7月7日 七夕( 日本) 五節句の一つ。
T・エリック氏
人は気づいてはいけないもの程、鮮明に息吹を感じることがある。
昨夜、電柱の陰に隠れている、T・エリック氏を見た。
隠れている彼の意思には気づかぬ振りをして、わたしは彼に近づく。
緑色を飲み込む闇の中で、T・エリック氏はまだ息を潜めていた。
会釈すると、思いのほか苦い 虫に占領されたピーナッツを噛んだような苦痛を帯びた声で、ひとこと。
「お日柄よく」
こんな寂しい夜に、何がお日柄よくなのかはさておき、彼は喘いだ萌葱色の息を小刻みに震わせている。
彼の顔を見上げると、彼の顔は半分深緑を伴い、闇夜に消えつつあるようだ。
胸元を見ると、彼のハートは星形にぽっかりとあいていた。
わたしは星形のそれを覗き込む。
案の定、静寂さを保つ闇夜だ。
その中に、一筋の光。
軌跡はやがて彼の心いっぱいの大きなおぼしとなって、輝きを放つ。
思し、雄星(彦星)
今日は朝から雨が降っている
雨降る七夕…
T・エリックはわたしの心配をよそに、織り姫と出会っているのかもしれない。
そう信じて、わたしは灰色に包まれる午後三時の空をながめた。