ウイルスは「生物」として定義されていない。
「自己境界性」「自己維持性」「自己複製性」という多くの生物学者が認める三つの条件を満たしていないからだ。
「自己境界性」とは、細胞を構成し、外界と仕切る膜があること。
「自己維持性」とは、生命活動に必要なエネルギーを生み出すこと。
「自己複製性」とは、自ら分裂して自己の複製をつくる。
この全てを満たした時に「生物」と定義されるが、ウイルスは外界と仕切られているものの、感染する生物(宿主)がいないいと、必要なエネルギーを生み出したり、自らの遺伝情報を複製できない。
つまり、自己維持性と自己複製性が欠けているので生物ではない。
しかし、宿主に感染すると、その宿主の力を使って、この条件を満たす。
このような性質から、ウイルスは「半生命」と言えるだろう。
この地上はウイルスであふれ、海洋の沿岸部には、1mlの海水に数千万個のウイルスが含まれていると推定さている。
これらの中には赤潮を抑えるなど、生態系の調節に役立っているものも多くある。
私たちの体内も、何百兆ものウイルスのしみかとなっているが、そうしたウイルスの存在が、体内で共生する微生物のバランスを保ち、私たちの健康を支えることを示唆する研究もある。
ウイルスが存在しなければ、人類は進化できなかったかもしれない。
脳をカビなどから守る自然免疫、筋肉の発生なども、ウイルスによってもたらされている。
そもそも、ウイルスってなに?
新型コロナウイルスの感染が世界中で拡大する中、感染防止対策や治療のこと、生活上の問題など、連日たくさんの“コロナ情報”が飛び交っています。でも、こんなにも私たちに影響を及ぼしているのに、本当のところはよく知らないかも……そもそもウイルスって? 細菌と違うの? 子どもも大人も今さら聞けない「きほんのき」の話、始めます。
ウイルスってなに?
人間の身体に入って、病気にさせる病原体の一種をウイルスと呼びます。病原体には、ウイルスのほかに細菌や真菌(カビ)、寄生虫などがあって、大きさや構造によって分類されます。細胞はないけど遺伝子を持つウイルスはとても曖昧な存在で、「生物ではない」「いや、生物である」と学者の間でも意見が割れるところ。平たくいうと「自力で増えることができず、動植物の細胞を借りて子孫を増やす最小単位のもの」ということになります。
生物じゃないとしたら、どうやって生きているの?
細胞のないウイルスは、ほかの生物(宿主)の細胞の中に入って、その機能を借りてたんぱく質やエネルギーをつくり、自らをコピーして増殖します。自力では増殖できないので、次の宿主を見つけないと生き残れません。だから、ウイルスにとって咳やくしゃみなどの症状は、人間から人間(動物)へ自らのコピーを広げるのに好都合だといえます。
ちなみに、細菌はウイルスと違って細胞を持っています。栄養さえあれば自らをコピーして増えることができます。人間の身体には100兆個を超えるたくさんの細菌がいて、大腸菌など人間を病気にさせる悪い細菌がいる一方、乳酸菌やビフィズス菌など人間の生活に役立つ細菌もいるんです。
大きさや形は?
ウイルスの大きさはnm(ナノメートル/1nmは1mmの100万分の1)という非常に小さい単位で、一般的に数10~300nmほど。新型コロナは約100 nmで、1円玉の20万分の1のサイズといえば分かりやすいでしょうか。ちなみに、細菌はμm(マイクロメートル/1μmは1mmの1000分の1)という単位で、一般的なウイルスの数倍~数10倍の大きさがあります。
ウイルスは種類によっていろんな形をしていて、新型コロナやインフルエンザは球形、エボラはひも状の形をしています。新型コロナは脂質の殻(エンベロープ)が遺伝子を覆っていて、表面には宿主の細胞に入り込むための鍵(スパイク状のたんぱく質)が付いています。
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