五月十日
一人で團菊祭五月大歌舞伎昼の部を楽しむ。
この昼の部が非常に面白かった。
見て良かったと一ヶ月経った今も満足している。
夫とは後日夜の部を一緒に楽しんだが、彼も昼夜で見ればよかったのにと今更のように言っている。
彼は仕事が忙しいため、今回この團菊祭は夜を選んだ。
働く彼が夜だけで主婦のわたしには昼夜行かせてくれる家族に、申し訳ない気がする。
昼の部はなんと言っても『摂州合邦辻 合邦庵室の場』が良かった。
ほめ讃えてもほめ讃えてもまだ足りない菊之助丈の『摂州合邦辻 合邦庵室の場』
お若いのに、本当にすごい!
今後、どんな役者さんになられるのだろうか?
70歳以降の彼の舞台を見るためには、わたしの今後のかなりの健康が必要だ。希望的願望か。
いや、楽しむことができるかも知れない。
この芝居はかなり好きな方に入る。
菊之助丈の玉手御前は素晴らしくよかった。
美しく、迫力があり、切なかった。
義母としての真の愛情を感じ、生き血をとる場面、その前の台詞で琴線に触れる。
菊之助丈は素晴らしく魅力的な役者さんだ。
虎の年虎の月虎の日寅の刻(の玉手御前)
そういうと、今年はいつだったっけ。
奈良県の信貴山に今だいってないことに気づく。
妙な所で妙な具合に妙なことを思い出すものだ。
また二つ目の『歌舞伎十八番の内 勧進帳』
こちらは本家本元の武蔵坊弁慶
團十郎丈の武蔵坊弁慶は何度も見ているが、いつ見ても独特の特長が感じられる。
ただ今回は團菊祭とあってか、力がはいり(過ぎ)、勧進帳を空(くう)で読む時の間(?)がかなり長過ぎた。
普通幸四郎丈や富十郎丈ならば
「ぁあぁあぁあ あぁあ」
位の長さだが、五月十日における團菊祭での團十郎丈のそれは、
「ぁあぁあぁあ ぁあぁあぁあ ぁあぁあ」
位の台詞の伸ばしだったので、会場中がこらえられずに大笑い。
勧進帳は十代から何度も何度も楽しんではいるが、あの場面での笑いの渦が巻き起こったのを初めて見た。
貴重な経験をしたと喜んでいる。
富樫側(右)と山伏側(左)が固まり(たば)になり三角構図でお質押される(行動的)問答する場面は長田遅延の茶漬けかなにかのCMを見ているような美しさ。
面白かったし、日本だなぁと客観的にとらえたのは、浮世絵を見ている気分か。
わが家にも弁慶と富樫の浮世絵はあるが、明らかにそれより美的感覚を感じ取った。
お年を召してからの團十郎丈は台詞も落ち着き始め、若い頃にはなかった美しさが生じてこられたように感じる。
こうなると化粧映えする團十郎丈はお得なのかも知れない。
そうは思いつつ、わたしは幸四郎丈の勧進帳を見たいと思うのでした。
最後の『天衣紛上野初花 河内山』
これには驚いた。
始まって1/3くらいまでは三津五郎丈の河内山宗俊は仁左衛門丈の河内山宗俊の口調にそっくり。
ただ、途中からと見た感じが大きく違っていた。
河内山宗俊の花道でのしてやったりの名台詞はわたしにとっては待ちに待ったひとこと。
自ずと見ている側にも力が入る。
ここでそれまでの芝居は成功となるか或はパァとなるかの分かれ道。
皆はそれを期待して花道に釘付けになっているんじゃないのかな^^
そんなようなわかったようなわからないようなことを思うのでした。
下の銅像と写真は松竹座の客席の入り口辺に開催中ずっとおかれていたのだろう。
わたしは行った二日間は同一の所にあった。
普段の松竹座とは違って、團菊祭仕様だったというべきか。
写真八枚は全て十日昼の部に撮ったもの。
大阪松竹座
團菊祭五月大歌舞伎
平成22年 5月4日(火・祝)~28日(金)
昼の部
一、摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)
合邦庵室の場
玉手御前 菊之助
俊徳丸 時 蔵
浅香姫 梅 枝
母おとく 東 蔵
合邦道心 三津五郎
二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)
武蔵坊弁慶 團十郎
富樫左衛門 菊五郎
源義経 藤十郎
三、天衣紛上野初花
河内山(こうちやま)
河内山宗俊 三津五郎
松江出雲守 錦之助
高木小左衛門 東 蔵
今は夜中の一時半。
今夜はせめて團菊祭の昼の部だけでも記録したいと焦っている。
明日(十二日)は大阪クレオで歌舞伎教室があるからに他ならない。
最近は歌舞伎記録が毎回遅れている気がする。
最後までおつきあい下さいましてありがとうございます。
感謝申し上げます。