今日の「 お気に入り 」は 、今読み進めている短編
小説集「 おじいさんに聞いた話 」( トーン・テレヘン 著 、
長山さき 訳 新潮社 刊 ) 。
気になるくだりをメモしている 。備忘のための 抜き
書き 。
「 ぼくが六歳くらいのとき 、祖父が魔女のお話を聞
かせてくれた 」で始まる「 小さな魔女 」と題した
エピソード を興味深く読んだ 。やや長文なので抜き
書きは止めにした 。同じく抜き書きはしなかったが 、
「 裸の皇帝 」と題した 一篇 も秀逸 。
以下は 、作者の祖父の プロフィール を含む 「 死ぬ
こと 」の一節 。「 聞き書き 」の体裁をとった創作
小説 。
引用はじめ 。
「 祖父は陰鬱な男だった 。詩人か植物学者になり
たかったにもかかわらず 商売を職としたこと 、心
から愛したロシアから亡命しなければならなかっ
たこと 、戦時中 、二人の息子を亡くしたことな
ど 、人生の逆境によってそうなっただけではなく 、
子どものときから 陰鬱で真面目 、ふさぎがちな性
質だったのだ 。思い出をつづった文章と 、話して
くれた物語には 、たまに 軽快な面も感じられた 。
祖父はよく 死 について話していた 。
ぼくに死について話しているのを聞きつけると 、
祖母がたしなめて言った 。『 もっと美しいことを
話しておあげなさいよ ! お話でも読んであげま
しょうよ ! カシタンカの話 ( チェーホフ作 、赤
毛の雌犬の話 ) でもいいわ ・・・ 』
でも 祖母が買い物に行くと 、祖父は死について話
し 、ぼくは耳を傾けた 。死よりも大きくだいじな
ことはない 、と祖父は言い 、ぼくは幼いときから
その意見に賛成だった 。
あるとき祖父は 、ロシア人の友人で自分とおなじく
アルハンゲリスクに取引先のあった商人の話を聞かせ
てくれた 。ともにアルハンゲリスクまで旅することも
多く 、道中は何時間も話しこんだ 。商いの話はなる
べく避け 、ずっと〈 展望 〉―― 今後なにが自分たち 、
そしてロシアを待ち受けているか ―― について話して
いた 。
その商人は死後に生まれ変わるものと確信していた 。
〈 輪廻 〉というのだ 、と祖父はぼくに書いてくれた 。
ずっとあとになって 、ぼくはその言葉にふたたび出あ
った 。
魂は青い蝶で 、死後たちまち飛び立ち 、壁や閉まっ
た窓をとおって消え去る 。新たな体を求めて ―― 商
人はそう言っていたそうだ 。 」
( トーン・テレヘン著 長山さき訳 「 おじいさんに
聞いた話 」新潮社 刊〈 新潮クレスト・ブックス 〉
所収 )
引用おわり 。
( ついでながらの
筆者註:「 トーン・テレヘン( Antonius Otto Hermannus
( Toon ) Tellegen 1941年11月18日 - )は 、
ドイツの詩人 、児童文学者 。 ( ? )
経 歴
医師の父とロシア生まれの母のもと 、オランダ
南部の島に誕生 。
ユトレヒト大学で医学を修め 、ケニアでマサイ
族の医師を務めたのちアムステルダムで開業医に 。
1984年 、幼い娘のために書いた動物たちの物語
『 一日もかかさずに 』を刊行 。以後 、動物を
主人公とする本を50作以上発表し 、文学賞を
多数受賞 。オランダ出版界と読者の敬愛を一身
に集めている 。『 ハリネズミの願い 』で2017
年本屋大賞翻訳小説部門受賞 。おもな作品に
『 きげんのいいリス 』『 おじいさんに聞いた
話 』。
経 歴
・『 ハリネズミの願い 』長山さき訳 、新潮社 、
2016年6月
・『 おじいさんに聞いた話 』長山さき訳 、新潮社 、
新潮クレスト・ブックス 、2017年8月
・『 きげんのいいリス 』 長山さき訳 、新潮社 、
2018年4月
・『 リスのたんじょうび 』野坂悦子 訳 、偕成社 、
単行本 – 2018年9月
・『 リスからアリへの手紙 』柳瀬尚紀訳 、河出
書房新社 、2020年3月
・『 キリギリスのしあわせ 』 長山さき訳 、新潮
社 、2021年4月 」
「 アルハンゲリスク( Архангельск
アルハーンギェリスク;Arkhangel'sk )は 、
ロシア北西部の都市 。人口は 約30万人(2021年)。
白海に注ぐ北ドヴィナ川の河口近くに位置する 。
アルハンゲリスク州の州都 。17世紀末にピョー
トル1世によって海軍軍事基地として開発された 。
アルハンゲリスクとは『 大天使の町 』の意味で 、
戦う大天使( アルハンゲリ )『 ミカエル 』の
名にちなんで命名されたものである 。 」
以上ウィキ情報 。 )