今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「老人語という言葉があるのを始めて知った。若者には通じないが、まだ全き死語ではない、老人同士では使っている(近く滅びるだろう言葉)というほどの意味だと『新明解国語辞典』(三省堂)で見た。
この字引は昭和十八年第一刷、戦後も改訂に改訂を加え初版以来千七百万部を越えたという。
老人語の用例に平(ひら)に、よしなに、余人(よじん)などがあげてある。平には平にご容赦、よしなにはよしなにお取りはからいのほど、余人は余人を交えずなどと使う。いかにもよしなにはいい言葉だがお芝居でなければ今は聞けない。」
「私は全くの死語は用いない。半死半生ではあるが、いま使えば息ふき返す言葉なら勇んで用いる。抵抗である。言葉は五百年千年の歴史あるものは過去を背負っている。」
「新明解国語辞典が老人語と称したのはいずれ何百何千語を増補するとき、追放するした心あってのことではないかと私は用心している。」
(山本夏彦著「一寸さきはヤミがいい」新潮社刊 所収)
「老人語という言葉があるのを始めて知った。若者には通じないが、まだ全き死語ではない、老人同士では使っている(近く滅びるだろう言葉)というほどの意味だと『新明解国語辞典』(三省堂)で見た。
この字引は昭和十八年第一刷、戦後も改訂に改訂を加え初版以来千七百万部を越えたという。
老人語の用例に平(ひら)に、よしなに、余人(よじん)などがあげてある。平には平にご容赦、よしなにはよしなにお取りはからいのほど、余人は余人を交えずなどと使う。いかにもよしなにはいい言葉だがお芝居でなければ今は聞けない。」
「私は全くの死語は用いない。半死半生ではあるが、いま使えば息ふき返す言葉なら勇んで用いる。抵抗である。言葉は五百年千年の歴史あるものは過去を背負っている。」
「新明解国語辞典が老人語と称したのはいずれ何百何千語を増補するとき、追放するした心あってのことではないかと私は用心している。」
(山本夏彦著「一寸さきはヤミがいい」新潮社刊 所収)