修道女 ジャック・リヴェット監督(1966フランス)
映画『修道女』の見どころと感想
18世紀のパリ。貧乏貴族の三女シュザンヌは半ば売られるように修道院に送られます。
が、請願の儀式の途中で拒否するシュザンヌ。
家に戻ったものの3ヶ月の監禁下に置かれます。
そして母親に「不義の子」であると知らされ、あきらめて修道院に入ることに。
再び請願の儀式。が、なぜか儀式中の記憶が抜け落ちているシュザンヌ。それでも修道院長のモニのやさしさに救われながら日々をすごします。
しかし、そのモニが死去。
後任の若い院長サン・クリスティーヌは独善的で、モニが禁じていた肉体的苦行を復活させ、とりわけシュザンヌに対し厳しい迫害を加えてきます。
シュザンヌは自分に請願の記憶がないことから修道女であることを取り消す訴訟を起こすことに。
弁護士に手紙を書き準備を進める最中、指導的立場にある神父の計らいでシュザンヌは別の修道院に移籍することになります。
移り住んだ修道院は一転して明るく華やか。院長を取り囲む修道女たち。
しかしー。
なぜ神は弱き者の声をきいてくれないのか
毒親、壮絶ないじめ、セクハラ、といった不幸のオンパレードのこの話。
気の毒ではあるもののシュザンヌ自身「自分が美しいがためにこんな目に……」
転籍先の修道院の内情にピンとこない天然なところもあったりでちょっとめんどくさいところもある。
つい「あなたにも落ち度がー」と思ってしまいそう。
今にも通じるこの問題。何が救いとなるのでしょうか。
あらゆる愛想や妬みが修道院という神に仕える神聖な場に渦巻いている。
むしろ修道院だからこそ起こりうる問題にも見えます。
神はちゃんと見てくれているの? なぜ助けてくれないの? 信仰心の乏しい私はこの手の映画を見て毎度毎度、思います。
公開当初、カトリックに冒涜的と見られたこの映画。
宗教批判としてだけではなく社会そのものへの批判、抵抗として置き換えてみることもできそうです。
シュザンヌの告発によって問題は露呈したものの、お偉いさんの2世だからという理由で罰せられなかったサン・クリスティーヌ院長。窮地を救ってくれるかに見えたモレル神父がまさかのー。
世間はなぜ弱者の声を聞いてくれないのか、見て見ぬふり、助けるふりだけで、なぜ本気で助けてくれないのか、なぜ事実を隠蔽するのか。
シュザンヌのラストの行動は、自身の中途半端な信仰への罰なのか、抵抗なのか。
映画『修道女』 時代を超えた普遍的な問題を問う1本です。
アンナ・カリーナの迫真の演技に尽きる!こういう役も演じることが出来るのかと驚きました。一連のゴダール作品や、彼女主演の作品では断トツに好きな『ANNA』などの、コケティッシュでオシャレでキュートなイメージとは真逆の役柄。
院長先生がシュザンヌに「悪魔に取り憑かれている」と決めつけられて、何を主張しても全く理解してもらえず、議論が延々と平行線を辿って受け入れてもらえないあの絶望感は、カール・Th・ドライヤー監督の『裁かるるジャンヌ』を思い出しました。
「一人の女のために門が少しでも開けば、大勢の者が殺到し、こじ開けられる」という身勝手極まりない大義名分で、彼女の請願を敗訴に追い込むとは・・。
マヌリ弁護士などのおかげで何とか別の修道院に移ることが出来たものの、今度は院長の同性愛的抑圧の犠牲になっていく・・。
そのあと、さらに二転三転あって衝撃的なラストを迎えるわけですが、シュザンヌが決して失うことがなかった気高い「尊厳」が、重石のように心に残りました。
主演の俳優さんめちゃ美しい…と言うのがいちばんの感想。
長尺だけどダレずにみられたな、という感じ、良い映画だった。
面白いかと問われると面白くはないと思ったけど。個人的には。
面白くないなと思う理由が主人公シュザンヌの躁鬱感が全然理解できなくてついていけなかったのが一個めちゃくちゃ大きい。
感情ジェットコースターすぎて今主人公がどんな思いで動いているのか掴みきれずに終わってしまった。これは私の共感力のなさ故かと思う。
主人公が反発するのも縋るのもどう言う心情を持ってしているからなのか、他人に対する好意と反意の入れ替わりも激しくてまぁわからなかった。
最終的に私は「はっ!これが傾国の美女というやつか…!」と自分を納得させることにより落ち着いた。シュザンヌの才能は人を狂わせることなのだと思えば物語の波瀾万丈も納得できた。
最初の院長先生はきっと彼女のそう言う性質を見抜いていて不安を抱いていたのだろうと思う。
最後まで彼女は清廉であったんだなぁと思うと、悲しい。サドの美徳の不幸みたいだ。
ただ全ては理解はできないけど主人公が不憫であることは理解できるので、ハピエンイフストーリーとして初代院長先生に諭され敬虔な修道女へと成長するみたいな作品を希望します。
母に捨てられた主人公が母に縋るように院長先生に心を寄せていたのはすごく理解できたので。作品頭の修道院長先生と主人公だけずっとみていたかったなという個人的願望。
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