同棲してたんです

気がついたら、パッションの部屋に転がり込んでいた
「いいよ」とも言っていないのに
あなたは勝手に居座っていたね
だんまりを決め込んで
最初の頃はかなり気になって
心休まる空間だったはずなのに
ちらちらとあなたの方を見ていた
だけど、あなたは意に介さずマイペース

日にちが経っていくにつれ
特別意識をしなくなっていって
あなたと同じ空間にいるのに、気がつかない日だってでてきた
いつもはスラッとした手足をのばしているあなた
実際は、手だか足だかわからないのだけど…

そんなあなたが…




動かなくなっていた
出会いをつづった日記

もう2ヶ月以上も前だ

ずっと毎日お風呂場にいた
パッションの恥ずかしいハダカを毎日見ていたあなた

そして
「ずっとお風呂場にいて、オナカ減ってないのかなぁ」とか
「なに食べているのかなぁ」とか
「クモさんの寿命ってどれくらいなんだろうなぁ」とかって考えてた
時々話してみたりしたけど、返事は返ってこなかった…

朝シャワーを浴びるのに、お風呂場に入ると床にクモがいた
小さくなっているクモ
天井にいるあなたとは似ても似つかないような小ささだった
だったけど…
天井のあなたがいなくなっていた
よく見ると、しっかり脚は折りたたまれている
シンメトリーに規則的かつ芸術的なようにさえ見える
これがクモさんの最後の力をふりしぼった美しき姿
写真だと、かたちが崩れてしまっているが
本当に左右対称な美しいかたちだった


もう、お風呂場に行って天井を気にする必要もない
そこにはもう、あなたはいない

本当に雲の上に行ってしまった…