「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

大きいもの 2014・05・07

2014-05-07 06:40:00 | Weblog


今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

大きいものはいいものだというが、冗談だろうと、私は書いたことがある大きいものは悪いものだ大新聞、大銀行、大デパートと並べてみると分るみな大きくて、悪いものである
 ついでに、世論といって、大ぜいが口をそろえて言うことも怪しい抵抗すれば爪はじきされる世論というものは『話しあい』だの『対話』だのの結果だと、歯の浮くようなことをいうそれなら世論に反対することも、許されてよさそうだが、すれば村八分にされるから、しないしないから世論は、いよいよ世論である
 もう一つついでに大ぜいにほめられる人も眉ツバである


(中略)


 私は正義がいつも大きいものの上にあるのを怪しく思うものである有利なものの上にあるのを疑うものである正義はしばしば小さいものの方に、また不利なものの方にあると、弱年のとき私は聞いたことがある
                                     〔『諸君!』昭和48年4月号〕」

(山本夏彦著「とかくこの世はダメとムダ」講談社刊 所収)

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