■涼傘(りゃんさん)■
聞得大君が碧眼で王妃を睨みつける。
「王妃様ともあろうお方が御料理座を勝手に使えばどうなるかわからぬのか?」
「ここは私の管轄です。聞得大君が口を挟む筋ではない」
二人の女の涼傘が互いにつばぜり合いをする。
いつかこんなこともあろうかと王妃は一回り大きな涼傘を作らせておいた。
「国母様のおなーりー」
現れたのは聞得大君の母でもある国母だ。
「娘に会うのになぜ私が王妃の許可を取らねばならぬ?
御内原に長くいるのはこの私である」
銀色の髪を結った国母は龍を刺繍した式典用の涼傘を持ち込んで、
王妃の涼傘を圧す。
「テンペスト(上)127-」池上永一著/角川書店 より
王族の間で使われていた涼傘。
首里城祭の行列でも見られたように、
いわゆる日傘の役割…というよりも、装飾効果と、
行列では目印のように用いられていたようです。
権力の提示と旗印、というところでしょうか。
首里城南殿の資料展示室には黄色い涼傘が、
北殿には↑の赤い涼傘をみることができます。