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「和歌山の 牟婁ムロの水辺に 千年も 差し障りなく 万代ヨロヅヨも こうもあろうと 大舟を 信頼をして 出立つの 清い渚に 朝凪に 寄せる深海松 夕凪に 寄せる縄海苔ナワノリ 深海松の 募らす娘らを 縄海苔の 引いたら切れる 里人サトヒトが 行く歌垣に 泣く子する 行き取り探る 梓弓 弓腹ユハラ引っ張り しのぐ矢を 二つ手挟タバサみ 放つよう 人は悔しい 恋しく思う()」
「紀の国の 牟婁ムロの江の辺ベに 千年に 障ツツむことなく 万代ヨロヅヨに かくしもあらむと 大舟の 思ひ頼みて 出立ちの 清き渚に 朝凪に 来依る深海松 夕凪に 来依る縄海苔ナワノリ 深海松の 深めし子らを 縄海苔の 引かば絶ゆとや 里人サトヒトの 行きの集ひに 泣く子なす 行き取り探り 梓弓 弓腹ユハラ振り起し しのき羽を 二つ手挟タバサみ 放ちけむ 人し悔しも 恋ふらく思モへば(#13.3302 右一首。)」
「神性な 伊勢に吹きたる 朝凪で 採れる深海松フカミル 夕凪で 採れる俣海松マタミル 深海松の ように深める 俣海松の ように帰えって 妻と呼ぼうと 思わぬ君は()」
「神風カミカゼの 伊勢の海の 朝凪に 来依る深海松フカミル 夕凪に 来寄る俣海松マタミル 深海松の 深めし吾アレを 俣海松の また行き帰り 妻と 言はじとかも 思ほせる君(#13.3301 右一首。)」