「菅義偉さん、やっぱりあなたは間違っている」…“左遷”された総務省元局長が実名告発【全文公開】

2020年09月16日 20時06分30秒 | 社会・文化・政治・経済

9/16(水) 11:01配信

文春オンライン

「生みの親」菅官房長官

 菅義偉氏が自民党新総裁に選出された。岸田文雄氏89票、石破茂氏68票に対して、377票という圧勝。9月16日からの臨時国会での首班指名選挙を経て、菅氏は第99代内閣総理大臣に就任する。

【写真】この記事の写真を見る(5枚)

 菅氏が実績としてアピールしたのが、「ふるさと納税制度」の導入だ。総務相時代の2007年に制度の創設を表明。2012年に官房長官に就任してからは控除の限度額を倍増させたが、自治体間の返礼品競争を招くとともに、高所得者ほど節税効果が高まるこの制度には、批判の声も多い。

 そんな「ふるさと納税制度」の問題点を指摘し、菅氏に意見した末に“左遷”された総務省自治税務局長(当時)が「週刊文春」に実名告発した記事を、全文公開する。

(出典:「週刊文春」2020年1月2・9日号 文:森功)

◆◆◆

 制度開始から11年、5000億円市場に成長した「ふるさと納税」。だが、高額返礼品を巡っては批判噴出、一部自治体と国で訴訟にもなっている。5年前、制度の生みの親に直言した官僚は、その後、干された。彼は言う。「何があったのか、明らかにしておく義務がある」。

◆◆◆

 その日の内閣官房長官執務室は、いつにも増して淀んだ空気が流れていた。菅義偉の待つ部屋に、総務省自治税務局長(当時)の平嶋彰英が入る。平嶋のお供で入室した総務省市町村税課長(同)の川窪俊広はもとより、同席した官房長官秘書官の矢野康治(現財務省主税局長)や内閣官房内閣審議官の黒田武一郎(現総務省事務次官)らも、二人の会話に口を挟むことができず、ただ見守っていた。

 2014年12月5日のことだ。会議の議題はふるさと納税である。制度の生みの親を自任する菅は、ふるさと納税を広める手段を総務省に命じていた。その一つが、寄付控除の上限の倍増である。ふるさと納税は自己負担の2000円を除き、寄付した分だけ事前に納めた税金がそっくり戻って来る(控除される)制度である。その控除の上限を2倍にしようというのだ。

「寄付控除の拡充に合わせて、(返礼品の)制限を検討しています。ただ、法律に書くことについては、内閣法制局から難しいと反応をもらっています。そこを踏まえ、通知で自粛を要請しているところでございます」

平嶋に対し、語気を強めていく菅
 文字どおり苦虫を噛み潰したような表情の菅に、平嶋が恐る恐る切り出した。すると菅が口を開いた。

「(制限は)通知だけでいいんじゃないの? 総務省が通知を出せば、みんな言うことを聞くだろう」

 平嶋は反論した。

「そうでないところもあります。根拠は何だ、と聞いてくるようなところも」

 ふるさと納税は「納税」といいながら、新たな税が発生するわけではない。住んでいる自治体から別の自治体に税金を移動させる仕組みだ。しかも寄付する側には、漏れなく高額の返礼品がついてくる。納税とは名ばかりで、2000円で各地の高額な返礼品を買うような感覚になるから、自治体間で激しい高額返礼品競争が起きるのは無理もない。

 総務省では5年前のこの時からすでに返礼品を問題視し、何らかの制限をすべきだ、と平嶋は主張した。しかし菅には、制限など眼中にない。それよりふるさと納税全体の金額を増やせ、とばかりに控除の上限を2倍にしろという。上限を引き上げれば、当然返礼品競争がエスカレートする。議論は平行線をたどる以外にない。平嶋に対し、菅は語気を強めていく。

「これだけ(ふるさと納税のムードが)盛り上がっている中で、(冷)水をかけるようなのは駄目だ。1万5000円でメロン1個の夕張市のような成功事例も出てきているじゃないか」

 高額返礼品問題について、平嶋は菅の顔を立てながら、なおもこう指摘した。

「(寄付金に対する返礼品の価値は)知事会などでも、2~3割ならよいという感じでしょうか。夕張がちょうどそのぐらいです。ただ、そういう表示をしても、モノで(寄付を)釣るようなものですから、我々としましては問題意識を持っております」

官邸による典型的な“恐怖人事”
 すると、菅は話をそらす。

「手数料2000円を取っているだろう」

 厳密にいえば、2000円は手数料ではない。10万円を超える支払い分が控除対象となる医療費控除のそれに近い。医療費の10万円がふるさと納税では2000円だ。菅は、その2000円の支払いまでやめろと迫った。

「すると、寄付金制度全体を見直さなければなりません。難しいです」

 平嶋は辛うじてそこは踏ん張った。菅の要求は寄付控除の上限倍増ともう一つ、税金の還付手続きで確定申告を不要とする「ワンストップ特例」の創設もあった。渋々ながら総務省もそれらを進めることになり、菅も納得したかに思えた。

 だが、そうではなかった。年が明けた15年7月、平嶋はいきなり自治大学校校長に異動となる。ふるさと納税に異議を唱えてきた役人に対する意趣返しの“左遷人事”――。平嶋本人だけでなく、霞が関から「官邸による典型的な恐怖人事だ」と今も恐れられている。

 平嶋はかつて総務事務次官候補とされたエリート官僚だった。だが、自治大学校の校長を最後に退官し、地方職員共済組合理事長を経て現在は立教大学経済学部特任教授として活動している。平嶋本人に話を聞いた。

制度そのものに問題がある「ふるさと納税」
「菅さんはふるさと納税がかわいくて仕方ないんです。第一次安倍政権で総務大臣に就任し、ご自分が制度をつくったという自負がある。一つの手柄です。ただ、実は制度そのものに問題がある。菅さんに意見して不遇な目に遭ったのは、私だけではありません。私の税務局における先輩で、私などより次官確実といわれていた河野栄さんも、菅さんに相当抵抗して飛ばされてしまいました」

 ふるさと納税は07年6月、総務大臣だった菅が省内に「ふるさと納税研究会」を立ち上げて制度の根幹をつくり、翌08年4月、改正地方税法が成立した。秋田生まれで地方思いの菅ならではの政策だと持ちあげられてきた。

 しかしその実、高額返礼品を巡っては何度も問題になってきた。17年には寄付額に対する返礼割合を3割以下にするよう、全国の自治体に通知。大阪府泉佐野市のようにそれを無視し続ける自治体も出た。そこで総務省はついに今年6月、改正地方税法施行で「返礼品は寄付額の3割以下の地場産品」と基準を設け、それを満たさない同市を除外した。すると泉佐野市は国を訴え、来年一月に大阪高裁での判決を迎える。まさに平嶋が危惧した通りの事態になっている。

 しかも高額返礼品をめぐる議論は制度創設のときからあった。それが封じ込められてきただけなのである。

役人から理屈を説明されるのが嫌い
「07年当時、税務局長だった河野さんは菅さんに指示され、やむなく寄付金税制を使う方法を考えたのですが、研究会の報告書ではすでに“お土産問題”のおかしさを指摘しています。さすがにあの時点では法で規制する問題ではないという判断でしたが、目に余る場合は法で規制することもありうべし、ともされた。それで菅さんは河野さんがずっと抵抗し続けたと思ってきたのでしょう」

 1975年に東大法学部を卒業して旧自治省入りした河野は06年7月、官房審議官から自治税務局長に就任。ふるさと納税の創設を指示されたが、そこで菅とぶつかった。平嶋が続ける。

「本来、議会制民主主義では、有権者が選挙で選ばれた議員の決定に従うことが基本です。納税者が自分勝手に税金の使い道を決めれば、利益を受けられる部分だけに税を納める事態になりかねない。それは税制として間違っていると河野さんは指摘したわけです。で、苦肉の策として税制そのものではなく、寄付金制度をいじればできるんじゃないか、と考えた。でも菅さんは納税という言葉にこだわり、そこからずっと河野嫌いになった。役人から『理屈はこうなっている』と説明されるのが嫌いな人なんです。

 河野さんはすごく優秀な方で、しかも閨閥もある。旧自治事務次官、鹿児島県知事から参議院議員に転出した鎌田要人(かなめ)さんの娘婿で、河野さんは次の人事で自治財政局長、さらに次官と駆け上るはずだった。ところが財政局長になれず、結局消防庁長官で終わってしまった。これも菅さんの人事だといわれています」

 自治財政局長は事務次官の登竜門とされる重要ポストだ。07年7月人事で代ってそこに就いたのが、菅のお気に入りの統括審議官、久保信保だった。菅は河野と同期入省の久保をことのほか買ってきたという。

「自治省から広島県へ出向した期間がものすごく長い久保さんは、広島選出の中川秀直代議士と親しくなった。で、菅さんが総務大臣になったとき、中川さんが『困ったことがあったら久保君に相談したらいい』と推薦したそうです。以来、久保さんは菅さんの相談に乗ってきた。その関係から河野さんを外し、久保さんを財政局長に差し替えたと言われています。もともと久保さんは交付税などおカネを扱う財政局の仕事をやったことがない。逆に菅さんは、ありえないような人事をおこなえば、皆が俺の言うことを聞く、と考えたのではないでしょうか」

 河野自身に会うと、やはり口が重い。

「たしかにいろいろありましたけど、もう引退したから、何も言いません。現役に迷惑をかけてもいけないから」

 ふるさと納税はまさに大臣の看板政策として08年にスタートした。が、しばらくはさっぱり振るわなかった。皮肉にも寄付が増え始めたきっかけが11年の東日本大震災だ。震災復興支援の地元産品に人気が出て、そこに便乗した全国の自治体が高額返礼品をPRし始めた。すると、10年に67億円だった寄付金総額が、一挙に650億円近くに跳ね上がったのである。

 


“ポスト菅”「加藤官房長官」の履歴書…婚約者にフラれ、大蔵省では目立たず

2020年09月16日 20時06分30秒 | 社会・文化・政治・経済

9/16(水) 15:31配信

デイリー新潮
「花の54年組」の室崎勝信から加藤勝信へ

加藤勝信氏。転機は大臣秘書官になった時、そして自民党が政権を奪還した時だった

 官房長官に就任し、一気に次期首相候補に躍り出たのが加藤勝信氏(64)だ。もともとは室崎姓だった彼がいかにして権力の階段を上り詰めて行ったのか……その履歴を辿る。

 ***


政財界トップの夫人たちが集まって設立した書道サークル・雍容苑(ようようえん)。右から、加藤睦子、安倍洋子、ひとりおいて、安倍昭恵の各氏

 加藤氏は東大経済学部を卒業し、1979(昭和54)年に大蔵省(現在の財務省)に入省した。当時を知る同省関係者によると、

「当時まだ彼は室崎勝信という名前だったんですが、特に目立つことがなくその名が挙がることはなかったですね」

 彼の入省年次は「花の54年組」と言われていて、同期から木下康司、香川俊介、田中一穂の3氏が事務次官に上り詰めている。極めて異例のことだ。

「田中さんに関しては次官の器ではないと見るムキが大勢でしたが、安倍晋三首相の秘書官を務めた経験から、下駄をはかせてもらったという評価がもっぱらですね」

「この期はもともと道盛(大四郎)さんと桑原(茂裕)さんとが次官候補のツートップ。いずれにせよ、室崎(=加藤)さんの名前が出ることはありませんでした」

 室崎勝信氏は1994年4月から大蔵省時代に農水相秘書官を務めたが、その際の農水相は加藤六月氏だった。


加藤睦子夫人と安倍洋子夫人

 永田町関係者によると、

「加藤六月さんといえば安倍晋三さんの父親、晋太郎さんの番頭として知られた人物です。晋太郎さんが率いた安倍派四天王の1人。六月さんが農水相を務めたのは、わずか2か月で退陣した羽田内閣においてだったのですが……」

「六月さんは長女の康子(こうこ)さんを大蔵官僚と結婚させたがっていました。そこで白羽の矢が立ったのが室崎(=加藤)さんだったということです」

婚約者と別れた後、その妹と結婚して…

加藤勝信氏と婚約していた加藤康子氏は内閣官房参与も務めた

「話は順調に進み、2人は婚約したのですが、ある日、康子さんから婚約破棄の申し出があった。それからハーバード大の大学院に留学したのです」

 フラれた格好の室崎勝信氏はその後、康子さんの妹と結婚。婿入りして「加藤勝信」となった。

 ちなみに加藤康子さんは都市評論家として活躍。内閣官房参与などを歴任し、一般財団法人「産業遺産国民会議」の理事を務めている。

 また康子さんは、8県23件の「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」を「世界文化遺産」へ登録するにあたり、中心的な役割を担った人物として知られている。

 話を戻すと、加藤六月氏の願いだった「大蔵官僚との結婚」も、形は違ったが果たされたことになる。

勝信氏は1995年に大蔵省を退官し、98年から六月氏の秘書に。その年の参院選には無所属で、2000年の衆院選には自民党から出馬するも落選。

「選挙に2度落選してもうダメかと言われたこともありましたが、なんだかんだとサバイブしてきましたね」(先の永田町関係者)

 それでも、初当選は2003年まで待たねばならなかった。

 2007年の第1時安倍改造内閣で、内閣府大臣政務官に任命。自民党が下野した後、政権を奪還した12年12月に発足した第2次安倍内閣で官房副長官に就任。初代内閣人事局長も務めた。

 2015年10月に内閣府特命担当相として初入閣。17年8月から厚労相と新設された働き方担当相、18年10月から自民党総務会長、そして19年9月から再び厚労相と働き方担当相に。

安倍氏への忖度説も取り沙汰され…
「とにかく、自民党が政権与党に復帰して以降の安倍政権では、官房副長官、大臣、党3役と要職をずっとやり続けてきたわけです。閣内で同じポジションを務め続けた菅さん(義偉)や麻生さん(太郎)とはまた違った意味で、安倍さんが絶大な信頼を置いていたのは間違いない」

 もちろんその信頼は、「安倍晋太郎と加藤六月」という先代の“親子関係”と無縁ではない。それに加えて、

「ゴッドマザーと呼ばれる安倍さんの母・洋子さんと勝信さんの義理の母・睦子さんはとても親しい。そして2人とも“息子”たちをとても可愛がっている」

 実際、2人は、政財界トップの夫人たちが集まって設立された書道サークル「雍容苑(ようようえん)」の会員であり、かつて睦子さんが週刊新潮にこう語っていたことがある。

「洋子さんは、“最近になって、ようやく上手く書けるようになってきたわ”とおっしゃっていました。彼女は書道の他に茶道も嗜まれていて、表千家同門会の山口県支部長も務めています。“父が表千家だったので私も”とお父様のことを誇りに思っているのがわかりましたね」

 再び、永田町関係者の話。

「安倍さんが加藤さんを重用したのは仕事ができるということもありますけれど、洋子さんと睦子さんへの忖度がなかったわけではないでしょう」

 首相の座に就くことができなかった加藤六月氏の夢を、睦子さんが義理の息子に見ていても何ら不思議ではない。

「今回の官房長官人事にしても、菅さんが安倍さんに忖度したなんて話も出ています」

 最後に、先の財務省関係者はこう話す。

「加藤さんが台頭して、久々に大蔵省出身の財務相が登場するなんて言われていたんですが、財務相をスッとばして首相というのも見えてきたのかもしれませんね」

週刊新潮WEB取材班

2020年9月16日 掲載

新潮社


阪神・糸井もはや不良債権に…去就はドラフトでの「近大・佐藤」次第

2020年09月16日 17時33分17秒 | 野球

9/16(水) 11:20配信

日刊ゲンダイDIGITAL

3打席で途中交代した糸井(C)日刊ゲンダイ

 阪神ファンもため息が絶えなかっただろう。

 4連勝で敵地・東京ドームに乗り込んだ阪神は3―6で敗戦。自力優勝が消滅し、巨人のマジック38点灯をアシストする始末だった。

【関連】オリ時代の糸井は自らを「バカキャプテン」と…

 戦犯のひとりは、この日、「7番・右翼」でスタメン出場した糸井嘉男だ。2打数無安打、お馴染みになったまずい守備もあって3打席で途中交代した。今季は打率・238、1本塁打、14打点。衰えは顕著である。

 阪神は2016年オフに、4年総額18億円といわれる大型契約で糸井を獲得。走攻守で大暴れしてもらいたいとのもくろみは完全に外れたと言っても過言ではない。阪神OBが言う。

「入団1年目の17年に古傷を抱える右膝を故障、18年6月には死球を受けて右足腓骨を骨折した。昨年10月には左足首を手術、今も右膝の状態が思わしくないようです。常にケガとの闘いが続き、フルで働いたシーズンは一度もない。バカスカ打ってくれればまだしも、守備、走塁で足を引っ張るプレーも目立つ。在籍2年目あたりから、球団と親会社の上層部の間には、大型契約をした選手としては割に合わない、との声が出ていました」

 遡ること8年前の12年、親会社である阪急阪神ホールディングスの株主総会では、株主からケガや不振に陥っていた城島健司、小林宏之に対し「不良債権だ」と突き上げを食らったが、もはや糸井も似たような存在になりつつあるというわけである。

■今季の戦力外通告はドラフト後

 そんな大ベテランの去就を左右しそうなのが、10月下旬に迫るドラフトだという。

「阪神はアマ球界ナンバーワン野手といわれている外野手兼三塁手の佐藤輝明(近大=右投げ左打ち)を1位候補に挙げている。巨人など複数球団による競合を覚悟で佐藤に入札、クジを引き当てることができれば、来季の編成方針はガラリと変わる。コロナ禍によって11月初旬までシーズンが行われる今季、例年はドラフト前の10月1日からスタートする戦力外通告が、ドラフト後に一本化される可能性がある。ドラフトの結果を踏まえた上で来季の編成を行うため、佐藤を取れるか取れないかによって、同じベテラン外野手の福留孝介も含め、チーム内での糸井の立場は大きく変わる。このまま不振が続けば、来季の構想から外れてもおかしくないくらいです」(前出のOB)

 ただでさえ今年はコロナ禍で大幅な収入減を強いられる。仮に年俸を4分の1に減らしたとして1億円。かつての輝きを失った糸井に「億」を払う価値があるのかどうか。

 ちなみに、1位候補の佐藤は、糸井の母校である近大出身ということもあり、「糸井2世」ともいわれている。2世に立場を追いやられるというのも、皮肉な話だが……。

【関連記事】


自力V消滅の阪神に足りない「執念」 藪恵壹氏が指摘する「気迫」と「作戦負け」

2020年09月16日 17時09分58秒 | 野球

9/16(水) 15:52配信

Full-Count
首位・巨人に逆転負け、藪氏が「一人一殺で良かった」という6回裏

阪神・矢野燿大監督【写真:津高良和】

■巨人 6-3 阪神(15日・東京ドーム)

 阪神は15日、敵地・東京ドームでの巨人戦に3-6で逆転負けを喫した。首位・巨人との決戦で敗れた阪神は自力Vが消滅し、巨人にはマジック38が点灯。正念場での戦いに敗れ、ゲーム差を10.5まで広げられた阪神だが、「競った場面で最後に物を言うのは気迫。阪神には勝利への執念が足りなかったと思います」と手厳しく指摘するのが、球団OBでメジャーでも活躍した藪恵壹氏だ。

【写真】「お兄ちゃんと、偶然空港で」…新井良太氏が実兄・貴浩氏との久々“兄弟共演”ショットを公開

 この日から始まった3連戦のうち、1勝でもすれば優勝へのマジックが点灯する巨人に対し、阪神は優勝への望みを繋ぐためには3連勝が必須。まずは何が何でも初戦は勝っておきたい状況だった。今季は東京ドームで6連敗中。藪氏曰く「なぜか余所行きの野球になってしまう」阪神は、巨人のエース菅野智之を相手に初回、先頭・近本が右前打で出塁すると、2番・梅野にバントで送らせ、確実に1点を奪いにいった。

「初回に1点が欲しいからバントも分かるんですけど、2点、3点とは入らない、とりあえず1点で終わってしまう攻め方。ああいう点の取り方をするんだとしたら、6回は死に物狂いで失点を防ぎにいかなければいけませんよね」

 藪氏が言う6回を振り返ってみよう。阪神が3-2と1点リードで迎えた6回裏。マウンドに立つ先発左腕・高橋遥人は先頭・松原に右翼線へ二塁打を運ばれ、続く亀井に右前打で無死一、三塁。さらに4番・岡本にセンター前に同点タイムリーを許し、丸にも右前打を浴びて無死満塁としたところでマウンドを下りた。

 一打逆転の大ピンチで、阪神・矢野監督が白羽の矢を立てたのが、左腕の岩貞だった。今季、先発から中継ぎに回った岩貞は、まず中島を空振り三振に斬って1死を奪ったが、続く大城にライト前へ2点タイムリーを献上。逆転を許してしまった。藪氏は、この場面を「一人一殺でも良かったのではないか」と話す。

「あそこは代打が出る可能性もあったとは思いますが、ピンポイント継投をしていい場面でした。まずは中島選手に対して右腕を当てる。例えば、桑原投手でも良かったでしょう。そして、岩貞投手は大城選手の打席からの登場で良かったと思います。先発が左腕だったので、僕は左腕から左腕へのスイッチにはすごく違和感を感じてしまう。マッチアップを考えるなら、中島選手に右腕を当て、左→右→左と必死に一人一殺の構えで臨み、同点で切り抜けたかったですね」

7回の得点機にバントをせずにバスターエンドラン「そこで作戦負け」
 もう1つ、藪氏が「必死さが見られなかった」と指摘する場面がある。それが7回表だ。

 2点勝ち越された直後の攻撃で、阪神打線はチャンスを掴む。巨人の2番手左腕・高梨は制球が定まらず、阪神は内野安打と四球で無死一、二塁と絶好機を迎えた。ここで打席に立ったのは、最近2番で起用される捕手の梅野だった。藪氏の解説を聞いてみよう。

「ここは初球にバントのサインが出ていたと思います。でも、初球は外角ツーシームでボール。これで矢野監督はサインをバントからバスターエンドランに変更しました。器用な梅野選手なら空振りしない自信もあったんでしょう。でも、結果は2球目内角スライダーを空振りしてダブルスチール失敗。1死二塁となり、梅野選手は結局、二塁ゴロ。続く糸原選手もショートゴロで1点も返すことができませんでした。

 バントで確実に送っておけば、1点は返せたかもしれない場面。1ボールから1回バントをやりにいってファウルしたらバスターエンドランに切り替えても遅くはなかった。そこで作戦負けしてしまいました」

 この日、巨人の投手陣は決して状態がいいわけではなかった。開幕から11連勝を飾った菅野は「全然良くなかったですよ。近本選手に2発打たれて、5回が終わった時点ではフラフラでしたよ」と藪氏。2番手の高梨は制球に苦しみ、守護神デラロサも1死一、二塁から失点しそうな場面で吉川尚の好守に助けられた。だが、相手の弱みにつけ込めなかった阪神。「勝利への執念で負けていたということですよ」と手厳しい。

 自力Vこそ消えたが、残り47試合。貪欲に、そして勝利への執念をむき出しにすれば、まだ何が起こるか分からない。ここからの戦い方こそ、チームの真価が問われるのかもしれない。

佐藤直子 / Naoko Sato

 

 

 

 

 

 

 

 

 


天才は藤井聡太だけではない “振り飛車のカリスマ”藤井猛が作った常識破りの「システム」

2020年09月16日 13時17分05秒 | 社会・文化・政治・経済

2020/09/16 08:00 

天才は藤井聡太だけではない “振り飛車のカリスマ”藤井猛が作った常識破りの「システム」

<Number Web> 
2000年12月26日、竜王戦で羽生善治五冠(右)に勝利し、3連覇を果たした藤井猛竜王(肩書はいずれも当時)

藤井聡太二冠の活躍で初めて将棋に興味を持った方も多いのではないでしょうか。実は将棋界にはもう1人、偉大なる“藤井”がいます。将棋の常識を覆す戦法「藤井システム」を独力で開発し、竜王を3連覇した藤井猛九段です。Numberが1010号で初めて「将棋特集」を組んだことを記念し、過去の藤井九段のインタビュー記事をWebで初公開します!
(初出:Number783号(2011年8月4日号) <非エリートの思考法> 藤井猛「常識を打破して頂点に立った男」/肩書などはすべて当時)
「こんなこと、恥ずかしくて、滅多に言えないんですけどね……」

 終始ぼそぼそとした早い口調で話す藤井猛九段は一瞬の間をおくと、さらりと言った。

「僕ね、直感がないんですよ。第一感というヤツがね。局面をひとめ見て、この一手、なんて浮かばない。閃かないんです」


 俄かには信じられない話だった。

 将棋の1つの局面で指せる手は約80あるといわれ、その先に枝分かれする手を考えれば天文学的数字になる。

人間が全てを読むことは不可能で、プロ棋士はまず直感で浮かんだ1、2手に絞り、そこから読みを入れ最善手を決める。最初の直感で7割は正しい手を導き出せるのがプロ……。ところが、その直感力が藤井にはないのだという。

江戸時代から続く将棋の歴史を変えた革命家

「僕は逆ですね。最低でも3つは選択肢を考えて、消去法でこれかなぁと。面倒くさいですよ(笑)。直感のある人が羨ましいです。手が見えるなんて、僕とは無縁の世界。局面を把握するだけで大変です。そもそも頭の構造が将棋に向いていないんですよ」

 藤井は自嘲気味に笑った。果たして、本当だろうか。何しろ彼は、江戸時代から続く将棋の歴史を変えた革命家なのである。

 '98年秋、28歳の藤井は、棋界に衝撃を与えた。独自に開発した戦法「藤井システム」を引っ提げて、棋界最高位のタイトルである竜王の挑戦者決定戦に進出。当時四冠だった天才・羽生善治を破ると、これも天才と冠されていた王者・谷川浩司に4タテを食らわしタイトルを奪取。'00年には再び羽生を葬り、竜王3連覇を成し遂げたのだ。


谷川浩司竜王に4連勝し、初めて竜王を獲得した際の藤井七段(当時) 
2人の天才を撃破した藤井システムは、それまでの常識を覆す斬新な攻撃重視の戦法だった。

 自玉を囲わずに居玉のまま戦い、さらに飛車と玉を接近させる。いざ戦いが始まれば、囲われていない玉は流れ弾に当たりやすく王手を掛けられやすい。

また攻撃の要となる飛車の周囲は激しい戦いになるので、玉と離すべきである。教科書的には絶対にやってはいけないとされる、ボクシングのノーガード戦法のような、危険な戦い方だったのだ。





 

藤井聡太二冠の活躍で初めて将棋に興味を持った方も多いのではないでしょうか。実は将棋界にはもう1人、偉大なる“藤井”がいます。将棋の常識を覆す戦法「藤井システム」を独力で開発し、竜王を3連覇した藤井猛九段です。Numberが1010号で初めて「将棋特集」を組んだことを記念し、過去の藤井九段のインタビュー記事をWebで初公開します!
(初出:Number783号(2011年8月4日号) <非エリートの思考法> 藤井猛「常識を打破して頂点に立った男」/肩書などはすべて当時)
「こんなこと、恥ずかしくて、滅多に言えないんですけどね……」

 

 藤井は自嘲気味に笑った。果たして、本当だろうか。何しろ彼は、江戸時代から続く将棋の歴史を変えた革命家なのである。

 '98年秋、28歳の藤井は、棋界に衝撃を与えた。独自に開発した戦法「藤井システム」を引っ提げて、棋界最高位のタイトルである竜王の挑戦者決定戦に進出。当時四冠だった天才・羽生善治を破ると、これも天才と冠されていた王者・谷川浩司に4タテを食らわしタイトルを奪取。'00年には再び羽生を葬り、竜王3連覇を成し遂げたのだ。


谷川浩司竜王に4連勝し、初めて竜王を獲得した際の藤井七段(当時) photograph by KYODO
 2人の天才を撃破した藤井システムは、それまでの常識を覆す斬新な攻撃重視の戦法だった。

 自玉を囲わずに居玉のまま戦い、さらに飛車と玉を接近させる。いざ戦いが始まれば、囲われていない玉は流れ弾に当たりやすく王手を掛けられやすい。また攻撃の要となる飛車の周囲は激しい戦いになるので、玉と離すべきである。教科書的には絶対にやってはいけないとされる、ボクシングのノーガード戦法のような、危険な戦い方だったのだ。

奨励会に入ったとき、同い年の羽生はすでに……

「本当にショッキングでした。最初はふざけてるのかと思いましたよ。噴飯ものってヤツです(笑)。昔の棋士が見たら間違いなく怒るでしょう。でも、そこに可能性があるとわかって、将棋の鉱脈の奥深さを感じましたね」

 当時の驚きを振り返る羽生の言葉には、実感が籠もっていた。


雑誌掲載記事の扉ページ。指は藤井九段に何度も飛車を振ってもらい撮影した。
 一体なぜ、藤井は、誰もが思いつかなかった斬新な戦法を発想し開発することが出来たのだろう。背景には彼の異色の経歴がある。


 あまりにもスタートが遅かった。群馬県沼田市。山と畑に囲まれた長閑な小学校で、友人から将棋を教わったのは10歳のときだ。

 本格的に始めたのは中学に入ってからだが、将棋教室に通うでもなく、1人、本や専門誌を読み漁り研究に勤しんでいた。

 プロ養成機関の奨励会に入ったのが15歳、高校1年生の春。そのとき既に、誕生日が2日しか違わない羽生は、史上3人目の中学生棋士としてデビュー、天才と謳われていた。

藤井は実戦経験が圧倒的に不足していた

 羽生を始めとするエリート棋士たちは、基本的に都心に住み、幼少期から月に100局という莫大な数の実戦を積む中で実力を養ってきた。

 今でこそ、インターネットを通して、全国どこでも誰とでも将棋を指せるが、当時はネットのない時代。藤井が奨励会入会まで指した対局数はわずか200局ほどで、圧倒的に実戦が不足していた。

 奨励会は25歳までにプロ四段にならなければ、自動退会となってしまう。

「この坂道を登りきらなきゃと、プロになることに必死でした」

 当時の藤井の指にはいつも絆創膏が巻かれていた。マメができるほど、駒を指し続けた。

 20歳で念願のプロになり、勝ち星を順調に重ねて行くものの、周囲の評価は平凡な棋士のそれだった。藤井システムを考え始めたのは、プロ入り5年目、'95年のことである。

 将棋の戦法には、大きくわけて居飛車と振り飛車があり、多くの棋士は「王道」とされる居飛車党だが、藤井は将棋を始めた頃から振り飛車党、中でも4筋に飛車を振る四間飛車の使い手だった。

 だがやがて、四間飛車の大敵「居飛車穴熊戦法」が台頭してくる。盤の隅に玉を囲う戦法で、囲ってしまえば無類の守備力を誇り、なかなか崩せない。

寝ても覚めても24時間、考え続けた

 藤井は毎日、穴熊に組ませない対策を考えた。

「最初はこの一局というときの必殺戦法として考えたんです。四間飛車をやるなら大リーグボールが必要だと(笑)。まさかタイトルを獲る原動力になるとは思ってもいなかった」

 1年間の研究の末、何となく形が見えてきた'95年12月、公式戦で試してみると、47手という人生初の短手数で完勝する。


雑誌に掲載した写真。盤上には藤井システムの基本型の1つが並べられている。

 手ごたえを感じた藤井は、その後2年間、対局で封印。黙々と研究を続け、育て上げていく。寝ても覚めても24時間、考え続けた。

 新婚の奥さんが話しかけても上の空で、旅行先の景色も覚えていない。そんな日々を都合3年間も続けた。

「正直、頭がおかしくなります(笑)。プロの将棋は手の殺し合いだから、好き勝手できない。自分の手を成立させるために、こうきたらこうするという手を1つ1つ検証していく作業が本当に面倒くさくて時間もかかる。皆、何でこんなことやってるんだろうって、バカらしくなって、途中でやめるんですよ(笑)。

『あなたが穴熊で来るのなら総攻撃を仕掛けますよ』と自分の我がままを通そうとする。相手が怒って引かないと、甘くなってる逆サイドにハードパンチが飛んでくる。サッカーでいえば、キーパーもどんどん前線に出て行き、相手の攻撃になったら一気に戻って、またすぐに出て行くような戦い方。

 ギリギリの薄い守りをカバーしながら穴熊を倒すわけだから、苦労が絶えない。楽な指し方に流れようかと思ったこともありましたけどね……」

人生でただ一度、将棋に負けて泣いた

 それは中学3年の春のことだ。全国中学選抜大会の群馬県予選。優勝候補で全国制覇さえ意識していたが、決勝に行くまでもなく敗退する。相手のペースに嵌まり、全く力が出せず、人生でただ一度、将棋に負けて泣いた。

「初めて将棋って怖いな、と。相手や先手後手に関係なく自分の力を出せる戦法が必要だと痛感したんです。急所の一局では絶対に勝たなきゃいけない。

 将棋ほど負けるとこんなにムカつくゲームはないんです。自分を全否定される。藤井システムは、僕が苦しんで突き詰めて考えた結果、生まれた戦法なんです。

 玉を囲わないなんて最初は本気で考えなかった。でも、過去の定跡を全て調べてみても都合よくいかない。それで本気で考えてみたらバカにしたもんじゃないなと。

 本筋と外れることに抵抗はなかった。若い頃の羽生さんが斬新な手を指して七冠を獲った姿を見てますからね。羽生さんの影響は大きいです」

研究会で藤井システムを徹底解剖し始めた

 藤井システムが登場すると、他の多くの棋士が「これは使える」と安易に真似をした。だが、藤井の頭の中にしかない「新定跡」を指せる者はいなかった。

 ただ1人、ほぼ完璧に指しこなせたのは、羽生だけだった。

 だが、時代は皮肉な曲線を描いていく。

 '01年、その羽生に竜王を奪われる。その頃から棋士たちはチームで研究会を行ない、藤井システムを徹底解剖し始めた。寄って集って丸裸にされ、攻略法は1日で駆け巡り、藤井は思うように勝てなくなっていく。

 激烈な情報戦を繰り広げる現代将棋の先駆けにもなってしまったのだ。

 手塩にかけて育てたわが子がいたぶられているような様を、藤井は苦々しい思いで見ていた。修正に修正を施し、何とか'06年の朝日オープンで羽生の挑戦者になったが敗退。

「あれがシステムの最後の花道でした」

将棋のネイティブスピーカーではないからこそ

 同年秋のA級順位戦で羽生に大逆転負けを喫したとき、藤井は持ち駒を盤上にぶちまけた。その口惜しさは、終盤でミスを犯した自分への不甲斐なさだけではなかっただろう。

 もがき苦しんだ5年を経て、棋風改革に乗り出した藤井は、今、新たな活路を見出しつつある。以前は絶対にやらないと公言していた本格派の居飛車矢倉を、3年前から指し始めた。

 人真似を嫌う藤井らしい独自の新工夫が施された攻撃的な矢倉囲い戦法には、「新藤井システム」の萌芽がある。

「藤井さんほど将棋を考えている人はいない。エリートの棋士が素通りすることにも引っかかりを覚え、1人で耕してしまうんです」

 20年来の親交がある行方尚史八段の弁である。

 スタートの遅れというハンディのあった藤井は、いわば将棋のネイティブスピーカーではなかったからこそ、愚直に考え続けることで、斬新な戦法を編み出せたのだ。

「職人と言われると、嬉しいですね」

 冒頭の直感力がないというのも、エリート棋士に比べ、幼少期に体で覚えた将棋ではないからだ。終盤力ではどうしても見劣りしてしまう。

「羽生さんがスーパーコンピュータだとすれば、僕はフリーズばかりするオンボロパソコンです(笑)。頭の回転が遅すぎる。本当は本能で指したい。

 でもポンコツのエンジンでも高性能マシンに勝てるのが、将棋の面白いところ。エリートじゃなかったから、将棋をつまらないと思ったことがないんです」


 そんな藤井が、私には一流の職人に見えてくる。車も電気製品も、日本のモノ作りは町工場の職人が支えてきた。

 独自性溢れる3次元の設計図は元来、職人の頭の中にしかなく、手間を惜しまず精魂込めて作り上げた製品は、芸術作品のように美しい。

 だがそれには著作権がない。パソコン上で設計図を作れるようになった近年、命である設計図と試作品をコストの安い東南アジアに簡単に持ち出され、町工場は壊滅状態になった。藤井システムの盛衰と酷似する構図だ。

 だが、いつの時代も日本人の匠の技が求められるのは自明である。

「職人と言われると、嬉しいですね。そうそう、それだよって!」

 藤井は弾けるように笑うと、追い求める理想の将棋について話した。

「序盤で相手に悪手がないのにいつのまにか優勢になって勝つ。相手が気づかない間に斬っている、というのが最高です。しかも何度でも使える戦法で(笑)。

 いくら研究されても完璧性、芸術性がある。藤井システムでそういう格別の喜びを味わっちゃったから、独自の将棋を指すことが楽しいんですよ」

(Number783号 藤井猛「常識を打破して頂点に立った男」より)


中公新書『マックス・ウェーバーーー近代と格闘した思想家』

2020年09月16日 13時02分05秒 | 社会・文化・政治・経済

中公新書・岩波新書『マックス・ウェーバー/ヴェーバー』5月20日同日発売!

中公新書 『マックス・ウェーバーーー近代と格闘した思想家』
岩波新書 『マックス・ヴェーバーーー主体的人間の悲喜劇』


2020年5月20日、中公新書と岩波新書からマックス・ウ(ヴ)ェーバーの評伝・入門書が同時発売となりました。没後100年の節目――ぜひ、どちらもお手に取って御覧ください!

◇ 中公新書『マックス・ウェーバーーー近代と格闘した思想家』

野口雅弘 著
2020年5月20日刊行
本体860円(+税)

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』『仕事としての政治』などで知られるマックス・ウェーバー(1864~1920)。合理性や官僚制というキーワードを元に、資本主義の発展や近代社会の特質を明らかにした。彼は政治学、経済学、社会学にとどまらず活躍し、幅広い学問分野に多大な影響を及ぼした。本書は、56年の生涯を辿りつつ、その思想を解説する。日本の知識人に与えたインパクトについても論じた入門書。

著者について

野口雅弘
1969年東京都生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。哲学博士(ボン大学)。早稲田大学政治経済学術院助教、岐阜大学教育学部准教授、立命館大学法学部教授などを経て、現在、成蹊大学法学部教授。専門は、政治学・政治思想史。著書に、『闘争と文化――マックス・ウェーバーの文化社会学と政治理論』(みすず書房,2006)、『官僚制批判の論理と心理』(中公新書,2011)、『忖度と官僚制の政治学』(青土社,2018)。訳書に、シュヴェントカー『マックス・ウェーバーの日本――受容史の研究1905-1995』(共訳,みすず書房,2013)、ウェーバー『仕事としての学問/仕事としての政治』(講談社学術文庫,2018)、ノイマン/マルクーゼ/キルヒハイマー『フランクフルト学派のナチ・ドイツ秘密レポート』ラウダーニ編(みすず書房,2019)ほか
 
 
 
マックス・ウェーバーが亡くなったのは、1920年6月14日で、没後100年となる。
世界の中でも、特に熱心にウェーバーが読まれてきた日本での新書版での記念出版が、中公新書と岩波新書で予告されており、中公新書のほうが先に届いた。
ウェーバーの「哲学的・政治的プロフィール」を簡潔に描こうとした書で、入門書とされている。
あとがきに書かれた特徴は三つ。
一、宗教社会学と政治理論に重心を置く。(つまり、社会学方法論、哲学、プロテスタントティズム思想史、経済学には重心を置かない)
二、ウェーバーに関連する多数の先時代人、同時代人、後時代人に触れながら、ウェーバーの生涯と思想を描く(ウェーバーの批判者アーレントや後代のロールズ等も出演)
三、没後のウェーバー受容について頁を割く(終章は丸々この内容)
概略
第一章政治家の父とユグノーの家系の母・・ウェーバーのファミリーヒストリー。父はビスマルク支持の有力政治家。母は信仰心に篤いユグノーの末裔。
第二章修学時代・・ベルリン大学で法学を学ぶ。実家からの経済支援に頼るパラサイト生活のあと、フライブルク大学教授就任。マリアンヌと結婚。
第三章自己分析としてのプロテスタントティズム研究・・ハイデルベルク大学教授就任。父と大喧嘩し、和解の前に父死去。ウェーバーは心の病で数年の休養。ウェーバーの「客観性」論、回復期に書かれた『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』。この章の後半はこの本の説明、論証、応用、拡大、発展。
第四章戦争と革命・・ロシア革命、第一次大戦。ウェーバーの「国家の物理的暴力行使論」。後代のロールズ正義論と、アーレントによるウェーバーの暴力契機論批判。ウェーバーの官僚論。
第五章世界宗教を比較する。・・1909年ピアニストのミナ・トーブラーと知り合い、親密な関係になり、頻繁に彼女に家に通う。その結果、「音楽社会学」に夢中になり、その発展として、膨大な「世界宗教」の比較宗教社会学プロジェクトを企画し、ハイペースで進行するが未完。この比較宗教社会学のうちの「儒教とピューリアリズム」検討。
第六章反動の予言ーウェーバーとナチズム・・アイスナーとウェーバー。ウェーバーのリープクネヒト、ルクセンブルク批判。ドイツ民主党結党に関わるも、政治家になれず。ウェーバーの比例代表制批判と強い大統領推奨。ヒトラー独裁以前に死去。
終章マックス・ウェーバーの日本・・没後の関係者による著作保存、記録、復興の努力。ドイツでは衰亡。アメリカで復興。そして、日本でのウェーバー受容。大塚久雄を中心に。
私的感想
〇大変面白かった。没後100年にふさわしい力作。
〇第五章の最後に出てくる、日本と欧米でのウェーバー研究の態度の違いは面白い。欧米の研究者にはウェーバー研究専門家が少なく、自分の研究課題に応じて、ウェーバーのテクストから自分に必要なものを切り出していく。ウェーバーの専門研究者(日本は最高峰のよう)からみると、それは、「つまみ食い」である。一方、欧米非専門研究者からみると、使えるところを使えばよいのであり、「ウェーバー学」なるものは、ウェーバーを読むことを自己目的化しているにすぎない・・。
〇なるほど、ウェーバーは時代により、人により、多様な読み方ができ、新しい使用価値が生じてくるので、100年の年月を経て、今も多大な人気を保っているのだろう。
〇そういう意味では、終章はウェーバー没後、世界において、日本において、ウェーバーがどのように読まれてきた、どのように使用されてきたかの歴史、つまり、ウェーバーの使用価値の歴史ということになるのかな。大変面白い。
〇終章に限らず、本書に登場するたくさんの同時代人、後時代人はウェーバーの著作を様々に読み、その概念、方法論を使用し、応用し、批判し、克服するなどして、有効利用してきた人々である。また、ウェーバー自身が先時代人、同時代人の著作、思想を有効利用してきたことの歴史ともいえる。ウェーバー自身の著作のダイジェストを書き並べるのでなく、関連人物への言及からウェーバー像を作っていく手法はユニークで、成功していると思う。
〇第三章は著者の「プロ倫」後半分析が一気に突っ走り、『ロビンソン・クルーソー』から、ウェーバー死後のフィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』解析まで行ってしまう。有効利用で面白い。
〇第五章のウェーバー比較宗教社会学と音楽社会学はこれまであまり読んだことがなく、やや難解だった。しかし、これらの巨大プロジェクトの発端がミナ・トーブラーへの情熱にあったのだとしたら、それはそれですごいことと思う。
私的結論
〇岩波新書本が楽しみである。
 
 
 
①ウェーバーの優れた評伝である。伝記的記述と社会学的記述を結びつける工夫がみられる。
②ウェーバーの宗教社会学の根幹は、社会的行為の合理性の追求にあるが、その発想の根拠が、ウェーバーな学問的経歴が法学研究に由来することを突き止めたのは初めて著者の慧眼である。
③法解釈の合理的解釈から社会的行為の合理性解釈が生まれたのだ。法解釈の法的合理性は法にあるが、社会的行為の合理的解釈の根拠は法ではなく、〈因果関係〉である。支配の正当性は人々が政治権力に服従する合理的根拠に求められる。伝統的支配・カリスマ的支配・合法的支配の三類型をウェーバーは指摘した。
④ところで、ウェーバーが考案した〈理念型〉の構想は、どこから生まれたのであろうか?これは伝記的記述に由来するものではないだろう。歴史学者故林健太郎は『史学概論』(有斐閣双書、絶版)で、ウェーバーの〈理念型〉が新カント派(ヴィンデルバント・リッケルト・ディルタイ)に由来するものであることを指摘している。近年は、ニーチェの思想がウェーバーに与えた影響を重視している。
⑤ウェーバーの宗教社会学が戦後の日本における社会科学研究に与えた影響は計り知れないものがあるが、ウェーバーがプロテスタント出身であることが大きく反映されている。プロテスタンティズムを資本主義のエトスと見なす思想は、特殊ヨーロッパ的発展要因の宗教社会学的研究へとウェーバーを導くが、ユダヤ教、儒教とヒンドゥー教、仏教と道教の比較研究等からプロテスタンティズムの禁欲的職業倫理がクローズズアップさせることになる。
⑥確かに、プロテスタンティズムは特殊ヨーロッパ的な経済成長率発展の宗教社会学的要因とはなり得ても、戦後の日本や中国の経済発展の宗教社会学的要因とはなり得ない。これをウェーバーならどのように説明したであろうか?
⑦ウェーバーが合法的支配の典型としてあげた〈官僚制〉の行き詰まりた法の支配の限界についても再考すべきであろう。
本書と期を同じくして岩波新書からも『マックス・ウェーバー』が出版された。読み比べてみるのも面白い。
とても参考になる評伝である。
お勧めの一冊だ。
 
 
 
この本では、ウエーバーの家系、修学時代、プロテスタンティズム研究、戦争と革命、世界宗教を比較する、反動の予言、ウエーバーと日本と章を立てたうえで、初心者にもわかりやすく、ウエーバーの主張とそれが他の学舎に与えた影響を述べている。平易な語り口でかつ丁寧に説明しているので、ウエーバーの著作物を読みたくなること間違いなしである。これから、社会学を勉強する人たちに薦めたい。
 
 
 
これは見事な本だ。ウェーバーの入門書を書くとなると、絶滅しつつある旧世代からは無謀とのそしりを受けかねないし、若い世代からは今更ウェーバーかと首を傾げられるかもしれない。本書はそうした疑念を一気に払しょくし、ウェーバーとの格闘・対話に依然として価値があることを雄弁に示す。

何よりも、筆の運びが見事だ。パウル・クレーの絵(著者のtwitterをみると、クレーのファンのようだ)、カフカの小説、リルケの詩が引用されるだけでなく、縦横無尽に話を紡いでいく。例えば、ウェーバーの「心の病」を論じるところで、フロイト、J・S・ミル、トルストイ、イプセンとつながるあたり(59-62頁)。ややもすると、こうした書きぶりは脈絡を失いがちだが、著者は連関を見失っていない。久しぶりに知的興奮を覚えた。

入門書とはいうものの、まったく前提知識がない人にはやや敷居が高いとは思う。しかし、最新の研究をうまく一般向けに伝えている。彼の著述における法学の影響、比較宗教社会学の想源としての音楽(と女性ピアニストとの親密な交流)などは、研究者の間では常識なのだろうが、新鮮な発見であった。また、言葉の解説が丁寧である。ベルーフを「仕事」、「心情倫理」を「信条倫理」と訳すこと、従来「鉄の檻」として訳されてきた有名な言葉を、「外皮」ないしは「殻」としたほうが良いと言った指摘は、これまた研究者の常識なのだろうが、テクストの解釈を促す意味でも有益である(例えば、今野元『マックス・ヴェーバー』では、何も説明なく「鋼鉄のように硬い殻」という言葉が出てくる)。このあたりは、良質なゼミに参加しているような気分になる。

本書では、現代の課題に対する著者の意見が端々に顔を出している。著者は、官僚制を軸にする現代政治の研究者でもある。実のところ、私は著者の意見に必ずしも賛成しない(反証可能性やEBPM、実証的政治科学への茶々は、それで?と問いたくなる)。また、こうした現代への言及は、本書を時間の経過とともに陳腐化させていく危険はある(例えば123頁の記述)。
しかし、著者の意見に反発し、疑問を持つことそのものが、対話の一部でもある。この本は、近代と格闘したウェーバーと著者が格闘し、それに触発されて著者が現代と格闘し、そうした著者と読者が格闘するようにと、多重かつ多様な対話がもくろまれているのである。著者も「あとがき」で言う。「古典と呼ばれる本は、その時代のコンテクストが失われてすら、読み継がれる『余地』があるから古典になる。
このため古典やその書き手についての研究は、ある時点に出された『完全版』や『決定版』によって簡潔されるわけではない。時代のコンステレーションが変われば、テクストの読まれ方も変わってくる。・・・時間の経過とコンテクストの変化のなかで、ウェーバーをめぐる言説は変化し、そして積み重なる。そうすれば、見え方も変わらざるをえない。こうした意味で、この本も含め、すべての研究は必然的に『中間考察』である」(253-4頁)。

蛇足ながら、本書は、本年の吉野作造賞の最有力候補である。


◇ 岩波新書『マックス・ヴェーバーーー主体的人間の悲喜劇』

今野 元 著
2020年5月20日刊行
本体860円(+税)

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』をはじめ、今も読み継がれる名著を数多く残した知の巨人マックス・ヴェーバー(1864~1920)。その作品たちはどのようにして生み出されてきたのか。百花繚乱たるヴェーバー研究に新たな地平を拓く「伝記論的転回」をふまえた、決定版となる評伝がここに誕生!

 


宗教の力―日本人の心はどこへ行くのか

2020年09月16日 12時56分23秒 | 社会・文化・政治・経済

山折 哲雄 (著)

人が真に宗教に救済を求めるのは、人生に生きづまるか、どん底に落ちたときである。いかに宗教的に安心に到達するか……親鸞の教えはわれわれに“信”を与え、現代の課題にこたえ、宗教的連帯のみちをひらく。

内容(「MARC」データベースより)

親鸞聖人の思想は、日本の精神風土の中で生まれた数少ない普遍的な、民族の差を超えてあらゆる人々に伝えうる思想である。そのような思想がどうやって生まれてきたのかを検証する書。
 

内容(「BOOK」データベースより)

この大いなる空虚の時代を、いかによく生き、よく死ぬか。無常観・霊魂信仰の問題から、臓器移植・宇宙時代の死生観といった問題までを、叙情豊かに語った珠玉の講演集。

内容(「MARC」データベースより)

世俗化とニヒリズムに覆われた現代の社会で、もはや宗教の言葉は、人々の心に届かなくなってきている。無常観・霊魂信仰の問題から、臓器移植・宇宙時代の死生観といった問題までを語った講演集。
 
 
 

山折さんは宗教学者であるとともに哲学者でもあるのだろう(印度哲学科出身だから当たり前だといわれそうだが)。
これまでに何冊か著作に触れてみて、まさに「腑に落ちる」という感覚を何度も感じました。
おそらくそれは、日本人が持っている(刷り込まれている)宗教や哲学に対する素朴な疑問にある種の答えを導いてくれているからだと思う。
今回の本は、山折さんの講演等を編集したもので、出版までの社会の出来事などにも言及しながら日本人と宗教に関して綴られている。もちろん外国の宗教や哲学にも触れて若干の比較(良し悪しでない)もしている様に思う。
無常観、霊魂信仰、死生観といった文脈が小気味よく流れている。
備忘録的に若干のテキストを残しておきたい。
第一部 日本人の「心」の原型 1.宗教心を見失った日本人 2.なぜキリスト教は日本に根づかなかったか 3.「たたり」に見る日本人の霊魂信仰
第2部 自然への信仰 1.中世日本人は自然をどう見たか 2.「小さな仏」への愛情 3.芭蕉がみた落日 4.宇宙に開かれる神秘体験
第3部 生と死を問う 1.宇宙時代の死生観 2.移りゆく時代の宗教の力 3.あらためて問われる「生老病死」

明治の日本社会で宗教が力を持たなかった理由(社会の世俗化)
 織田信長の比叡山焼き討ちをはじめとする寺院と仏像の破壊
 一向一揆の鎮圧(最終的には石山本願寺での一揆の陥落)
 宗教の世俗化は上記のイベントを経て徳川時代に出来上がった。檀家制 度がその例(お墓信仰と遺骨信仰)

日本の神の六つの性格 1.隠れる(不死)神と葬られる神 2.神の匿名性 3.記号化する神 4.特定の場所に関わって鎮座する神(述語的な神) 5.神の無限分割制 6.漂着性

脳死、臓器移植問題における「無常」と「犠牲」
死に急ぎの思想と生き急ぎの思想
西行に見る「よりよき死を生きるための行為」
 
 
 
読みやすく、教養もつく良書です。

キリスト教VSイスラム教というような世界観が垣間見られる今日この頃ですが、我々日本人からは遠い存在のような宗教について、真剣に考える必要があると思います。

そのためにも、こうした宗教に関する入門書的なものを読んでいくのは、非常によいと思います。

問い続ける力

2020年09月16日 12時42分07秒 | 社会・文化・政治・経済

石川 善樹 (著)

「自分で考える」と言うが何をどう考えればいいのだろうか? 様々な分野の達人9人の問いのたて方、そして問い続ける力を探り出す。

内容(「BOOK」データベースより)

「自分で考えなさい」―誰もが一度は言われたことがある言葉だろう。でも、何をどう考えたらいいのか?そこで、様々な分野で突出している達人、9人のもとをたずねて聞いてみた。「どんなことを考えてますか?」時代、社会、文化、アート、性、経済、人間とAI…、問い続け、考える達人たちとの縦横無尽の対話は深く、広く、「Think Different」のヒントにあふれている。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

石川/善樹
予防医学者。1981年広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がよりよく生きる(Well‐being)とは何か」をテーマに、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
 
 
あくまで個人的な意見、とご了承いただくとして書くなら、イマイチ、かな。  著者の知恵をもとにした内発的なメッセージになっていませんので。  P68以降は、識者との対談をまとめたスキマだらけの代筆と読みました。  だからつまらなかった、というわけではありません。  どんな本でもそうですが、マーカーしたくなるところは見つかるものです。  その部分を、まま(支障ない程度に)ご紹介するしかなさそうです。

「問い続ける」。  このコトバは最近のキーワードですね。  バブルまでの日本は、一つの正解を猛スピードで求め、いち早くそれを獲得したもの(企業)が業績を上げ続けていました。  ベンチマークする対象がはっきりしていたから、あの手この手で先取りを目指し、モーレツな働き方が美徳となり、達成感に浸っていました。  その後の、失われた20年。  一定のゴールにたどり着いてしまった日本は、成熟を保ちながら、その後どのようにイノベートしたらよいか…、その”正解のないゴール”へのたどり着き方がいまだ実行できぬまま、施策の形骸化というタコツボから脱出を図っています。  そこで気づいたのが「正解のない問い」への対応のし方…、それは、従来の課題解決型ではなく、問題発見型。  いくら課題解決能力(知識、もっというなら偏差値)があっても、問題が分からないから、課題解決能力が生かされない。   

与えられた問題に、いち早く正解を引き出す習慣が長く続いてきたために、クリティカル・シンキングができず、むなしく”見えない問題”が目の前を流れ去り相対的に相手の利益を利する、という皮肉な現状があるように思います。  著者も1章の「問いを問う」と「おわりに」で同様のことを考えているようですが、もはや誰もが懸念事象として取り上げており、目新しさはありません。  ただし、続く識者との対談では、響くコトバが散見されました。

たとえば、ライフネット生命の出口氏との対談。  小生は、出口氏の中韓との歴史観には、やや違和感を感じます。  日本には、中韓に対するGDPや家電事業への劣等意識が排外的なナショナリズムを形成し、稚拙な批判が蔓延している羞恥があると、嘆いています。  それは、かの国の”告げ口”ではなく、言うべきことはきちんと発するということであり、いちいち英語に変換して世界発信しない節度が保たれている、と感じるからです。  ハナシが逸れました。

出口氏の響くコトバは、こんなところでしょうか、、、  正解のない答えに挑もうとするときに、2項対立的な思考に陥りがちだ、と。  その方が分かりやすいですもんね。  どちらが正しいのかという、かつての正解追求型です。  いまだにそのクセから抜けきらない、というわけです。  そのとおりですね。  どちらかに折り合いをつけるという知恵を行使するか、対立を包摂する上位概念を導く(いわゆる弁証法)知恵を働かせるか、教育の歴史にみても、そういった能力が成熟していない、ということででょう。

著者の石川氏が述べておられるとおり、直接的なアプローチより、間接的なアプローチをするほうがうまくいくことが多いように思います。  集中(と選択)ではなくて、分散思考ですね。  正解追求にモーレツな集中力と時間をかけるより、関連する事象、一見なんの関係もないコトをボヤーッと考えていると、ひらめく。  そこにリベラルアーツが欠かせない。  美意識とか、直観は、たんなるデタラメではなく、理に適った思考、働き方なのかもしれませんね。  たしかに”問い続ける”ことは知識の蓄積と同等以上に大切な”能力”なのでしょう。

実はあと3分の1が未読です。  レビューの更新があり得ますがご容赦願います(遅読ゆへご勘弁を)。 書き下ろし、ではなく、対談が大半の代筆もの(監修本)ですから、個人的には星5つは、あり得ませんこと、併せてご容赦ください。
 
 
 
予防医学者の著者が、超一流の経済学者や経営者、AV監督やミシュランの星付きシェフなど9名と対談した内容をまとめている。幅広い分野について、それぞれが興味深い内容なので一回読んだだけでは消化しきれないが、折にふれて読み返し「考えるヒント」を得たいと思う本である。
 
 
 
著者・石川善樹さんのお話をたまに伺う機会があると、予防医学者という気難しそうな肩書きを一切感じさせない軽快な語り口と、その幅広い知識領域に驚かされるわけだが、本書でもそれが遺憾なく発揮されている。

各界のイノベーターとも呼べる方々と膝を付け合わせ、彼らが日々何を問うているのかを掘り下げるには相応の覚悟が必要で、それを遣って退けられる石川さんの器量には感心するばかりだ。その背景には彼自身が自分の専門領域において、問いを立て続けているという事実がある。

問い続ける為に欠かせない主観と客観の往来。そこには領域を限定しない興味関心が求められるわけで、好奇心旺盛な対談者たちを刺激できる石川さんだからこそ成し遂げられる仕事が本書には表れている。

リベラルアーツを共通言語に据える意味が分かる、価値ある一冊だ。
 
 
 
予防医学の研究者である著者が、様々な職業/業界のトップランナー達との対談を通して、彼らの問い、考える力を紐解いていく本。
各対談は、対談者が自身の専門領域や課題認識について話し、著者がそれとなくファシリテートする形式を取る。対談者がなぜそれを考えるに至ったのか、幼少期の原体験を振り返ったり、日々の習慣を深掘ったりしながら、彼らの思考様式に漸近していく。

本書では、それら各対談や対談者の思考の共有項を括ったり、それらを汎化/体系化させて「問いを立てる仕方/能力」を形作る手続きも特に取ってはいない。
その意味で、本書は問いを立てる力を養うために読む本としては入門書にも決定版にもなりはしない。
類書だと、王道のクリティカルシンキング系や「Q思考」等の方がおすすめであろう。

ただ、本書自体が全編を通じて発する「問う力はどこから来るか」という”問い”と、一流の思考人たちの個別具体的な生のエピソードは、世にある類書が教えてくれる「問いの仕方」よりも、よりプリミティブで深遠な知の形式/生成の一端を垣間見せてくれる。それらのあり方や伝え方が、属人的で非体系的であり、なんなら物心ついた時には天才だったといった元も子もない話ですらある(本書の対談1人目の物理学者長沼伸一郎)ことは、知のリアルを手触りを持って感じさせてくれる。ゆえに、読み物としてとても面白く読めるし、問う力をこういった側面から照射する意義は一定あると思われる。

(余談だが、世にある「質問力」系の書物は①課題設定についての本②質問で人を動かす系の本、に大別されるが、②も①のような見た目をしていて、買ってがっかりする事がわりとある)
 
 
 
予防医学という枠にとらわれず幅広い分野で活躍する著者と「考える達人たち」との対談を収録した本です。この対談集がとにかく刺激的で面白かったです。著者が冒頭に書いているように、私たちは生まれてからこれまで正しい問いの立て方を順序立てて教わることがありませんでした。そんな中、各分野の達人たちはどのように考えを深めているのか、それを著者が対談の中でうまく引き出しています。

個人的に印象に残ったのは以下の方々との対談です。

岩佐文夫
・がんの治療では失敗は許されないが、ビジネスでの無数の意思決定は失敗が許される。それらの意思決定の経験を重ねて、予想と結果の誤差が縮まっていけば自分の直感が信じられるように
・進化の本質は多様性にある

二村ヒトシ
・結婚(社会的な生活)、恋(情熱)、セックス(社会の外)は本来全く別物。現代社会のシステムがこの3つを(子どもを産むことまで含めて)一人のパートナーと営むことを正しさだと決めている

松嶋啓介
・シェフ修行中にいつも尋ねていたのは「どういう発想でこの料理を考えたんですか?」。何をどう感じてそれを表現したのかに興味があった。でも多くの日本人シェフは作り方を教えてほしいから「レシピください」となる。技術はあるから見よう見まねで表面的なデザインの真似ばかりになる。話している論点が全然違う
・その土地で何かを感じようとするときは、ジョギングと歩くこと、あと自分を空っぽにする努力をする。人間は視覚からのインプットが多いが、頭が固かったらそれが入ってこない
ちなみに、本書を読んで松嶋氏のレストランにも行って味わってきました。

これらはほんの一部ではありますが、本書のおかげで考え方の枠が広がったように思います。何度でも読み返したくなるほど含蓄のある一冊です。

考え続ける力

2020年09月16日 12時27分39秒 | 社会・文化・政治・経済

石川 善樹 (著)

「考える」とは何か? 安宅和人、濱口秀司、大嶋光昭、小泉英明、篠田真貴子ら「考え続ける賢人」の頭の中をのぞき見る。「思考シリーズ」新書第2弾。

内容(「BOOK」データベースより)

前著『問い続ける力』は、「考える」ためには「問う」ことが不可欠だという一冊だったが、この本ではいよいよ「考える」ことそのものを追求していく。まずは著者自身が目標とする「創造性のスタイル」を明らかにする。さらに、安宅和人、濱口秀司、大嶋光昭、小泉英明、篠田真貴子との対談を通して、「考え続ける賢人」たちの頭の中を見せてもらう。知的刺激に満ちた「思考シリーズ」新書の第2弾。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

石川/善樹
予防医学研究者。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がよく生きる(Good Life)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、概念工学など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
 
 
①なかなか面白く、新しいアイデアを生み出す思考ツールが満載である。「却来」とは、ある事柄から新しいアイデアを生み出すことで、古いものを忘却の彼方へと送り出す思考である。ある事柄から新しいアイデアを生み出す能力を「創造性」と呼ぶ。
②中東は集団主義的・多産的思考・主張が強いが、日本は集団主義的・少産的思考を好み、謙虚な態度を好む。アメリカは個人主義的・多産的・主張が強いが、ヨーロッパは個人主義的・少産的・謙虚な態度を好むと著者は述べる。
③私たちを悩ますコロナ禍を例にとると、個人主義的・少産的思考を好むヨーロッパでは、論理的思考が展開されやすいことから、コロナ対策の結論は一つに決まる。
つまり、ロックアウトを発令し、外出を法的に禁止する。なぜか。答えはロックアウトにより、人命をコロナ禍から100%防ぐことが出来るからである。経済封鎖による収入減少は政府が完全に保障する。これにより、感染を短期間で終息させることが出来る。
④一方、日本は集団主義的・謙虚な態度でコロナ対策を考えると、あらゆる要素を検討し、総合的・統合的な思考が展開され、結論が出るまでに時間を要する。医療体制、経済活動力自粛、学校休校など総合的・統合的対策として、緊急事態宣言の発表となる。しかしこれには法的強制力がなく、終息までに時間を要する。
こうした四つの思考類型の差異がコロナ対策の違いとなり、日本人の遵法精神、真摯な取り組み(外出自粛)により、感染による死亡者数は、欧米諸国よりはるかに少ない。
⑤著者は〈直観→大局観→論理〉と思考が進展すると主張する。一例をあげると、コロナ禍により青果店や鮮魚店は大きな経済的打撃を被っている。売上激減という深刻な事態の〈直観〉が生まれる。
次に、色んな情報を入手した結果、コロナとの闘いは長期戦になるとの予測=〈大局観〉を持つ。すると対策として、売上減少による倒産という最悪の事態を防ぐ必要があるという〈論理〉的思考が展開される。
⑥そこで、売上減少に歯止めをかけるために、ドライヴスルー方式によるセット販売を試みる。この販売方式は店員と来客との接触によるコロナ感染を防ぎ、来客が商品を買い求めやすいというメリットがある。
しかし、車で来る近隣の客に限定され、売上は爆発的に伸びるとは限らない。それでもこのアイデアは〈創造性〉に富み、従来の店頭での感染リスクの高い販売方式の〈却来〉を招く。
次に、ネット販売を考案する。この販売方式はコロナ感染を完全に防ぎ、来客のみでなく、全国の顧客に対応可能であり、少ない人件費で対応可能である。これでドライヴスルー方式は〈却来〉を招くのである。
青果・鮮魚は新鮮さが命である。注文が入れば、出来るだけ速く客の自宅へ宅配したい。そこで、次に配達・輸送方式を改善し、宅配をスピードアップさせることで、従来の配送は〈却来〉を招くのである。こうして従来の方式が連続的に〈却来〉を招き、新しい方式が〈創造〉されるのである。
⑦著者は予防医学の研究者であり、著者の思考ツールはまさに今私たちが直面しているコロナ禍対策に応用出来る。
とても参考になる本である。理論的に裏付けられたアイデアが満載だ。
お勧めの一冊だ。

考え続ける力

2020年09月16日 12時27分39秒 | 社会・文化・政治・経済

石川 善樹 (著)

「考える」とは何か? 安宅和人、濱口秀司、大嶋光昭、小泉英明、篠田真貴子ら「考え続ける賢人」の頭の中をのぞき見る。「思考シリーズ」新書第2弾。

内容(「BOOK」データベースより)

前著『問い続ける力』は、「考える」ためには「問う」ことが不可欠だという一冊だったが、この本ではいよいよ「考える」ことそのものを追求していく。まずは著者自身が目標とする「創造性のスタイル」を明らかにする。さらに、安宅和人、濱口秀司、大嶋光昭、小泉英明、篠田真貴子との対談を通して、「考え続ける賢人」たちの頭の中を見せてもらう。知的刺激に満ちた「思考シリーズ」新書の第2弾。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

石川/善樹
予防医学研究者。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がよく生きる(Good Life)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、概念工学など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
 
 
①なかなか面白く、新しいアイデアを生み出す思考ツールが満載である。「却来」とは、ある事柄から新しいアイデアを生み出すことで、古いものを忘却の彼方へと送り出す思考である。ある事柄から新しいアイデアを生み出す能力を「創造性」と呼ぶ。
②中東は集団主義的・多産的思考・主張が強いが、日本は集団主義的・少産的思考を好み、謙虚な態度を好む。アメリカは個人主義的・多産的・主張が強いが、ヨーロッパは個人主義的・少産的・謙虚な態度を好むと著者は述べる。
③私たちを悩ますコロナ禍を例にとると、個人主義的・少産的思考を好むヨーロッパでは、論理的思考が展開されやすいことから、コロナ対策の結論は一つに決まる。
つまり、ロックアウトを発令し、外出を法的に禁止する。なぜか。答えはロックアウトにより、人命をコロナ禍から100%防ぐことが出来るからである。経済封鎖による収入減少は政府が完全に保障する。これにより、感染を短期間で終息させることが出来る。
④一方、日本は集団主義的・謙虚な態度でコロナ対策を考えると、あらゆる要素を検討し、総合的・統合的な思考が展開され、結論が出るまでに時間を要する。医療体制、経済活動力自粛、学校休校など総合的・統合的対策として、緊急事態宣言の発表となる。しかしこれには法的強制力がなく、終息までに時間を要する。
こうした四つの思考類型の差異がコロナ対策の違いとなり、日本人の遵法精神、真摯な取り組み(外出自粛)により、感染による死亡者数は、欧米諸国よりはるかに少ない。
⑤著者は〈直観→大局観→論理〉と思考が進展すると主張する。一例をあげると、コロナ禍により青果店や鮮魚店は大きな経済的打撃を被っている。売上激減という深刻な事態の〈直観〉が生まれる。
次に、色んな情報を入手した結果、コロナとの闘いは長期戦になるとの予測=〈大局観〉を持つ。すると対策として、売上減少による倒産という最悪の事態を防ぐ必要があるという〈論理〉的思考が展開される。
⑥そこで、売上減少に歯止めをかけるために、ドライヴスルー方式によるセット販売を試みる。この販売方式は店員と来客との接触によるコロナ感染を防ぎ、来客が商品を買い求めやすいというメリットがある。
しかし、車で来る近隣の客に限定され、売上は爆発的に伸びるとは限らない。それでもこのアイデアは〈創造性〉に富み、従来の店頭での感染リスクの高い販売方式の〈却来〉を招く。
次に、ネット販売を考案する。この販売方式はコロナ感染を完全に防ぎ、来客のみでなく、全国の顧客に対応可能であり、少ない人件費で対応可能である。これでドライヴスルー方式は〈却来〉を招くのである。
青果・鮮魚は新鮮さが命である。注文が入れば、出来るだけ速く客の自宅へ宅配したい。そこで、次に配達・輸送方式を改善し、宅配をスピードアップさせることで、従来の配送は〈却来〉を招くのである。こうして従来の方式が連続的に〈却来〉を招き、新しい方式が〈創造〉されるのである。
⑦著者は予防医学の研究者であり、著者の思考ツールはまさに今私たちが直面しているコロナ禍対策に応用出来る。
とても参考になる本である。理論的に裏付けられたアイデアが満載だ。
お勧めの一冊だ。

ドコモ口座問題、なぜ起きた? 事業拡大、顧客保護おろそか―ニュースQ&A

2020年09月16日 12時07分30秒 | 事件・事故

2020年09月12日18時51分

 NTTドコモの手掛ける電子決済サービス「ドコモ口座」と連携する銀行口座から、預金が不正に引き出された。地方銀行を中心に被害が拡大し、ドコモは「本人確認が不十分だった」と陳謝した。問題はなぜ起きたのか。
 ―ドコモ口座とは。
 インターネット上にドコモが開設したデジタル口座だ。連携する銀行口座やセブン銀行の現金自動預払機(ATM)からチャージ(入金)すれば、ネット通販の支払いや店舗でのQRコード決済に使えるほか、送金もできる。
 ―何が起きたのか。
 11日時点で連携する35行のうち12行で不正な引き出しが確認されている。預金者の被害は73件、総額約1990万円に及ぶ。ドコモは全35行の口座の新規登録を中止。過半の銀行がドコモ口座へのチャージも止めた。
 ―不正の手口は。
 銀行口座の連携には預金者の名義や口座番号、暗証番号などが必要だ。何者かが不正にアクセスして情報を盗み、預金者になりすましてドコモ口座を開設し、不正に出金したようだ。どこから、どのように情報が盗まれたのかは分かっていない。
 ―なぜドコモ口座が?
 ドコモ口座開設時の本人確認を、名義を問わない無料のメールサービスでも行えるようにしていたからだ。連携先の銀行口座は厳しい本人確認の上で開設されているため十分と考えたドコモの認識の甘さを突かれた。ドコモは新たな収益源として金融事業に目を付け、携帯契約者以外への顧客基盤拡大に力を入れていた。顧客保護がおろそかになっていたようだ。
 ―銀行側に非はないのか。
 そうとは言えない。預金者がドコモ口座と連携させる際、1回限り有効な「ワンタイムパスワード」を送って、入力を求めるといった本人確認を強化する措置は講じておらず、脇の甘さは否めない。
 ―被害者補償と対策は。
 預金者も不審な取引履歴がないか確認する必要がある。ドコモは銀行と協議の上、全額を補償する方針だ。各行と負担割合を協議して決める。また、金融庁はドコモに対し、資金決済法に基づいて経緯や原因を17日までに報告するよう命じた。 

時事ドットコム


阪神に来るはずだった流れを手放したボーアの初球遊飛…谷佳知氏が指摘

2020年09月16日 12時07分30秒 | 野球

9/16(水) 9:00配信

デイリースポーツ

 2回、二飛に倒れたボーア(投手・菅野)

 「巨人6-3阪神」(15日、東京ドーム)

 阪神は勝てる試合を落とした。大きなポイントは四回の阪神・ボーアの打撃だと思う。あそこで来るはずの流れを手放してしまった。

 大山の振り逃げで1死一、三塁と好機が転がり込んできた場面で、初球を遊飛は痛い。最低でも犠飛と思い、打球を上げようとしていたが、菅野のようにキレのある球にこういう打撃をするとポップフライになりがちだ。バットを上から出してヒットを狙う方が、こういう場面ではいい。

 以前からボーアはポップフライを打つ姿が目立つ。サンズ、大山がいいだけに、ボーアが打てばさらに打線はつながるのだが、今のままの打撃では苦しいだろう。

 七回の梅野のバスターも疑問が残る。終盤に2点差で無死一、二塁ならば、犠打で2点を取りにいくべきだろう。おそらく初球がボールで次はストライクが来るとベンチは読んだのだろうが、その作戦はどうかと感じた。

 巨人にマジックが出たが阪神は勝ち続けるしかない。そのためにも、ボーアにはもう少し頑張ってほしい。

【関連記事】


阪神”矢野采配”裏目で巨人にマジック「38」点灯…巨人と阪神の違いは「監督力」「執着心」「守備力」の3点にあり

2020年09月16日 12時07分30秒 | 野球

9/16(水) 6:17配信

THE PAGE

阪神・矢野監督の采配が裏目に出て巨人にマジック「38」が点灯した。10.5ゲーム差がついた巨人と阪神の違いはどこにあるのか?(写真・黒田史夫)

巨人が15日、東京ドームで行われた阪神戦に6-3で逆転勝利を収め、引き分けを挟んで8連勝、マジック「38」が点灯した。48試合を残してのマジック点灯は、2リーグ制以降では球団史上最速。先発の菅野智之は巨人ではスタルヒン以来、82年ぶりとなる開幕11連勝を果たした。阪神は矢野監督が2番に起用している梅野隆太郎に7回、バスターエンドランを仕掛けて失敗するなど采配が裏目に出た。今季の東京ドームでの巨人戦は7戦全敗。ゲーム差「10.5」にしてしまった両チームの差はどこにあるのか?「監督力」「執着心」「守備力」の3つの違いが浮かび上がってきた。

7回に痛恨バスターエンドラン失敗
 巨人は強かった。
 防御率1.44の“無双”菅野から初回に糸原のタイムリーで先制しても2回に吉川尚の一打で追いつかれ、3回に近本の4号ソロで勝ち越しても、4回に丸のタイムリーで並ばれた。満を持して対巨人の防御率0.90を誇る左腕の高橋遥を中7日で先発マウンドに送ったが6回に4連打を浴びてKO降板…。亀井、岡本にストレートを狙い打たれて三度、同点にされると、一死満塁から2番手の岩貞が大城に2点タイムリーを許して3-5となった。だが、まだ2点差である。

 原監督は「(今季登板で)今日が一番不安定だった」という菅野を6回で100球ジャストで交代。7回から左腕の高梨をマウンドに送り、その7回にGT戦の勝負を分けるハイライトを迎えることになる。
 途中出場の小幡の叩きつけた打球が三塁の頭上を越える内野安打となり、続く2打席連続本塁打の近本が四球を選んだ。無死一、二塁として、矢野監督が11日の広島戦から2番に起用してきた梅野である。

 矢野監督は仕掛けた。
 梅野は初球にバントの構えをしてボールを見送った。そしてなんと2球目にバスターエンドラン。梅野のバットは、内角低めのボールゾーンに曲がってくるスライダーに空を切った。慣れないスタートを切っていた小幡も三塁でアウト。完全に采配は裏目に出た。

巨人、楽天、西武などでヘッド、戦略、作戦コーチを務めたことのある野球評論家で新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ強化アドバイザー兼総合コーチの橋上秀樹氏は、「巨人の野球が一枚上であることを表すようなシーンだったのでは」と指摘した。

「梅野を2番に起用している理由は、その打力でしょう。2点差で7回。ならばどっしりと構えて“打て”だったと思います。糸原、サンズ、大山と続く打順でビッグイニングに変える可能性もあるイニングです。初球にバントの構えをさせたのはバスターエンドランを仕掛ける前の常套の動きですが、バスターエンドランは裏をかく作戦ですから、これを出すのは巨人ベンチがバントを想定し、“バントOK。やらせよう”と、スッとストライクを取りにくることが考えられる場合です。だが、巨人ベンチは梅野が、すんなりとバントをやってこないことを読んでいたのでしょう。だから厳しいゾーンへのスライダーを選択したのだと思います。大城のミットは変化球想定の場所で構えていました。巨人と阪神の先を読む力の違い。この積み重ねが10.5差につながる原因のひとつかもしれません」

 加えて高梨はストライクが入らずに苦しんでいた。梅野のバットを信頼すべきであったが、矢野監督の焦りが、勝負の流れを巨人に引き渡すことになる。
 矢野監督は、初回無死一塁からも、梅野に簡単にバントをさせていた。糸原のタイムリーにつなげたが、立ち上がりに不安のあった菅野は、自らの調子を鑑みて、大量失点を恐れていた。勝負するなら7回ではなく、この初回だった。すべてが裏目である。

 そして巨人と阪神の違いを象徴するシーンが9回にあった。阪神は巨人の“守護神“のデラロサを一死一、二塁と攻めたが、“ラッキーボーイ“の近本のセンターへ抜けていくかと思われた打球を二塁の吉川尚が飛びついてスーパーキャッチ。転倒しながらも、すぐさま二塁へ正確なトスを送り、2点差にし同点の走者が出塁することを食い止められたのだ。
 巨人のスーパープレーは初回にも。先制点を奪いなお一死一塁からサンズのセンターへ抜けていく打球を遊撃の坂本が止め、バックトスから6ー4ー3のダブルプレーを成立させていた。
 一方の阪神は守りで見えないミスをやらかしていた。8回二死一、二塁から大城を迎えた場面でライトを少し前に出したくらいでセンター、レフトを定位置に下げ前進守備を敷いていなかったのだ。二塁走者は増田大。1点をあきらめ大量失点になることを警戒したのだろうか。結果、大城が叩きつけた打球は、センター前へ抜けた。近本は三塁へ送球して一塁走者を刺したが、あまりに重たい終盤の1点を巨人に渡すことになったのである。
橋上氏は巨人と阪神の違いのひとつに「守備力」を指摘した。
「巨人と阪神との差は、この守備力です。巨人が接戦に強いのは守り勝っているからです。土のグラウンドをホームとする阪神と人工芝の巨人をトータルの失策数だけで比較することはナンセンスですが、それにしても阪神の53個と巨人の16個は違いすぎます。
 そして巨人の強さは、そのセンターラインが攻撃力を兼ね備えているという点にあります。セカンドは固定できていませんが、本来、守備重視の起用であるセンターラインに大城、坂本、丸という攻撃力のある選手が揃っています。チーム全体の攻撃力の差が出るのはセンターラインの攻撃力の差なのです。また守備力の差は、イコール執着心の違いだと思います。巨人は、守備だけに限らず、走塁、打撃、投手のピンチでの投球にしても、ここぞという勝負所でのワンプレー、ワンプレーに強いんです。際のプレーで集中力を発揮する執着心が浸透しています。対して阪神、横浜DeNAは、ここ一番での凡ミスが目立ちます。その積み重ねが、このゲーム差になってしまっている原因のひとつではないでしょうか」

 橋上氏は、両チームの決定的な違いは勝負への「執着心」の差だと見ている。では、その「執着心」は、どこから生まれるのか。

「ひとつはチームの緊張感、競争意識です。原監督は不振であれば坂本、丸にもバントをさせ、1、2軍の入れ替えも積極的に行って若い選手を使い、チームに“ダメなら生き残れない”という危機感を植え付けました。トレードも積極的に行い、誰も安心していられない状況を作っています。その競争意識、執着心の源をたどれば、監督の威厳というものに行き着くのではないか、というのが私の意見です。選手は監督を見て野球をしているものです。ピリピリ感を作るのは監督の威厳なんです」

 橋上氏は“師”と仰ぐ、名将、故・野村克也氏とのこんなやりとりを例に挙げた。
 楽天コーチ時代に監督だった“ノムさん”から、「なぜ選手が全力疾走しないか、理由がわかるか」と”禅問答”をされたという。
「選手が気を抜いているからですか?」と答えると「ちゃうな」とニヤリ。
「監督に威厳がなく監督へのリスペクトを選手が持っていないチームほど全力疾走をしないんや。つまり全力疾走しないチームは監督が悪いんや」
「全力疾走」の解釈を変えると、それは「際のプレーの強さ」、「執着心」、「集中力」に置き換えることができる。すべては監督の「威厳」なのだ。

「野村さんはヤクルトの監督時代にファウルを追わないワンプレーで中心選手の古田敦也を外したこともありました。原監督も私が巨人にいた時代に村田修一を外しチームに緊張感を与えました。確かに延べ14年監督を務め川上哲治さんの1066勝を超えた原監督と監督2年目で経験値の少ない矢野監督の決定的な違いはあります。しかし、監督の威厳とは、実績だけでなく、気を抜くとベテランであろうが、どんな成績を残していても外されるという、チームのモラル、規律のようなものをコツコツと作りあげることなんだと思うんです」

 阪神の矢野監督は7日の巨人戦で2度のボーンヘッドをやらかした近本を名指しで批判した。だが、ここまで、ベテランの糸井が怠慢プレーを重ねてもオフィシャルなコメントとして叱責することはなかった。ガッツポーズも、ポジティブ発想も、本から拝借したような訓示もいいが、それがチームに響かず、監督としての「威厳」を保てない理由は、こういう“ぶれ“にあるのではないか。

 原監督は場内インタビューでマジック点灯について聞かれ「いやいや、まだ…」と言って笑い、「志半ば、戦い半ばです」と返答した。
 そして原巨人では最速のマジック点灯だというデータを示されても、クビをかしげ「僕はまったく意識していません」と言った。
 もう優勝監督の威厳が漂っていた。

【関連記事】


既に2000万円超 藤井聡太二冠らの「封じ手」めぐるオークション 貴重な3通誰の手に 

2020年09月16日 11時54分33秒 | 社会・文化・政治・経済

2020年9月15日 13:36
 将棋の藤井聡太二冠らが、王位戦で書いた「封じ手」。インターネットオークションで、いずれも2000万円を超える値がついています。

王位戦 第4局 2日目(提供:九州朝日放送)
 収益金は、7月に九州などを襲った豪雨の被災地に義援金として寄付されるということです。
 
9月15日午後6時現在の価格
 午後6時現在、「封じ手」の入札価格は…

 藤井二冠が初めて書いた「第2局」は、2501万3369円

 対戦相手の木村一基九段が書いた「第3局」は、3704万4000円

 藤井二冠が王位のタイトル獲得を決めた「第4局」は、2222万8555円
 

“いたずら入札”防止の対策も
 購入する意思がないのに入札する、いわゆる“いたずら入札”対策について…

 50万円以上の入札希望者は「氏名」「住所」「電話番号」などの個人情報を日本将棋連盟に連絡する必要があります。

 “いたずら入札”と判断された場合、ヤフーがアカウントの制限や、極めて悪質な場合、法的措置をとる場合もありえるということです。

 入札の締め切りは20日午後9時までです。

(9月15日 15:40~放送「アップ!」より)


「久しぶりに吸えて感動」などSNS上に大麻に関する書き込み…閲覧者に濫用あおった疑いで男女2人を逮捕

2020年09月16日 11時48分21秒 | 事件・事故

9/15(火) 22:36配信 メ~テレ(名古屋テレビ)


SNS上で公開されたチャットで、大麻に関する書き込みをし、閲覧した人に対し、規制薬物の濫用をあおったなどとして男女2人が逮捕されました。


 麻薬特例法違反の疑いで逮捕されたのは、神奈川県相模原市の無職 野呂良一容疑者(32)と、東京都江戸川区の無職 岡田真奈美容疑者(37)です。

 2人は、3月から5月にかけ、不特定多数の人が閲覧できるSNSのチャット内で、大麻使用に関する情報を書き込み、閲覧者の薬物使用をあおった疑いがもたれています。

 警察によりますと、岡田容疑者は「久しぶりに吸えて感動してます」「やっぱWeed上手いーっ」など、800回以上に渡り書き込みをしたとみられていて、約80人が閲覧したということです。書き込みが行われたチャットは現在は削除されています。

 警察の調べに対し、2人は、容疑を認めています。

 愛知県内では10代から20代の若年層の大麻に関する取締件数が増加傾向にあり、おととしが102件、去年が161件、今年は8月末までで159件に上っていて、警察は警戒を強めています。

【関連記事】