(写真は朝野菜を売る女性。
中国では自転車やリヤカーで新鮮な野菜を売って 生計を立てている方も多い)
賀州の食堂風レストラン
五日目の夜は賀州のホテル。
このホテルの食事は本当に美味い。
ただ、このホテルの周辺には、中国人向けの美味そうなレストランや食堂、屋台も多い。
店の前のガラスケースの生の羊や豚、ローストされた各種の鳥や狗や小動物・・・・・・
『火鍋料理』といった文字も目に付く。
どの店も呼び込みが激しく、活気がある。
中国人の客は大声で笑い話している。
ヨーロッパのイタリアやスペインのように、直立不動でオペラのように歌う男性は見かけない。
その日のホテルは『客家料理』だったが、私たちは中国人の仲間入りしたくなった。
一旦ホテルに戻り、ガイド嬢にその旨伝える。
ガイド嬢は快く引き受けてくれた。
私たちは急いで町に戻る。
まずは雑貨屋へ・・・・・・
雑貨屋に行くと、店の女性はそっぽを向いた。
あわてて隣の店の御主人が入ってきて応対してくれる。
私は絵と数字で中国の電卓を購入。
私の落書きもたいしたものだ・・・と内心悦に浸る。
この電卓は 『1』を押すと『イー』、『8』を押すと『パッ』、『AC』を押すと『ゥイリン』、『風鈴』を押すと『コケコッコー』といった音がなる。
桂林の夜に夜食を食べた串焼き屋さんのレジで使われていた電卓で、どうしてもほしくなった代物。とにかく音がかわいい・・・・・・
電卓を買った後、CD店へ・・・
私は張国栄(レスリー・チャン)のCDと小学生用の『古詩詞』のDVDを購入。
『古詩詞』の方は二枚組みで、詩にあわせて、可愛らしい絵(アニメ風)が流れる。
家族もなにがしら自分のほしいものを選んで、買っていたようだ。
さてさて食事。店選びの段なり、家族と意見が分かれる。
ひとりは羊の火鍋料理店にしたいと言うが、この店は客が少ない。
左隣の店はガラスケースに各種の鳥が吊り下げられている店で、広い店内は客でごった返している。
私たちは 2対1 で客の多い店を選ぶことにした。
この店はテーブルが30~40はあったと思う。
特別室は設けていない庶民派の大型食堂といった趣が感じられる。
間口も奥行きも広い。
店の中は少しくらいが、客の声がとても明るい。
私たちは中国人の席の間を抜けて、席に案内される。
周りの中国人たちは私たちを見て、にこにこと笑う。
特別に店主が出てきて、優しく対応してくれた。
とりあえず一般的な頼み方を聞き、頼んでみる。
肉、鳥、魚、野菜、スープなどの菜(ツァイ)を頼む。
全てが1単位、魚だけは1匹文だと1.5単位になるから、そうしなさいと絵で説明してくれる。
私たちは店主の人柄を信じて、適当に頼んだ。
店主は飯(ファン?)は進めなかった。
飲み物は紹興酒2種類とビール2本。
知らない女性が店内でスリッパをすすめてくれたが、売り物なのか借り物なのかわからず、断る。
気になって、周りを見渡すと、周りの客は靴のままだった。
次に違う女性が小鉢をすすめに来た。
どういうシステムなのかわからず、またもや断る・・・
この小鉢をすすめてくれた女性は、気が付けばレストランの従業員だった。
後で知ったのだが、中国の食堂のような庶民的レストランでは、こういった小鉢や飲茶をすすめに来ることも多いらしい。
従業員の美しい女性はビールのせんを抜き、コップが空になるとその都度ビールをついでくれる。
鳥が出てきた。
鴨だ。
ペキンダッグでもないのに、皮はパリパリ。
みの部分はジューシーで、美味しくいただける。
そのままでも美味しいし、辛くてすっぱいたれにつけても食べられる。
何かにはさんで食べるのではなく、そのままいただくのが美味しい。
この味も、今も心に残っておる一品カモ。
魚料理は鯰(なまず)。
油で揚げたものではなく、そのまま出し味で煮込んだものだ。
けっこ大きく、鯰臭い。
上にはパクツァイが載せてあって、この匂いはあたりに広がる。
鯰とパクツァイの匂いが交じり合って、なんともいえない大陸の料理といった感じがする。
ダシは薄味、ダシが効いている。
いりも美しい透明の黄土色。玉葱の皮で染色したような色合いだった。
一口食べてみる。
美味しい。
鯰はとても油がのっている。
鯰の油と生臭さとは口いっぱいに広がるが、嫌な味ではなかった。
鯰のニュルっといった食感は、今も食感として残っている。
肉は小鍋に入っている。
野菜といっしょに煮込んであり、ピリ辛で美味い。
野菜はアブラナ科の日本では売られていないもの。
20センチくらいの長さのまま、さっといためてあった。
味はこの店も中華味で、だしが効いていてこくがある。
茎は美味く茹で上がったスパゲティのよう・・・しっかりと火は通っているが、しゃきしゃき感が残っている。
茎の味はブロッコリーの茎を歯ごたえよくした感じ。
野菜自体にに渋みは無く、味は濃い。
この名もわからぬ野菜は、私はかなり好きかも知れない。しかし日本では食べられないのかもしれないと思うと、なんだか寂しい・・・
ここのスープは豆が複数類使ってあった。
隠し味と香りも心地がよい。
豆の甘さで、口の中が幸せになる感じがする。
小皿が無いので、大変食べづらい。
周りのテーブルを見ても、とり皿はこの店には置かれていなかった。
ビールをついでくれている女性に、笑顔とジェスチャーでとり皿を頼む。
店員はにこやかにうなずき、厨房に戻る。
盛ってきたものは三つのご飯だった。
ご飯は日本のご飯茶碗より少し大きめのものに、程よく盛られていた。
白いご飯は日本よりは少し硬めに炊かれていたが、ホテルなどででてきたようなピラフ向きの長い形の米ではなく、日本の米の形にいかかった。
味も普通のご飯。
私たちはこの店の次は屋台でおでん!!と、決めていたので、ご飯は少ししか食べず、ご飯茶碗をとり皿がわりに使って 食事をいただいた。
塩梅はすこぶるよかったが、中国の農家の方が作られたお米だと考えると、申し訳なさもひとしお・・・
すまないことをしたと思う。
この店の食事も、とても美味しかった。
周りの客はあちらこちらで じゃんけんやゲームを立ち上がってまでしている。
多分、勘定のための賭け事をしているのかもしれない・・・
乾杯を何度も何度もしているテーブル・・・
真隣のテーブルの女性たちはここの店でも、私たちが頼んだメニュー内容を見て、にこやかに笑っている。
私たちも笑い、互いに乾杯の儀式を交し合う。
食べている途中、停電。
客たちは口々に
「ワオォオ~」
とつぶやきあうが、動じた様子は無い。
道の外を見ると、他の店は灯りがついている。
多分この店がオーバーヒートしただけなのだろう・・・
停電はこの店を入ってから出るまでに、合計2回。
楽しい経験をした。
食事を長く楽しみすぎた成果、見渡すと客はずいぶん減っていた。
私たちは勘定を済まし、店を出た。
10人近くの店員たちはにこやかに、店を送り出してくれた。
中国語だけではなく、英語で何度も、何人もの中国人店員に別れを惜しまれた。
料理も美味かったが、店員の人情が妙にありがたかった。