川井三郎氏蔵「葵紋数蒔絵将棋盤」の漆工専門家による鑑定報告書
首記将棋盤と共柄の駒箱について、複数の専門家による技術鑑定を実施しました。
その結果を下記のとおり報告書としてまとめましたので、関係者に配布致します。
記
1、実施日・場所
平成22年7月12日 10時30分~13時
福井県立歴史博物館内 (福井市入宮町)
2、鑑定品
1)黒塗総箱に「村梨子地若松唐草御紋散・御将棋盤」とある「将棋盤」
2)同じく「村梨子地若松唐草御紋散・御駒箱」とある「駒箱」
3、鑑定者
1)石川県輪島市、漆工芸技術者(蒔絵及び仕上げ塗の伝統工芸士) 3名
2)福井県、越前漆器共同組合元理事長、漆工芸品プロデューサー 2名
4、意見がほぼ一致した鑑定結果まとめ
1)梨子地などの風合いや、金蒔絵の状態、使われている技法や材料からみて、漆
工芸品としての技術は相当高く、漆の劣化具合を勘案すれば少なくとも明治以
前、江戸時代中頃から後期にかけて作られた品であると推定される。
(古さの傍証として、盤の総箱が台鉋でなく槍鉋づくりの跡が認められる)
2)盤の家紋の一部は「キリガネ(切り金/截金)」であり、駒箱の一部の葵紋や、
双方の地模様の唐草葉にも同様の「キリガネ」が使われている。
「キリガネ」は金板を薄く延ばし0.02~0.005ミリ程度のごく薄い板を
紋の形に切り出して漆で貼り付ける技法。これで金の鋭い輝きが表現される。
古い時代の「キリガネ」は、現在より薄いものが使われるのが一般的で、同様
の傷みのある印寵などは、修理品として持ち込まれることは良くある。
3)「以前あった輿入れ元の紋が、後年、徳川家の紋に変えてしまった」との意見
に対しては、その痕跡は見つけることが出来ない。
すなわち当該家紋、葵葉の余白部分の梨子地模様は、周りの部分と全く同じも
のであり、さらに、キリガネの周りを押さえる「毛打ち」と呼ぶ漆の細線は、
以前のものを痕跡なく消して書き換えることは100%不可能と思われる。
従って「家紋が書き換えられた」とする見方は否定するしかない。
(家紋の剥がれている部分の下に「赤茶」と「黒色」の地模様が見えるが、
赤茶は切り金を接着するベンガラを混ぜ込んだ「接着漆」であり、黒は、
その下の「中塗り漆」である)
4)「キリガネ」に皺が入ったり剥がれかけたりしたのは、経年変化の結果である。
つまり、永年の気温気上下が繰り返されて金板が伸び縮みした結果、接着漆が
浮いたり金板が剥離したものと考える。
(漆は使用状態によって固まらないで「なまる(接着能力が発揮されない)」
ことがある)
傷みのある部分は、元の図柄を大きく変えないで限定的に補修した可能性は否
定出来ないが、図柄や形を意図的に改変するようなものではない。
以上(文責:熊澤良尊)
平成22年7月13日まとめ
なお、「テレビ東京」にも参加を呼び掛けておりましたが、残念ながら参加いただくことは
ありませんでした。
首記将棋盤と共柄の駒箱について、複数の専門家による技術鑑定を実施しました。
その結果を下記のとおり報告書としてまとめましたので、関係者に配布致します。
記
1、実施日・場所
平成22年7月12日 10時30分~13時
福井県立歴史博物館内 (福井市入宮町)
2、鑑定品
1)黒塗総箱に「村梨子地若松唐草御紋散・御将棋盤」とある「将棋盤」
2)同じく「村梨子地若松唐草御紋散・御駒箱」とある「駒箱」
3、鑑定者
1)石川県輪島市、漆工芸技術者(蒔絵及び仕上げ塗の伝統工芸士) 3名
2)福井県、越前漆器共同組合元理事長、漆工芸品プロデューサー 2名
4、意見がほぼ一致した鑑定結果まとめ
1)梨子地などの風合いや、金蒔絵の状態、使われている技法や材料からみて、漆
工芸品としての技術は相当高く、漆の劣化具合を勘案すれば少なくとも明治以
前、江戸時代中頃から後期にかけて作られた品であると推定される。
(古さの傍証として、盤の総箱が台鉋でなく槍鉋づくりの跡が認められる)
2)盤の家紋の一部は「キリガネ(切り金/截金)」であり、駒箱の一部の葵紋や、
双方の地模様の唐草葉にも同様の「キリガネ」が使われている。
「キリガネ」は金板を薄く延ばし0.02~0.005ミリ程度のごく薄い板を
紋の形に切り出して漆で貼り付ける技法。これで金の鋭い輝きが表現される。
古い時代の「キリガネ」は、現在より薄いものが使われるのが一般的で、同様
の傷みのある印寵などは、修理品として持ち込まれることは良くある。
3)「以前あった輿入れ元の紋が、後年、徳川家の紋に変えてしまった」との意見
に対しては、その痕跡は見つけることが出来ない。
すなわち当該家紋、葵葉の余白部分の梨子地模様は、周りの部分と全く同じも
のであり、さらに、キリガネの周りを押さえる「毛打ち」と呼ぶ漆の細線は、
以前のものを痕跡なく消して書き換えることは100%不可能と思われる。
従って「家紋が書き換えられた」とする見方は否定するしかない。
(家紋の剥がれている部分の下に「赤茶」と「黒色」の地模様が見えるが、
赤茶は切り金を接着するベンガラを混ぜ込んだ「接着漆」であり、黒は、
その下の「中塗り漆」である)
4)「キリガネ」に皺が入ったり剥がれかけたりしたのは、経年変化の結果である。
つまり、永年の気温気上下が繰り返されて金板が伸び縮みした結果、接着漆が
浮いたり金板が剥離したものと考える。
(漆は使用状態によって固まらないで「なまる(接着能力が発揮されない)」
ことがある)
傷みのある部分は、元の図柄を大きく変えないで限定的に補修した可能性は否
定出来ないが、図柄や形を意図的に改変するようなものではない。
以上(文責:熊澤良尊)
平成22年7月13日まとめ
なお、「テレビ東京」にも参加を呼び掛けておりましたが、残念ながら参加いただくことは
ありませんでした。
駒の写真集
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