「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

おじいさんに聞いた話  Long Good-bye 2024・01・15

2024-01-15 05:45:00 | Weblog

 

  今日の「 お気に入り 」は 、今読み進めている短編

 小説集「 おじいさんに聞いた話 」( トーン・テレヘン 著 、

 長山さき 訳 新潮社 刊 )  。

  気になるくだりをメモしている 。備忘のための 抜き

 書き 。

 「 ぼくが六歳くらいのとき 、祖父が魔女のお話を聞

 かせてくれた 」で始まる「 小さな魔女 」と題した

 エピソード を興味深く読んだ 。やや長文なので抜き

 書きは止めにした 。同じく抜き書きはしなかったが 、

 「 裸の皇帝 」と題した 一篇 も秀逸 。

  以下は 、作者の祖父の プロフィール を含む 「 死ぬ

 こと 」の一節 。「 聞き書き 」の体裁をとった創作

 小説 。

  引用はじめ 。

 「 祖父は陰鬱な男だった 。詩人か植物学者になり

  たかったにもかかわらず 商売を職としたこと 、心

  から愛したロシアから亡命しなければならなかっ

  たこと 、戦時中 、二人の息子を亡くしたことな

  ど 、人生の逆境によってそうなっただけではなく 、

  子どものときから 陰鬱で真面目 、ふさぎがちな性

  質だったのだ 。思い出をつづった文章と 、話して

  くれた物語には 、たまに 軽快な面も感じられた 。

   祖父はよく 死 について話していた 。

   ぼくに死について話しているのを聞きつけると 、

  祖母がたしなめて言った 。『 もっと美しいことを

  話しておあげなさいよ ! お話でも読んであげま

  しょうよ ! カシタンカの話 ( チェーホフ作 、赤

  毛の雌犬の話 ) でもいいわ ・・・ 』

   でも 祖母が買い物に行くと 、祖父は死について話

  し 、ぼくは耳を傾けた 。死よりも大きくだいじな

  ことはない 、と祖父は言い 、ぼくは幼いときから

  その意見に賛成だった 。

   あるとき祖父は 、ロシア人の友人で自分とおなじく

  アルハンゲリスクに取引先のあった商人の話を聞かせ

  てくれた 。ともにアルハンゲリスクまで旅することも

  多く 、道中は何時間も話しこんだ 。商いの話はなる

  べく避け 、ずっと〈 展望 〉―― 今後なにが自分たち 、

  そしてロシアを待ち受けているか ―― について話して

  いた 。

   その商人は死後に生まれ変わるものと確信していた 。

  〈 輪廻 〉というのだ 、と祖父はぼくに書いてくれた 。

  ずっとあとになって 、ぼくはその言葉にふたたび出あ

  った 。

   魂は青い蝶で 、死後たちまち飛び立ち 、壁や閉まっ

  た窓をとおって消え去る 。新たな体を求めて ―― 商

  人はそう言っていたそうだ 。 」

   ( トーン・テレヘン著 長山さき訳 「 おじいさんに

    聞いた話 」新潮社 刊〈 新潮クレスト・ブックス 〉

    所収  )

    引用おわり 。

   

 

  ( ついでながらの

    筆者註:「 トーン・テレヘン( Antonius Otto Hermannus

     ( Toon ) Tellegen 1941年11月18日 -  )は 、

     ドイツの詩人 、児童文学者 。  ( ? )

     経 歴

      医師の父とロシア生まれの母のもと 、オランダ

     南部の島に誕生 。

      ユトレヒト大学で医学を修め 、ケニアでマサイ

     族の医師を務めたのちアムステルダムで開業医に 。

      1984年 、幼い娘のために書いた動物たちの物語

     『 一日もかかさずに 』を刊行 。以後 、動物を

     主人公とする本を50作以上発表し 、文学賞を

     多数受賞 。オランダ出版界と読者の敬愛を一身

     に集めている 。『 ハリネズミの願い 』で2017

     年本屋大賞翻訳小説部門受賞 。おもな作品に

     『 きげんのいいリス 』『 おじいさんに聞いた

     話 』。

     経 歴

     ・『 ハリネズミの願い 』長山さき訳 、新潮社 、

      2016年6月

     ・『 おじいさんに聞いた話 』長山さき訳 、新潮社 、

      新潮クレスト・ブックス 、2017年8月

     ・『 きげんのいいリス 』 長山さき訳 、新潮社 、

      2018年4月

     ・『 リスのたんじょうび 』野坂悦子 訳 、偕成社 、

      単行本 – 2018年9月

     ・『 リスからアリへの手紙 』柳瀬尚紀訳 、河出

      書房新社 、2020年3月

     ・『 キリギリスのしあわせ 』 長山さき訳 、新潮

      社 、2021年4月 

     「 アルハンゲリスク( Архангельск 
      アルハーンギェリスク;Arkhangel'sk )は 、
      ロシア北西部の都市 。人口は 約30万人(2021年)。
      白海に注ぐ北ドヴィナ川の河口近くに位置する 。
      アルハンゲリスク州の州都 。17世紀末にピョー
      トル1世によって海軍軍事基地として開発された 。
      アルハンゲリスクとは『 大天使の町 』の意味で 、
      戦う大天使( アルハンゲリ )『 ミカエル 』の
      名にちなんで命名されたものである 。 」

     以上ウィキ情報 。 )

 

    

 

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