(写真は全て5月15日に写したもの。)
5月15日。
もう随分前のことになるが、家族と團菊彩の夜の部へ行った。
その数日前には一人で昼の部を楽しんだが,家族と一緒というのは嬉しい。
わたしたちは少し早めに大阪に向かい、道頓堀界隈を歩き、感激前の儀式。お茶とケーキを楽しむ。
芝居を堪能、帰りには食事とお酒といったのが、いつものパターン。
ただ夜の部の場合店によってはラストオーダーが早く、一時間内外ほどしかゆっくりできないのが残念。
この日は最後に『髪結新三』を観たためか、やたら体が熱い。
いつもは和食と冷酒といった組み合わせが多いが、ビールが飲みたい。
よってJR難波に近いアサヒスーパードライに入り、黒ビールをかなり飲んだ。(まぁ!おはずかしいこと^^)
團菊祭にも『髪結新三』にも、キンキンに冷えたビールグラスにつたわる魅力的な水滴が似合う。
さてさて、團菊祭の夜の部。
まずは何度も観たことのある『本朝廿四孝 十種香』
時蔵丈も菊之助丈も好きな私は、満足満足。
ただ何となく今回の興行では時蔵丈がいつもとは少し違って感じたが、どうしてだかわからない。
何が違ったんだろうなと今になっても思う。気のせいかな?
二つ目は『京人形』
菊之助丈の『京人形』は二度目だが,三年ほど前のときとは少し違った演じ方だった。
人形が以前に比べスムーズ感を増した仕立て方で、どちらのよかった。
『京人形』らしいのは以前で,面白みがパワーアップしたのは今回。
菊之助丈のただならぬ美しさは素晴らしいとしか言いようがなく、見とれてしまう。
萬次郎丈の心得たという表情に加えてふと嫉妬心をちらつかす女心の表現は素敵だった。
萬次郎丈は個性的な女房を演じられ、こことが良い。
三津五郎丈の女房とのやり取り,人形とのやり取りは楽しかった。
『京人形』は何度観ても面白いし美しい。
さてさて「待ってました!」の『髪結新三』
わたしは 三津五郎丈の家主長兵衛で『髪結新三』が観たかったんだ。
そう。三津五郎丈の家主長兵衛を観るのは、歌舞伎におけるわたしの夢のひとつだった^^
『髪結新三』は思った通り面白く、観て良かったと満足している。
今回團菊祭の昼夜を通して 昼の『摂州合邦辻 合邦庵室の場』と、夜の『京人形』『髪結新三』が特に好きだった。
昔の役者はうまかったという人が多いが、菊之助丈は華あり味良し姿良し。
舞台うを見るにつれ、役者としての菊之助丈は素晴らしいと感じる思いは増すばかり。
その上素顔はまじめそうな好青年で、始終にこやか。
染五郎丈や七之助丈と同様、ご両親の愛情の賜物と感じている。
夜の部
一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)
十種香
八重垣姫 時 蔵
濡衣 菊之助
武田勝頼 錦之助
二、銘作左小刀
京人形(きょうにんぎょう)
左甚五郎 三津五郎
京人形の精 菊之助
三、梅雨小袖昔八丈
髪結新三(かみゆいしんざ)
白子屋店先より
閻魔堂橋まで
髪結新三 菊五郎
手代忠七 時 蔵
下剃勝奴 菊之助
お熊 梅 枝
家主長兵衛 三津五郎
弥太五郎源七 團十郎
松竹株式会社 歌舞伎美人より ▼
夜の部
一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)
十種香
武田信玄の嫡男・勝頼は、足利将軍暗殺の真犯人を探し出すことができず、許嫁である長尾謙信の息女・八重垣姫と一度も顔を合わせることのないまま切腹。八重垣姫が十種の香を焚いて勝頼の菩提を弔っていると、勝頼と瓜二つの花作りの簑作が現れます。驚いた八重垣姫は腰元の濡衣に恋の仲立ちを頼みますが、実はこの男こそ本物の勝頼で、切腹した勝頼は、身代わりとなった濡衣の夫だったのです。八重垣姫が勝頼への思いを滔々と語るところへ、館の主・長尾謙信が現れ、簑作へ出発を促します。すでに簑作の正体を覚っていた謙信は、勝頼を亡き者にしようと追手を差し向けるのでした。
全五段の義太夫狂言『本朝廿四孝』の四段目に当たる「十種香」は、錦絵のような華麗な美が堪能できる名作。深窓の姫君である八重垣姫は歌舞伎の"三姫"の一つに数えられる華やかな大役です。
二、銘作左小刀
京人形(きょうにんぎょう)
廓で見初めた美しい傾城に生き写しの京人形を彫り上げた名匠・左甚五郎が、それを相手に酒宴の真似事を始めるところ、不思議なことに人形がひとりでに動き出します。女の魂と言われる鏡を人形の懐に入れると、しとやかな女らしい動きに、鏡が懐から落ちると、人形は元の荒々しい動きに戻ります。
京人形の可憐な踊りから、後半は一転して、甚五郎が大工姿の捕手たちを相手に、大工道具を使って左手だけで鮮やかに立廻りを見せる、見どころの多い舞踊劇です。
三、梅雨小袖昔八丈
髪結新三(かみゆいしんざ)
材木屋白子屋では、一人娘お熊の縁談がまとまり、結納の品が取り交わされますが、お熊は手代の忠七と恋仲であるため、縁談を了承しません。それを聞いていた小悪党の髪結新三は、忠七にお熊との駆け落ちをそそのかした上、途中で忠七を蹴倒してお熊を監禁し、身代金をせしめようと企みます。騙されたことに気づき面目なさに大川に身投げをしようとする忠七を、通りかかった侠客の弥太五郎源七が助けます。
源七は白子屋からの依頼でお熊を取り戻そうとしますが、逆に新三にやり込められてしまいます。次に家主の長兵衛が乗り出し、老猾な掛け合いでお熊を救い出しますが...。
初鰹やほととぎすなどのほか、台詞の随所にも季節感が溢れ、威勢の良い江戸の市井の風俗を生き生きと描いた河竹黙阿弥の代表作。
音羽屋の家の芸で、江戸歌舞伎の粋を存分にご堪能いただく世話物の傑作です。