国内 政治 週刊新潮 2020年9月17日号掲載
「声が震えて全然ダメだった」
次期総裁レースで先頭を走る菅義偉官房長官。秋田の寒村で生まれ、高卒で段ボール工場で働いた後に政界入りしたことから、「叩きあげ」のイメージが強い。事実、菅氏をよく知る人物は、「真面目な努力家だった」と口を揃えるが、カネの面で常にクリーンだったわけではない。“次期総理”が隠したい金銭スキャンダルとは――。
***...
菅氏の政治家生活は、後に通産大臣となる小此木彦三郎氏の秘書から始まった。小此木代議士の元秘書は初めて会った時のことをこう述懐する。
「最初に私が面接したのですが、当時の菅はヒョロッとして頼りなくてさ。しかも、『なぜ秘書をやりたいの?』と聞いてもちゃんと答えられない。ただ、私が『食うためだけに秘書になろうとするヤツが多いけど、それだったら止めといたほうがいい。秘書の給料安いぞ』と言った時、菅は『それでも構いません』と言い切りました」
秘書になってからは苦労の連続だったようで、
「2年目の頃、渡辺美智雄さんを応援弁士に呼んで街頭演説をやったことがありました。その司会を務めた菅は足が震え、手も震え、あげく声まで震えて全然ダメだった」(同)
菅氏のことをよく知る元横浜市議会議長の藤代耕一氏もこう明かす。
「菅さんはお酒が飲めないのですが、これは秘書としては欠点。様々な業種の組合や後援会の人と食事や旅行に行った際、菅さんはよく『お前は酒も飲めないのか』と怒られていました」
ただし、小此木代議士の元秘書も藤代氏も、菅氏が「真面目な努力家だった」と振り返る。
地道な努力が実り、総理にまで上り詰めようとしているのだろう。が、そんな菅氏にも隠したい金銭スキャンダルがあるのだ。
「我々のバックには菅代議士がいる」
例えば、東証2部に上場していた不動産会社「スルガコーポレーション」を巡る問題だ。スルガがビルの立ち退きをなどを依頼していた山口組系企業「光誉実業」の社長らが弁護士法違反容疑で08年3月に逮捕されると、菅氏が代表を務める自民党支部がスルガから計104万円の献金を受けていたと“飛び火”したのだ。
問題なのは、スルガから献金を受けていた01年~07年という時期で、
「それは、スルガが強引な立ち退きに手を染め、暴力団のフロント企業へと変質した時期と一致するのです」(建設業界関係者)
素早く権利関係を処理するために、強引な立ち退きを交渉を担当していたのが、先述の「光誉実業」なのだという。一方、菅氏の“役回り”はというと、
「スルガが政界における用心棒役として期待したのが、02年に国交大臣政務官に就任して頭角を現し、06年には総務相になる菅さん。立ち退き交渉の際、『我々のバックには菅代議士がいる』とほのめかすことがあったというのです」(同)
「週刊新潮」2020年9月17日号
ネット書店で購入する
つまり、菅氏がスルガから受け取っていたカネは「用心棒代」だったのだ。
問題発覚当時、菅氏の事務所は「報道されるまで事件を全く知らなかった」とコメントしているが、当時スルガが暴力団と一体になってブラックマネーを分け合っていたことは政界でも周知の事実であったという。
この疑惑について改めて菅氏の事務所に聞くと、
「ご質問の献金についても法令に違反するものではありませんが、道義的観点から全額返金しています」
と回答した。
9月10日発売の週刊新潮では、躍進を支えた2人の「ドン」の存在と併せ、裸一貫から総理の座に就こうとする菅氏の歩みを詳報する。