牛田家の汚点であった花婿の自死、そして悲劇の花嫁は、その後も理不尽にも翻弄される。
自死する人間は、残された人々の悲劇などに、当初から深く思いを致すことは皆無であろう。
その意味で、死んだ善兵衛もエゴイストとも言えるのではないだろうか?
牛田家の当主の幸作は、息子の嫁であった姫城鶴子をもあろうことか支配する。
既に、鶴子は戸籍上で牛田家の嫁になっていたのだ。
婚礼の日に突然、花婿に死なれて、その原因すら鶴子は全く知るすべもなく、深い悲しに打ちししがれていた。
だが、家長としての牛田幸作は「鶴子、お前は牛田の嫁だ。実家へには、帰さんぞ」と言明する。
それは、下女、下男、小作人たちを支配してきた地主としての傲慢さそのものであった。
幸作はあろうことか、婿の嫁を肉体的に支配することになる。
夫となるべき善兵衛との初夜は、彼の父親によって、処女を犯される夜となる。