「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

大きいもの 2014・05・12

2014-05-12 07:10:00 | Weblog


今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

大きいものはいいものだというが、冗談だろうと、私は書いたことがある大きいものは悪いものだ大新聞、大銀行、大デパートと並べてみると分るみな大きくて、悪いものである」。

(中略)

「たとえば、大きくて全く論じられないものの一つに『電通』がある。電通は新聞やテレビに広告を世話する大会社である。日本一であるばかりか、世界でも指折りだそうである。新聞は購読料と広告料で経営されている。民営のテレビは広告料だけで経営されている。電通は広告を世話する、または世話しないことによって、新聞とテレビを左右することができるもしその野心があれば全新聞を支配することも可能であるその野心はないようにみえるけれども野心家は内部にいなくても外部にいることがあるある日突然外部からあらわれて、それが歓迎されることがある私は忌憚のない電通論というものを見たことがないそれは書けない書いても新聞もテレビも扱ってくれない電通論がもし新聞雑誌に出るとすれば、それは一見悪く言っているように見せてほめた提灯記事である。」

(中略)

 私は正義がいつも大きいものの上にあるのを怪しく思うものである有利なものの上にあるのを疑うものである正義はしばしば小さいものの方に、また不利なものの方にあると、弱年のとき私は聞いたことがある

                                     〔『諸君!』昭和48年4月号〕」

(山本夏彦著「とかくこの世はダメとムダ」講談社刊 所収)


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