだ。しかし、その01年に小泉氏は、森喜朗首相(当時)の失言などで窮地に陥った自民党の救世主として復活し、総裁選で圧勝して首相になったのだ。

 18年の総裁選でも石破氏は敗れたが、冷遇にひるむことなく、「言うべきことは言う」という反主流の姿勢を貫いた。その結果、安倍首相が辞任を発表した時点で、「次の総理」の世論調査では圧倒的な1位という評価を得ていた。その「反主流」としての存在感の強さが、安倍首相の周囲が露骨な「石破つぶし」をした原因となった。

 今後も、石破氏は今の姿勢を変える必要はない。これからも、政権の批判勢力に徹すればいい。菅政権がうまくいったときは出番がない。だが、その限界が明らかになり、新しい指導者が求められるときが来るならば、「石破待望論」が世論だけではなく、永田町から出てくることもあるだろう。

 石破氏に求めたいのは、これまでのような権力批判の姿勢だけでなく、政策を徹底的に練り上げることだ。石破氏は「グレートリセット」を標榜していたが、正直いって、その政策はよくわからない。石破氏が永田町で嫌われているというが、それは本質的な問題ではない。それ以上に問題なのは、石破氏の政策に、国民が目を奪われるような魅力がないことだ。

 小泉氏の「自民党をぶっ壊す」には、「郵政民営化」「聖域なき構造改革」という看板政策があった。だから、自民党が危機に陥ったとき、救世主となれたのだ。石破氏は、「アベノミクス」の完全な対案を作成して世に問うべきだと強く勧めたい。

● 留任多い菅内閣の人事、実に退屈

 菅政権の内閣・党閣僚人事に話を移したい。一言でいえば、主要閣僚・党役員の留任と、菅氏の「お友達」起用で、実に退屈な布陣となった。

 まず、自民党幹事長は、すでに通算在職日数の最長記録を更新している二階俊博幹事長だ。当然、安倍前首相の退陣とともに「勇退」が考えられたが、留任となった。

 菅首相は、留任させざるを得なかったのだろう。総裁選では、二階幹事長が作った菅首相誕生の流れに、二階派のみならず、細田派、麻生派、竹下派、石原派が雪崩を打って菅支持を表明した。これは、幹事長が持つ「公認権」と「資金配分権」に恐れをなしたからだ。

 二階幹事長は、「公認権」と「資金配分権」を露骨な形で使うと、誰もが恐れている。菅首相への支持とは、その恐怖によって集まったという側面がある。もし、二階幹事長を交代させたら、一挙にタガが緩み、菅首相への求心力が失われてしまう。この不安が、菅首相が二階幹事長を交代させられなかった理由だと考える。

 麻生太郎副総理・財務相も留任となった。後述する大蔵省出身の加藤勝信氏の官房長官起用と併せて、菅政権では財務省中心にパワーシフトするという見方がある。また、菅首相が総裁選で「将来的な消費税の増税」に言及したことも「財務省シフト」を指摘される根拠となっている。

 安倍政権時代には、重要ポジションに経済産業省関係の人物が登用されることが多く、「経産省政権」と呼ばれた。それが変わるかが焦点だが、筆者はないと考える。

 麻生氏の留任は、「アベノミクス」を今後も継続していくということだ。すでに、菅首相は自民党総裁選時に「アベノミクス」の成果を高く評価し、「引き継ぎ、さらに前に進めていきたい」と述べている。それ自体は特段驚くべきことではない。

 あえてうがった見方をすれば「森友学園問題」(第178回)から菅首相を守るために留任したという解釈が可能ではないだろうか。    

  「森友学園問題」については、「決裁文書の改ざん」に関わり、自殺した近畿財務局の職員、赤木俊夫さんの妻が、国や佐川元理財局長を相手に損害賠償を求める裁判を起こしている。だが、菅首相は、自民党総裁選の討論会で、この問題の再調査について、対応しない考えを示している。

 首相官邸の中枢で、森友学園問題の鎮静化に采配を振るっていた菅首相が「再調査」を認められないのは当然だ。

しかし、野党やリベラルなメディアがそれに納得するわけがない。野党は再調査を求めて国会で追及を始めるだろう。そのとき、過去の経緯に関わっていない「新しい財務相」の答弁が安定しなかったら、野党の攻勢を許してしまうことになる。それを避けるためには、麻生財務相を留任させて、答弁に立たせるしかなかったのではないか。

● 首相の名を政策に付けるべきではない!批判しづらい空気はダメ 

 話はいったんそれるが、菅首相に求めたいのは、経済政策に「自分の名前」を付けないことだ。すでにメディアが「スガノミクス」と言い始めているが、首相本人がそれをやめるべきだ。筆者は、アベノミクスとは、異次元のバラマキで、斜陽産業を延命させただけで、成長産業を生まず、カネが切れたらまたカネがいる問題だらけの経済政策だと考えている(第163回)。

  なによりも深刻なのは、安倍首相の名前を付けた経済政策であるため、その間違いを認められなくなっていたことだ。日銀総裁や経済閣僚が、都合のいい数字だけを出して、アベノミクスの成功を強弁し続けた(第190回・p3)。

 特に、安倍首相が辞任を発表した後、「安倍首相、お疲れさまでした」というねぎらいの言葉があふれ、内閣支持率が突如20%近く上昇した。その空気の中で、安倍首相への批判がよりしづらい状況になった。

 今後は、政策に対する健全な批判による改善が封印されるのは、絶対によくない。菅政権では、このようなことはないようにしてもらいたい。だから、まずは経済政策に首相の名前を付けるのはやめるべきである。

● 留任以外も、安倍前首相に気遣った人事

 さて、菅政権の組閣・党役員人事は、安倍政権からの「継続」が強く打ち出されたものとなっている。安倍前首相が「やりたかった政策」(第252回・p4)だった、憲法改正、安全保障、教育政策は、今後も前首相が裏で操り続けるのではないかと思われるほど、前首相に気を使った人事となった。

 安倍前首相の側近である下村博文氏は政調会長に起用された。憲法改正推進本部長時代には、安倍前首相の進めた「自衛隊の明記」という現実的で国民に受け入れられやすい改憲を目指した(第194回・p4)。また、文科相を経験し、保守的な教育論を持つことでも知られる。留任となった萩生田光一文科相とともに、保守的な価値観に基づく教育を推進していくだろう(第225回)。

 古今東西、さまざまな国で権力者が国民の思想信条、言論を統制しようとするとき、まず学校の統制を狙ってきた。「国民の人権の制限」と「国民の義務の強化」、家族の重視など「道徳の推進」という自民党の進める憲法改正は、教育改革と合わせ技にすればうまく進められるという狙いがあるのではないかと懸念される。

 そして、安全保障政策を担う防衛相には、安倍前首相の実弟・岸信夫氏が起用された。前首相の意向そのままに安全保障政策を進めるということが露骨に見える。

 安倍前首相は、退任直前にもかかわらず、敵基地攻撃能力の保有を含む安全保障政策見直しの検討を本格化させた。「先制攻撃」が可能になる能力との見方もできるもので、専守防衛を堅持してきた日本の安保政策を大きく転換させる可能性がある。これを、前首相は自ら仕切るつもりで、菅首相もそれを容認していると思われる。

 また、安倍前首相の今後の動きで懸念されることがある。

首相時代は憲法改正・安全保障は抑制的で、保守派の嫌う女性の社会進出、働き方改革などの社会民主的な政策を推進する現実的な路線をとってきた。だが、首相を辞めて野に放たれることで、本来の保守的な持論をSNSなどで奔放に主張し始めるのではないか。

実際、首相就任前にSNSで保守的な持論を書いていた過去がある。しかし、安倍前首相が「豹変」したらどうなるか。これまでしっかりつかんでいた中道層の「サイレントマジョリティー」の支持を失い(第218回)、国際的にも、前首相に集まっていた外交への高い評価が雲散霧消してしまうだろう。くれぐれも今後の言動には気を付けてほしいと思う。

● 安倍政権よりも人材の幅が狭い菅政権

 菅政権の組閣・党役員人事で気になったのは、起用する人材の「幅の狭さ」と、菅首相の「お友達」の起用が目立つことである。もちろん、安倍政権も「お友達内閣」とやゆされていたが、それなりに多彩であり、かつて「政策新人類」と呼ばれたような、能力の高さが評価された人も少なくなかった。

 一方、菅首相の「お友達」は、非常に幅の狭い範囲で選ばれている。総務会長に起用された佐藤勉氏、選挙対策委員長の山口泰明氏は、菅首相と初当選が同期で「気心の知れた仲」だという。

 また、菅首相の「2人の師匠」の息子たちが起用された。首相がかつて秘書を務めた小此木彦三郎元通産相の三男である小此木八郎氏を国家公安委員長として再入閣させ、首相が政界入りした後に師匠と仰いだ梶山静六元官房長官の息子・梶山弘志氏を経産相に留任させている。

 菅首相は政官財に幅広い人脈を築いてきたとされるが、今回の「お友達起用」の幅の狭さを見ると、首相が本当に信頼できる人は、実は少ないのではないかと不安になる。

あるいは、官房長官の強力な権力を振るって築いた人脈であって、自身の人間性や見識などで得た人望ではないという自覚があるのではないか。今は首相を持ち上げていても、いつか寝首をかかれるという疑いが払しょくできない。

だから、能力は高いが、首相と距離があるような人材の起用は、できなかったのではないだろうか。これは、「非世襲」で権力の頂点まで上り詰めた、菅首相の限界を示しているのかもしれない。

● 河野氏は力量発揮しづらいポジションへ…

 菅首相は、「世の中には数多くの当たり前でないことが残っている。それを見逃さない」と発言している。具体的には、「縦割り行政の打破」「規制緩和の断行」を挙げた。だが、組閣・党役員人事からは、菅首相は「改革」に本気で取り組む気はなく、安倍政権時代の「やったふり」を踏襲するつもりだ。

 まず、河野太郎氏の行革担当大臣起用だ。外相、防衛相などを歴任してきた河野氏の「発信力」「実行力」には定評がある(第164回)。だが、行革担当相は、河野氏が力量を発揮しづらいポジションだ。

 歴代の行革担当相でまともに機能した人はいない。行革担当相は「内閣府特命担当大臣」の1つである。要は、内閣府の中に部屋を1つもらって仕事をする。各省庁の大臣のような、大組織を率いるのではなく、各省庁の間を調整して改革、規制緩和を進めるためのリソースもスタッフ機能もない。結局、「行革」をメディアにアピールするしかできないのだ。

 菅首相が本気で行革・規制改革に取り組むならば、「森友学園問題」を抱えて、首相自身が「再発防止を徹底する」と語っている財務省、コロナ禍で縦割り行政の弊害が批判される厚労省、巨大官庁である総務省の大臣に、河野氏を起用すべきだ。そして、実際の政策決定の現場で、改革・規制緩和を断行させるべきである。

 しかし、財務相は前述の通り麻生氏の再任、総務相は二階派の武田良太国家公安委員長の横滑り、厚労相は「厚労族」の重鎮・田村憲久氏の起用だ。政策の継続性という点で安定感があることは認めるが、改革・規制改革は進めないと宣言しているに等しい。

 このようなガチガチの布陣を前にして河野氏にできることは、次期首相候補としての得点稼ぎのための、「やったふり」の国民向けの発信だけだ。また、河野氏も自らの役割をよく理解して実行するだろう。

● 官房長官になる加藤氏の役割は、これまで通り「支持率調整」

 最後に、加藤勝信厚労相の官房長官起用である。この連載では、安倍政権で閣僚・党役員を歴任した加藤氏を何度も酷評してきた。その理由は、世論や支持率の維持を強く意識し、優先された政策決定を行う安倍政権を象徴する存在だったからだ。

かつて加藤氏は、「働き方改革担当相」「一億総活躍担当相」「女性活躍担当相」「再チャレンジ担当相」「拉致問題担当相」「国土強靱化担当相」「内閣府特命担当相(少子化対策男女共同参画)」と、実に7つの閣僚職を兼務していた。これらは、まるで一貫性がなさそうだが、全て「国民の支持を受けやすい課題」だという共通点があった。

 つまり、加藤氏はいわば「支持率調整担当相」であり、首相官邸に陣取って、支持率が下がりそうになったらタイミングよく国民に受ける政治課題を出していくのが真の役割だった(第163回・p3)。

 安倍政権の意思決定は不思議なところがあった。新型コロナ対策で官僚と専門家会議が日本独自の戦略を編み出し、一定の成果を上げた一方で、突如として科学的な根拠のない「アベノマスク」のような、一見「国民の受けがよさそうな対策」がポンと出てきた。これは、厚労相だった加藤氏が「支持率調整担当相」だったからだ(第237回)。

 その加藤氏が官房長官となる。与えられる役割は、これまで通り「支持率調整担当」だ。国民に受けそうな改革・規制緩和をタイミングよく出していることが求められている。ただ、コロナ禍という「有事」に、それがうまくいくかは疑問だ。

 一方で、菅首相は、官房長官として自らに集中させた強力な権力を他の誰にも渡さないという姿勢を示したともいえる。加藤氏は、大蔵省出身の能吏で、器用さを安倍首相から重宝されてきた。しかし、厚労相としてコロナ禍の対応をうまくできず、西村康稔経済再生相にコロナ担当を奪われた。本当に強力な権力を振るう力量はない。要は、軽量で起用、安心できるから官房長官に起用されたのだ。

 菅首相が、自ら首相としてみこしに乗り、後任の官房長官に自らと同じ権力を振るわせようとするならば、加藤氏とともに官房長官起用が取り沙汰された萩生田文科相を起用しただろう。萩生田氏は、非世襲のたたき上げだ。保守的な言動が批判されることが多いが、安倍前首相の最側近として、泥をかぶる汚れ仕事ができる。菅氏によく似た政治家だ。

 それだけに、官房長官のポストを与えると、本気で権力を振るう可能性が高い。また、安倍首相の最側近であることも恐ろしい。前首相に実質的な権力を握られる懸念もある。

 つまり、萩生田氏を官房長官に任命しなかったということは、菅首相が自ら集めた強力な権力を、首相になったこれからも自ら使うのだという強い意思を示したといえる。

● 菅首相は「正義」のために権力を使えるか

 筆者は、極端に言えば、菅政権の人事は、誰が官房長官に起用されるかだけにしか関心がなかった。

 菅氏の官房長官在任期間は歴代最長だった。その間、毎年約10億~15億円計上される官房機密費や報償費を扱い、内閣人事局を通じて審議官級以上の幹部約500人の人事権を使い、官邸記者クラブを抑えてメディアをコントロールし、官邸に集まるありとあらゆる情報を管理した。官邸に集まるヒト、カネ、情報を一手に握ることで、菅氏は絶大な権力を掌握してきた。

 その菅首相が、誰にどういう形で絶大な権力を譲るのか。あるいは譲らないのかは、菅政権の性格の全てを決める。その結果は、菅首相が自ら権力を握り続け、官房長官は改革・規制緩和の「やったふり」を切り盛りするだけの役割ということだった。だが、うまくいくのだろうか?

 なによりも問題なのは、菅首相の「権力」とは、安倍前首相とその周辺が「権力の私的乱用」をして、うまい汁をすすり、問題が起きたら隠蔽、改ざん、虚偽答弁で彼らを守るために集めたものだったということだ。

 その権力は、引き続きうまい汁をすすり続け、彼らを守るために使うならば、許されるだろう。そのために皆、菅首相を担いだのだから。

 だが、菅首相がその権力を、本気で改革・規制緩和の断行に使い、これまでうまい汁をすすってきた人たちを排除するというなら、それは許されるのだろうか。一斉に菅首相を袋だたきし始めるのではないか。

 菅首相が強力な権力を行使し、コロナ禍を乗り切り、改革・規制緩和を断行して、「当たり前のことが当たり前になる日本社会」の実現を期待する国民が多いと思う。しかし、権力の私的乱用を守るために集めた権力を、「正義」を実現するために使えるか。それが、菅政権の最大の課題なのである。

上久保誠人

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菅内閣誕生で完成「2012年体制」の悪夢 二階氏が後継指名した最大の狙いは

2020年09月17日 12時29分15秒 | 社会・文化・政治・経済

9/17(木) 7:32配信

47NEWS

菅義偉首相=9月16日、首相官邸

 安倍晋三首相が突然の辞任表明記者会見をするや否や、瞬く間に菅義偉官房長官を後継とする流れが二階俊博自民党幹事長によって作られ、2週間余りのメディア旋風を経て首相指名がなされた。いったい何が終わり、何が変わるのか、あるいは変わらないのか。分かるようで分からない有権者も少なくないのではないか。(上智大学教授=中野晃一)

 ■安倍政権か、安倍内閣か

 まず「内閣」「政権」「体制」という、政治に関わる基礎的な概念の整理から入ることとしよう。

 言うまでもなく内閣は、最もシンプルには首相と閣僚、つまり政治家からなる政府のトップのことである。広義では、これに各省庁の官僚制を含めた政府全体を指すこともある。

 これに対して政権は、首相や閣僚たちで構成する内閣に加えて、一方ではその指揮下にある官僚制、そしてもう一方では立法府で政府を支える与党を含む。つまり、内閣と政権は重なる概念である。

 ところが内閣が行政府のみを指し、三権分立の下、国会にある与党とも緊張関係に立ちうる別個の組織であるのに対して、政権は、英国型の議院内閣制に倣って政府と与党の一体化を強調する点が決定的に異なる。


国会議事堂

 体制となるとさらに概念は広がる。それは、与党だけでなく野党を含めた政党システムのあり方や、政府と市民社会の関係、憲法はじめ法体系などまでも包摂し、通常、より安定的なものである。

 かつて冷戦期に、政権交代が起きないまま自民党政権が38年続いた政治システムは1955年体制と呼ばれ、その下では内閣の交代や改造が頻繁になされていた。

 さて、本稿で論じたいのは、2012年12月26日から7年8カ月の長きにわたり続いた安倍首相の下で形成されたのが「安倍内閣」あるいは「安倍政権」だったのか、はたまた「2012年体制」とも呼ぶべきものなのか、そして菅への交代によって変わる、あるいは継承され定着が図られるのは何なのか、である。

 ■民主党政権に近似する皮肉

 朝日新聞記事データベース「聞蔵IIビジュアル」を活用して、安倍首相の在職期間中に絞って「安倍内閣」もしくは「安倍政権」のいずれかへの言及を含む記事を検索し、そのヒット件数(記事数)を在職日数で割ったものを、同様に何人かの他の自民党の首相と比較したグラフをここに示す(ただし、中曽根康弘についてはデータベースが1984年からの記事に限ることから期間を狭め、また安倍第2次政権についても執筆の都合から歴代最長在職期間記録を更新した2020年8月24日までとした)。

 一見して明らかなのは、2006年から2007年までの第1次にせよ、つい終わりを迎えたばかりの第2次にせよ、「安倍政権」に言及する記事数が突出して多く、かつて一般的だった「内閣」をはるかに凌駕(りょうが)していることである。中曽根や竹下では、「内閣」と呼ぶ記事数が「政権」と言及するものの2倍であったものが、第2次安倍政権では「政権」という呼称が定着し、逆に「内閣」とする記事の3倍を超えている。

 実はこうした報道における用語法や政治認識の変化は、第2次安倍政権に先んじた民主党への政権交代を経て加速した。「政府与党一体化」や「政治主導」を強調した民主党では、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦のいずれの首相でも、「政権」としての言及が「内閣」をゆうに上回っており、「鳩山政権」に至っては1日あたり9.9件も(「鳩山内閣」は4.7件)記事があったことが確認できた。皮肉なことに、「内閣」でなく「政権」であったという意味では、安倍は小泉よりも民主党政権に近似しているのである。

 

 ■2012年体制の本質と懸念

 もちろん根本的な違いは、民主党が政府与党一体化や政治主導によって二大政党制の一方を担うことを目指して挫折し3年3カ月で下野したのに対して、第2次安倍政権が7年8カ月も続き、かつ第1次政権の時から、「政権」たることに満足せず「戦後レジームからの脱却」をうたったように、「体制」変革までも射程に入れていたことである。

 つまり安倍は、2012年12月に民主党政権とともに二大政党制が崩壊した際に政権復帰を果たし、官邸支配と呼ばれる強権的な仕方で、不都合な公文書の隠蔽(いんぺい)、改ざん、廃棄までも自ら犯すほどに官僚制を掌握、操縦した。

 その後も「1強体制」と言われるまでに与党内そして野党を圧倒したのみならず、マスコミを懐柔、圧迫してきた。さらには違憲の安保法制を強行しただけでなく、憲法53条に基づく臨時国会の開会請求を再三無視し、カジュアルに憲法違反を続けてきた。

 森友学園問題、加計学園問題、桜を見る会問題、検察幹部定年延長問題、カジノ汚職事件、河井夫妻による買収事件など枚挙にいとまがない数々のスキャンダルについて、法の支配をゆがめ、説明責任(アカウンタビリティー)の放棄を繰り返しても、菅官房長官が「全く問題ない」「適切に対応している」「その指摘は当たらない」と言えば済んでしまう、新しい政治体制(レジーム)――言うなれば2012年体制――を築いてきたのである。

 菅が、安倍や二階によって後継首相に選ばれたのは、安倍内閣が倒れても、安倍政権を存続させ、その取り組んできた体制変革を定着させるのに最適な人物だからにほかならない。

 安倍政権とそのミッションを引き継ぐ以外に当面存在基盤がない以上、まずは菅内閣が安倍内閣にとって代わっただけで(用語法の変化を反映して菅政権との呼称が多用されるにしても)、実態としては安倍政権がそっくりそのまま続くと言って差し支えない。


自民党新総裁に決まり、登壇する菅義偉氏(中央)を見つめる安倍晋三氏。左は二階俊博氏=9月14日、東京都内のホテル

 しかし、もし継承したはずの政権枠組みが早晩崩れるようなことがあったら、菅内閣は短命に終わるだろう。他方、菅内閣が安定し長期化した暁には、安倍政権に始まった2012年体制が内閣の交代を経てもなお存続することになり、アカウンタビリティーのない政治がニュー・ノーマルとして常態化することになる。

 菅内閣誕生のご祝儀相場に便乗した早期の解散総選挙がうわさされるが、現在のタガが外れた政治体制の起点に民主党の崩壊があることを想起すると、新生・立憲民主党を中心とした野党共闘が有権者に対して選択肢を示すことができるか、日本政治は重大な岐路に立っていると言わざるを得ない。

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最終更新:
47NEWS

小沢一郎氏、菅新首相をいきなり批判「憲法を知らないからこそ平気で権力を私物化する」

2020年09月17日 12時26分07秒 | 社会・文化・政治・経済

9/16(水) 20:45配信

スポーツ報知

小沢一郎氏

 立憲民主党の小沢一郎衆院議員(78)が16日、自身のツイッターを更新。この日の臨時国会で第99代首相に指名されたばかりの菅義偉氏(71)を厳しく批判した。

 「『政府として憲法改正に挑戦する』と発言した新総理。公務員の憲法尊重擁護義務を知らない」と書き始めると、「また『自衛隊の立ち位置が憲法の中で否定されている』とも述べ、戦後の政府見解を全否定。憲法の基本を理解していない点では安倍総理と同じ」と続けた。

 最後には「憲法を知らないからこそ平気で権力を私物化する。もう十分である」と突き放していた。

報知新聞社

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河野行革相 官邸での記者会見 「こんなものはさっさとやめたらいい」

2020年09月17日 11時41分26秒 | 社会・文化・政治・経済

9/17(木) 1:31配信

産経新聞
 16日に発足した菅義偉(すが・よしひで)内閣の河野太郎行政改革担当相は17日未明に首相官邸で行った記者会見で、着手する行革について「延々とここで(記者会見を)やるっていうのは前例主義、既得権、権威主義の最たるものだ。こんなものさっさとやめたらいいと思う」と述べた。

 新内閣発足や内閣改造の際は、初閣議後に首相官邸で閣僚が順番に記者会見を行うのが慣例となっている。河野氏は「この記者会見も各省に閣僚が散ってやれば、今ごろみんな終わって寝ている」とも述べた。一部閣僚は官邸での記者会見終了後、担当省庁に移動して改めて記者会見を行っている。

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菅新首相が誕生 各国の反応は

2020年09月17日 11時41分26秒 | 社会・文化・政治・経済

9/17(木) 10:48

FNNプライムオンライン


菅新首相誕生を受けた海外の反応。

アメリカのホワイトハウスは、日本時間16日夜に声明を出し、菅新首相に祝意を表したうえで、「日米関係はかつてないほど強固であり、トランプ大統領は菅首相とともに、その関係をさらに強くしていくことを楽しみにしている」と強調した。

中国は、習近平国家主席が菅首相に祝電を送り、「新時代の要求に合った両国関係の構築を推進していくべきだ」と呼びかけた。

祝電は、李克強首相も送っていて、日中関係筋は、中国の国家主席と首相が、そろって日本の新しい首相に祝電を送るのは「珍しい対応だ」としている。

トランプ政権との対立が深まる中、習指導部が日本を重視する姿勢があらためて鮮明になった形。

そして、イギリスのジョンソン首相は、日本語で「おめでとうございます」とツイッターに投稿し、両国の国旗のイラストを添えた。

また、韓国大統領府の報道官は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が16日、菅新首相に書簡を送り、「日韓関係を発展させるために努力していこう」と伝えたことを明らかにした。

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試しに自転車でヘビ坂を上ってみた

2020年09月17日 08時34分35秒 | 日記・断片

約10年ぶりに自転車に乗ってみた。
先日、亡くなった鈴木さんの奥さんが乗っていた自転車である。
鈴木さんは、電動自転車を買った西田さんから自転車を譲り受けて、自分が乗っていた自転車は破棄した。
当方の自転車はタイヤがパンクしたまま自転車置き場に放置している。
パンクを直せばいいのだが、歩くことにしたのだ。
自転車のほかあるピストもタイヤが破損したまま放置している。
取手一高の次男を自転車部に入れようしたのだが、「興味ないね」と拒絶された。
競輪学校(養成所)に入れなかった若者とスナック・リボンで出会った時、「息子さんが居たら乗せてみたら」と譲り受けたのだ。
息子が乗らないので、当方がしばらくそのピストに乗っていた時期がある。
道路を走るのでブレーキ付きだが、危ないので道路走行や止めて利根川のマラソンコース約3㌔を周回していた。
チューブがパンクしてから乗るのを止めたのだ。
初めは倉庫に保管していたのだが、息子たちが邪魔だと出したので、そのまま野ざらしとなる。
その後は、自転車置き場に移動したが、野ざらしの期間にタイヤまで劣化していた。
朝、試しに自転車でヘビ坂を上ってみた。
息切れがしたが何とか上れた。(ちなみに、ママチャリでヘビ坂を走行するは若者でも非常に難しい)
小学生たちが通学する時間帯で賑やかな声の中を通過して行く。
自転車に乗るとどうしてもスピードが出てしまうので、自重せねば。


コロナ禍 衆議院議員の解散などしている場合ではない

2020年09月17日 05時22分59秒 | 社会・文化・政治・経済

衆議院議員の解散などしている場合ではない

解散総選挙となれば、解散~公示~投開票~特別国会召集と1ヶ月半の政治空白が生じます。そんな政治空白をつくる余裕はありません。
今こそ、国会は、天下国家国民のために働くべきです。解散権の濫用などもっての他です。

河野防衛相「衆院解散は10月のどこかで」-報道

衆院議員の任期は来年10月まで。安倍晋三首相の後継を選ぶ自民党総裁選で優位に立つ菅義偉官房長官は8日のテレビ番組で、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ「こういう状況では解散とかそういうことではない」と慎重な姿勢を示した。10日午後の記者会見では、「解散は首相の専権事項であり、新内閣の話」と述べるにとどめた。

衆議院議員丸山穂高君提出新型コロナウイルス感染拡大下における総選挙執行に関する質問に対する答弁書


一について

 

答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
令和二年六月十六日受領
答弁第二三二号

  内閣衆質二〇一第二三二号
  令和二年六月十六日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員丸山穂高君提出新型コロナウイルス感染拡大下における総選挙執行に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


お尋ねの「新型コロナウイルス感染症が再び拡大するような状況下で全国一斉に総選挙が行われる場合に、選挙の適正な管理執行が物理的に困難な状況が生じる可能性」については、仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたい。
また、お尋ねの「その他に想定される様々な課題への対応策」については、今後の新型コロナウイルス感染症の感染状況等によることから、現時点でお答えすることは困難である。

二について

 衆議院議員の総選挙に際して、お尋ねの「より具体的な対策指針を設けること」については、今後の新型コロナウイルス感染症の感染状況等によることから、現時点でお答えすることは困難である。

三について

 憲法第四十五条本文は衆議院議員の任期を四年、憲法第四十六条は参議院議員の任期を六年と規定しており、その任期が満了するときは、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第三十一条第一項又は第三十二条第一項の規定により、議員の任期が終わる日の前三十日以内に衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙を行うこととされ、また、衆議院が解散されたときは、憲法第五十四条第一項の規定により、解散の日から四十日以内に衆議院議員の総選挙を行うこととされているところであり、憲法及び公職選挙法において、お尋ねの「緊急事態における国政選挙の選挙期日の延期及び国会議員の任期の延長」についての規定はないと認識している。

四について

 お尋ねは、憲法改正についての議論に関するものと考えられるところ、憲法改正については、国会が発議し、国民投票により決せられるものであること等を踏まえ、お答えすることは差し控えたい。 


泥酔女性をタクシー乗せ…女性宅で性的暴行

2020年09月17日 04時04分03秒 | 事件・事故

9/16(水) 14:06配信

日本テレビ系(NNN)

泥酔状態で帰宅していた20代の女性をタクシーに乗せて女性の自宅まで連れて行き性的暴行を加えたとして、34歳の男が警視庁に再逮捕されました。

警視庁によりますと、梶原喜明容疑者は今年6月、JR新宿駅近くで、泥酔状態で帰宅中だった20代の女性に声をかけてタクシーに乗せ、女性の自宅まで連れて行って性的暴行を加えた疑いがもたれています。

2人に面識はなく、防犯カメラの捜査などから梶原容疑者の関与が浮上したということで、調べに対し「分かりません」と容疑を否認しているということです。

梶原容疑者は先月、別の女性に対するわいせつ事件で逮捕・起訴されていて、警視庁は他に少なくとも10数件のわいせつ事件に関与したとみて、関連を調べています。


阪神選手 成績表

2020年09月17日 04時04分03秒 | 野球

チーム投打成績|試合情報|阪神タイガース公式サイト

hanshintigers.jp/game/stats_team/
-キャッシュ

背番号, 選手名, 試合数 · 打率 · 本塁打 · 打点 · 打席 · 打数 · 得点 · 安打 · 二塁打 · 三塁打 · 塁打数 · 盗塁 · 犠打 · 犠飛 · 四球 · 死球 · 三振 · 長打率 · 出塁率. 52, サンズ, 65 .301, 18, 53, 265, 226, 35, 68, 11, 0, 133, 1, 0, 2, 36, 1, 60 .588 .396. 5, 近本, 73 ..


矢野監督「阪神ファンに腹立たしい思いさせている」

2020年09月17日 03時51分54秒 | 野球

[2020年9月16日22時20分]

<巨人7-6阪神>◇16日◇東京ドーム

阪神が巨人に敗れ、今季このカードの勝ち越しがなくなった。先発の青柳晃洋投手(26)が5回途中5失点と打ち込まれ、2番手桑原謙太朗投手(34)も1回2失点と打線の勢いを止めることが出来なかった。

打線は終盤に反撃し、9回には大山悠輔内野手(25)の19号2ランで1点差にまで迫ったが、及ばなかった。巨人との差は今季最大の11・5ゲーム差に広がった。

矢野燿大監督(51)は「青柳がまずリズムを作ってくれないと。もうこれだけ投げてる立場やし、チームを引っ張るというようなところを俺らとしても期待したい。向かっていくというか、うまくやろうとしてて、そっちが先行しちゃって、一番大事な打者に向かっていくというところが、あまり感じられなかったかな」と、先発右腕に厳しい言葉を投げ掛けた。

今季早くもこのカードの勝ち越しが消滅した。阪神が巨人にシーズン勝ち越しを収めたのは、07年の14勝9敗1分けが最後。これで13年連続シーズン勝ち越しがなく、12年から9年連続負け越しのピンチだ。さらに、東京ドームでは開幕から8連敗。88年の同球場開場後最長の12年8連敗(2分け挟む)に並ぶワースト記録となった。

指揮官は「阪神ファンのみなさんには腹立たしい思いをさせていると思うんで。それは重々承知しているんでね。できること、目の前の試合を目いっぱいいくしかないんでね。ずっとそれしかないんで。やりきります」と力を込めた。


阪神の敗因は田口対策 大山、陽川ら疑問/和田一浩

2020年09月17日 03時49分29秒 | 野球

2020年9月16日21時59分

<巨人7-6阪神>◇16日◇東京ドーム

阪神は最後は1点差まで詰め寄り意地を見せたが、両チームの実力差はゲーム差に表れている。

巨人は坂本と岡本を欠く“飛車角落ち”のオーダーで7得点。一方の阪神は、先発の田口を相手に7回まで無得点。スタミナ切れの8回に田口を引きずり降ろし、終盤で6得点したが反撃が遅すぎた。

途中降板させたとはいえ、阪神の敗因は「田口対策」に尽きる。先発左腕に対し、どういうアプローチで挑んでいたのか? 疑問を感じてしまった。

田口はスライダーを低めに集め、ゴロで打ち取っていくタイプ。攻略でカギを握るのは、やはり右打者になる。まず気を付けなければいけないのは、右打者に対して入ってくるスライダーを引っ掛けて、ゴロを打たないこと。技術的には後ろ腕の右肘を体の中に入れ、バットを内側から出すこと。イメージする打球は、多少こすってもいいからフライを打つ感覚が必要になる。

しかし、阪神の右打者でできていたのは、4番のサンズぐらい。スタミナ切れの8回には大山、陽川、代打の中谷が打球を上げたが、7回までの右打者は、投手とサンズを除いて引っ張ってのゴロアウトが9打数で5個もあった。巨人バッテリーからすれば、半分以上が注文通りのアウト。楽なピッチングができたのではないか。

阪神はチームとして指示を出したにもかかわらず、選手がそれを実践する能力、技術が足りなかったのかもしれない。ただ、右のサイドハンド・青柳に対し、巨人の左打者は引っ掛けてゴロアウトになったのは亀井の第1打席(二ゴロ)だけ。左右の違いはあるが、青柳も引っ掛けさせてゴロで打ち取る投手だけに、巨人の左打者は基本的な対策はできていたし、結果にも結び付けていた。

今試合の青柳は本調子でなく、たまたまうまくいっただけかもしれない。しかし、若手の競争は激しく、生き残りをかけて必死に食らい付いていく姿勢は十分に感じさせた。これが現状での阪神と巨人の差になったのだと思う。(日刊スポーツ評論家)


「阪神をクビ」歳内ヤクルトへ「拾っていただいた」

2020年09月17日 03時45分55秒 | 野球

[2020年9月6日16時26分]

前阪神で今季四国IL・香川に在籍し、ヤクルトに入団が決まった歳内宏明投手(27)が6日、都内の球団事務所で会見を行った。「早くチームになじんで、1軍の戦力になれるように頑張りたい」と意気込んだ。正式契約も結び、背番号は「91」に決まった。

昨年限りで阪神を自由契約となっており「拾っていただいた。去年、阪神をクビになって、またプロ野球、NPBに戻りたいという気持ちでプレーしてきたので、うれしいです」と話した。

一緒に登壇した小川GMは「前回監督をしていたときにいいイメージがあって、香川で抜群の成績を残していたので、獲得することになりました。先発として評価できる」と経緯を説明した。

歳内は聖光学院(福島)から11年ドラフト2位で阪神入団。通算57試合2勝4敗、防御率4・15。昨季限りで自由契約となり、今季香川では9試合で5勝0敗、防御率0・42だった。

チームでは先発投手の立て直しが急務で、高津監督も「苦労した人は、苦労した分だけ成長していると僕は思っているので、阪神ファン、ヤクルトファンはもちろん、プロ野球ファンのみなさんに、こういう選手がここに帰ってきていい投球をしていますよというのを、他の選手にもアピールできるすごく大きな場だと思うので、期待しています」と話していた。

 

◆歳内宏明(さいうち・ひろあき)1993年(平5)7月19日、兵庫県尼崎市生まれ。聖光学院では10年夏の甲子園で8強。11年夏は2試合で30奪三振。11年ドラフト2位で阪神入団。12年9月2日広島戦でプロ初登板。14年7月30日ヤクルト戦で初勝利。17年オフに育成契約。18年7月に支配下復帰も、19年オフに自由契約。同年12月に四国IL・香川に入団。184センチ、90キロ。右投げ右打ち。


三振する球ない阪神青柳 左は怖くない/桧山進次郎

2020年09月17日 03時40分25秒 | 野球

9/16(水) 22:50配信

日刊スポーツ

巨人対阪神 5回裏途中で降板する阪神青柳(左から2人目)と浮かない表情の矢野監督(中央)(撮影・鈴木みどり)

<巨人7-6阪神>◇16日◇東京ドーム

矢野阪神は自力V消滅一夜明けも首位巨人に敗れ、13年連続巨人戦の勝ち越しなしが決まった。伝統の一戦と言われる黄金カードだが、この日も優勝マジックを3つ減らす引き立て役に甘んじ、東京ドームは今季8戦全敗で通算も3勝12敗。

日刊スポーツ評論家の桧山進次郎氏(51)は「阪神ファンも寂しがっている。悔しいでしょう」と猛虎の意地を求めた。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

【写真】若林に右前適時打を浴びる青柳

   ◇   ◇   ◇

伝統の一戦が泣いている。阪神は今季、東京ドームで8戦全敗。対巨人は13年連続勝ち越しがなくなり、この夜も優勝マジックを3つ減らす情けない役回りだった。

桧山 巨人をたたかないと優勝はない。これだけははっきりしてます。ぼくも経験していますが、巨人との直接対決を前にするとワクワクしたし、怖くもあったし、緊張もした。特に生え抜きの選手はイヤというほど味わってきた。巨人に勝たないと、絶対に優勝できない。そこは今の若手ってどう思ってるんでしょうか? 阪神ファンは寂しがってるし、悔しいでしょうね。

先発青柳は、スタメンに投手の田口も含めて9人の左打者(若林は両打ち)を並べられた。

しかも坂本、岡本を欠く2軍クラスが主体のオーダー。

だが制球も甘く、1回の田中俊の先制本塁打を手始めに、立岡、若林らの若手に打ち砕かれた。左右打者別の被打率は、右打者の1割8分6厘に対して、左打者になると3割1厘まではね上がった。

桧山 ぼくが左打席に立ったとしても、今の青柳は怖くないでしょうね。それは三振するボールがないと思うからです。

実際、24人の打者から奪った三振は1つでした。低めに投げてゴロを打たせようという意識は感じられた。でも、もともと制球力ではなくボールの勢いで勝負するタイプで、ストレートの球威を欠くのは致命傷です。

打線が奮起して8、9回に集中打で6点をかえした。だが、田口に7回まで1安打に抑えられたことと、前半の7失点が重くのしかかった。2位にいながら、首位巨人との対戦成績は3勝12敗。今季最大、11・5ゲームもの差が開いた。

桧山 巨人との差は、一言でいうと緊張感だと思います。一投一打に気を抜いていない。守備力の違いが投手を助け、走塁の細かさは打者をアシストした。

相手チームはちょっとしたスキにつけ込まれる。チームからは「いくらでも代わりはいますよ」という厳しさも伝わってくる。ただ阪神は5回に、ボーアが吉川尚の一ゴロに飛び込んで好守を見せた。そういう姿勢をファンに見せながら、勝ちにこだわって戦い抜いてほしいですね。

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G戦敵地全敗、13年連続勝ち越せず…阪神・矢野監督が謝罪「腹立たしい思いをさせている」

2020年09月17日 03時34分04秒 | 野球

9/16(水) 22:45配信

東スポWeb

矢野監督は試合後、虎党に謝罪した

 阪神は16日の巨人戦(東京ドーム)に6―7で敗戦。今季東京ドームで8連敗となり、今季の巨人戦は3勝12敗で勝ち越しの可能性が消滅した。

 意地と粘りは見せたが勝てなかった。投手・田口も含めてスタメン9人が左打者という巨人相手に先発の青柳は精彩を欠いた。制球が定まらず5回途中6安打5失点で降板。坂本、岡本を欠く相手打線を止めきれず、7回まで0―7とワンサイドゲームとなった。

 しかし8回にようやく猛虎打線が目覚める。一死満塁から中谷の2点適時二塁打、木浪の右中間への二塁打と代打攻勢がはまり4点を返す。9回は守護神のデラロサを攻め、一死一塁から大山の19号2ランが飛び出し1点差。虎党の期待は膨らんだが、最後は中川の前にボーア、陽川が連続三振に倒れた。

 あと一歩というところまで巨人を追い詰めたが矢野監督は「でもそれ以前の、昨日、今日と球際というところがうちの課題。結果がこうなってタイガースファンの皆さんに腹立たしい思いをさせていると思う。目の前の試合を目一杯いくしかないんで、それをやりきります」と語った。

 2008年以降、これで13年連続で勝ち越しが消滅した屈辱、東京ドーム全敗の悔しさにまみれた阪神。ただ何よりもまず、敵地で「1勝」を手に入れたい。

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最終更新:

大戸屋HD取締役11人中10人を解任へ コロワイド、株主提案を発表

2020年09月17日 03時26分27秒 | 社会・文化・政治・経済

9/16(水) 20:35配信

毎日新聞

大戸屋の店舗の看板=東京都内で2020年6月19日、町野幸撮影

 外食大手コロワイドは16日、11月上旬に開かれる大戸屋ホールディングス(HD)の臨時株主総会で、大戸屋HDの現取締役11人のうち10人を解任する株主提案を行うと発表した。コロワイドは株式の公開買い付け(TOB)で大戸屋株の約46%を保有しており、株主提案は可決される見通し。新社長にはコロワイドの蔵人(くろうど)賢樹専務を充てる方針。

 コロワイドの株主提案では、大戸屋HDの現取締役のうち、窪田健一社長を含む10人を解任して経営陣を刷新する。当初は全員を解任する方針だったが、経営改善を円滑に進めるため、HD傘下の事業会社「大戸屋」の山本匡哉・前社長は続投させることにした。

 新社長候補の蔵人氏は、コロワイドの蔵人金男会長の長男。新たな取締役にはこのほか、大戸屋HDの実質的創業者の長男で保有株をコロワイド側に売却した三森智仁(ともひと)氏ら7人を送り込む方針。

 コロワイドは8日まで実施していたTOBを成立させ、株式の保有比率をそれまでの19・16%から46・77%まで高めた。大戸屋HDに対し、15日までにコロワイドが打診した人事案を取締役会で決議するよう求めていたが、両社の協議の結果、臨時株主総会で株主提案を行うことにした。大戸屋HDは「臨時株主総会で株主の判断に委ねる」としており、現経営陣の残留を求める対案は出さない方針。

 大戸屋HDは新型コロナウイルスの影響もあって業績が大幅に悪化している。コロワイドは仕入れの共通化や店舗ごとに分かれた調理場の集約などによりコスト削減を進め、経営改善を図る。【町野幸】

 

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経済プレミア・トピックス
株主総会でヤマ場「大戸屋vsコロワイド」骨肉の争い
毎日新聞経済部
2020年6月24日

定食チェーン「大戸屋」などを展開する大戸屋ホールディングス(HD)と筆頭株主の外食大手、コロワイドの経営方針を巡る対立が、6月25日開催の大戸屋の株主総会でヤマ場を迎える。コロワイドは、将来の子会社化を視野に取締役の刷新を求める株主提案を提出。大戸屋は、株主の委任状を集めて阻止する構えだ。大戸屋側の激しい反発の背景には、経営方針の違いに加え5年前のある事件の遺恨があるとみられる。【町野幸】
 「株主提案には大戸屋の未来はない」――。大戸屋HDの窪田健一社長は5月25日に開いた緊急記者会見でそう訴えた。会見に先立ち開かれた取締役会では、提案への反対を決議した。
 居酒屋チェーン「甘太郎」などを展開するコロワイドは、大戸屋の発行済み株式の19.1%を保有。提案は、現在8人の取締役を12人に増やしそのうち7人はコロワイド側とする内容で、大戸屋の経営権を握るのが狙いだ。
 これに対し大戸屋は、コロワイド傘下では「コスト削減に偏った施策が進められサービス低下につながる可能性がある」と反発。窪田氏は毎日新聞の取材に、「業務提携の協議より先に子会社化を了承するよう求められた。拙速で乱暴だ」と不信感をあら…