毎日新聞2020年9月22日 東京朝刊
磁気健康グッズの販売預託商法を展開していたジャパンライフ(破産手続き中)を巡る巨額詐欺事件で、同社が破綻直前に新たなプランを相次いで顧客に提案していたことが関係者への取材で判明した。従来の商法が消費者庁から一部業務停止命令の対象とされたためとみられる。警視庁などは、元会長の山口隆祥容疑者(78)=詐欺容疑で逮捕=らが事業の継続が見込めないのに破綻ぎりぎりまで資金をだまし取ろうとしたとみている。
同社は磁石付きのネックレスやベルトなどの健康グッズを数百万円で顧客に販売する一方、商品を預かって第三者に貸し出すとする販売預託商法「レンタルオーナー制度」をうたい、年6%程度のレンタル料(配当)を約束していた。しかし、実際には集めた資金を別の顧客への支払いや運転資金に充てる自転車操業を続けていたとみられ、2017年3月期には338億円の債務超過に陥った。
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「全財産失った」 ジャパンライフ、破綻直前まで勧誘
2020/9/18 12:13 日本経済新聞
逮捕され、警視庁本部に入るジャパンライフ元会長の山口容疑者(18日)=共同
約2千億円の消費者被害を発生させたジャパンライフ(東京)元会長の山口隆祥容疑者(78)らが逮捕され、悪質な「オーナー商法」の実態解明が始まった。多額の負債を隠して破綻直前まで勧誘を続けたとされ、契約者からは憤りの声が上がる。破産手続きが進んでいるが返還額はわずかになる見通しだ。
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「全財産を失った。悔しくて寝られない日々が続いている」。ジャパンライフと契約していた神奈川県の無職の女性(79)は声を震わせる。同社に計約8千万円を支払ったが、戻る見込みは薄い。
女性は2016年に知人からジャパンライフを紹介された。面会した同社の担当者は磁気治療器を購入してオーナーになれば配当を得られるというパンフレットを示し、「1千万円出せば、月5万円入る」と説明。当初は真偽を疑ったが「解約や元本の返還が可能」という言葉が決め手となり、契約したという。
その後も担当者は「もうかるのはジャパンライフ」「今なら配当を2倍にする」と繰り返し契約の増額を誘ってきたという。女性は家族の生命保険や学資保険を解約して資金を捻出し、ジャパンライフとの契約額を積み増した。最後の契約は17年12月だった。
ジャパンライフは15年度末時点で266億円の債務超過に陥り、こうした財務状況は17年7月に取締役会にも報告された。女性が契約額を増やした時期は既に経営が悪化していたとみられる。女性は「会社からは嘘ばかりを言われ、まんまとだまされた」と憤る。
消費者庁は16年12月以降、ジャパンライフに対して計4回の一部業務停止命令を出したが、同社はそのたびに商法の名称や内容を変更し、勧誘を続けた。捜査幹部は「手法を巧妙に変えながら経営破綻のぎりぎりまで広く金を集めていた」とみる。
ジャパンライフは18年3月に東京地裁の破産手続き開始決定を受けた。この時点で顧客が出した資金を含む総額約2400億円の負債に対し、資産は4億円程度にとどまった。破産管財人が資産の保全や収集を進めているが、顧客に返金される額は多くても契約額の数%にとどまるとみられている。
ジャパンライフを巡っては、山口容疑者が15年の首相主催の「桜を見る会」に招待されていたことが判明した。同社が顧客勧誘の際に桜を見る会の招待状の写真などを使っていたことから、国会では野党が「招待したことで被害を広げた」などと問題視した。