人生の途次、人間関係につまづくことも少なくない。
人生で最悪なのは、最悪な教師と出会うことでもある。
ある日を境にして、生徒の財布が盗まれるという事件が起きる。
教師の島田は、クラス委員たちに命じて生徒たちの身体検査と、鞄内のチェックを行わせた。
だが、盗まれた財布は一度も出てこなかった。
ところが、教師の島田は疑心暗鬼から、生徒の仲間が組んで、どこかに盗んだ財布を隠していはずと断定して、再度も身体を実施する。
健太は、隣の席で恐怖心から身を震わせている峰子のことを思いやっていた。
神経が繊細で、心の優しい峰子には、思わぬ身体検査は過酷であったのだ。
この時、大野健太に教師島田への憎悪が芽生えた。
「こんな人間が何で教師なのか!許させない!」健太には敵意を超えて、殺意までもが生まれるのだ。
健太は推理小説を好んで読んでいたので、犯人像を想ってみた。
犯人はクラス内には居ないだろう・・・と。
閑静な住宅街であったが、ある日突然、小学生の女の子が、中学生と思われる制服姿の女子生徒によって、襲われる事件が起こったのだ。
「おい!財布を出しな!」相手の顔は優しかったが、言葉で小学生の女の子を威圧したそうだ。
街を制服警官が、「見当たり捜査」をしていた。
峰子は若い制服警官によって挙動不信と想われ、呼び止められる。
「ちょっと、君に聞きたいことがあるんだ」
当然、繊細な心の持ち主である峰子は震えあがる。
峰子とともに下校する健太は「何ですか!」と詰問する。
若い制服警官は、ジロリと視線を健太に向けた。
「お前には、関係ないことなんだ!」警官の威圧、その瞬間に健太には警官の顔が、教師の島田と重なる。