「もう死にたいと思った。だって死ねばいいって言われたから」 17歳の高校生を自殺に追い込んだ壮絶な“いじめ”の実態〈同級生の告白〉

2022年03月07日 18時32分04秒 | 事件・事故

3/4(金) 11:12配信 文春オンライン

 令和2年、若年層10代の自殺者数は777人と過去最多を記録した。その自殺の原因のトップは「学校問題」――いったい子どもたちを取り巻く環境に何が起こっているのだろうか? インスタグラムをきっかけとした「熊本・高3女子いじめ自殺事件」から現代のいじめの本質に迫る。(全2回の1回目。 後編 を読む)

【画像】亡くなった深草知華さん

※本記事では深草知華(ともか)さんのご両親の許可を得た上で、知華さんの実名と写真を掲載しています。「同じ悲しみで苦しむ子供たちを救えるような環境に変わってほしい。一人でも多くの方々にこの問題に関心を寄せてもらいたい」というご両親の強い思いを受け、編集部も、知華さんが受けたいじめの実態を可能な限りリアルに伝えるべきだと考え、実名と写真の掲載を決断しました。

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もう死にたいと思った
深草知華さん

 2018年5月17日、熊本県北部のある町で、祖母が首をつっている高校3年の孫の姿を見つけた。女子高生の名前は、深草知華(事件当時17歳)。142センチの小柄で、先輩後輩問わず好かれる、愛嬌のある子だった。

 この日、彼女は通っていた高校で、インスタグラムへの投稿による「誤解」がきっかけとなって同級生とトラブルになった。その後、「頭が痛い」と言って3時間目の休み時間に早退、帰宅後わずか一時間の間に彼女は戸棚の取っ手に縄跳びの紐を通し、縊死したのである。

 知華は遺書の最後に次のように記している。

〈昨日起きたある誤解により、3の2のある一部の人たちから、「そんなことしきらん」「よー学校これるね」「もー自分のことって気づいてんじゃ?」「しねばいい」「おもしろくなってきた」など言われた。誤解なのに。その一部の人たちが、おもしろおかしく笑いながらそういうことを言っていた。とても苦しかった。解決したと思ったらその人たちがコソコソとしてる。

 授業が終わったあと、友だちは去っていった。1人の子と一緒に担任の所へ行った。だれも助けてくれなかった。

 もう死にたいと思った。だって死ねばいいって言われたから。

 クラスのみんなが大好きだった。いつもアリガトウ〉

 事件後、「熊本県いじめ防止対策審議会」が結成されて関係者に対する聞き取り調査が行われ、同級生の発言など5件をいじめと認定し、自殺との因果関係を認めた。現在、亡くなった生徒の遺族は、当時の同級生4人を相手に提訴している。

 彼女のいう「誤解」にはどんな背景があったのだろうか。

 その人間関係と言語環境をつまびらかにすることは、現代の若者たちのおかれたリアルな環境、自殺問題の本質を理解するうえでの大きな公益性があると筆者は考える。本稿の記述は、取材の過程で入手した「熊本県いじめ防止対策審議会」が作成した調査報告書や関係者取材などに基づいている。

おとなしく控えめな性格だった
 深草知華が生まれ育ったのは、熊本県北部の人口5万人ほどの町だ。かつては炭鉱で栄えたが、今は産業と呼べる産業はなく、高齢化が進んでいる。

 2000年、トラック運転手をする父親と、2歳年上のパート勤めの母親のもと、深草知華は長女として生まれた。海に面した母方の実家に隣接する一軒家で暮らしており、他には6歳下の弟がいる。

 知華はおとなしく控えめな性格だったが、一輪車でもローラースケートでも簡単に乗りこなすくらい運動神経が良かった。4歳から英会話を習っており、小学5年からはじめた書道では何度も賞をもらった。目立つわけではないが、いつも大勢の友達に囲まれていたのは、やさしい人柄ゆえだった。

 学校生活がうまくいかなくなったのは、小学校3年の時だ。同じクラスに少女A子が、家の事情によって転校してきたのだ。A子は直接暴力を振るうわけではないものの、みんなの前でわざと悪口を言ったり、嫌がらせをして追い詰めていく面があったという。

 知華はそんなA子と中学も一緒になったことで、苦手意識を膨らませることになった。

高校でもA子と一緒のクラスに
 中学を卒業後、知華は地元の県立高校へ進学した。一学年に3クラスあり、1組が体育コースと美術工芸コース、2組が就職コース、3組が進学コースにわかれ、それぞれ三十数名が在籍していた。

 この学校でも、知華はA子と一緒になった。人口の少ない地方ではよくあることだが、小中時代の狭い人間関係が引き継がれてしまったのである。高校は定員割れしていたこともあって、小中と比べると問題を抱える生徒の割合が比較的高かった。

 かつてそういう高校には不良生徒が多かったが、今は人付き合いが苦手でおとなしく、どちらかといえば気弱だったり、学校を休みがちだったりする子が大半だ。逆に騒ぎ立てるタイプの子は一様に精神年齢が幼く、クラスメイトに茶々を入れるとか、落ち着かずに歩き回るなど小学生のような未熟な行動が目立つ。

 知華は3組に入り、大学への進学を目指していた。几帳面な性格だったこともあって、黒板の板書を丁寧にノートに書き込み、苦手な数学については家庭教師をつけてもらっていた。将来は地元の福祉系の大学か、専門学校へ進んで、医療系の仕事ができればいいと思っていた。

他のクラスメイトにも嫌がらせをしていた
 だが、クラスの雰囲気は、知華の理想とはほど遠かった。同じクラスにA子がいたからだ。同級生は、当時のクラスの雰囲気を次のように語る。

「クラスではA子さんやその友達の“圧”がすごく強かったです。暴力はふるわないんですけど、些細なことで、人のことを『うざい』とか『キモイ』と言ってきたり、体格や容姿をからかうような仕草をしたりするんです。授業中も休み時間もずっとそんな言葉が飛び交っていました。おとなしい生徒は気が滅入って聞くのをシャットアウトするか、嫌になって中退してしまうかでした」

 A子たちは知華だけを目の敵にしていたのではなく、他のクラスメイトにも嫌がらせをしていたらしい。しだいにクラス全体に悪意のある言葉が広まるようになり、多くの生徒が日常的に他人を貶める言葉を口にするようになっていく。「キモイ」「うざい」が口癖となり、「死ね」という言葉が軽くつかわれるようになって、誰かに向けられる。日々誰かがクラスメイトたちから悪態をつかれるターゲットになっていたのである。

 それは生徒たちがプライベートのコミュニケーションでつかうスマートフォンでも同じだった。生徒たちはLINEやインスタグラムでも、当たり前のように互いに汚い言葉を投げ掛け合っていた。

日常でつかう言葉を歪め、別の形での蔑みや差別
 また、生徒同士の関係性で、特に女子のLINEグループの間には、「ランダムに1人を選んで仲間外れにする」ということがあった。

 別の同級生は次のように語る。

「みんなごく普通に人を傷つけるような言葉をつかってました。いじめみたいに特定の人を狙って叩くのはダメだけど、軽い言葉でからかったり、バカにしたりするのはオーケーみたいな空気があった。でも、やられる方からすればものすごくつらいですよね。私もそれがすごくつらくて、いつ自分に向くのか怖かったです」

 今は、学校側が早い段階からいじめの防止教育を行っているので、生徒たちは教師が示す「いじめ」にあからさまに該当する行為をすることは少ない。その代わり、日常でつかう言葉を歪め、別の形で人を蔑んだり、差別したりする。

 たとえば、ネットで広まった言葉に「ガイジ(害児)」がある。もともとは障害児に由来するらしいが、今は「嫌な奴」「むかつく奴」という意味合いでつかわれる。

 信頼関係のある生徒同士の間でつかわれていれば「バカじゃん」くらいの軽い意味でしかないし、大人もほとんど意味を知らないので、聞いても深刻ないじめとは見なされない。だが、信頼関係のない生徒の間でつかわれれば、「この害虫野郎め」のような言葉になり、相手を深く傷つけることになる。

 同様のことは、学生たちにとって口癖のようになっている「うざい」「死ね」についても同じことが言える。今の学生の会話では当たり前のように出てくる言葉だが、受け取る相手や関係性によっては、これ以上ない罵倒となる。

SNS上で仲間外れのターゲットに
「ガイジ」のような無数の言葉が日常的に飛び交う教室、SNS環境が、知華のいたクラスの日常だったのだろう。こうした言葉が当たり前のようにつかわれ、誰かが無差別に攻撃を受けるのは、ネット社会のあり方にも通じるものがある。同高校で一学年に3クラスしかないのに、10人以上が中退している事実は、そうしたことと無縁ではないだろう。

 知華がSNS上で仲間外れのターゲットになったのは1年の3学期のことだった。この時、彼女が別の友達にLINEで「怖すぎて死にたいわ」と漏らしていることから、それがどれほど心の折れる出来事だったか想像できる。

 高校2年に進級する際、知華は進学コースの3組から就職コースの2組に移り、A子とクラスが別れた。1年のクラスでは、クラスメイトの金が立て続けに盗まれるといった事件も起きて警察が調べに来たほどだったから、知華はそうした環境にも嫌気が差し、クラスを変更することにしたのだ。

LINEのグループから外すように仕向けられ…
 2年になってから彼女は心機一転しようと、1年時に入部したまま行っていなかった茶道部を辞め、仲のいい友人と書道部に入り直した。小学5年から書道教室に通っていたこともあり、作品が新聞社や大学が開くコンテストで入賞することもあった。

 また、別の仲のいい友達3人とLINEで「バカ丸出し組」というグループをつくって深夜まで何時間もやりとりしたり、休みの日に一緒に遊びに行ったりした。人間関係を刷新したかったのだ。

 だが、普通科が二クラスしかない狭い学校では、クラスを変えるだけでは生活環境が劇的に変わることはない。同グループのメンバーが知華をLINEのグループから外すように仕向けたのである。3人のうち2人はA子と親しく、残りの1人はどっちつかずみたいな立場だったが、知華だけがグループからはじき出されたのだ。

 年配の人間からすれば、LINEのグループから外されただけでと思うかもしれない。 だが、10代の子たちにとってLINEのグループは可視化できる「友情の証」であり、そこから外されるというのは、目に見える形で絶縁を宣言されるのと同じことなのだ。その屈辱と落胆はあまりに大きい。

教員の生活指導との間の大きな隔たり
 また、自分だけ除いたLINEグループが存続していれば、その密室で自分に対する陰口が書き連ねられているのではないかと想像しなければならない。学校でのいじめは下校すれば逃れられるが、SNSは家に帰った後も24時間、気になり続ける。あるいは傷つく書き込みが残っていれば、それはボディブローのように心を蝕む……。やる方は無自覚だが、やられる方には、終わりのない半永久的ないじめなのである。

 では、なぜこうしたことを教員たちは野放しにしていたのか。教員の方が旧来型の指導にしばられていることも大きいだろう。

 教員にしてみれば、A子ら生徒が発する言葉は乱暴だが、「ガイジ」のようにスラング的なつかわれかたをしていれば、一時代前のような明らかないじめとは断言できない。また、クラスで「うざい」「キモイ」「死んでほしい」といった言葉が常用されていれば、それが日常会話になってしまっているので本格的な指導の対象となりにくい。

 また、スマートフォンは学校内での使用は表向き禁止となっているものの、プライベートにまでは介入することができない。つまり、現代の生徒たちの行っていることと、教員の生活指導の基準の間に大きな隔たりがあるのだ。

 そんな学校生活の中で、知華の心の支えの一つがB男の存在だった。知華は1学年下の彼にひそかに恋心を寄せていた。そんな彼とたまたまインスタグラムで知り合い、LINEでやり取りするような仲になっていたのである。

 だが、どこにでもある17歳の淡い恋心が、事件を引き起こすことになる――。

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【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】
▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4
時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前9時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県
により異なる)
▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県
からは0120-279-226(24時間対応)

 「ネズミが逃げるぞ」「ガイジが逃げるぞ」… “悪態が飛び交う教室”で何が起こっていたのか〈熊本高3女子いじめ自殺事件〉  へ続く

石井 光太/ライフスタイル出版


梅も開花

2022年03月07日 12時37分44秒 | 日記・断片

花を観に井野天満宮へ行く。

香りの高い蝋梅が1月に咲き、ついで寒紅梅が咲く。
スイセンも1月の後半から2月にかけて花開く。
片目の猫と三毛猫の様子が気にかかっていたが、寝どころが用意されて、寒さを凌いでいるようすだ。
3月になり、梅も開花して草花が咲き乱れる境内となる。
花の世話をしている人がいて、名札もそえられている。