姉妹放置死 容疑者の夫がやり場のない怒りを胸に発した言葉

2020年09月08日 19時20分02秒 | 事件・事故

9/8(火) 16:05配信

NEWS ポストセブン

竹内麻理亜容疑者が飲み歩いていた飲食店街

「女のほうに聞いてください」──やり場のない怒りを胸に、建設会社経営の父親Aさんはそう言葉を絞り出した。「女」とは、Aさんの妻で亡くなった幼い姉妹の母・竹内麻理亜容疑者(26・保護責任者遺棄致死容疑で逮捕)のことだ。

【写真】亡くなった姉妹。赤のおそろいの水玉ワンピースを着ている

 香川・高松市の繁華街から車で30分ほど。長閑な田園地帯で暮らす6歳と3歳の姉妹が高級外車の車内に15時間以上も放置され、死亡する事件が起きたのは9月3日のことだった。

「昼すぎに母親から“子供がぐったりしている”と119番通報があった。救急車が現場にかけつけた時、2人は意識を失っていて、搬送先の病院で死亡が確認された。死因は熱中症。その日、高松市では9月の観測史上最高の37.6℃を記録しました」(捜査関係者)

 母親の竹内容疑者は、救急隊員に「具合が悪くなってエンジンをかけたままトイレに2時間ほど行っていた」と話した。だが、捜査が進むにつれて、彼女の嘘が次々と明らかになった。

「防犯カメラ映像などによると、夜9時頃から翌朝6時頃までの間、竹内容疑者は市内繁華街の飲食店を少なくとも3軒をハシゴ。途中で知人男性と落ち合うと、明け方に知人男性宅に入って、昼頃まで一緒に過ごしたようです」(全国紙記者)

 子供を車に閉じ込めての不倫だったようだ。姉妹を放置したのが自宅ではなく、車中だったのは“家から連れ出さなければいけない理由”があったのかもしれない。

「当日、知人男性や飲食店店員には“子供は預けてきた”と噓をついていた。逮捕後に黙秘を続けていたのは、知人男性をかばうためだったのか……」(前出・全国紙記者)

 現場に駆けつけた救急隊員がぐったりとした姉妹に蘇生を試み、救急車で運ばれていくとき、竹内容疑者は遠巻きに見るばかりで、救急車にさえ乗らなかったという。捜査開始当初、竹内容疑者は駐車していたコインパーキングについても警察に嘘の証言をし、黙秘を続けたことで警察は無関係のパーキングを現場検証するという混乱も見られた。

 竹内容疑者は姉妹が通っていた幼稚園ではPTA役員を務めていた。近隣住民は「目立つ女性だった」という。

「この辺は古い集落で年配の住民が多いので、高級外車を乗り回す若い女性は珍しい。早朝に奥さんの車がないことがよくあったけど、いま思うと……。奥さんがお子さんを遊ばせる姿は見たことがありません」

 一方で父親のAさんは「子煩悩」として知られていた。

「三輪車に乗っているお子さんの横について近所を散歩する姿を見かけました。自宅前の駐車場で賑やかにバーベキューをしていたこともありましたよ」(前出・近隣住民)

 Aさんを知る人が証言する。

「Aさんはイケメンだし、近所では“よいパパ”と評判でしたよ。SNSにも愛らしい2人の写真を載せていたくらいですから。それでも、なぜかSNSに母親の姿がないことが不思議でしたね。まさかこんなことになるとは……」

 夫のAさんを裏切り、子供たちの命を奪った竹内容疑者。本誌・女性セブン記者が彼女の自宅を訪れると、Aさんは隣接する事務所にいた。

「いまの状況では何もお答えすることはありません」と言葉少なに語るだけ。そして、帰ろうとした記者に向かって「話が聞きたいなら、女のほうに聞いてください」と語った。

 妻がとった行動が今も受け入れられないといった様子だった。

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古賀茂明「菅“新総理”のマスコミ・官僚支配」〈週刊朝日〉

2020年09月08日 18時55分19秒 | 社会・文化・政治・経済

9/8(火) 7:00配信

AERA dot.

菅義偉総理の誕生がほぼ確実になった。8月28日の安倍晋三総理の辞任会見からわずか1週間で、自民党内の主要派閥の支持を取り付けた。

【写真】菅氏の“側近”と言われる官邸官僚はこの人

 こんな雪崩現象が起きたのは、二階俊博自民党幹事長の影響力が大きいと言われるが、中でも、総裁選挙の党員投票をやめさせたのがカギだ。

 通常の自民党総裁選では、国会議員票394票と同数の票が党員投票に割り当てられる。地方で人気の石破茂元幹事長や最近人気急上昇の河野太郎防衛相が有利になる。菅氏が出てもここで大差を付けられるのは確実だ。

 そこで、二階幹事長らは、コロナ対応で政治空白を作れないとして、党員投票を行わず、各都道府県に各3票割り当てる方法を採用した。地方票は394票から141票まで減り、国会議員票を多く集められる候補が圧倒的に有利になった。

 国会議員の投票と言っても、内実は主要派閥による談合だ。他派閥の支援を得られない石破氏は事実上敗戦が決まり、河野氏も世代交代を嫌う麻生太郎副総理・財務相に頭をおさえられ、出馬さえできないことになった。岸田文雄党政務調査会長は立候補宣言したが、これは石破氏の票を減らすためだと囁く声もある。

 二階幹事長の力が最も強くなるのは選挙の時だ。公認権や選挙資金を差配する。各議員は二階氏には絶対逆らえない。菅総理誕生直後に解散総選挙だという情報が流されたのも、菅氏支持の二階氏に皆がなびく流れを作るためだ。結果、勝ち馬に乗る意識も働いて、菅氏支持が一気に広がった。

 しかし、腑に落ちないことがある。まず、政治空白を作ることは許されないとして党員投票をやめたのに、一方で解散風を吹かせることができる理由だ。解散総選挙の政治空白は党員投票より長く大きい。普通ならマスコミがその矛盾を突くはずだが、そんなことは起きなかった。党員投票を求める声があることは報じても、これを回避する二階氏らの判断を厳しく批判する論調は皆無。

 さらに、安倍総理のスキャンダルのもみ消し役だった菅氏には、安倍氏同様批判が集中してもおかしくないが、そうした批判記事も見当たらない。

 いったい何が起きているのか考えてみた。菅氏は安倍政治を継承するらしいが、実は政策の継承以前に、もっと大事なものを継承したようだ。

 安倍政権は長かっただけでレガシーがないと言われるが、実は非常に大きなレガシーを遺している。それは、「官僚支配」と「マスコミ支配」だ。7年8カ月かけて築いたこの二つのレガシーは、安倍一強の基盤だった。菅氏は、そのレガシーを総理就任前から既に継承し、最大限活用している。

 政治部記者たちは、菅氏が怖くて菅批判の記事は書けないという。もちろん官僚も同じ。各省庁は既に、菅総理誕生後にどうやって菅忖度政策を提示できるかを検討し始めた。安倍政治の終焉で二つの支配が終わると思ったら大間違い。この二つのレガシーは、安倍・菅の二人三脚で築いたものだ。その意味では、その継承者として菅氏は最も正統な地位にある。

 菅総理誕生で、安倍政治を支えた「官僚支配」と「マスコミ支配」はさらに強化されるだろう。暗黒政治の終わりを期待した有権者は、「菅一強」のさらに暗い時代を覚悟しなければならないようだ。

※週刊朝日  2020年9月18日号

■古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など

 

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居酒屋の倒産、コロナ禍背景に急増 過去20年で最多更新が確実

2020年09月08日 18時55分19秒 | 事件・事故

9/8(火) 14:40配信

帝国データバンク
8月までに130件発生、客足戻らなければさらに倒産増加の恐れ

「居酒屋」の倒産が今年1-8月までに130件発生。過去最多となることが確実となった

 新型コロナウイルスの影響で居酒屋の倒産が急増している。焼鳥店などを含む「居酒屋」の倒産が、今年1-8月までに130件発生した。8月時点で累計100件を超えたのは2000年以降で初めてで、前年同期比で3割多く推移している。このペースが続けば、20年の居酒屋の倒産は過去最多だった19年(161件)を大幅に上回り、過去20年で最多を更新することがほぼ確実となった。

 居酒屋では2017年に施行された改正酒税法の影響もあり、ビール類をはじめとした酒類価格が上昇したほか、人手不足に起因した人件費の高騰も重く圧し掛かっていた。近年、こうしたコスト増加を吸収できずに経営が行き詰り、中小零細業者を中心に倒産するケースが相次いでいた。

 こうしたなか新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、外食産業の中でも居酒屋は国や自治体の要請により休業や時短営業を余儀なくされ、売上の急減に直面している。経営体力や内部留保などに乏しい中小・零細居酒屋などでは極度の経営悪化が懸念され、先行き悲観から事業継続を諦めるケースがさらに増加する可能性が高い。

中小零細企業の倒産が中心、 地域では東京など大都市圏で多く発生

居酒屋の負債額規模・都道府県別

 居酒屋の倒産を負債額別にみると、負債額5000万円未満が130件中105件を占め、全体の約8割が中小零細規模の事業者だった。都道府県別では東京都と大阪府が最も多く、それぞれ21件だった。このうち東京都は23区内の事業者が18件を占め、都内全体の8割超を占めた。

 居酒屋業態ではランチ営業などを行う店舗もあるものの、基本的には夜5時から明け方までの夜間営業が収益の主軸となる。そのため、時短要請などが行われた都市部では深夜帯に酒類の提供ができず、長期に渡る客足の減少や利益率低下に直面している。そのため資金力や経営体力に乏しい居酒屋が堪え切れず、淘汰が進んだとみられる。

居酒屋業態の売上は「壊滅的な状態」、 中小零細事業者中心に一層淘汰が進む恐れ

居酒屋業態の売上は、他業態に比べ回復が遅れている

 日本フードサービス協会が8月に発表した「外食産業市場動向調査」によれば、7月の外食市場は売上高ベースで前年比85.0%まで回復した。緊急事態宣言が発出された4月の売上は前年比60%台まで急減したが、各店舗で営業が徐々に再開しているほか、特にファストフードなどの業態で伸長したテイクアウト需要が牽引し、外食市場全体では厳しいながらも回復傾向にある。

 ただ、酒類の提供を行う業態では売上高が前年の半分にも満たない水準が続いている。「パブ・居酒屋業態」の7月の売上高は前年比47.2%。4月(前年比8.6%)と比較すると大きく改善したが、前年の水準にはほど遠い。在宅勤務などの広がりを背景に、住宅地が広がる郊外型店舗で売上が伸びている点は追い風だが、メイン市場となる繁華街では自治体からの休業要請に加え、会食を経由したクラスター発生など感染拡大もあり「7~8月にかけて予約キャンセルもあり売上が減少した」(居酒屋)など厳しい。そのため、同協会では居酒屋業態について、売上が急減した3月以降「壊滅的な状況が続いている」と指摘する。

飲食業態でも他の業態と同様、雇用助成金や家賃支援給付金など政府の資金繰り支援パッケージが充実。早ければ9月から開始予定となる、飲食店を支援する「Go To イート」事業にも期待がかかる。

 しかし、特に「夜の街」での外出・外食マインドはコロナ前に比べれば勢いに欠けるほか、「新しい生活様式」に対応したビジネスモデルへの再構築も同時に求められることになる。既に大手居酒屋チェーンなどでは、ソーシャルディスタンスの確保に向け店内の客席を減らすなど、感染防止に向けた空間づくりに万全を期している。

 他方、こうしたビジネスモデルの転換は収益力の低下やコストアップなど悪影響も伴う。そのため、経営体力や内部留保に乏しい中小零細業者にとっては変化への対応は容易ではない。コロナ禍以前の収益力まで回復できるか不透明ななか、飲食業者からは「新しい生活様式とリモート出勤の定着で飲食店の淘汰が進む」と懸念する声もあり、居酒屋の今後の動向に注視が求められる。

 

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前橋強殺、土屋和也被告の死刑確定へ…上告棄却

2020年09月08日 18時46分03秒 | 事件・事故

前橋3人殺傷、男の死刑確定へ 「人命軽視」 最高裁

配信

前橋市で2014年、高齢の男女3人が自宅で殺傷された事件で、強盗殺人などの罪に問われ、一、二審で死刑とされた土屋和也被告(31)の上告審判決で、最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)は8日、被告側の上告を棄却した。  死刑が確定する。  
林裁判長は「被告は職場に適応できず仕事を辞め、課金ゲームで借金を作り、強盗を決意した」と指摘。
生活苦に陥ったのは不遇な成育歴などで形成されたパーソナリティー障害が影響したとしたが、「殺害を実行したのは被告自身の意思。人命軽視の態度は強い非難を免れない」と述べた。
 一、二審判決によると、土屋被告は14年11月10日、前橋市の民家で、小島由枝さん=当時(93)=を包丁で刺すなどして殺害し、現金約7000円を強奪。同年12月16日には、同市の川浦種吉さん=同(81)=を刺殺し、川浦さんの妻にも重傷を負わせた。 
 

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配信

前橋市で2014年、高齢者3人を殺傷したとして強盗殺人罪などに問われ、1、2審で死刑判決を受けた土屋和也被告(31)の上告審判決で、最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)は8日、被告側の上告を棄却した。死刑が確定する。
 

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新内閣、疑惑解明すべきだが

2020年09月08日 18時43分22秒 | 社会・文化・政治・経済
 
 毎日新聞

行政書士・松本康志・60(京都市北区)

 この政権を一言で表すなら、「うそつき政権」あるいは「疑惑ごまかし政権」といったところだろうか。


「国家中心」から「人間中心」へ

2020年09月08日 10時11分29秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

▽人生で大事なのは希望だ。
▽青年を育てることは、未来を育てることである。
▽励ましの言葉。
何らかの人間的な触れ合いのなかでの、ほんの一言。
▽励ましは、相手を思う心の深さであり、真心の言葉。
▽特にこのコロナ時代、心の内を聴いたり、琴線に触れたりする深い対話が、とても大事だと思うんです。
その意味では、一対一で直接会って語り合うことの意味や重みといったことが、改めて認識されたと思います。ジャーナリスト・国谷裕子さん
▽「聞くこと」「耳を傾けること」-それは、「心を開く」ことであり、「相手の生命を敬うこと」です。
そこに、互いの触発が生まれ、新しい創造が始ります。
▽「国家中心」から「人間中心」へ、そして、「世界は一つ」と考えていくべき時は既に来ているはずだ。
▽必要なのは、人間の多様性の尊重。
調和と融合を図り、人類を結び合うことだ。


心に残る物語 日本文学秀作選 魂がふるえるとき

2020年09月08日 09時44分49秒 | 社会・文化・政治・経済

宮本 輝 (編集)

露伴、一葉から吉行、三島、水上勉まで。明治以後の日本の小説の中から、宮本輝さんが極私的に選んだ「今読んでほしい」珠玉の十五篇

内容(「BOOK」データベースより)

多彩で心打つ小説を次々に紡ぎ出してきた宮本輝氏。その宮本氏自身が、かつて愛読し魂を揺さぶられた短篇小説の名作を選んで編んだ読者の皆さんへの「物語の贈り物」。吉行淳之介、川端康成、武田泰淳、永井荷風らの、意外な作品も含む16篇を収録。文春文庫創刊30周年記念企画。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

宮本/輝
昭和22(1947)年、兵庫県に生れる。追手門学院大学文学部卒業。52年、「泥の河」で第13回太宰治賞を、翌53年、「蛍川」で第78回芥川龍之介賞を受賞。さらに62年、「優駿」で第21回吉川英治文学賞を受ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
 
 
 
自分ではおそらく選ぶ機会もなかったと思われる作家の名編を

いくつも読むことができました。、

ここに収録されている作品を、ひとつひとつ探して読むとしたら

知識のない自分の場合は、おそらくたどりつくまでに

けっこうな時間がかかるような気がしました。

こうして選集として一冊にまとめられているというのはうれしい。

最初に収録されている、開高健の「玉、砕ける」に特に圧倒されました。
 
 
 
宮本輝氏が厳選した日本文学短編秀作選。明治〜昭和にかけてのそうそうたる名作家たちの短編が16編収められている。
 様々な特色ある作品が読めるので、ある意味お得な1冊。明治〜昭和初期の匂いが色濃く立ち上がる作品ばかり。
 ひとつ選ぶとすれば川端康成の『片腕』。奇怪で妖艶な雰囲気に圧倒される短編だ。
 
 
1 玉、砕ける   開高 健
  * 「玉」とは、垢すりでできた垢の玉。

2 太市      水上 勉
  * 学校に来られなくなった太市は家で女郎蜘蛛を飼っていた。

3 不意の出来事  吉行淳之介
  * 密通がヤクザの情夫にバレて強請られるが……、とんちんかんな顛末。

4 片腕      川端康成
  * 女が自分の片腕をはずして男に与える。村上春樹の世界だなこりゃ。

5 蜜柑      永井龍男
  * 別れ話をした帰り道、オート三輪車が横転して道路に蜜柑が散乱していた。

6 鶴のいた庭   堀田善衛
  * かつて栄華を誇った廻船問屋が、屋敷の庭でつがいの鶴を飼っていた。

7 サアカスの馬  安岡章太郎
  * 老いぼれ役立たずと思っていた馬が、サーカスの花形だと知ったときの驚き。

8 人妻      井上 靖
  * 自分の子に接する別人のような人妻の横顔を見て、若者からツキ物がおちる。

9 もの喰う女   武田泰淳
  * ムシャムシャという感じではなくて、いつのまにかスーッと消えてしまった風。

10 虫のいろいろ  尾崎一雄
  * 瓶の中に蜘蛛を閉じこめて半年。センをとった時、間髪を容れず、脱出した。

11 幻談      幸田露伴
  * 舟で魚釣りに出て、浮き沈みする釣竿を引き上げると死体が竿を握っていて離さない。

12 ひかげの花   永井荷風
  三十代の初めに再読したとき、最後の、塚山に届いたおたみからの手紙で、あの時代に娼婦として生きる女の考え方や、世の処し方に、なんだか呆気なく突き放された気持ちになり、この小説の凄さを知った。(「あとがきにかえて」)

13 有難う     川端康成
  * 定期乗合自動車の運転手が避けてくれた大八車など皆に「有難う」と言い続ける。

14 忘れ得ぬ人々  國木田独歩
  * 磯を漁つてゐる男、馬子唄をうたう壮漢、琵琶僧らを情景豊かに思い出す。

15 わかれ道    樋口一葉
  * 誰からも慕われる仕事屋のお京が、妾となって長屋を出て行くのを止める男。

16 外科室     泉 鏡花
  * 手術を受ける伯爵夫人が、うわごとを聞かれたくないから麻酔なしでやれという。
 
 
 
本の目次のページで
開高健、武田泰淳、安岡章太郎、堀田善衛、
戦後派の近代文学者の名前がある。

どれもこれも強烈である。

一番書きたい事は書かないものです。
書かずに読者に感じさすのです。

以前ある編集者にこの言葉を聞かされたが、
ここに掲載されている小説は皆、これである。

芸術とは、分野を超えて、
こうでなければならない、と、
見せつけられているようである。
 
 
 
宮本輝氏による秀作選。
永井荷風、川端康成、国木田独歩。泉鏡花、幸田露伴、水上勉・・・。名だたる文豪が名を連ねている。
文章には匂いがあるということを痛烈に感じさせる。
現代小説しか読んでこなかった身にはおおげさではなく衝撃だった。
<小説には百人百様の読み方があり、またそうであるべきなので、ここに収めさせて頂いた小説に初めて出会う読者の真っ白な心にゆだねたい>とは宮本氏のあとがきである。
時代背景など、なじみのないものもあるだろう。難解なものもあるかもしれない。しかし、“何か”を感じるはずである。それは一体何なのか?
その正体をすぐに理解しようと急ぐことはない。いつか腑に落ちるときがくるかもしれない。いつまでたってもぼんやりとしたままかもしれない。しかし、あなたの心に残っている限り、いつでも取り出して確かめることができる。
そんな「本の読み方」を思い出させてくれる一冊。
 
 
 
本書に収録されている小説と近代文学との質の違いには驚嘆しました。
それはまさしく質の違いとしか表現できないもので、それまで一通りしかないと思っていた感性、情緒というものが本書を読み終えた後100通りも200通りもあるような気がしました。
近代文学と比べ、具体的な違いを述べろといわれればそれは難しいことなのですが、個人的には余韻の残し方に圧倒的差があると思いました。
蛍の光が、ある時、ふっと消える、もしくは、何かが一斉に芽吹く、大体小説というのは失礼ながらそのようなものだろう、と思っておりました。
しかし・・・うまく表現できない・・・他の要素が・・・絡み合い絡み合い、最後を締めくくっているのだと思い知らされました。
私は中でも川端康成の「片腕」がお気に入りで、超現実世界での話なのですが、今ではもう書かれる事の無い美しい世界観、男性と女性世界の極地を垣間見れた気さえします。
ここまでレビューを書かせていただきながら、絶対他人には知られたくない、秘蔵の書にしておきたい、という気持ちさえ沸いております。まさしく、これこそ名作集なのでしょう。
 
 
宮本輝編。
読んだことあったり名前聞いたことあったりする
作家さんの作品が収められています。
この本に収められている作品。

こういった風情に憧れたりもするのです。

この本をきっかけに他の作品も読んでみたいなぁ、って思った。
 
 
宮本輝が選んだ16篇の短編集。 2016年に読了していた。 永井荷風のひかげの花が良かった。戦後間もない頃、非合法の娼婦として生きる女逃れディテールが丁寧に記されている。著者ならではの筆致だ。
 
 
 
これはほんとに内所のお話ですよ。いつそ女給さんになつたやうな心持で、お客様とどこへか遊びに行つたやうな心持におなんなすつたら。ねえ、奥さん。身を捨ててこそ浮瀬ですからね。檀那さまのいらつしやらない時、内所でお知らせしますから、家へいらつしやいまし。婆さんはお千代が怒りもせず泣きもせず、すこし身を斜にして顔さへ赤くした様子に、此方の言つた事は十分通じたものと思つた。顔を赤くしたのははいといふ承諾の言葉よりも却て意味の深いものと思つた。ひかげの花
 
 
 
ひとつひとつの物語に感想を書くべきなのだが到底255文字に収まらない。宮本輝が選ぶ日本文学短編集。素晴らしい文章を残してくれた先人たち、有難う。どんな時代になってもどんなに価値観が変わってしまっても思い出せるコトが残されているってコトに希望を感じます。一番ふるえたのは川端康成の「有難う」だね。
 
 
 
永井荷風のひかげの花が良かった。
 
 
 
宮本輝が大好きなので。太市、片腕、ひかげの女、外科室、わかれ路が印象的でした。旧仮名遣いってなんて素敵。でも教養不足で時折わからない部分があり残念だったので、いつか再読したいです。
 
 
 
日本文学はあまり読む機会がなかったので、宮本氏のお薦めならば読んでみようと思い、つまづきながらも頑張って読んだ。宮本氏が選ぶだけあって、彼の作品にも通じる、繊細な描写、ちょっとした心の動き、力強く生きる人々が書かれた作品が選ばれているように思った。一番良かったのが、尾崎一雄の「虫のいろいろ」。病に伏しているからこそ、丁寧に虫を観察し、それにとどまらず、もし、人間も誰かに観察されていたら、自分の行動が誰かに規制されていたら…、と想像する着眼点に驚いた。
 
 
 
 
宮本輝氏編の短編集。特に印象的だったのは、数奇な男女関係が描かれた永井荷風の「ひかげの花」、エロチックで象徴的な川端康成の「片腕」、もやのかかったような幸田露伴の「幻談」など。短編には短編の味がある。長編にはない、簡潔とした切れ味鋭さが魅力だ。
 
 
 
 
宮本輝が選んだ日本の名作短編集。どの作品も鮮烈で、日本語の美しさを堪能した。中でも川端康成の凄まじい力になぎ倒され踊子や雪国だけで読んだ気になってた自分を慚じる。 ○「片腕」泰山木の花の露のようなエロティシズムそして狂気を帯びたフェティシズム。頁を繰るたびことばの瑞々しさと紡ぎだされるイメージの生々しさに何度も息が止まった。どこからこんな表現が出て来るのかこの圧倒的な力は翻訳で伝わるのか。 ○「有難う」こちらは秋の色彩豊かな温かい名画。言葉で絵画を描きながら同時に音楽を奏でているよう。ただただ溜息。
 
 
 
 
宮本輝氏が選んだ魂の短編集、さすがにおぉっと思いした。浅田次郎厳選もあるみたいで読みたいです。
 
 
 
宮本輝氏の魂をふるわせた本とはどういうものだろうと、図書館で見つけて読んでみた。うまく説明できないけれど、短い中に物語があるなーと感じた。井上靖の「人妻」はほんとに短いのだけど、真実があった。川端康成の「片腕」は理解不能だった。。この本で選ばれた作品の尺度は「おとなでなければその深さがわからないもの」だそうだ。魂がふるえるほどではなかった私はまだおとなではないのだろうか。
 
 
 
宮本輝が選んだ短編集という事で手に取ってみた。おそらくこの本で出会わなければ、読まずじまいだったであろう作家の作品を読む機会を与えてもらった。次の六つが特によかった。玉、砕ける/開高健、片腕/川端康成、人妻/井上靖、虫のいろいろ/尾崎一雄、ひかげの花/永井荷風、忘れえぬ人々/国木田独歩。同シリーズに浅田二郎、沢木耕太郎、桐野夏生の選集があるので、読んでみようと思う。
 
 
 
 
好きな作家の事をより知りたいと思った時、その作家が書いた作品を読むのは勿論だが、その作家が好きな作品を読むというのも有効な方法だろう。折に触れて読みたくなるこのシリーズも本書が三冊目。なかなか取っ付きにくい「文学」に触れる良い機会を与えてくれる。確かに時代も違えば、価値観も違う。それでもどこか共感する部分に出会えるのは、そこに人間の普遍性があるからなのかも知れない。川端康成の妄想、井上靖の切れ味、尾崎一雄の着眼点。永井荷風の「ひかげの花」は、愛すべきだらしなさを持ちながら、健気に生きる人々の生き様を見た。
 
 
 
 
宮本さんの「本をつんだ小舟」に掲載されている本とはまた異なった選集です。この本は日本文学から選んだものに限定されています。副題の「魂がふるえるとき」にもあるように、印象は大きいものから小さいものまであるのですが読んでみて何かしら余韻の残る作品が多いと感じました。このシリーズも6人の作家が書かれているのでほかのも楽しみです。
 
 
 
宮本輝が薦める短編集というところに惹かれて読んだのだが、「魂がふるえる」作品には出会えなかった。確かに珠玉の作品ばかりだが、どんな作品に感動するかはやはり人それぞれだなあと思わざるを得ない。さすがだと感心したのは、幸田露伴「幻談」と永井荷風「ひかげの花」の2編。武田泰淳「もの喰う女」と尾崎一雄「虫のいろいろ」は最近読んだ岩波文庫「日本近代短篇小説選」全6巻にも入っていた。
 
 
 
 
My巨匠、開高健の名前に惹かれて読みはじめました。「玉、砕ける」は何度読んでも素晴らしい。普段、日本の古典文学をまったく読まないワタクシなので、それ以外の短編も興味深く読むことができました。とりわけ川端康成「片腕」のエロさときたら。ぶっとんでるよ、まったく。
 
 
 
作家が選んだ、日本文学の傑作短編集。永井荷風、国木田独歩、泉鏡花などなかなか手がのびない作家もおさえてるのでありがたい(意外に読みやすく面白い)。そしてやっぱり、川端康成の存在感。並みいる大御所のなかで、唯一2編収録されてるのも納得。
 
 
 
泉鏡花氏、川端康成氏、吉行淳之介氏の作品は既読。蜘蛛をモチーフにした作品が二編(水上勉氏「太市」、尾崎一雄氏「虫のいろいろ」)。いずれも蜘蛛の得体の知れなさがよく出ている。旧仮名遣いのものはそのまま収録されているのと、ようやく樋口一葉(「わかれ道」)が読めたのがよかった。宮本さんの編まれたアンソロジーということで、好みが垣間見られる。
 
 
 
 
宮本さんのあとがきに、「優れた小説かどうかは、読む人の人間としての容量ししだい」と書かれていた。まだまだ修行がたりません・・・。永井荷風の「ひかげの花」はとてもよかった。
 
 
 
 
宮本輝さんが是非に読んでほしいと思う秀作短編集。井上靖、川端康成、国木田独歩(敬称略)など名だたる作家の作品だが、旧仮名遣いを読み慣れていない私には骨の折れる本でした。故に残念ながら魂はふるえませんでした。自分の読書容量の浅さを思い知りました。
 
 
 
 
図書館に行ったときにタイトルが目に止まったので、 借りてきて、今、読んでるよ。 全部で16作品が入ってるけど、9つ目の「もの 喰う 女」まで読み終わったところ。ただ、川端康成さんの 「片腕」はパスしたけどね。だって、女性の片腕が しゃべったりする物語で、ちょっと気色悪かった からね。 魂がふるえたかどうかは、よくわからないけど、どの 作品も心に残るのは確かだよ。水上勉さんの「太市」は、 女郎蜘蛛を飼う子どもたちの話だけど、今までに 読んだ9作品の中では一番、心に残ったかな。
 
 
 
 
宮本 輝さんが、かつて愛読し魂を揺さぶられた純文学の中から、短篇小説ばかり16篇を選んだ短編集です。 旧仮名遣いや旧漢字遣いのままの文章なので、ちょっと読むのが辛いものもありましたが、思っていた以上に面白い小説が多かった。 気に入ったのは、以下の6篇。 「玉、砕ける」 開高健 「片腕」 川端康成 「蜜柑」 永井龍雄 「人妻」 井上靖 「ひかげの花」 永井荷風 「外科室」 泉鏡花 特に永井荷風が気に入ったので他にも読んでみようと思う。
 
 
 
 
「魂がふるえるとき」というタイトルに惹かれて手に取った。宮本輝という作家にのめり込む前のこと。 川端康成の『片腕』、井上靖の『人妻』に私は心ふるえました。宮本輝さんは『人妻』の作品について、“果実の一滴”と言う。どちらの作品も、稲妻の頭頂部から入って身体を縦にひき裂くような、ある一つの轟に一瞬自由を奪われたような、感覚がします。この本を読んで川端康成の作品を知り、川端康成を読もうと思いました。
 
 
 
 
 
 
 
宮本輝が選んだ日本文学短編集。古いものが多く、読みずらいものもあったが、普段読まないものばかりだった。ひかげの花が良かったです。
 
 
 
 

阪神が近本の”とんでも悪送球”でG倒失敗し3位転落…矢野監督が名指しで選手批判をしたが本当の敗因はどこにあるのか?

2020年09月08日 09時35分35秒 | 野球

9/8(火) 6:17配信

THE PAGE

G倒に失敗した阪神の矢野監督は「今日は近本で負けた」と”とんでも悪送球”の近本を名指して叱咤したが…(写真・黒田史夫)

阪神が7日、甲子園で行われた巨人戦に2-3と惜敗、3位に転落して首位巨人とのゲーム差は「8.5」に広がった。敗因のひとつは守りのミス。

近本光司の本塁への悪送球で先制され、木浪聖也のエラーが巨人の追加点につながった。試合後、矢野燿大監督は、「近本で負けた」と名指しで叱咤激励したが、これでチーム失策数は両リーグワーストを更新する「51」。

昨年から続いている守備力アップの課題を克服できておらず、そもそものチームマネジメント力を疑問視する声もある。阪神は、再度、巨人に挑戦する資格をキープすることができるのだろうか。

近本のミスでタッチアップ2失点
 まさかの悲劇に甲子園が静まり返った。
 0-0で迎えた3回一死満塁。巨人の松原がセンター方向へ打ち上げた打球は浅かった。三塁走者の大城は、一度タッチアップのスタートを切ったが、数歩であきらめストップした。

だが、その状況を把握していなかった近本はバックホーム。雨は降っていなかったが、なぜか滑ったかのように手元が狂った。その送球は大きな弧を描き、キャッチャー梅野の遥か頭上をこえていき、バックネットにワンバウンドで当たった。とんでもない“大悪送球”である。さらにそれをカバーしなければならない高橋もダイレクトで捕球できずにクッションボールを処理することになり、大城が余裕で先制のホームを駆け抜けた。

 近本の判断ミスと準備不足。ここは内野のカットマンに返すだけで良かったのだ。中5日で巨人戦に合わせてマウンドに上がった高橋は、コントロールに苦しみながらもメルセデスとの投手戦を演じていたが、緊迫の糸が切れた。

 守りのミスはまだ続く。
 続く4回だ。先頭の岡本の打球はショート正面へ。だが、木浪の足が止まっていた。打球を待つ間にバウンドが変わり後ろへ弾いた。ミスが手痛い失点につながるのが今季の阪神である。一死から中島に右中間への二塁打を許し二、三塁となって高橋は、大城を3回と同じような浅いセンターフライに打ち取った。犠牲フライとしては難しい打球だったが、三塁の岡本は躊躇せずタッチアップを仕掛けた。近本の弱肩と3回のミスの影響を考慮しての判断だろう。近本は今度は送球のコントロールを意識し過ぎたのか…ボールに勢いのないバックホームは、ワンバウンド、ツーバウンド、スリーバウンドとなって梅野のミットをすり抜けていった。近本はダイレクト送球ではなくカットマンを使った中継プレーを選択すべきだったのだろう。

 

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横浜9歳女児オンラインゲーム誘拐》容疑者実母が告白60分「児童誘拐ニュースを見て、いつもハラハラしていた」

2020年09月08日 06時30分06秒 | 事件・事故

9/8(火) 6:01配信

文春オンライン

神奈川県横浜市青葉区に住む小学4年生の女児(9)を2日半に渡り車で連れ回したとして、9月5日未明に未成年誘拐の疑いで現行犯逮捕された東京・葛飾区在住で無職の大竹晃史(あきひと)容疑者(38)。女児は無事に保護されたが、30キロ以上も距離の離れた場所に住む2人の接点が「オンラインゲーム」だったことが大きな波紋を広げている。

【画像】大竹容疑者が少女を泊めていた葛飾区の自宅

「女児は2日午後2時頃、母親に『友達と遊びに行く』と話して外出した。横浜の自宅近くの公園で友達と遊んだ後、午後4時頃に女児の自宅近くの路上で大竹容疑者に『一緒にゲームをやろう』と車に乗せられ誘拐された。女児は親のスマートフォンでオンラインゲームをよくしていた。大竹容疑者とはオンラインゲームを通じて知り合い、ゲームの通話機能を使用して女児と連絡を取っていたようだ」(警察関係者)

 警察は防犯カメラから大竹容疑者の自宅を特定。9月5日午前3時半頃、自宅から車で出かけようとした大竹容疑者を逮捕した。大竹容疑者は取り調べに「女児が帰りたがっていたので返すつもりだった」と話しているという。

 女児が保護された大竹容疑者の自宅は東京・葛飾区の閑静な住宅街にある。2階建ての自宅の窓は雨戸で締め切られ、玄関横には男性物の傘が並べて置かれていた。大竹容疑者は2010年から実家を離れ(父とは同じ年に死別)、この家で一人暮らしをしているが、近所との付き合いはほとんどなかった。

離れて暮らす実母が、初めて重い口を開いた
 多くの謎を残したままの誘拐事件。「文春オンライン」の取材に大竹容疑者と離れて暮らす実母が、初めて重い口を開いた。

――息子である晃史容疑者が逮捕されて、今の心境を聞かせてください。

「とんでもない事件を起こしているので、まずは被害に遭われた女の子には、申し訳ないの言葉では言い切れない気持ちです。ご家族や関係者にも不安や不幸を与えてしまって。これからも辛い気持ちにさせてしまうんだろうなと、申し訳ない、どうしたらいいのだろうかという、それだけです」

――事件についてどのように知ったのか。

「警察からの連絡です。(神奈川県警から?)はい。(電話で?)はい。警察は9月4日から自宅を張り込んでいたそうです。

 地域、社会のみなさんにも不安を与えてしまったし、申し訳ないとしか言えない。それ以上のことは言えないです。何を言っていいんだか……」

――事件について思い当たる原因はありますか?

「中途半端なことを私が言ってしまうことで、被害者の方、関係者の方が傷つく気がして、歪められてとられてしまうのではないかと……。私も怖くてテレビの報道は見られていないんですけれど、周囲の人から、『こういう報道がでている』と連絡をもらって、ネットの記事を見て。息子が悪いので、息子について言われるのは当たり前で、仕方がないです。報道されるにつれ、女の子とご家族に対して、傷口に塩を塗るようなことになると考えると簡単には言えないです」

――晃史容疑者に言いたいことは。

「……そのうち私も面会すると思うので、それはその時までに、何をどういうべきか考えます。今は何をどう言っていいのか、ちょっとわからない」

――晃史容疑者はもともとゲーム好きだった?

「幼い頃はリビングでテレビゲームなんかをしていましたけど、ある程度の年齢になってからはパソコンのゲームをしていたのは知っています」

――晃史容疑者は結婚していますか?

「ごめんなさい。肯定も否定もできないです。何よりも女の子の方が大変だと思うので。他の人たちに迷惑がかかってしまうのが申し訳ないので、中途半端なことは何も言えないです」

社会常識から外れるようなことをやってしまうのではと……
――晃史容疑者については、お母さまが一番よくご存知だと思いますが、どんな性格でしょうか。

「今まで年の離れた子に対する事件や児童誘拐などのニュースを見て、いつもハラハラしていたけど、解決方法がなかった。年の離れた女の子を誘拐するような、そういうことが起こるのは想像していなかったです。感情のコントロールがうまくできなかったり、コミュニケーションがうまくとれなかったりするようなことがあると、いわゆる社会常識から外れるようなことをやってしまうのでは、というハラハラ感がありました。

 ネットで調べたり、勉強して専門のところに相談もしました。でも、結論としては、何もなくて。(興味の)対象が子供とかではなくて、発達障害の傾向が今までの言動の中にありました。誰にでも(性格の)凸凹はあると思いますが、その凸凹の激しい部分が見えて、社会常識と外れるようなことをやってしまうのではと思っていた。でも解決にはつながらなかった」

――最後に晃史容疑者と会ったのは?

「逮捕されたのは、(9月5日未明)夜中でしたが、その前日の昼間に私の家に来ていました。(近所の)ファミレスでご飯を食べて、ちょうど家にケーキがあったものだから、うちに上がって普通に食べていた。一時期は私との会話も難しい激しい時期もあったが、最近は柔らかくなり、普通に会話ができ、少しずつ社会性がついてきたのかなと安心していたのですが……。逮捕される直前の夜の出来事で、『もう夜も遅いから帰る』ということで。めったには会わないけど、たまたま3カ月ぶりに会ったんです」

――最後に会ったときに変わったことは?

「最近は比較的いい状態だったので、この子も落ち着いてきたんだなと思って、まさか女の子が家にいたなんて、と。警察から電話が来た時も何を言っているのか、わからなくて。何をやったんだろうと」

――お金の援助はしていた?

「私はしていないです」

――晃史容疑者と別々に住まわれている理由は暴力ですか?

「そうです。そういうことがあったので」

7年くらい前から蹴ったり叩いたりの家庭内暴力
――どのようなときに暴力を受けたのですか?

「7年ぐらい前からの話です。基本的に暴力を振るうような子じゃなかったけど、息子自身が自分の中で抱え込んでいるものをきっとうまく表現できなくて、自分流の表現の仕方が、周りに理解してもらえない、そこでまた落ち込み、心の闇に入ってしまう、内向的なところで抱え込んでいて。それがだんだん言葉が強くなり、エスカレートし、蹴ったり叩いたりといった暴力に繋がった。

 カウンセリングに連れていくこと自体も大変でした。本人は自分がおかしいと思っていないから、『精神病扱いしやがって』『お前がおかしいんじゃないのか』などと言われるから、じゃあお母さんもおかしいと思うから一緒にいこうと。その連れていくプロセスでもいろんなエネルギーをつかってはじめて頑張って連れていったけど。それなりにちゃんとしたところに連れて行っても、発狂するわけでもないし、ある程度の場面ではちゃんとできる子だからということで、カウンセリングの病院と連絡先が載ったようなリストの紙をもらっただけで、全然ちゃんと診断もしてもらえなかった」

――別居してからの晃史容疑者の様子は?

「少し前に、突然電話がかかってきて、本人から『鬱かもしれないし、病院にも行くし、ゲームもやめる』と。ずっとゲームをやっていて自分でもおかしくなっているのを自覚しているような言い方をしていました。『ハローワークに行って、仕事をすれば体調がよくなるから』と突然言われた。そんなこともあったので、知り合いの精神科も予約したんですけど、予約がとれない間に、本人も『ハローワークに行った方が早い』と(言っていた)。病院の受付の人には、『また新しい職場でうまくいかないかもしれないし、傷つくことがあるかもしれないから、まずはちゃんと調べた方がいいのでは』と言われました。本人がやろうとしているのを止めるのが一番よくないとは思っているんだけど、そうこうしているうちに年末になってしまって。そこの病院にも年末年明けには行けたけど、ちゃんとした結論はもらっていません。でもそうこうしているうちに就職してしまって、本人的にも仕事が始まったので、もう(病院には)行けないと」

思春期から言葉が激しかったが、反抗期だと思っていた
――家庭内暴力については?

「私が『仕事をしなさい』というプレッシャーに対しての反応だったんだと思います。外で暴力を振るったというような話は聞いていないし、そういうことはしない子だと思います。ただ言葉が激しい。コミュニケーション能力が低いので。小学校ぐらいまではいわゆるいい子で、友達とも仲良くやっていたし、思春期ぐらいから少し……。でも、いわゆる反抗期だと思っていました。自分が思っていることをうまく言えなかったり、繊細なところがあるので。

 ただ言葉づかいに関しては、(私が)『それは世間の人からしたら嫌(な言葉)だよ』ということを言っても、(息子はその話を聞かず、私が)論破されるわけですよ。話にならなくて、興奮してガーッと言われてします。家庭内だけでなく、仕事先でもうまくいかないということは、そういうことなんでしょうね」

――晃史容疑者との会話は億劫になっていった?

「億劫というか怖い。くだらない雑談だったら問題ないけど、ちょっとそれらしい話になると、常識と外れた言動が多いと思っていた。そういう部分を指摘すると、まずいなと思っていました。仕事上での話とか、少しでも社会勉強になればと思って話したけど、癇に障るみたいで。心理学の勉強をしているお友達も心配してきてくれて、リビングで(私と)話しつつ聞こえるような感じで『息子さんがこっちに来てくれるといいんだけどね』と話していたけど、出てきませんでした」

メンタルケアに関することは相談してきている
――逮捕からこの数日間、どんな気持ちで過ごしていますか?

「女の子のこと、ご家族のこととかを考えていました。でもどうすることもできない。息子にはきちんと事実を伝えて、どう謝罪するかと更生するか、常識的な言動ができていないことを自覚してほしい。繊細なので、周りの言動に傷つくことがあるということも(本人が)言っていて、それは事実なんだと思う。だけど、他の人があなたの言葉で不安になったり傷ついたりっていうのを少しでも理解できるようにしてほしい。そのためにどうしたらいいのか。今までも探してきたけれど。本人の意識、思考の癖を客観的に考えられるようなケアができればと。今までも探してきたけれど、今回このような事件になってしまったので……」

――どうしたら更生できると思いますか?

「私がお聞きしたいです。今までもメンタルケアに関することは相談してきているんです。だから逆に私が教えてもらいたい。今回の逮捕で、更生施設のようなところに入れるならと思ったけれど、警察の方には『未成年者ではないので』と言われてしまって。

 似たような苦しみをもっている人は世の中に大勢いるから、いわゆる『8050問題』とかで単に無職ということだけでなくて、その年代で無職ということはメンタル面で何かしらあるんです。端から見れば、甘やかしてると思われるかもしれないけど」

――小学生に対する興味は昔からあった?

「昔から男女問わずどんな子でもよくしてくれる。認識が甘すぎると怒られそうですが、小さい子を普通に可愛がって面倒をみる、ということだと思っています。ご家族がどう思うのか祈るような気持ちだけど、オンラインゲームで仲良くなって、近くのお友達にも東京の友達と会うからと話していたと聞いたから、そのノリの延長であったと信じたい……とはいえ、小学生の子だから、(息子には)頭働かせろと言いたいけど、単純に遊んでいて楽しい、それだけであってほしいと。でもそんなに甘いことじゃない。いくら遊びだったとはいえ、(家に)泊めるなんてあってはならないことです……」

 母親は60分以上にわたって話してくれたが、その目には涙を浮かべていた。

 

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「やたらと質問が長い記者はバカだ」 ビートたけしの大正論

2020年09月08日 04時06分28秒 | 社会・文化・政治・経済

2017年12月25日掲載

窪田誠

今年も様々な記者会見が話題になったが、定期的に開かれているもので、多くの耳目を集めたのは菅官房長官と東京新聞記者との応酬だろう。強面の官房長官に対して怯まない姿勢に賛辞を送る人もいたが、一方で「質問が長すぎる」といった批判の声も見られた。

 この記者はともかくとして、たしかに質問がダラダラしていてよくわからないケースは珍しくない。

 ビートたけしも、その手の記者の「被害」に数多くあったという。ベストセラーとなった新著『バカ論』の中では「こんなインタビュアーはイヤだ!」という項を設け、過去に出くわした酷いインタビュアーを紹介している。特に若い頃は酷い目に遭うことが多かったようだ(以下、同書より抜粋・引用)

 ***

『バカ論』
ビート たけし 著

 こんなインタビュアーはイヤだ!

①やたら質問が長い
「今回の映画ですが、たけしさんとしてはどういう意図でお撮りになったのか知りたいのですが、その前に前作の評判について、あるいはその後、本作を撮影するに至るまでのプロセスについて教えてほしいのですが、やっぱりまずは本作の見どころについて教えて下さい」
 もう何を答えればいいのかわからない。

②インタビュー相手の名前や作品名を最後まで間違える
 これはもう論外。さすがにおいらの名前を間違える奴はあまりいなかったけど、映画のタイトルを間違える奴はしょっちゅういた。特においらの映画2作目「3-4X10月」は、「さんたいよんえっくすじゅうがつ」と読むんだけど、みんな「3引く4は……」なんて言っちゃって大変だった。

③取材の途中で自分の話を始める
「新作を試写で見たのですが、とても感動しました。今回の映画は、往年のジャン=リュック・ゴダールというか、ヌーベルバーグの映画を彷彿とさせるものでした。私が初めてゴダールの映画を観たのは1960年のこと。その時に一緒に観たのは当時付き合っていた彼女で……」って、とちゅうから自分の思い出話を始める奴。

④「たけしさんは、これこれこう考えたんじゃないですか」と答えを勝手に言う
 そういう奴に限って、相づちがタメ口。「やっぱり、そうだったんだあ」なんて。お前はあやしい占い師か。

⑤やたらと携帯が鳴る
 質問に答えようと思った瞬間、「あ、ちょっと待ってください。……もしもし……」。で、戻ってきて、「すいません、もう一度初めからお願いします」って、携帯の電源ぐらい切ってくれ。

⑥ファンを連れてくる
 女の子を3人ぐらい連れてきて、
「ほらほら、こっちこっち。見ろ、たけしだよ」
「本当だあ」
「お前たちは、後ろで見てな。さあ、始めましょう」

 ***

 他にも「一度も目を合わせない」「口の周りに米粒がついている」「やたら痰がからむ」「ずっとカツラを気にしている」等々、さすがに過去膨大な取材を受けてきただけあって、たけしの攻撃は止まらない。往々にして取材者は自らを透明な存在のように思いがちだが、実は取材相手や視聴者に観察されていることを忘れてはならないようだ。

デイリー新潮編集部


「ユーミン批判」の白井聡氏、朝日新聞の言論サイトでは安倍首相に“罵詈雑言”

2020年09月08日 03時44分17秒 | 社会・文化・政治・経済

9/7(月) 11:15配信

デイリー新潮
ユーミンには謝罪

投稿や連載記事に多くの批判が寄せられた(京都精華大学公式サイトより)

 知性も教養も兼ね備えた学者が、なぜこんな投稿を──呆れた向きは少なくなかっただろう。政治学と思想史が専門の白井聡・京都清華大学専任講師(42)が、自身のFacebookで松任谷由実(66)について「早く死んだほうがいい」と書き込んだのだ。

 ***

 8月28日に安倍晋三首相(65)が辞任を表明。翌29日、サンケイスポーツ(電子版)は「芸能界にもアベノショック…松任谷由実、会見見て『泣いちゃった。切なくて』」の記事を配信した。後に問題となる箇所を引用させていただく。

《安倍夫妻と親交が深いシンガー・ソングライター、松任谷由実(66)はニッポン放送「松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD」で、「テレビでちょうど(会見を)見ていて泣いちゃった。切なくて」と思いを吐露。安倍氏とは「私の中ではプライベートでは同じ価値観を共有できる、同い年だし、ロマンの在り方が同じ」と明かし、「辞任されたから言えるけど、ご夫妻は仲良しです。もっと自由にご飯に行ったりできるかな」などとねぎらった》(註:全角数字を半角にするなど、デイリー新潮の表記法に合わせた、以下同)

 これを読んだ白井氏は、自身のFacebookで記事を引用し、以下のように論評した。

《荒井由実のまま夭折すべきだったね。本当に、醜態をさらすより、早く死んだほうがいいと思いますよ。ご本人の名誉のために。》

 念のために言っておくと、荒井由実は松任谷由美の旧姓と旧芸名だ。そして白井氏だが、気鋭の若手論客で、論壇での評価も高い。

橋下徹氏が批判
 父は2002年から10年まで早稲田大学の総長を務めた白井克彦氏(80)。白井氏も早大の政経学部から一橋大学の大学院に進み、10年に「レーニンの政治思想」で社会学博士となった。

 13年には『永続敗戦論――戦後日本の核心』(太田出版、現在は講談社+α文庫)で石橋湛山賞などを受賞、大きな注目を集めた。

 とてもではないが、ユーミンに向かって「早く死んだほうがいい」などと暴言を吐くタイプだとは思えない。

 だが実際に投稿され、発言内容はたちまち問題視された。特に9月1日、元大阪府知事の橋下徹氏(51)が、ツイッターで批判を行った。

 知名度で言えば、白井氏と橋下氏では比較にならない。橋下氏のツイートは東スポWebなどが報道し、更に話題となった。橋下氏は複数の批判ツイートを投稿しているが、その中でも広く拡散したものを紹介しよう。

《こんは(註:原文ママ)発言を俺たちがやれば社会的に抹殺だよ。白井氏は安倍政権をボロカスに言っているが、安部さんもさすがに白井氏のようなことは言わない。内田樹氏も相田和弘氏も山口二郎氏も同じタイプやな。朝日新聞も毎日新聞もこのタイプから早く脱却しないと》

橋下氏は朝日も批判
 暴言騒動と全く関係のない“知識人”を列挙してしまうのも橋下流だろうか。ツイッターでは《批判するなら、彼の発言だけにしろ》と疑問視する投稿もあったが、橋下氏が投稿を改めることはなかった。

 橋下氏の批判は、勤務先の京都精華大学と朝日新聞にも向けられた。先に紹介したツイートより前に投稿されたのか、橋下氏は白井講師を「教授」と勘違いしている。

《京都精華大学は、さすがにこんな教授を雇い続けるのはまずいだろ。この白井氏も、内田樹氏、相田和弘氏、山口二郎氏らと同じ匂いのするタイプ。そして朝日新聞や毎日新聞が重用するタイプ》

 白井氏は世論の批判が高まってきたのを察知したのか、Facebookを更新し、以下のように釈明した。

《松任谷由実氏についての私の発言が、物議をかもしているということですが、削除いたしました。私は、ユーミン、特に荒井由実時代の音楽はかなり好きです(あるいは、でした)。それだけに、要するにがっかりしたのですよ。偉大なアーティストは同時に偉大な知性であって欲しかった。そういうわけで、つい乱暴なことを口走ってしまいました。反省いたします》

白井氏の弁明も批判
 だが、橋下氏は、これにも異議を唱えた。

《松任谷由実さんに「早く死んだほうがいい」 政治学者・白井聡氏、物議の発言削除し「つい乱暴なことを口走ってしまいました」(J-CASTニュース)
白井氏は、松任谷さんに知性がないとの言い振り。ほんとこのタイプは自分に知性がないとは全く思っていないんだな》(註:矢印の記号を省略した)

《たった一つのラジオの発言で、しかも自分が敵視する者に味方するような発言で、その人に知性がないという言いぶりをする白井氏。社会全体がサル化していると言う内田樹氏。両名、自分だけは賢いと信じ切る同タイプ。自分に知性がなく、サルだとは気づかない》

 そして橋下氏に《雇い続けるのはまずいだろ》と指摘された京都精華大学は9月1日、公式サイトに「本学教員のフェイスブック上の発言について」との文書を掲載した。

 大学は文書で《厳重な注意を行いました》と説明、謝罪を行った。だが、対象となった教員の名前は伏せた。

 厳重注意とはいえ、大学が白井氏をかばった印象も強い。橋下氏の解雇を求める意見に、間接的ではあるが、反論したのかもしれない。

朝日との“蜜月”
 橋下氏が《雇い続けるのはまずいだろ》と指摘したがツイートだが、《朝日新聞や毎日新聞が重用するタイプ》という一文がある。

 もちろん橋下氏は、白井氏に対するある種の“左翼的なイメージ”を批判的に指摘しているわけだが、この事実関係を調べてみよう。

 新聞のデータベース「ジーサーチデータベースサービス」を使い、新聞社ごとに「白井聡」の名前で検索してみた。結果を少ない順にご紹介しよう(9月4日現在)。

◆0件:NHK
◆1件:共同通信
◆2件:時事通信
◆16件:産経新聞
◆19件:読売新聞
◆83件:毎日新聞・東京新聞
◆181件:朝日新聞

 何と朝日新聞が1位で、毎日新聞が東京新聞と同着で2位だった。こういう時の橋下氏の“嗅覚”には脱帽するしかない。

 朝日新聞の検索結果を精査すると、「白井聡子」も1件に数えられている。同姓同名の他人を取り上げた記事もかなりの数になる。

朝日が期待
 だが、やはり朝日新聞は白井氏を記事で頻繁に取り上げている。まず白井氏の著作についての書評や、月刊誌に発表した論文の紹介が少なくない。

 更に大阪で、白井氏と著名な学者・文化人との対談公演を連続して開催している。開催前には予告が掲載され、終わってからは内容を伝える記事が掲載されているのだが、これがかなりの量なのだ。

 そして一般の記事にも、白井氏は登場する。記事の末尾に安倍政権を批判するコメントが掲載されるのだ。

 やはり朝日新聞が白井氏のデビュー当時から一貫して、学識を高く評価し、その上で「朝日新聞の安倍首相に対する見解を代弁してくれる若手論客」として期待していたことがよく分かる。

 念のため、そうした記事の見出しを3本、ご紹介しよう。本文は割愛させていただくが、内容は簡単に想像できるはずだ。

◆「(言論空間を考える)拡散する排外主義 東島誠さん、白井聡さん」(14年12月20日)
◆「(戦後70年)「他国を傷つける国」へ、岐路の日本 社会思想史家・白井聡さんに聞く」(15年1月5日:大阪夕刊)
◆「首相の米議会演説、評価は? 安保や歴史認識、日米の識者に聞く」(15年5月1日)

“ヘイト”と批判
 安倍首相の退陣表明を受け、朝日新聞の言論サイト「論座」は8月30日から「安倍政権を総括する」という白井氏の連載をスタートさせた。

 初回は「安倍政権の7年余りとは、日本史上の汚点である 私たちの再出発は、公正と正義の理念の復活なくしてあり得ない」と、タイトルには相当に強い非難のトーンが込められている。

 これに産経新聞が噛みついた。9月3日の朝刊に、阿比留瑠比・論説委員兼政治部編集委員の連載コラム「極言御免」で「朝日の安倍首相批判は自己紹介」が掲載され、白井氏の連載第1回を批判したのだ。

 そのトーンは激烈と言っていい。何しろ書き出しが《朝日新聞では、こんなヘイトまみれの文章を載せることが許されるのか》であり、《常軌を逸した内容だった》と指摘したのだ。

《白井氏は、辞任を表明した安倍晋三首相の政権が憲政史上最長となったことを「恥辱と悲しみ」と書く。安倍政権を多くの日本人が支持してきたことについて「耐え難い苦痛」と記し、安倍政権の支持者に「嫌悪感」を持つと表明する》

《隣人たちが安倍政権を支持しているという事実は「己の知性と倫理の基準からして絶対に許容できない」と主張し、その事実に「不快感」を示す》

《安倍政権に対する罵倒、呪詛(じゅそ)、偏見の吐露と論証なき決めつけ、陰謀論のオンパレードである》

冷静さを欠いた文章
 もちろん阿比留記者が引用した部分は、原文通りだ。ただ、切り貼りでイメージが変わることもある。

 果たして、そんなに酷い内容なのか、実際に見ていきたい。だが、白井氏の連載を検証する前に、公正を期すため先に2点を指摘しておく。

 白井氏は連載の第1回で、安倍政権は《嘘の上に嘘を重ねることがこの政権の本業》となったと指摘し、《その象徴と目すべき事件》は《伊藤詩織氏に対する山口敬之のレイプとそのもみ消しである》とした。

 この事件は週刊新潮のスクープで明らかになったものであり、デイリー新潮も複数回、記事を掲載している。このことは明記しておくべきだろう。

 2点目は、確かに白井氏は安倍政権を批判して知名度を高めてきたが、デビュー当初から“護憲”をお題目のように唱える旧来型の左翼も一貫して批判してきたという事実だ。

 以上を踏まえて連載を見ていくが、総括すると、全体的に冷静さを欠いた文章であると指摘せざるを得ない。安倍政権の批判というより、単なる悪口雑言に堕しているのだ。

首相が《女性の身体》を私物化? 
《こうして腐敗は底なしになった。森友学園事件、加計学園事件、桜を見る会の問題などはその典型であるが、安倍政権は己の腐りきった本質をさらけ出した。不正をはたらき、それを隠すために嘘をつき、その嘘を誤魔化すためにさらなる嘘をつくという悪循環》

《高い倫理観を持つ者が罰せられ、阿諛追従して嘘に加担する者が立身出世を果たす。もはやこの国は法治国家ではない》

《そして、公正と正義に目もくれない安倍政権がその代わりとする原理は「私物化」である。私物化されたのはあれこれの国有財産や公金のみではない。若い女性の身体や真面目な官吏の命までもが私物化された。だから結局、目論まれたのは国土や国民全体の私物化なのだ》

 ちなみに《若い女性の身体》は伊藤詩織さんを、《真面目な官吏の命》は森友問題で自殺した財務省近畿財務局の職員を指す。連載第1回の引用を続けよう。

《大学入試改革の問題を見てみればよい。十分に機能してきた制度(センター試験)をわざわざ潰して民間業者を導入する主たる動機は、安倍の忠実な従僕たちの利権漁りである。安倍自身の知性に対する憎悪がそれを後押しした。もちろん、次世代の学力などは完全にどうでもよい。ある世代が丸ごと私物化されようとしたのであり、それは言い換えれば、この国の未来を犠牲にして利権に引き換えようとしたということにほかならない》

一方的な糾弾
 森友、加計、桜を見る会の問題が看過できない事実を含んでいるのは間違いない。とは言え、《己の腐りきった本質をさらけ出した》は激烈な言葉であっても、事実に立脚した指摘とは言い難い。文章が空回りしている。

 先に引用もしたが、森友学園の問題では財務省近畿財務局の職員が自殺に追い込まれた。これに心を痛めない人はいないだろう。

 安倍政権が官僚のコントロールに成功し、それが様々な軋轢を生んだのも事実だ。しかし、その原点の1つに2000年代の有権者による官僚バッシングが原点となっているのは間違いない。政権に対して過剰に忖度する役人が続出したことは、有権者も他人事ではないのだ。

 だが、白井氏は政権と官僚が対立してきた歴史を丁寧に紐解き、安倍政権の功罪を明らかにしようとはしなかった。政治学者らしい見識を披露することもなければ、理論的に批判を行ったわけでもなかった。

 白井氏が書いたのは、政権によって《真面目な官吏の命までもが私物化》されたという一方的な糾弾だ。主張したいことが分からないわけではないが、事実とは言えない。

 ある種の比喩だとしても、あまりに論理が飛躍してしまっている。政治に関して豊かな学識を持っている専門家であるはずなのに、事実無根の言いがかりをつけているに過ぎない。

原稿のチェックは? 
 大学入試改革に至っては、《安倍自身の知性に対する憎悪がそれを後押しした》とまで書いた。

 本当に安倍首相が知性を憎悪しているのかは分からない。明確な根拠があるとは思えず、これも言いがかりのレベルだ。

 デイリー新潮は9月1日、「朝日新聞はそんなに安倍首相が憎いのか 退陣表明翌日の“偏向社説”に違和感」の記事を掲載した。

 そこで、朝日新聞の社説が第2次安倍政権の総括を批判的に記述するのは自由だとしても、指摘があまりに偏向していると指摘した。

 一般的に言って、白井氏の原稿が一言一句、そのまま論座に掲載されるとは考えづらい。担当編集者が原稿を読んで、問題のあるところを指摘し、書き直しを提案する。校閲も文章の内容を精査する。

 もし出版社や、他の新聞社の編集者や校閲担当者が白井氏の原稿をチェックしたら、果たして論座に掲載された通りの内容になっただろうか? 

安倍首相に謝罪は? 
 非論理的なところや、事実無根の記述、あまりに罵倒が酷いところは修正が提案されておかしくない。もちろん白井氏が担当編集者の意見を却下したとしても、それも珍しいことではないのだが……。

 白井氏も論座編集部も、やはり「そんなに安倍首相が憎いのか」と言われても仕方のない状態だった、そう疑われても仕方ないだろう。

 相手を論難する時は、いつもより冷静で論理的になる必要がある。基本中の基本だろうが、常に基本が大事だということを、白井氏の投稿や連載は教えてくれている。

 9月4日現在、白井氏のツイッターの先頭に、以下の2つのツイートが表示されている。

《先日の私のフェイスブック上での発言につきまして、多くのご批判をいただきました。人の生命を軽んじる発言、暴力的な発言であるとのご指摘を受け、自身の発言の不適切さに思い至りました。深く反省をしております》

《松任谷由実氏に、心からお詫びを申し上げます。また、不快な思いをされた多くの皆さまにもお詫びいたします》

週刊新潮WEB取材班

2020年9月7日 掲載

新潮社

 

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森氏「首相の本命は岸田氏」 総裁選情勢で

2020年09月08日 03時44分17秒 | 社会・文化・政治・経済

9/8(火) 0:27配信

共同通信

森喜朗元首相は7日、自民党総裁選に関し、安倍晋三首相の本命候補は岸田文雄政調会長だったと明かした。東京都内で開かれた政治資金パーティーで「安倍首相の本当の気持ちは岸田氏だ。周りがだんだん菅義偉官房長官への支持で納得する空気になり、乗らざるを得なくなった」と述べた。岸田氏もパーティーに出席した。

 安倍首相の出身派閥である細田派を含め、党内は菅氏の支持が圧倒的。森氏は「岸田氏がひっくり返すには、麻生太郎副総理兼財務相を味方に引き入れるしかなかった」と語った。だが、岸田氏が率いる岸田派の古賀誠名誉会長と麻生氏は折り合いが悪いと指摘した。

 

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「日本人は同胞の肉を食べるのか」シベリア抑留者が経験した“人肉事件”の悲しき全貌

2020年09月08日 03時36分06秒 | 社会・文化・政治・経済

シベリア抑留「夢魔のような記憶」 #2

2020/08/13

 文春ムック

ユーラシア・中央アジアの考古学・文化史研究の先駆者である加藤九祚氏は、戦時中、学徒動員で出征。満州国の敦化(とんか)で終戦を迎えた。直後、加藤氏はソ連軍捕虜となりシベリアに抑留されるが、そこで「どうしても忘れ切ることのできない記憶」となる異様な出来事と遭遇した。

 多くの日本人が辛苦を味わった「シベリア抑留」の現場で、一体何が起きていたのか。文春ムック『奇聞・太平洋戦争』より、加藤氏が1970年に執筆した「日本人は同胞の肉を喰うのか?」の一部を抜粋して掲載する。

 1946年5月のある晴れた日、収容所の日本人たちは2キロほどはなれた伐採場で朝から作業し、昼休みを迎えた。だが昼食後の人数点検で「波川、宮野、丹野」の3名がいなくなっていることに気づき、現場は騒然となる――。(全2回の2回目/前編から続く

◆ ◆ ◆

 3人は確かに「逃亡」したと思われた。3丁の鉈もなくなっていた。用便に行ったのであれば、鉈まで持去ることはないからである。わたしは、最初の予感通りになってしまったことが悲しかった。この「天然の牢獄」と言うべきタイガの中で、果して逃げおおせるだろうか。そんなことはできっこない。餓死して、熊か狼のえじきになるのがおちではないか。

 わたしのまわりでもこんな会話がきこえた。

「そう言えば、以前からこの3人には様子のおかしいところがあったよ。夕食後、人目をはばかりながら、なにかこそこそと相談しているところを何度も見かけたことがあるよ」

「いや、今日だって、なにを入れていたのか知らんが、ひどくふくらんだ雑嚢をもっていたぜ……」

「ああ、あのおとなしい丹野がどうしてまた、こんな思い切ったことをしたんだろう。見つかって殺されなければいいがなあ」

舞鶴港に上陸したシベリアからの引き揚げ者(1950年)

 まもなく、小隊長みずから数人の歩哨をつれてやってきた。彼らはすでに袋状のリュックを背負い、わたしたちが「マンドリン」と称していた自動小銃を肩から下げていた。ふつうピストルしか帯びていない小隊長も「マンドリン」で武装していた。彼らはもはやタイガの中へ捜索に出かける用意をととのえていた。

 小隊長は鋭い目つきでトカレフ(※1)を詰問し、規律を厳正にするよう命令した。そして5人の手兵をともなってタイガの中に消えていった。

(※1)20代半ばのロシア人軍曹。この日の歩哨長を務めていた。

これから先どうなるだろうか……

 わたしはそのとき、誰だったか小さい声でこんなことを言ったのをおぼえている。

「首謀者は波川伍長だと思うよ。波川はいつか、逃亡したって、ひと月くらいの食糧はなんとでもなると言っていたから……」

 午後の仕事は、きびしい監視のもとで行なわれた。トカレフはかわいそうなほど落胆して、無口になっていた。彼の除隊はまた延期されるのではないだろうか。

 その日は収容所に帰ってからも、誰もが異常な心理状態におちていた。ソ連側の人びとも忙しそうに右往左往し、みんな機嫌が悪かった。

 夜はよく晴れあがり、タイガには人を酔わせるような樹液の匂いがたちこめていた。わたしたちはみんな一体いつ故郷に帰れるのだろうか、これから先どうなるだろうかという不安と危惧を抱きながら眠った。わたしは昼間の疲れにもかかわらずその夜は熟睡することができず、めずらしく夜中に尿意をもよおして外に出た。冬ほどではなかったが、北国の空には星がいまにも降ってきそうなほど豪華にきらめいていた。それは地上のさまざまな憂苦とはなんのかかわりもない、永遠の光をなげていた。

「日本人は同胞の肉を食べるのか」

 あくる日の昼ごろ、収容所長のアントノフ大尉が血相をかえて大股で収容所に入ってきて、きびしい命令調で言った。

「ただちに馬車の用意をし、体が丈夫で“逃亡しないような”兵隊を3人選んで出せ」

 わたしはその日の午前、3日間に1回ずつ行なわれる食糧受領の臨時通訳として収容所にとどまっていたので、日本側の大隊長吉村中尉と収容所長とのやりとりをつぶさに見ることができた。吉村中尉は言った。

「馬車の用意はすぐできます。ところでどこへ行くのですか」

「昨日逃げた3人の兵隊を運びに行くのだ」とアントノフ大尉は眼をきらっと光らせて言った。

「つかまったんですか。怪我でもしたのでしょうか」と大隊長はきいた。

 そのときアントノフ大尉はいきなり、にがにがしそうにどぎつい言葉を吐いた。

「日本人(ヤポンスキー)は同胞の肉を食べるのか」

こんな目にあっているのは誰の罪なのか?

 大隊長は驚いて言い返した。

「冗談もいい加減にして下さい。そんなことは考えることもできませんよ。それよりも3人は生きているのでしょうか」

 アントノフ大尉は冷たく命令した。

シベリアに広がる針葉樹林(タイガ) ©iStock.com

「もうたくさんだ。1時間後には本人たちがここに現われるよ。5分後には馬車と兵隊は“ここにあるべきだ”」

 わたしはこの会話を聞いて、3人は重傷を負っているだろうと思った。逃亡者が歩哨に射撃されて負傷した例はこれまでにも何度か見たからである。しかしアントノフ大尉の言葉、「日本人は同胞の肉をたべるのか」という言葉が胸に突き刺さっていた。その意味はいくら考えても理解することができなかった。

 わたしはまた、満州以来のさまざまの出来事を思い起していた。満州の広野のくずれた塹壕や夏草のかげに、両手をひろげ口を開いたまま腐爛していた幾多の死骸、シベリアでのつらい最初の冬、栄養失調や発疹チフスで死んでいった人々、鉄条網を下から這って脱走を試み、歩哨に射たれて白雪を鮮血に染めて重傷を負った兵隊、「お母さん」という一言を最後に息をひきとった栄養失調の人のことなど、こし方のさまざまな出来事であった。

 わたしはさらに、いつ終るとも知れない泥沼のような俘虜生活のことに思いをはせた。わたしたちがこんな目にあっているのは、一体誰の罪であろうか。少なくとも、このような結果を招くうえで、わたしたち自身になんらかの選択の余地があったであろうか。歴史の仕業だろうか。神が存在するならば、神はこうした苦しみをすべて放任しておくのであろうか。それはあまりにも無慈悲ではないか。わたしたちの人生はこれだけのものであろうか。

 ちょうど1時間後、収容所の門の前に馬車が到着した。

ビフテキくらいの厚さに切られた“肉”

 大隊長とわたしは所長に呼ばれて馬車のそばまで行った。馬車の上にあるのは明らかに死骸と思われた。携行天幕がかけられてあったので、死骸の状況はわからなかったが、外から見ても、生きものとは考えられなかった。天幕の上から、落ちないように縄のかけられていることがその証拠であった。

 ――やっぱり殺されたのか。わたしは暗澹(あんたん)とした気持になって、全身から力が抜ける思いであった。

 そのとき収容所長は言った。

「この3人の死骸を収容所の庭にある二本松の根もとに並べておけ。みんなによく見えるように開いておくのだ。わしの命令なしに絶対に動かしてはならない。わかったか」

 3人の兵隊は馬車を松の木の下までひいていって、その根もとに携行天幕を敷いて死骸を並べた。

 ああ、なんという痛ましい遺体だろう。ひとりの遺体は左半身が頭から脚まで焼けており、もうひとりは頭部だけが焼けていた。この二つの遺体はいずれも衣服をつけたままであった。残ったひとりの遺体にはどこにも焼け痕は見られなかったが、後頭部に鉈のような凶器によると思われる深い傷痕があった。また臀部から太腿にかけて皮膚がきれいにめくりあげられ、肉はそぎとられていた。その肉と思われるものが1枚の携行天幕にビフテキくらいの厚さに切って並べられ、一部は飯盒の中に入れられてあった。その肉は馬肉と同じように赤黒い色を呈していた。

©iStock.com

 わたしはそれを見て、1時間前のアントノフ大尉の言葉を思い出した。わたしは、なにか底知れぬ淵に引きこまれるような、この地上に生きていることが恥かしいような、なんとも言いようのない気分におそわれた。夕方、仕事から帰ってきた仲間たちもみんなこれを見た。誰もひと言も洩らさなかった。入れかわり立ちかわりじっと3人の遺体に眼をそそいで、沈黙のまま去っていった。3人の遺体はまる3日間そこにおかれてあったが、2日目になると、もはや誰ひとりそれを見ようとするものはなかった。

 遺体はその後、馬車でブラーツクへ運ばれたが、おそらく検視をうけて、その地の墓地に葬られたものと思われる。

捜索隊は何を見たのか?

 遺体の到着した日の夕方、大隊長とわたしは収容所長の事務室に呼ばれ、そこで歩哨の小隊長の簡単な報告を聞いた。それは大要つぎのようなものであった。

奇聞・太平洋戦争』(文藝春秋)

 捜索隊は昨日の午後の捜索では明るいうちに3人の足跡を見つけることができなかった。そこで暗くなる前に一たん宿舎にひき返し、翌朝4時ごろから再び捜索に向かった。3人が逃亡した伐採地から200メートルほどのところを鉄道の予定線が通っているが、その東南方向は登り坂になっており、そこから約2キロほど行くと丘の頂上に出た。小隊長は7時ごろその頂上に達し、そこにある高い松の木によじ登って四方を見まわした。

 彼は周囲の地形を観察すると同時に、もしうまくいけば、視界のとどく範囲で煙の立ちのぼっているところを見つけたいと思った。5月末とは言っても夜から朝にかけてはかなり冷えるから、3人は必ず焚火をしているにちがいないとにらんだのである。

 タイガの上には朝靄(あさもや)がたちこめていたが、東南になるほどそれが薄く、一部ではそれがとぎれていた。「モンゴリ」は東南の方向へじっと眼をこらした。3人の逃げる方向が東南であろうという判断は誤っていなかった。靄の切れ目から細い煙のあがっているのがながめられた。

彼らはこれを確かめてから、その木の下で携行食を食べ、ひと息入れた。それから行動をおこし、磁針にしたがって焚火の方向にいそいだ。斜面を少し下ったところでは去年の嵐による倒木にひどく悩まされた。熊の道らしい道はあったが、場所によっては、古い倒木と新しい倒木とが四方から折り重なって通り抜けることができないほどであった。

「正直なところ、彼らはこうした障害をのり越えて、思ったよりも遠くに移動していたね。今朝はきっと未明から行動を起したと思うよ」

 小隊長はこう言って、いくらか疲れた眼でわたしたちをながめた。

「なにもかも、あっという間の出来事だったよ」

 いよいよ、焚火の煙が見えてきた。逃亡者はわりあい新しい倒木の根もとで火をかこんで坐っていた。捜索隊は小隊長以下6人であったが、彼らに気づかれぬようにしばらく遠くから息を殺して様子をうかがった。よく見ると、坐っているのは2人だけで、あとのひとりは横たわっていた。

 小隊長は、変だなあ、と思って、さらに眼をこらして見た。するとどうだ、その横たわっている人間のまわりは一面血で赤黒く染まっているではないか。しかもそのそばの携帯天幕には肉の切れらしいものが並べてあった。

©iStock.com

「わたしはそのとき、すべてを悟ったね、そして思わずおどり出たよ。すると、ひとりの男が眼を吊り上げて、そばにあった鉈をふり上げてわたしたちに襲いかかってきた。もうひとりもそれにつづいた。わたしはそれまで部下たちにも、射撃のときには足をねらえと命じてあったのだが、あの光景で逆上したのだろうか、アフタマート(自動小銃)を思わず彼らの全身に向かって乱射した。部下たちもわたしにならった。2人は一瞬の後、自分たちの燃やした焚火の上に倒れた」

 小隊長はそこで少し間(ま)をおいた。そしていくらか痛ましそうな面持になってぼそりと言った。

「なにもかも、あっという間の出来事だったよ」

 わたしは、若いに似あわずつやのない、あばた痕のある黄いろい小隊長の顔をながめながら思った。

 ――あの冷たい感じの小隊長にもこんな人間的な情感が秘められていたのか。

 収容所長のもとを辞したときには、長い夏の一日もさすがに終わり、あたりは夕闇につつまれていた。そして、わたしたちの胸にかぶさってくるのは、あいかわらずわたしたちを幾重にも厚く、そして重くつつむ黒々としたタイガだけであった。

解説――謎多きシベリア抑留の実態

 ユーラシア・中央アジアの考古学・文化史研究の先駆者であり、ウズベキスタンのカラ・テパ仏教遺跡発掘の偉業でも知られる筆者の加藤九祚は、戦中学徒動員で出征し関東軍混成第百一連隊、第一方面軍百三十九師団工兵大隊に所属、満州国の敦化(とんか)で終戦を迎えた。その後ソ連軍捕虜となりシベリアに抑留され、本稿に記されたような辛苦を味わい、異様な出来事に遭遇する。

 シベリア抑留を経験した日本人捕虜は約57万5000名にも及ぶといわれ、酷寒と強制労働、そして栄養失調や処刑によって約5万5000名が死亡したと伝えられている。奇聞も多く、ウランバートルの収容所では労働ノルマを果たせなかった日本人抑留者を同じ日本人がリンチし殺害する「暁に祈る事件」が発覚している。そもそもシベリア抑留自体、日本軍上層部が敗戦後の保身のため、満州の将兵を労働力としてソ連に提供したとする密約説もあるほどで、全体像は謎の部分が多い。

 加藤は上智大学文学部在学時にドイツ語を学んだが、抑留生活の中でロシア語を身につける。本稿の終盤に臨時通訳に任ぜられる描写が出てくることから、収容所内でその語学力の評価が高かったことがわかる。昭和25年に帰国した後、加藤は抑留生活で習得したロシア語を生かしシベリアや中央アジアの歴史文献研究に従事、世界的な学術業績を成し遂げる。その意味で本稿は加藤史学のプロローグともいえよう。加藤は著書『シベリアに憑かれた人々』(岩波新書)の後記に、「当時苦しかった捕虜生活が、今では、現在の自分の生活と本質的にちがわないとさえ思われるのは、どのように説明すべきか」と書いている。彼もシベリアに憑かれた1人であった。

初出:「文藝春秋」昭和45年8月号「君達は同胞の肉を食べるのか」

※掲載された著作について著作権の確認をすべく精力を傾けましたが、どうしても著作権継承者がわからないものがありました。お気づきの方は、編集部にお申し出ください。

 

※『奇聞・太平洋戦争』に掲載された記事中には、今日からすると差別的表現ないしは差別的表現と受け取られかねない箇所がありますが、それは記事当時の社会的、文化的慣習の差別性が反映された表現であり、その時代の表現としてある程度許容せざるを得ないものがあります。太平洋戦争前後の時代性・風潮を理解するのが同書の目的であり、また当時の国際関係、人権意識を学び、今に伝えることも必要だと考えました。さらに、多くの著作者・発言者が故人となっています。読者の皆様が注意深い態度でお読みくださるようお願いする次第です。

 

自民党総裁選「僕は安倍さんに『北朝鮮と一緒じゃないか』と怒った」田原総一朗が“ポスト安倍”を採点

2020年09月08日 03時09分42秒 | 社会・文化・政治・経済

田原 総一朗 2020/08/31 文春オンライン

 歴代最長となる政権を担った安倍晋三首相が8月28日、体調不良を理由に突然の辞任を発表。焦点は「ポスト安倍」の行方に移った。コロナ禍、東京五輪、経済対策など課題が山積する中で、次期宰相には誰がふさわしいのか。

「文春オンライン」では、各界の識者に連続インタビューを行い、「ポスト安倍候補」を5点満点で採点してもらった。今回は、ジャーナリストの田原総一朗氏に聞いた。

石破茂 ★5.0 「唯一、イエスマンではない」

 今の自民党は民主主義とはかけ離れた“独裁政党”になってしまいました。森友・加計問題が起きても、「桜を見る会」問題が起きても、前法務大臣夫妻の買収問題が起きても、誰も「安倍総理に問題がある」と言わなかった。昔だったら、森友・加計問題が起きた時点で総理は辞職に追い込まれているはずです。

 そんな中、唯一安倍さんに対し「NO」を主張し続けているのが石破さんです。自民党内で唯一「安倍イエスマン」ではないのが石破さんだと言っても良い。

 しかし石破さんには反対勢力が多い。農林水産大臣だった2008年頃に石破さんは米の生産調整見直しなど大胆な農業改革を打ち出しましたが農協が反対し、農協と親しい自民党の人間も皆反対しました。そのおかげで結局、石破さんは改革ができなかった。

 石破さんに一票を投じる度胸のある人間が自民党内にどれだけいるかという点で、総裁選での石破さんの評価が決まると言っても良いでしょう。

岸田文雄 ★5.0 「ここぞという時の押しの強さが足りない」

 岸田さんは非常に人が良いし、実力があります。外務大臣を務め、党三役も経験していますしポスト安倍のなかでも最有力候補の一人として名が挙がるのも当然でしょう。

しかし不安に思うところは、「次は岸田だ」という声の高まりに対して岸田さんがここのところ思い切った行動がとれないでいる点です。象徴的だったのが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済対策。減収世帯へ30万円給付するはずが公明党の主張によって全国民に一律10万円給付で決定されたことで岸田さんのメンツは丸つぶれになりました。

 これがきっかけで、岸田さんは最近、自重気味になっていると感じます。総裁選には意欲的な発言をしていますが、ここぞというときの押しの強さが足りないのは、岸田さんの弱点です。

菅義偉 ★5.0 「実績によるアドバンテージがある」

 菅さんの強みは、駆け引きをしない手堅い性格と、自民党内での信頼の厚さでしょう。それに「ポスト安倍」という点でいえば、菅さんには7年半安倍さんの隣で官房長官を務めた実績がある。安倍政権の良いところと悪いところを熟知しているのは、確実に他のポスト安倍候補よりも有利に働くでしょう。

菅さんに求められているのは、アベノミクスに代わる日本の経済政策をどのように打ち出すのかということです。国民の多くは、アベノミクスが成功しているとは思っていません。安倍さんと日銀の黒田総裁はお金を刷れば内需が拡大すると考えましたが、実際は財政が悪化しただけだったからです。日本の経済政策を考えると菅さんが最も適任だと言えるでしょう。

河野太郎 ★5.0 「度胸はあるが、反原発は?」

 イージス・アショア計画を撤回するなど非常に度胸があると評価できる政治家が河野さんです。

 僕は河野さんのことを幼い頃から見ていますが、彼の中にはずっと一つの悩みがあるように思います。祖父である河野一郎、父の河野洋平、2人とも総理大臣になれなかったことです。

祖父も父も数々の功績を残した政治家ですが、あと一歩のところで総裁にはなれなかった。それはなぜなのか。河野さんはその答えを出せていないのだと思います。だから自分はどう行動したら総理になれるのか判断を決め切ることができずに、大きくブレることがある。行動が大胆になったり、消極的になったり曖昧になったりしてしまうのです。2011年の東日本大震災前から、河野さんは原発反対の代表的な政治家でした。でも今は何故かあまり反原発を主張しなくなりましたよね。

河野さんが総理になるには、彼自身のなかで親子三代にわたる悩みを解決し、答えを出すことが必要だと思います。

小泉進次郎 ★5.0 「今は何もできない」

 進次郎さんは、彼自身が「まだ勝負しようと思ってない」というのが正しいと思います。

 環境大臣に就任しましたが、端的に言って環境大臣は何も権限を持っていない。例えば地球の気温がどんどん上昇しているときに再生可能なエネルギーにするかどうかを検討し決める権限は経済産業省が持っているんです。

 だから世間には「ポスト安倍に名前が挙がっているけど小泉さんが今何をしているのかわからない」と思う人がいるかもしれませんが、彼がいくら奮闘したところで今の段階では「何もできない」のです。

小泉さんへの注目度は確かに高いと思います。ですが「ポスト安倍」という点で考えると彼はまだ勝負しようとしておらず、何か権限を持って実績を残したわけでもない。

 小泉さん自身もこれが分かっているのでしょう、このギャップが埋まらない限りは、彼の勝負は始まらないと思います。

野田聖子 ★5.0 「僕が怒った2015年の総裁選」

 総裁選に出馬すること自体に大きな意味を感じているのが野田聖子さんです。僕は50年ほど前から自民党総裁選を取材していますが、2015年9月の総裁選では大変な危機感を覚えました。安倍首相の対抗馬がいない状況で、唯一出馬への意欲を見せていた野田さんが20名の推薦人を集められず、無投票で安倍首相の続投が決まったからです。

その時、本当は野田さんには25人の推薦人が集まっていたのに、自民党執行部が「野田の応援をしたら公認しない」と働きかけ、7人が降りてしまった。それを知り、僕は安倍首相に「野田さんが立候補しても総裁にはなれないだろう。でも野田さんが立候補するから日本は自由で民主的な国なんだ。野田さんが立候補できなかったら北朝鮮と一緒じゃないか」と怒りました。

イエスマンばかりの安倍政権ですが、野田さんのように真っ向勝負をしかけようとする人が「ポスト安倍」には必要なのではないかと思っています。

 僕はすべての「ポスト安倍候補」に★5.0を付けました。それは前述したように、いまや“独裁政党”と化した自民党においては、誰が総裁に選ばれてもいいと考えているからです。それぞれの素晴らしい個性を活かして、自由闊達な政治の気風を取り戻してもらいたいのです。

 

 


石破茂が激怒 自民党本部が全議員に“ネトウヨ本”を配布

2020年09月08日 03時02分48秒 | 社会・文化・政治・経済

「非常に恐ろしいことです」

「文藝春秋」編集部 2019/07/10
source : 文藝春秋 2019年8月号

まずは、以下の文章をお読みいただきたい。

〈「オワコン」という言葉があります。(略)一般ユーザー、個人ユーザーに飽きられてしまい、見捨てられてブームが去り、流行遅れになった漫画やアニメ、商品・サービスのことです。(略)政界ではまさに小沢一郎氏がそうではないでしょうか。政界のオワコンです〉

〈菅(直人)元首相は、今で言う「終わったコンテンツ」つまりオワコンであることは明白なのですが、ご本人はそれが分からず、煩悩だらけのようです。(略)オワコンは、鳩山(由紀夫)、菅、小沢の各氏だけでなく、野党そのものとさえ言いたくなります〉

続けて、イラストもご覧いただきたい。

 

よだれを垂らしてうつろな目をし、頭の横にはクルクルと回転する線……誰がどう見ても、立憲民主党の枝野幸男代表である。

参院選に向けて配布された“トンデモ”冊子

自民党所属の全議員に配布された冊子

 これらの悪意に満ちた文章やイラストは、いわゆる“ネトウヨ”の方々がインターネットやSNSに投稿したものではない。6月中旬に自民党本部から全所属議員に配布された冊子に綴られた内容である。冊子の表紙には、次のようなタイトルが付けられていた。

〈フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識〉

 現在、7月21日投開票の参院選に向けて全国で熱い戦いが繰り広げられているが、党本部によれば、「(演説などのための)参考資料として配布した」という。

 この冊子に憤っているのが、石破茂元自民党幹事長(62)だ。『文藝春秋』8月号のインタビューで、石破氏はこの冊子を配布した自民党本部を痛烈に批判している。

「国民の共感を得られるとは到底思えません」

「この冊子の作成者は『保守の立場から論じている』と言いたいのでしょうが、私に言わせれば、内容以前に悪意や中傷が目に付いてしまいます。(略)このような文章で広く国民の共感を得られるとは到底思えません。そもそも、いくら選挙で議席を争う相手とはいえ、野党の議員に対して挑発、罵倒、冷笑、揶揄などをするのは非常に恐ろしいことです。なぜなら、彼らの後ろにはその議員に一票を投じた国民がいるからです。野党に対するこうした言動は、そのまま野党を支持した国民に向けられることになる」

 一体、この冊子は何なのか――実は作成者は明らかになっていない。「テラスプレス」なるインターネットサイトに掲載された記事に加筆修正したものだという説明書きがなされているのだが、そもそも「テラスプレス」というサイト自体、執筆者・運営元が一切明らかにされていない正体不明の存在なのだ。

いつから自民党は“変質”してしまったのか?

 石破氏が嘆息する。

 さらに石破氏はこうも語る。

「かつての自民党には、多様な意見、多様な考えを大切にする伝統がありました。私はそんな懐の深い自民党を深く愛していましたし、そういう自民党に育てられました」

文藝春秋8月号

 いつから自民党は“変質”してしまったのか。石破氏の分析は、『文藝春秋』8月号に掲載された「自民党『参院選冊子』に怒りが湧いた」に掲載されている。

※「文藝春秋」編集部は、ツイッターで記事の配信・情報発信を行っています。@gekkan_bunshun のフォローをお願いします。

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